「サイドFIRE」とは?早期リタイアの現実的な実践方法を紹介

「サイドFIRE」とは?早期リタイアの現実的な実践方法を紹介

「サイドFIRE」とは?早期リタイアの現実的な実践方法を紹介

投資による収入をベースとして経済的に自立し、早期リタイアをめざす「FIRE(ファイア)」。そのFIREの一種であり、より現実的なリタイアのかたちとして自分の好きな副業をしながら経済的自立を実践する「サイドFIRE」についても紹介します。

経済的に自立し、早期リタイアをめざす「FIRE」とは?

経済的に自立し、早期リタイアをめざす「FIRE」とは?

そもそもFIREとは「Financial Independence(経済的自立)」と「Retire Early(早期退職)」の頭文字を組み合わせた言葉です。「早期リタイアしてお金のために働く人生から自分を解放する」という概念を指します。FIREを実践する人は、リタイア後の生活費を補えるような貯蓄(投資元本)を確保したうえで、資産運用による収益を得ながら経済的自立をめざします。

ただ、早期リタイアと聞くと「多額の貯蓄が必要では?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、FIREの概念が特徴的なのは、単に「お金をいっぱい貯めて早く仕事を辞める」わけではないこと。

リタイア後も節約をしたり、短時間の労働で収入を得たりすることで、比較的少ない資産でも実現可能な点が、従来の早期リタイアとは異なります。

「労働に縛られ続けない人生「FIRE」とは?セミリタイアに必要な資産」を読む

より実行しやすい「サイドFIRE」とは?

とくに近年は、投資収益だけでは不足する収入を補うため、自分の好きな副業やスモールビジネスを手がける「サイドFIRE」や、パートタイムの仕事を収支にあわせて柔軟にこなす「バリスタFIRE」など、より実践のハードルが低いFIREのかたちが注目されています。

サイドFIREをめざすうえで大切なことは、「自分のペースで働ける」副業であること。意欲がないのにフルタイムで働くお金のための労働ではなく、自分の特技を活かして「経済的自立」を実践するのがサイドFIREの特徴です。

副業で稼ぐ金額が増えれば早期リタイアに必要な投資元本は減ります。逆に副業で稼ぐ金額が少なければ、基準となる年間生活費そのものを見直すという柔軟な対策も取れます。いずれにせよ「自分のペースで」取り組むことがモットーとなっています。

この点について、FIREムーブメントの第一人者であるグラント・サバティエ氏は経済的自立の準備として「いま働いているフルタイムの仕事の給与を最大化しつつも、休日や隙間時間を利用して自分の特技を生かした副業を始めるべきだ」と推奨しています。

なお、FIRE発祥の地といわれる米国では、FIRE開始時の資産額の目安を「年間生活費の25倍」と設定しています。これは、年間支出の25倍の資産を築けば年利4パーセントの投資収益によって生活費を補えるという、FIREコミュニティ内では主流となっている金融理論に基づき、導き出されています。

より実行しやすい「サイドFIRE」とは?

ただ、米国と日本ではインフレ率や市場成長が異なるため、必ずしもこの指標が適切とは言いきれず、あくまでも目安として捉えましょう。

なお金融理論といってもロジックはシンプルです。少し簡単に試算してみましょう。

例えば1年間の生活費を300万円とした場合、亡くなるまで「投資収益だけ」で生活するにはその25倍、つまりは7,500万円程度の投資元本が必要です。7,500万円の投資元本を仮に年利4パーセントで運用できるとすれば、毎年300万円(7,500万円×4パーセント)の投資収益を得られるため、その利益で生活費をカバーできるというわけですね。

ただ、完全なリタイアではなくサイドFIREをめざすなら、7,500万円も必要ないはずです。

投資収益だけでなく、副業の収入でも生活費の一部を補うことができれば、投資元本として必要な金額は自然と下がるためです。

では、サイドFIREを達成するためにどのくらいの資金が必要なのか、具体的に見ていきましょう。

サイドFIRE達成のモデルケースを副業の収入別に紹介

年間300万円が生活費として必要である場合、投資収益だけで生活するFIREを実現するためには7,500万円の投資元本が必要になります。

例えば、あなたが配当利回り4パーセントの株式を7,500万円分持っていたとしましょう。配当利回りは4パーセントなので、年間300万円の配当金を得られるという計算です。

サイドFIRE達成のモデルケース

サイドFIRE達成のモデルケースとして、副業などの収入が120万円ある場合と、180万円ある場合に必要な投資元本を計算してみます。

副業などの収入120万円の場合

例えば副業などで年間120万円以上を稼ぐことができれば(月10万円以上)、年間300万円の生活費が必要な場合、残り180万円/年となります。

FIRE開始時の資産額の目安である生活費の25倍が投資元本として必要だとすると、4,500万円(180万円×25)の貯蓄を確保できれば、投資収益が年間180万円得られサイドFIREを実現できるというわけですね。

副業などの収入120万円の場合

副業などの収入180万円の場合

さらに副業などを通じて、年間で180万円以上の収入を得られれば(月15万円以上)、残りの生活費は120万円となり、3,000万円(120万円×25)の投資元本があれば実現できます。

副業などの収入180万円の場合

稼ぐだけではなく、都市部から郊外や地方に居住地を変えて年間生活費を大胆に削減できれば、よりサイドFIREの実現に近づきそうです。

ちなみに前述のサバティエ氏は節約に関して、やみくもに行うのではなくサバティエ氏が三大支出と定義する「住居費」「交通費」「食費」の削減に集中したほうが、効果が大きいとも提言しています。

サイドFIREにはデメリットもある

サイドFIREは副業などの収入で生活費の一部を補填できるため、用意しておく投資元本も少なくて済みます。

さらに、確保すべき資産の額が下がるということは、比較的早い段階でFIREの生活を実現できるといったメリットもあるでしょう。

一方で、デメリットがあることも念のため押さえておきましょう。

デメリット1:仕事ができなくなると投資収益だけでは暮らせない

フルタイムではないものの、サイドFIREは働いて収入を得ることが前提です。仮にもし働けなくなった場合、投資収益だけでは暮らせず、資産を取り崩していく必要があるでしょう。

そのためサバティエ氏はできるだけ収入源を多様化し、自分自身が労働することなく得られる「不労所得」を作ることも推奨。とくに不労所得を得られるビジネスを手がける場合、流行りものではなく「『食べる』『寝る』『娯楽』『学習』など人々が永続的に必要なものに目を向けよう」と、自著の中で述べています。

デメリット2:暴落によって資産が大きく減る可能性も

サイドFIREの実現に向けて確保するお金は「投資元本」です。つまり、株式などに投資を行うとなると、相場の変動によっては資産が予想以上に大きく減る可能性もあります。

そのため過剰なリスクを負わないためにも、FIREでは個別の企業に投資を行うのではなく、複数の企業に間接的に投資を行うインデックス投資を推奨しています。

S&P500や日経平均株価など、代表的な株価指数に連動した成果をめざすインデックス投資。投資対象の企業は複数にわたるため、個別の企業に投資を行うよりもリスクを軽減できるといわれています。

インデックス投資については、こちらの記事でも紹介しています。
インデックス運用とアクティブ運用を比較!人生100年時代に知っておきたい投資信託の賢い選び方(外部サイト)

FIREは仕事を辞めることが一番の目的ではない

FIREは仕事を辞めることが一番の目的ではない

FIREにおいて大切なポイントは、あくまでも仕事を辞めることが一番の目標ではないことです。

お金のために働く必要がなくなったとき「人生の時間を何に使いたいのか?」、そこに明確な目的意識がないと、FIREの実現は難しいといえます。

仮に実現したとしても、その後の膨大な時間を無駄に過ごしてしまうかもしれません。

つまりFIREとは節約や投資、副業などをうまく活用することで、人生のほとんどの時間と精力をフルタイムの仕事に注ぐ生活から自分自身を解放する、いわば生き方のこと。

逆にいうと、いまやっている仕事に生きがいを感じている人や、リスクが怖いから投資に手を出したくないという人向けの生き方ではありません。

「家族ともっと多くの時間を過ごしたい」「世界中を旅行してみたい」「創作活動に没頭したい」などの思いを抱えている人たちにこそ、FIREは新たな生き方の選択肢を提示してくれるかもしれませんね。

参考:
・『FIRE 最速で経済的自立を実現する方法』(朝日新聞出版)グラント・サバティエ著
・『FIRE 最強の早期リタイア術』(ダイヤモンド社)クリスティー・シェン&プライス・リャン著

・本コンテンツは一般的な情報提供を目的とするものであり、お客さまに証券投資取引に関して何らの推奨・勧誘も目的とするものではありません。

ライタープロフィール
吉田 祐基
吉田 祐基
株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。AFP認定者(2級FP技能士)。タウン誌、編集デザインファーム、大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。これまでコンテンツマーケティングや、ミレニアム世代向けビジネスメディア、不動産広告の取材&ライティングなどを手がける。

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