保険適用でより手軽に。人生をもっと楽しむために検討したい「眼内レンズ」って?

保険適用でより手軽に。人生をもっと楽しむために検討したい「眼内レンズ」って?

保険適用でより手軽に。人生をもっと楽しむために検討したい「眼内レンズ」って?

人生100年時代において、平均寿命は延び続けていますが、大切なのは健康寿命。高齢になると、白内障などの目の疾患で悩む方は多いようです。そこで今回は、2020年4月から一部保険適用となった、多焦点レンズを用いた白内障治療について、眼科医で医学博士の荒井宏幸先生にお話を伺いました。

70歳を超えるとほとんどの人が白内障になる

70歳を超えるとほとんどの人が白内障になる

白内障は、「目」の老化現象です。老眼や身体機能の衰えといった老化現象が、人によって程度の差はあっても必ず訪れるのと同様に、ほとんどの人が白内障になります。

白内障とは

白内障とは、視界が曇ってかすんで見えたり、光をまぶしく感じたり、視力が低下するといった症状をともなう目の疾患です。加齢に伴って発症率は増加し、70歳以上で、80パーセント以上の人が発症します。

白内障の原因は「水晶体の酸化」

白内障は、目の中でレンズの役割をしている水晶体が、紫外線の影響による酸化などで曇ってきてしまうことが原因と考えられています。例えば、長年日光や雨に晒された窓ガラスは、放っておくと外的要因で表面が徐々に曇っていきます。これと同じイメージの混濁が、目の中の水晶体で起こっているのです。

白内障とは

人間は水晶体で集めた光を、スクリーンの役割をする網膜の黄斑部(おうはんぶ)に集めて物を見ています。そこで、水晶体が大切な黄斑部のバリアとなって紫外線などから守っているというわけです。

白内障の症状はシームレスに進行する

荒井先生は、「気付くか気付かないかというだけで、白内障はかなり若いときから始まっています。厳密にいえば、生後すぐよりも1歳、1歳よりも10歳の人の方が、水晶体の混濁は進んでいるといえるのです。だから本当の初期症状は、誰も気付くことができません」といいます。

肌の老化が「この時点から始まった」ということがいえないのと同様に、白内障も「ここからが白内障」といった線引きはできません。つまり、白内障の症状は、生まれたての澄んだ瞳の赤ちゃんのときから、少しずつシームレスに進行しているのです。

では、物が見えにくくなるなど、日常生活に支障をきたす程度まで白内障の症状が進行してしまった場合、どのような治療をすれば良いのでしょうか。

白内障の治療法

白内障の治療法

現時点で白内障は、目薬などの薬で「予防」や「進行を遅くする」ことはできても、完全に治すことはできません。そのため、白内障を治療するには手術が必要になります。

そして、この白内障治療に用いられるのが「眼内レンズ」です。

白内障治療に用いる「眼内レンズ」とは

白内障の治療法

白内障治療に用いる眼内レンズとは、水晶体の代わりとなるレンズのことです。紫外線などの影響で傷んでしまった水晶体を取り出し、その代わりにレンズを入れることから「眼内レンズ」と呼ばれています。

そして、この眼内レンズを用いた白内障治療には、以下のようなメリットがあります。

眼内レンズを用いた白内障治療のメリット

・はっきりと見えるようになる。
・加齢によって水晶体が固くなり、近くの物が見えにくくなる老眼についても、対応する眼内レンズを用いれば改善する。
・レンズにはUVカット機能があり、有害な紫外線を網膜に届かないようにするため、黄斑部の加齢に伴って視力の低下を引き起こす加齢性黄斑変性症の予防につながる。

荒井先生によると「デメリットは特にない」とのことです。ただ、「腹部などを切開する手術に比べ、気軽に考える方もいらっしゃいますが、体にメスを入れることには代わりはないので、手術をするかしないかはよく医師と相談し、しっかりと考えてから手術に望んでいただきたい」とのアドバイスをいただきました。

眼内レンズの種類

白内障治療に用いられる眼内レンズには、主に「単焦点」「2焦点」「多焦点」があり、荒井先生によると、厳密には2焦点レンズも多焦点レンズに区分されるといいます。2020年4月から一部保険適用となった白内障治療についても、2焦点レンズは多焦点レンズと同じ扱いとなっています。

単焦点レンズ:遠視用メガネのように、比較的遠くの1点のみに焦点を合わせる。
2焦点レンズ:比較的遠い距離と30センチ前後の近距離の2点に焦点が合う。
多焦点レンズ:遠距離、近距離の他、50センチ前後の中距離にも焦点が合う。(焦点の数はレンズの種類による)

例えば、ちょっと遠くのテレビを見るだけなら単焦点レンズでカバーできますが、手元のスマートフォンなども見たいのであれば、2焦点レンズでなければなりません。中距離にあるパソコンのモニターなども見たい場合は、遠・中・近の3距離に焦点の合う多焦点レンズが必要になります。

また最近では、2焦点レンズのカテゴリーに、ピントが合う範囲を拡張したEDOF(イードフ)レンズが出てきました。このレンズは、ピンポイントな「遠距離」「近距離」だけではなく、「遠距離周辺」「近距離周辺」といったように焦点が合う距離に「幅」があるため、見える距離の融通がある程度利くようになるそうです。

こうした特徴を踏まえ、単焦点レンズ、2焦点レンズ、多焦点レンズはどのように選べば良いのでしょうか?

眼内レンズはどう選ぶ?

眼内レンズは、使用する方のライフスタイルや、必要性に応じて選ぶべきだと荒井先生はいいます。例えば、単焦点レンズは、基本的に遠くにしか焦点が合わないため、中距離にあるパソコンのモニターや手元の物を見るときには、その距離感に合った眼鏡がそれぞれ必要となります。

また、2焦点レンズでは中距離にピントが合わないため、例えば、老眼の人がパソコンをしっかり見たいときは、弱めの老眼鏡が必要です。つまり、眼鏡を一切かけたくないということであれば、多焦点レンズを選ぶべきといえるでしょう。

このように、単焦点レンズ、2焦点レンズ、多焦点レンズはそれぞれ特長があり、症状や用途、個人の意向などによって選ぶレンズが変わります。

眼内レンズを用いた白内障治療にかかる費用

眼内レンズを用いた白内障治療にかかる費用

従来、健康保険が適用されるのは単焦点レンズを用いた白内障手術のみでした。しかし、2020年4月から、多焦点レンズを用いた白内障手術が厚生労働省の定める「選定療養」の対象となり、レンズ代以外の手術費用の大部分が保険適用になりました。

なお、選定療養とは、健康保険に加入している患者が追加の費用を負担することで、保険適用の治療と保険適用外の治療をあわせて受けることができる仕組みです。

保険が適用される範囲とメリット

今回の改定により定められた、保険が適用される範囲と費用の目安、それぞれのケースのメリット・デメリットをみてみましょう。

保険診療

単焦点レンズ代を含む手術費用全額に健康保険が適用されます。そのため、費用が安く済むというメリットがあります。ただし、レンズは単焦点レンズしか選べません。

選定療養

多焦点レンズ代は自己負担、それ以外の手術費用の大部分に健康保険が適用されます。保険診療と比べて、およそ30〜40万円がプラスでかかります。

多焦点レンズを選択しつつ、手術費用を抑えることができるため、保険診療と自由診療のそれぞれのメリットが考慮された方法といえるでしょう。

自由診療

多焦点レンズ代を含む手術費用全額が自己負担になります。費用は80万円ほどかかります。

自由診療には、大きく2つのメリットがあると荒井先生はいいます。一つは、選択できる多焦点レンズの種類が豊富なこと。選定療養の場合は、厚生労働省が定めたレンズの中から選択しなければなりませんが、自由診療にはそのような制約はありません。例えば、最新のレンズといわれるイスラエル製の5焦点にピントが合うレンズを選ぶことも可能です。

もう一つのメリットは、最先端の技術を駆使した手術を受けられることです。例えば、通常のメスに比べ、正確性・時間短縮などに効果がある「レーザー」による手術や、水晶体を取り除いた後の手術中に適切なレンズを選ぶことで、より完璧な度数合わせが期待できる「術中計測」といった技術を用いることができます。

眼内レンズの使用で視界良好な老後を過ごす

眼内レンズの使用で視界良好な老後を過ごす

「人生100年時代」といわれるようになり、老後を楽しむ時間が増えたといっても、スポーツをしたり、本を読んだり、好きなことが思うようにできなければ楽しさも減ってしまうでしょう。白内障は老化現象の一つとはいえ、対処せずに放っておくと、趣味を楽しむだけでなく生活そのものに支障をきたす恐れもあります。

前述の通り、白内障は薬で治すことはできませんが、眼内レンズを用いた手術による治療という方法があります。例えば、選定療養の対象となった多焦点レンズを使用すれば、白内障の治療だけでなく、老眼鏡を使わない生活に戻れるかもしれません。視力の不自由がない快適な老後を過ごすために、眼内レンズも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

この人に聞きました
荒井宏幸さん
荒井宏幸さん
防衛医科大学校を卒業後、航空自衛隊医官として自衛隊中央病院等に勤務。自衛隊退職後、横浜市内の眼科医院にて眼科部長、南青山アイクリニックにて主任執刀医を歴任。その後、Queen's Eye Clinicを開設し院長に就任。現在は医療法人社団ライトの理事長として、みなとみらいアイクリニック主任執刀医を兼務。日本の眼科医学界にとどまらず、欧米での学会にも参加し、最新技術の国内への普及に尽力している。医学博士。
ライタープロフィール
杉浦 直樹
杉浦 直樹
元歌舞伎役者・ファイナンシャルプランナー・ソムリエという異色の経歴を持つ。大学卒業後、広告代理店制作部のコピーライターとして職に就くも一転、人間国宝四世中村雀右衛門に入門。15年間歌舞伎座・国立劇場などの舞台に立つ。AFP・住宅ローンアドバイザー・JSA認定ソムリエの資格を取得し、金融・伝統芸能・自動車・ワインなどのコラムを執筆。

杉浦 直樹の記事一覧はこちら

RECOMMEND
オススメ情報

RANKING
ランキング