「自宅」という概念は過去のもの?多拠点生活のススメ

「自宅」という概念は過去のもの?多拠点生活のススメ

「自宅」という概念は過去のもの?多拠点生活のススメ

最近「地方移住」や「2拠点生活」などの言葉をよく聞きます。しかし、いざ行動に移すとなると「地方は不便そう」「仕事や家庭が…」と様々な問題が発生します。今回はそういった問題を新しい視点で解決する「多拠点生活」について紹介します。

世界に拠点を持つ新人類「アドレスホッパー」とは?

世界に拠点を持つ新人類「アドレスホッパー」とは?

「アドレスホッパー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
アドレスホッパーとは「住所」を意味する「アドレス」と、「転々とする人」を意味する「ホッパー」を合わせた言葉です。
特定の居住地を持たずに、全国、あるいは世界中を移動しながら、ホテルやゲストハウス、民泊などの宿泊施設で生活をする人たちのことを指します。
一つの街にステイする期間や行動範囲は人それぞれ。数週間ごとに街を渡り歩くこともあれば、数ヵ月ごとに生活する国を変える人もいます。

このような生活をできるのはデザイナーやエンジニアなど、一部のフリーランサーに限られると思われるかもしれません。
しかし、アドレスホッパーの職業は多岐にわたります。中には大手企業の営業マンや会社経営者、美容師、学校の先生などの仕事をされている方も。
これまでは「旅をするか、仕事をするか」といったように二者択一の選択肢しかありませんでした。
しかしIT技術の向上や働き方改革の動きもあり、普通のビジネスマンであっても場所を選ばずに仕事ができるようになったため、旅をしながらでも仕事ができる人が増えつつあるのです。

アドレスホッパーには「Hopping Community」と呼ばれるコミュニティが存在し、「Hopping Night」というオフ会のようなイベントが定期的に開催されています。
またSNSのメッセージグループ上では地方の宿や観光、ローカルコミュニティについての情報が頻繁に飛び交っています。2020年2月にはコミュニティの創造メンバーを中心に、アドレスホッパーについての雑誌「Hopping Magazine」が創刊されました。

多拠点生活が私たちの生活を豊かにしてくれる4つの理由

多拠点生活が私たちの生活を豊かにしてくれる4つの理由

アドレスホッパーのように特定の拠点を持たない暮らし方は、私たちの生活を豊かにしてくれる理由があります。

理由1 持ち物を厳選して、好きな物に囲まれた生活ができる

アドレスホッパーは普通の生活よりも移動が多くなります。それゆえに身軽にしようと、自身の持ち物を厳選しなければなりません。
パソコンが一台あれば完結するような仕事をしている人は、大きめのバックパックに生活必需品とパソコンだけを詰め込み、カメラマンや料理人など、仕事柄たくさんの荷物を必要とする人は車を使って移動します。
荷物の量は人それぞれですが、必要最小限の物だけを持っていると、自然と物を大切に扱うようになりますし、また新しく何かを購入するときに、機能性や耐久性、また社会や環境に配慮した製品であるかということを重視する傾向にあるのも、アドレスホッパーの特徴といえます。

理由2 生活の無駄を省き、好きなことにお金や時間を使うことができる

ホテル生活と聞くと「お金があるからできることだ」と思われるかもしれませんが、アドレスホッパーの生活は想像よりも費用がかからないのも大きなメリットといえます。
日本のケースを見ると、最近は訪日外国人の増加に合わせて新しいホテルやゲストハウスが急増中で、ゲストハウスであれば、1泊1,000円〜1,500円程度で宿泊できるところも多く、1ヵ月の宿泊費を5万円以下に抑えることも難しくありません。
しかも、この宿泊費の中には水道光熱費やインターネット通信費、場合によっては朝食費が含まれることもあり、日々の生活にかかるコストをかなり抑えることも可能。
また、ホテルやゲストハウスでは、ベッドメイキングや部屋の掃除、日用品の買い物などはスタッフがしてくれる場合もあり、その分のお金や時間は、自分の好きなことに使うこともできるのです。

理由3 世界中にコミュニティを持つことができる

アドレスホッパーは一つの土地に1週間以上滞在することがよくあります。
ゲストハウスや民泊は、地元に住む人たちの交流の場になっていることも多く、知らない人同士で仲良くなるケースもあります。
昼は観光地やイベントに連れていってもらい、夜は居酒屋でお酒を片手に遅くまで語り合うことも。地元民から聞く土地の文化や歴史についての話は非常に興味深く、アドレスホッパーは、世界各地で見聞きしたことについて語ることで、地方へ新しい風を送ります。
何の利害関係もない人たちとの交流は単純に楽しいものです。次にまた同じ土地を訪れたときに「おかえり」と迎え入れてくれる場所、第二の故郷のような場所がどこにでもあるような安心感を持つことができるのです。

理由4 語学力を鍛えることができる

日本における多拠点生活においては、交流を持つのは日本人だけではありません。前述の通り外国人観光客の増加によって、宿泊施設の外国人率は高くなっています。
ゲストハウスでは特に「どこから来たの?」といった何気ない会話から、気がつけば何時間も話し込んでいるということも少なくありません。外国人旅行客の出身地はバラバラですが、共通語は英語です。ゲストハウスにいると、まるで外国にいるかのような感覚になることもあります。
毎日のように英語を聞いてコミュニケーションを取るので、次第に英語力がついてきます。

便利なツールを使って、少しずつ始める多拠点生活

便利なツールを使って、少しずつ始める多拠点生活

アドレスホッパーのような生活ができるようになっている背景には、ITツールの進化が大きく関係しているといえます。
例えば宿泊施設検索サービスを使えば、ものの数分で自分の好みやこだわりに合ったホテルやゲストハウス、民泊などを探すことができます。
最近では月額定額で全国の宿泊施設が泊まり放題になるサービスも出てきました。他にも今必要のない荷物を預かってくれる保管サービスなどを使えば、手荷物は最小限にしながら必要なときに全国どこにいても届けてもらうことが可能となります。
クラウドソーシングのプラットフォームを使えば、記事のライティングや翻訳、ロゴやウェブサイトのデザインなど、場所を選ばない仕事と出会うことも叶います。

地方での生活に憧れや興味がある方は、いきなり地方へ移住したり、地方にも家を建てて二拠点居住をしたりするのではなく、まずは週末や一定期間だけをアドレスホッパーとして生活してみてはいかがでしょうか?
都会の喧騒から離れることはリフレッシュにもなります。また、色々な土地での生活を試す中で、自分に合った場所を見つけることができるかもしれません。

ライタープロフィール
吉川 佳佑
吉川 佳佑
高校教師・作家。
1993年、石川県金沢市生まれ。金沢大学 学校教育学類を卒業後、金沢市内の私立高校に英語教師として赴任。現在も教師としての仕事を続けながら、東京のIT企業でオンライン就活サービスの立ちあげにも関わる。
2018年から特定の拠点を持たない、アドレスホッパーの生活を始め、2019年にはその新しいライフスタイルやワークスタイルを提唱する『高校教師、住まいを捨てる。』(河出書房新書)を出版。

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