「テレワークで集中できない!」を解決する方法とは?

「テレワークで集中できない!」を解決する方法とは?

「テレワークで集中できない!」を解決する方法とは?

くつろぐ場だった自宅が急に「仕事場」へ変わり、どのように集中すれば良いか、悩んでいる方も多いのでは?そんな在宅勤務でも集中するコツについて、フロー状態(時間を忘れるほど目の前のことに集中している状態)の研究を行う、世羅侑未さんに聞きました。

集中には「通勤と同様のルーティン」「適度なストレス」が大事

集中には「通勤と同様のルーティン」「適度なストレス」が大事

そもそもテレワークで集中できない原因について、世羅さんは次の二つをあげます。

・通勤という仕事始めのルーティンがない
・ストレスとリラックスのバランスが崩れている

「トップアスリートのなかには、試合に臨む前に自分なりのルーティンを持っている人も多いといわれています。決まった動作を行うことで、試合モードへの切り替えに成功しているのです。

それと同じように、ビジネスパーソンにとって『オフィスへの通勤』は、仕事を始める前の一種のルーティンの役割を果たしていました。でも、在宅勤務ではプライベートから仕事モードへと切り替わる機会が持てない。心の準備が整わないまま活動に入っても、質の高い集中を得ることはできないので、苦労している人が多いのではないかと思います」

また、自宅は本来、リラックスするための空間。私たちの脳がそう認識しています。適度なストレスがないと、ついついダラダラしてしまい、集中力の低下につながると話します。

「最高の集中を得るためには、全身から余計な力が抜けているようなリラックスしている状態と、適度なストレスのバランスが大事なんです。これは、最新のフロー研究でも分かっています。フロー状態に入るためにも、大事な条件です。ちなみに“ストレス”といっても、必ずしも「ものすごい危機感」とか、「嫌なプレッシャー」などネガティブなものである必要はありません。ストレスとは、目の前の業務に細心の注意を注ぐ理由になるものであれば、どんなことでも良いです」

例えば、オフィスでは周囲の視線があるため、目の前のことに集中している姿勢をとる必要が出てきます。例え最初は「そうしているフリ」であっても、注意を目の前の作業に注ぐきっかけになるそうです。

「在宅で仕事をしている際には、周囲からちょっとしたいいプレッシャーを得る機会も、自然にはやってきませんよね。リラックスはしているけど注意が散漫だなと感じたら、ストレス作りを自分でしないといけません。逆に、在宅でもストレスが高すぎて集中ができなくなってしまったときには、リラックスの要素を取り入れます。両方のバランスを調整していくことで、集中の質をコントロールできるようになってくるのです」

テレワークで集中できる5つの具体策

集中できない原因を踏まえ、世羅さんは5つの解決策を提案してくれました。

1.仕事始めのルーティンを作る

1.仕事始めのルーティンを作る

元野球選手のイチローやラグビー元日本代表の五郎丸さんなど、スポーツ選手のように、その意図を思い返すためのシンプルでユニークな動作(ルーティン)を作るのも効果的な方法の一つだといいます。

自分の意図が既に言語化されてよく分かっている人は、それを自分に「リマインド」するためのオリジナルの動作を作り、仕事を始める前にやる。それも毎日の仕事の前に「繰り返し」やることで、ようやく脳内での変化が現れ、効果が出てくるそうです。

「フロー理論でも最初に大切なのは、今日取り掛かる業務は一体何のために行うのか、『意図』を明確にしてから仕事に取りかかることです。『この企画資料はクライアントの〇〇さんに感動をもたらしたくてやる』『このエクセル表の完成は昨日の自分を超えるためにやる』とか。世界平和や日本社会のイノベーションといった崇高なものかどうかではなく、その意図を実現したい気持ちがリアルに感じられるほど、集中の質は洗練されます」

その実感を具体的に湧き起こすため、意図を思い出せるようなアイテムを活用してルーティンにするのも手っ取り早い方法だといいます。

「『そうそう、このためにやってるんだこの仕事』と思い起こせるようなもの。クライアントの〇〇さんに最初にもらった依頼メールでもいいかもしれません。あるいは、昨日の自分を超えた先にめざしている憧れの人の記事や本の一部に触れるだけでも良いです。この仕事をやる意味は何だと毎回仕事前に禅問答するよりも、さくっと集中の導入を作ることができます」

2.「集中フォーム」を思い出させる

2.「集中フォーム」を思い出させる

意図を持つことでちょうどいいストレスを自分にかけ、仕事を始めても、だんだんと注意が散漫になってくることがあります。そんな時にもまた、自分に合ったちょっとしたアイテムを使うことで、集中状態を立て直すことができるそうです。

「そのアイテムとは、『普段自分が無理なく自然と集中しているもの』。スマホのゲーム、お料理、筋トレ、YouTubeでお笑いを見る、気になるニュースを見る、ファッション雑誌を見るなど人によって違います。仕事と全く関係ないことで良いです。こうした、自分が思わず集中・熱中してしまう活動を、ほんの3〜5分と短く、仕事で注意散漫になった時に挟むと効果的です。

これは、脳の構造を使ったちょっとした裏ワザ。いわゆる『集中フォーム』を一度別の作業で作っておく。すると、内容を仕事に戻してもその集中状態を継続して活用できるのです。ただ、アイテムを挟むときはそれ自体にどんどん熱中しないよう、集中の感触を掴み始めるまでのほんの短い時間、仕事の合間に挟むと効果があります」

3.過剰なストレスを感じるなら「リラックス」アイテムを

3.過剰なストレスを感じるなら「リラックス」アイテムを

集中の条件は、ストレスとリラックスのバランスとのことでした。では、リラックスはどのように作れば良いのでしょう。

例えばこんなときにリラックスしていませんか。

・ストレッチやヨガをする
・仮眠を取る
・お笑い動画を観る
・お風呂に入る
・ボーッとする

「リラックスって、意識的にしようとすると逆に気張ってしまうことがありますよね。 これも、やはり自分のリラックスを自然に作ってくれるアイテムを使います。例えば私は、温かいココアを飲んでいる時に自分が最高のリラックスをしているのが分かった。なので『今ストレスが高いな』と思った時には、意識的にココアを飲むようにしています。ルーティーンと同じく、必要時に繰り返していくうちに、ココアを飲む=リラックス状態というシナプスの繋がりが脳に記録されて、最終的にはココアの写真を見るだけでもリラックスできるようになってくるのです」

自分なりのリラックス方法を見つけるためにも、まずは自分がどんなときにくつろげているのか、自覚することから始めたほうが良いそうです。

「私はストレスがあまりにも多い仕事を抱えているときは、あえて自宅のデスクではなく、ソファーでだらっと仕事をすることもあります。ソファーも自分のリラックススイッチを押してくれるアイテムです。こうして自覚的にアイテムに頼ることで、ストレスとリラックスのバランスがちょうど良くなって、集中力が戻ってくるんです」

4.1つの作業の流れを予め具体的にイメージする

4.1つの作業の流れを予め具体的にイメージする

これから2時間の資料作成の時間がある。例えばそんな時、「よし資料作るぞ!」といきなり始める前に、その2時間の流れを予め具体的にイメージしてから始めます。作業の途中に、「次は何やろう」とプロセスに迷うことで、集中の途切れを防ぐことができるといいます。

「例えば紙に、その2時間の流れを細かく書き出す。書き出すことで、頭にもイメージが描かれます。

私の場合は、自分のスケジュールを入れたGoogleカレンダーを頻繁に眺めています。寝る前や朝起きたとき、移動時間などに、スケジュールを何度も何度も見ます。スケジュールを見ながら、各作業単位で、細かに仕事の流れをシミュレーションします。

何度も各作業の流れについてシミュレーションを重ねることで、複雑な作業でも、それらを包括したたった一つの鮮明なイメージデータとして頭に描き込まれます。つまり、その1時間や2時間の作業の流れが一連の映像として浮かび上がってくる。あとはその映像にガイドしてもらって仕事を始めれば、最後まで集中が途切れずに進められるようになります」

5.視界に入るものを絞る

5.視界に入るものを絞る

「ここまでの話で気づいていただけたかもしれませんが、集中する工夫というのは、いかに自分の注意の状態に気づいて、それをあらゆる環境やアイテム、脳の仕組みを使ってコントロールしていくかということなんです。

最後も、その一つの方法ですが、自分の注意を引くような余計な情報のない場所を用意することです。自宅であればキッチンやテレビなど、ほかの行動を想起させるものが目に入らない作業スペースを作っておく。PCであれば、気が散るタブを多く開きすぎず、今注意を注ぐべき画面だけになるべく絞る。これも、注意の発散を防ぐためにできることで、目の前のことだけに集中しやすくなります」

作業スペースの確保が難しい場合、机の上に置いてあるものを片付け、視界に入るものを絞るだけでも効果があるそうです。

集中しやすい状況を作り出すために心を整えよう

集中しやすい状況を作り出すために心を整えよう

外部ではなく自分に視点が向く機会も多い在宅勤務では、思考が後ろ向きになることもあるでしょう。

そんなときは外を散歩したりなど、外部に自然と目が向くよう、働きかけることが大事だそうです。

「少し外を散歩するだけでも、歩いている人の服装や道路を走る車の色、お店の看板など、自分1人では辿り着くことのなかった様々な別の情報が入ってくる。こんな風に、自分が今考えていることとは全く異なる情報や思考に導いてくれる機会を、自ら作り出すのがおすすめ。思考と感情は結びついているので、フレッシュな思考へと移行すれば心の状態も切り替わります」

さらに在宅勤務中は孤独になりやすいからこそ、意識して友人や同僚とコミュニケーションを取ることも大切だと話します。

「私もテレワークが増えて、自分から友人を誘って、電話したりチャットをしたりするようになりました。これまでは誰かが話しかけてくれるのを待っていることが多かったですが、今は、ポジティブな気持ちをくれる友人や家族を積極的に頼ってみています。

心の整え方や集中できる方法は、自分に合ったやり方があると思っています。どちらにも共通するのは、気合いで自分だけの力でどうにかしようとするのではなく、環境やアイテム、脳の仕組みをうまく活用した建設的な工夫をすること。今回お伝えした方法をヒントに、何が一体自分の心を前向きにしてくれるのか、また集中を突き動かすのか、オリジナルなやり方をぜひ見つけてみていただきたいです」

参考:
・『3倍のパフォーマンスを実現するフロー状態 魔法の集中術』(総合法令出版)世羅 侑未著

この人に聞きました
世羅 侑未さん
世羅 侑未さん
プロノイア・グループ株式会社Chief Culture Officer兼コンサルタント。企業の未来創造に向け、組織戦略・新規事業・アライアンス・企業文化の構築・変革に携わるコンサルティングに従事。慶應大学院 SDM研究科 研究員として個人の創造力、直観力やパフォーマンスが最大化される「フロー状態」の研究を進める。著書に『3倍のパフォーマンスを実現するフロー状態 魔法の集中術』。共著に『The SAGE Handbook of Action Research』、和訳協力に『行動探求』がある。
ライタープロフィール
吉田 祐基
吉田 祐基
株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。AFP認定者(2級FP技能士)。タウン誌、編集デザインファーム、大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。これまでコンテンツマーケティングや、ミレニアム世代向けビジネスメディア、不動産広告の取材&ライティングなどを手がける。

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