現代人は仕事や家事に忙しく、野菜を摂れていない
厚生労働省が2019年11月に行った「国民健康・栄養調査」を見ると、成人の1日の野菜摂取量平均は280.5グラム。これは厚生労働省が目安として掲げる、成人が1日あたりに目標とする野菜摂取量350グラムには満たない数字です。また、このような野菜不足の要因として、仕事や家事に忙しく、食生活に気を配る時間がないことも前述の調査で明らかになっています。
野菜不足が続くと、高血圧や糖尿病といった生活習慣病、肌荒れ、便秘など様々な不調を引き起こすといわれています。では、どうすれば野菜不足を解消できるのでしょうか。
週1回でも野菜だけの日を設ける、「フレキシタリアン」というスタイル

今回お話をお伺いした庄司さんは、ベジタリアンのなかでも、卵や牛乳、チーズといった動物性食品を一切口にせず、植物性食品のみを食べる「ヴィーガン」です。庄司さんに野菜料理の楽しみ方を聞くと、偏った食生活を解消できるヒントが見えてきました。
「始めは、日頃から野菜を摂る意識を持つことから始めましょう。例えば、キャベツとニラとニンニクだけの餃子を食べてみると、『肉がなくてもおいしいんだ!』と気付くことがあります。また、肉が入っていて当然と思っている料理は、肉を大豆ミートなどの植物性食品に置き換えることでおいしく仕上がります。週末などに新しい料理を楽しむという目的で、ベジタリアン料理を取り入れてみるのもすごく良いと思うんですよね」
このようにライフスタイルに合わせて柔軟にベジタリアン料理を取り入れる人のことを『フレキシタリアン』というそう。庄司さんは、ベジタリアンになろうと意気込むのではなく、あくまでも「野菜中心の食事を楽しむ」ことが大切だといいます。

「『野菜を食べなきゃ』と義務に感じてしまうと、どうしてもストレスになってしまいます。「夜はお肉を食べたいな」と感じたら朝食と昼食で野菜を摂取しておくなど、1日の食生活を柔軟に設計できるのが、フレキシタリアンの良いところです。『野菜のおいしさを発見しよう』、『平日は難しくても、週末だけ野菜中心の食生活を実践してみよう』といった気楽な気持ちで始めるのがおすすめです。まずは深く考えず、興味を持ったときに少しずつ野菜を採り入れていきましょう」
しかし、そもそも野菜を食べる習慣がない人は、「まずはどの野菜をどういった調理で摂ればいいの?」と悩んでしまうかもしれません。そういった方に向けて庄司さんがおすすめするのは、「野菜のストック術」です。
ストックした野菜を付け合わせるだけで食事は鮮やかに
「野菜のストック術」とは、炒め物やスープなど色々な料理にアレンジできるように、野菜をあらかじめ下準備して保存しておくテクニック。庄司さんはいつも冷蔵庫に、何かしらの野菜を複数ストックしておくそうです。

「例えば、カブなら好みの大きさに切って醤油を垂らしたものを保存しておくだけ。食べたいときに、そのまま浅漬けみたいに食べられるし、オリーブオイルとニンニクで炒めてもおいしい。カブの葉っぱも味噌汁に入れたり炒めたりと、色々な使い方ができます」
ほかにも、もやしを塩ゆでしてストックしておけば、「万能ネギ・塩昆布・すりごま・ごま油」と和えるだけでナムルが、また、「梅干し・酒・しょうゆ・水」と一緒に煮立たせるとすまし汁が作れます。野菜のストックを作っておくだけで、簡単な調理で料理のレパートリーが広がり、いつでも野菜不足を補うことができるのです。
野菜不足は心掛けひとつで解消できる
「野菜のストックが難しい場合、例えば、コンビニのおにぎりで済ませるところを、サラダや漬物も一緒に買うようにするなど、野菜“だけ”の食事が難しければ、何か一品“加える”だけでも良いんです」
無理のない範囲で野菜を摂ることを意識するだけでも、食生活のかたちは徐々に変わっていくといいます。
最後にもうひとつ。野菜不足の解消には、「野菜の持っているおいしさに気付く」ことが大切だと、庄司さんはいいます。

「ヴィーガン料理を監修する際に試食をしていただくことがあるのですが、野菜をあまり食べない人にも『おいしかった!』と喜んでもらえることがあります。『これならもっと食べたいです』とも。そういう風に野菜のおいしさに気付けば、きっと、『野菜を食べたいな』と自然に思うようになるでしょう。単純ですが、食事をおいしくいただくことって、すごく大切なんだなって思います」
まずは、ストックした野菜を好きな料理に加えて、自分なりにおいしくアレンジしてみることから始めると良いかもしれませんね。
参考:
『作る人のためのベジタリアン・パーフェクト・ブック』(講談社)庄司 いずみ著
『保存版 やさいの常備菜 かんたん仕込みで食べ飽きない』(世界文化社)庄司 いずみ著
この人に聞いてみた

野菜料理家。日本ベジタリアン学会会員。かんぶつマエストロ。
ヴィーガン料理を紹介する著書は70冊以上。日本のヴィーガンブームを牽引してきた人気料理家。 主宰する『庄司いずみ ベジタブル・クッキング・スタジオ』は、日本初のヴィーガン料理専門スタジオとして知られ、国内外のトップシェフらとのコラボレッスンなどで注目を集める。 ヴィーガン料理の浸透を願い、商品開発やレシピ監修、オンラインレッスンにも力を注ぐ。
ライタープロフィール

編集者・ライター。ペロンパワークス・プロダクション所属。漫画・アニメ・映画などポップからサブカルチャーまで幅広いエンタメ分野の記事執筆・コンテンツ制作に携わる。
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