ステイホームで高まる「冷凍食品」需要。プロが教える上手な付き合い方

ステイホームで高まる「冷凍食品」需要。プロが教える上手な付き合い方

ステイホームで高まる「冷凍食品」需要。プロが教える上手な付き合い方

すぐに使えて美味しく食べられる冷凍食品。近年、高級化の傾向にあることをご存じでしたか? 肉料理などのメインはもちろん、海外の煮込み料理やパンまでもが冷凍食品になっています。ここではニーズの高まる高級冷凍食品についてご紹介します。

ステイホームで冷凍食品のニーズが高まる

ステイホームで冷凍食品のニーズが高まる

2020年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で私たちの日々の生活は一変、食生活にも大きな変化が起こりました。食事は朝昼晩3食を家でという日が増え、これに連動して家庭用冷凍食品の販売数が急増。「臨時休校要請」「外出自粛要請」「緊急事態宣言」が出されたときには、スーパーの売り場から商品がほとんどなくなってしまうという事態にもなりました。

筆者は冷凍食品ジャーナリストである仕事柄、皆さまからお話を聞く機会も多いのですが、「冷凍食品、助かってます」「あって良かった」「食べてみたら美味しくてびっくり」といった声が多数。外食できないときや食事づくりが大変なとき、冷凍食品は頼りになる食品であるとあらためて実感しています。

私たちの食生活を支えてくれている冷凍食品ですが、実は国内で初めて冷凍食品が生産されてから2020年で100周年。北海道の南部・森町で冷凍魚の生産が始まり、1954年には日本初の調理冷凍食品とされる「茶碗蒸し」が販売されました。その後、学校給食での利用やファストフード店の展開にも貢献し、食卓にも並ぶようになるなど今では欠かせない存在になっています。

そして最近では10代から高齢者まで需要増の間口が広がり、お母さんが家族のために買うものだった冷凍食品は、誰もが食べたいと思うものへと変化しつつあります。そのようなニーズの変化を背景に、冷凍食品業界ではネット販売を中心に高価格帯の商品が注目を浴びています。この記事ではそんな高価格帯の冷凍食品を紹介していきます。

今注目の高級冷凍食品

クロワッサン

クロワッサン

最初に紹介するのは「クロワッサン」の冷凍食品。フランス発祥の冷凍食品専門店から販売されており、オーブンで温めれば自宅でも焼き立てを楽しめると人気商品になりました。ところで、冷凍食品といえばお弁当の具材を思い浮かべる方も多いかもしれませんが実はそれは日本独特のもの。欧米の冷凍食品は食卓の調理をサポートするものとして発展をしています。

この冷凍食品専門店も前菜からスープ、メイン、パン、デザートなどバラエティに富んだ品揃えを誇ります。野菜や魚介類といった素材は良い産地を選んで調達、ピザやパスタなどは本場イタリアの工場で作るといったこだわりぶり。本格的なフランス料理も、冷凍食品の利用で気軽にお家で楽しむことができます。なお、店舗は首都圏のみですが、ネット販売なら全国対応をしています。

韓国風海苔巻き

韓国風海苔巻き

また国内では、自社開発の生活雑貨などを販売するメーカー専門店が2018年秋に冷凍食品業界に参入して注目を集めました。とくに、韓国料理のキンパ(海苔巻き)は普通のスーパーではあまり見かけない冷凍食品として話題に。さらにカフェメニューのキッシュや女性にうける雑穀系の個包装おにぎりなども販売されています。

さらに、世界各国の煮込み料理も冷凍食品に。例えばフランスの郷土料理である豆のシチュー「カスレ」や豚肉などを生薬で煮込んだマレーシアのスープ料理「バクテー」、韓国の「サムゲタン」などが商品化されています。価格帯は少し高めですが、話題商品は品薄になるほどの人気です。

三つ星シェフ監修のローストビーフ

三つ星シェフ監修のローストビーフ

三つ星レストランでも活躍をしたプロのフレンチシェフが監修する、日本のご当地食材を使ったお取り寄せの冷凍食品も話題です。こちらのメーカーのフラッグシップ商品は希少価値の高い和牛を使ったローストビーフ。冷蔵庫で14時間とゆっくり解凍することでとろけるような上質な脂の美味しさを楽しめるとのことで、メディアでも度々取り上げられました。

ほかにも骨付きすね肉のコンフィやプリンといったスイーツまで冷凍食品になっています。

定番メニューも高級化

創業50周年を今年迎えた冷凍食品の訪問販売企業も高級化の波に乗っています。『これ以上ない至高の冷凍食品を』というコンセプトのもとに、鰻蒲焼やステーキといったメニューはもちろんのこと、定番の麺類やハンバーグからスンドゥブ、チャプチェといった韓国料理まで高品質、高級化したラインナップを2020年春から発売しました。

冷凍食品最新情報

ところで、冷凍食品の高級化が進む一方で、定番メニューにも需要の変化が起きているようです。一般社団法人日本冷凍食品協会の2019年の統計によると、国内生産量の分類でこれまでトップであった「揚げ物」を「麺類」が抜き、品目別ランキングでのNo.1は「コロッケ」から「うどん」に交代しました。「うどんは冷凍が美味しい」とおっしゃる方は増える一方です。もはや「冷凍めんは国民食」と言って良いかもしれません。特に具材つきの『1食完結型』麺類は、調理も簡単に進化して、近年は容器包装がそのままお皿になって食べられる商品も大人気です。

出典:品目別国内生産量・金額 一般社団法人日本冷凍食品協会(外部サイト)

また、最近では単身の男性とシニア層が冷凍食品の消費リーダーだと分析している企業もあります。過去5年を振り返ると、男性需要を見込んだガッツリ系チャーハン、夕食の食卓にどっさり食べられる鶏から揚げ、誰でも簡単に上手に焼けるギョーザ、夕食のメインにできるような柔らかいヒレカツ、具材がたっぷりのパスタなど、食卓で食べる商品のヒット商品が生まれ、売上を伸ばしています。

正しい買い方、保存方法で冷凍食品を美味しく食べましょう

正しい買い方、保存方法で冷凍食品を美味しく食べましょう

皆さまとお話するなかで、冷凍食品の買い方や保存のポイントについてあまり知られていないことに驚くことが多々あります。せっかく高級な冷凍食品を購入しても、食べるまでに味が劣化してしまってはもったいないこと。そこで、冷凍食品をより美味しく食べるための重要なポイントについて、最後に説明したいと思います。

1.スーパーでは買い物の最後に買う

店内をうろうろしているうちに解凍してしまいます。温度変化は大敵。アイスクリームと同じように考えてください。

2.保冷バッグを使い、保冷剤は一番上に

スーパーからご家庭まで、-18度以下のコールドチェーンを切らないことが大事なポイントです。冷気は上から下に流れますので保冷剤は上に置くようにしましょう。

3.溶けないよう、帰宅後はすぐに冷凍庫保管

一息つきたい気持ちもわかりますが、何より先に行ってください。一度解凍されたものを再冷凍するとせっかくの品質が落ちてしまいます。

4.冷凍庫内はきっちりと詰めた方が良い管理状態に

空間が大きいと開け閉めのたびに外気が入りやすく食品が温度変化にさらされてしまいます。

5.小分け使用の場合は残りをしっかりしまってから調理

置きっぱなしにすると解凍されます。しっかり空気を抜いて、密閉した残りを調理の前に冷凍庫に保管するようにしましょう。

6.冷凍うどんは個包装をフリーザーバッグに入れる

表面が水分80パーセントという麺類はデリケートで乾燥しやすい冷凍食品です。白く硬くなってしまったらもとに戻りませんので、フリーザーバッグに入れて空気をよく抜いて密閉し、保管するようにしましょう。

7.電子レンジ調理は500Wの表示に従った方が無難

電子レンジでは食品に含まれる油、水からマイクロ波が作用して加熱されます。高いワット数を使用して早く仕上げるより、500ワットの表示で時間を長めに加熱した方が熱伝導で加熱される作用も加わり、ムラなく仕上がりやすいといえます。

8.賞味期限表示にかかわらず買ってから3ヵ月以内に消費

家庭用冷凍庫は保管期限3ヵ月以内という規格になっています。期限表示はマイナス18度以下を常時保っている場合の期限です。なるべく早めの消費を心がけましょう。

冷凍食品はマイナス18度以下で保管・流通する食品です。その低温下では細菌は繁殖できないので腐らないから保存料が不要という素晴らしいメリットもあります。

9.冷凍野菜の加熱時間は短く

冷凍野菜は8割ほど下茹でしてあります(「自然解凍可能」と表示があるものは除く)。のこりの2割ほどを加熱する感覚で使用すると、シャキッとした味わいになります。

10.むきえびやシーフードミックスなどは氷の膜を取って水気をふいてから調理

むきえびなどの冷凍食品には表面を乾燥や酸化から守るため、グレーズと呼ばれる氷の膜がわざとついています。水を直接かけて氷を取り、キッチンペーパーなどで良く水気を取ってから加熱調理してください。プリップリのえびになります。

チェックポイントを並べてみると、冷凍食品って便利なのに守るべき事柄はとても多くてめんどうくさいですね。でも一度覚えてしまえば習慣になるのでぜひ実践してみてください。

冷凍食品の活用で手早く素敵な食卓に

近年、ニーズの変化や技術革新もあり、食べた人が「美味しい」と納得する高品質な冷凍食品が増えてきました。ぜひぜひ美味しい冷凍食品を取り入れ、手抜きではなく『手間抜き』の料理を楽しんでください。節約できた時間も有効に使ってくださいね。「冷食OK!」です。

ライタープロフィール
山本 純子
山本 純子
「冷凍食品新聞」記者、編集長、主幹を経て、2015年10月に独立、冷凍食品の情報を消費者に分かりやすく伝えるBtoCのWeb媒体「エフエフプレス(外部サイト)」を開設する。冷凍食品ジャーナリスト歴39年。冷凍食品エフエフプレス取締役編集長。

山本 純子の記事一覧はこちら

RECOMMEND
オススメ情報

RANKING
ランキング