かつてブームになった「ドライブインシアター」が再燃!今後は「ドライブイン〇〇」が盛りあがるかも?

かつてブームになった「ドライブインシアター」が再燃!今後は「ドライブイン〇〇」が盛りあがるかも?

かつてブームになった「ドライブインシアター」が再燃!今後は「ドライブイン〇〇」が盛りあがるかも?

1950年代にアメリカで流行し、日本でも20ヵ所以上あったドライブインシアター。テレビやシネコンの普及により数を減らしていましたが、最近再び注目されていることはご存じでしょうか? ドライブインシアターの歴史と再ブームの理由を紐解きます。

車に乗ったまま楽しむ映画館

車に乗ったまま楽しむ映画館

ドライブインシアターとは車に乗ったまま映画鑑賞ができる上映施設です。

広場や駐車場などに用意された巨大なスクリーンから映像が流れ、音声はそれぞれのカーステレオで受信。訪れた観客は車内から思い思いに映画を楽しむことができます。

そのほかにも、ドライブインシアターの魅力には以下のようなことがあげられます。

周囲に迷惑がかかりにくい

一般的な屋内映画館は隣の人との間隔が狭いですが、ドライブインシアターはプライベートな車のなかから映画を見ます。周囲に迷惑がかかりにくいので上映中に友人同士で語り合ったり、小さな子どもと一緒に楽しんだりできるのもドライブインシアターの魅力です。

非日常感が楽しめる

単純にいつもとまったく視聴環境が異なる屋外で映画を見るという、非日常的な体験が味わえるのも大きな特徴の一つです。

飲食物の持ち込みも自由

映画館では通常、館内の売店で購入した飲食物のみ持ち込み可能としている場合が多いですが、ドライブインシアターは基本的に持ち込み自由。好きなものを食べながら映画を楽しむことができます。

ドライブインシアターはいつの時代も大衆娯楽として、人々の社会生活と密接な関係がありました。ざっとドライブインシアターの歴史を振り返りながらその面白さに触れつつ、なぜ今再ブームとなっているのか紹介していきましょう。

「家族で楽しめる」が最初のブームのきっかけ

「家族で楽しめる」が最初のブームのきっかけ

車に乗ったまま映画を見る形式は1914年、アメリカ・ニューメキシコ州のラスクルーセスで既に登場していたとされています。当時、屋内劇場の暑さ対策として屋外上映施設『エアドーム』が建築されるようになりました。その一つには40台以上の駐車スペースが設けられていたようです。

その後、1933年にニュージャージー州カムデンのリチャード・ミルトン・ホリングスヘッド・ジュニアがドライブインシアターの特許を取得します。彼の考案した劇場では前の車に視界が遮られないよう、停車位置の地面が僅かに上り坂になるような工夫が取られていました。ホリングスヘッドのドライブインシアターは500台の車が収容でき、当初の料金は車1台あたり25セントだったとされています。しかし、残念ながら彼の劇場は3年後に閉鎖、また彼の特許も1950年に無効とされてしまいました。

ホリングスヘッドの劇場が誕生してから20数年後、1950年代頃にドライブインシアターは大流行します。第二次世界大戦後の当時、次々と帰還した人々が家族を持ち始め、アメリカではベビーブームが巻き起こりました。そのことを背景に家族で楽しめるエンターテインメントの需要が増えたのが、ドライブインシアターが広まった要因の一つと考えられています。

当時の娯楽といえばラジオやテレビなどでしたが、テレビは現在価値換算で2,500ドルと大変高価。普及率も9パーセント程度と決して高くはなく、一般家庭にとって劇場へ足を運ぶのが最も手軽な映画の鑑賞方法でした。

そのような時代の後押しもあり、ピークとされる1955年には4,300以上のドライブインシアターがアメリカ中で開業されました。

一方、日本ではじめてドライブインシアターが開業されたのは1962年とされています。1981年には千葉県船橋市のららぽーとTOKYO-BAYで開業し、日本での最盛期とされる1990年代には全国に20ヵ所以上のドライブインシアターがありました。

テレビやシネコンの普及で衰退していく

テレビやシネコンの普及で衰退していく

しかし、テレビを持つ家庭が増えてきたことにより、ドライブインシアターの人気は徐々に衰えていきます。テレビやビデオ、衛星放送の普及などにより自宅でも気軽に映画が見られるようになったうえ、シネマコンプレックスなどの複合施設の増加で、家族の娯楽としてのドライブインシアターの役割はほかの施設へ取って代わられていきます。

もともと夜間にしか営業ができず、悪天候での上映も難しかったためにドライブインシアターの経営は不安定でした。さらにはフィルムからデジタルへの上映方法の移行や地価の高騰といった問題も加わり、アメリカのドライブインシアターは次々に閉鎖。2000年までに残ったのはピーク時の10分の1、わずか400ほどとなってしまいます。

日本のドライブインシアターも同様の流れをたどっていきます。2007年までに国内のドライブインシアターは神奈川県大磯町の1ヵ所を残すのみ。そのドライブインシアターも2010年には閉鎖してしまい、ドライブインシアターは一時期、完全に日本から姿を消しました。

その後、2018年に熊本の阿蘇にドライブインシアターが常設されたり、各地で一夜限りの復活イベントが行われたりしましたが、その人気は1990年代と比べるとやはり下火であったといえるでしょう。

今再注目されるドライブインシアター

しかし、2020年現在、ドライブインシアターは再び脚光を浴びています。

緊急事態宣言や外出自粛の結果、多くの施設が封鎖、イベントが中止となりました。未だに大人数で集まるといったことは避けるべきとされています。そこで、ソーシャルディスタンスを保ちながら映画を楽しめるドライブインシアターが、ウィズコロナ時代に適したエンターテインメントの形として再注目されているのです。

2020年5月、宮崎県延岡市の「J湖月延岡店」の駐車場でドライブインシアターイベントが行われました。また、「Do it Theater」や「OUTDOOR THEATER JAPAN」といった団体が全国でドライブインシアターを企画するなど、各地で次々とドライブインシアターが開催されています。

さらに、ドライブインシアターの仕組みを映画だけではなく、体験型のイベントに利用しようとする動きもあります。

例えばドイツではナイトクラブが車に乗ったままパーティーを行う、世界初のドライブインレイヴが開催。参加者は車のパッシングやクラクションを利用することで会場との一体感を味わうことができます。また、日本のイベントでも映画の上映前にミュージックパーティーが実施されました。こちらでもヘッドライトを用いたコールアンドレスポンスを行います。

新しい生活様式の広まりとともに、無観客ライブやオンライン飲み会など、接触を避けながら楽しむ方法が浸透していきました。一度は姿を消したドライブインシアターも、より特別な体験を提供してくれる場所としてまた定着していくのかもしれません。


参考:
・『Screen With A Voice - A History Of Moving Pictures In Las Cruces, New Mexico』(Mesilla Valley History Series Book 3) David G. Thomas著
・『Drive-Ins of Route 66: Yesterday & Today (English Edition)』Michael Kilgore著
『東宝『東宝五十年史』』 渋沢社史データベース(外部サイト)
『Amid coronavirus outbreak, drive-in theaters unexpectedly find their moment』 Los Angels Times(外部サイト)
『STATISTICS』UDITOA(外部サイト)
『Drive-in theater』Google Patents(外部サイト)
『82 years ago today, first U.S. drive-in theater opened in N.J.』 NJ.com(外部サイト)
『ドイツのナイトクラブが「ドライブイン レイヴ」を主催』 TimeOut(外部サイト)
Do it Theater(外部サイト)

ライタープロフィール
笠木 渉太
笠木 渉太
主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。立教大学卒業後、SE系会社を経て2019年に入社。主にクレジットカードやテック関連のWEBコンテンツ制作や企画立案、紙媒体の編集業務に携わる。

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