第一回「お一人さまのサバイブ術」 お金・健康・住まい…今から準備できること

第一回「お一人さまのサバイブ術」 お金・健康・住まい…今から準備できること

第一回「お一人さまのサバイブ術」 お金・健康・住まい…今から準備できること

「お一人さま」が増えている日本。2035~2050年には、単身世帯が50パーセントを超える可能性もあるとされます。現在は家族がいる人も、いずれ訪れる別れへの心構えは必要。時間と体力に余裕がある間に「お一人さま」への準備を始めましょう。

意外と身近な「お一人さま」人生

国立社会保障・人口問題研究所の推計(外部サイト)によれば、2040年までに、単独世帯は2,023万世帯、全世帯のうち39.3%を占めるまでに増加すると予想されています。また、2015~2040年の間に、65歳以上の男性の独居率は14.0パーセントから20.8パーセント、女性は21.8パーセントから24.5パーセントまで上昇すると考えられています。

単身世帯、つまり一人暮らしの世帯には「未婚の人」のほかに、「配偶者と離死別した人」も含まれます。離婚をきっかけに、中高年から一人暮らしを始めるケースもあるでしょう。また、一般的に女性の平均余命は男性より長いため、子どもを持たない世帯が増加している現代では、高齢の女性が一人暮らしとなるケースも多いと考えられます。

現時点で一人暮らしをしている人だけでなく、パートナーやお子さん、ご両親と暮らしている人も、将来的にはご家族との別れがやってくることを想定し、そのための準備を始めましょう。

この連載「お一人様のサバイブ術」では、心配事を減らして人生をより楽しむために必要な知識を全4回にわたって紹介します。

一人になることを想定した準備って?

一人になることを想定した準備って?

安心して充実した一人暮らしをするためには、以下の2点が大切です。

・日々の生活を不安なく過ごす準備
・万が一のことがあった場合に問題が起こらないようにする準備

お金(資産形成、相続など)

もっとも気になるのはお金のことかもしれません。「現在、どのくらいのお金を持っているか」「今後、どのくらいのお金がかかるか」を把握し、将来に向けてマネープランを立てましょう。

まずは、保有している預貯金や株式、マイホームなど、どのくらいの資産を持っているかをリストアップし、「自分を知る」ことが重要です。

また、生活費がどのくらいかかっているか、毎年どのくらいのお金を使っているかなど現在の支出の状況を確認し、平均寿命まで生きると仮定した場合、どのくらいのお金が必要かを計算します。平均寿命は、厚生労働省が発表する「簡易生命表」で確かめることができます。厚生労働省が発表している令和元年簡易生命表(外部サイト)によると、男性は81.41年、女性は87.45年です。

例えば28歳男性で、1年の生活費が250万円の場合、今後生涯でかかるお金は次のように概算できます。

250万円×(81.41-28)=1億3,352万5,000円

この金額に加えて、マイホームの購入費用やリフォーム費用、海外旅行など数年に一度のイベントのための費用、病気になった場合の支出などがかかることもあります。

そして現在持っている資産、仕事で受け取る給与・賞与、将来受け取る退職金、年金(公的年金、個人年金など)などを合わせ、生涯でかかる金額と比べることで、生きていくために必要な費用を賄えるかどうか考えてみましょう。

もし不足するようなら、支出を減らす、あるいは、より多くの収入を得るなどの工夫が必要です。

健康面(病気になったら、保険など)

健康面(病気になったら、保険など)

一人暮らしを続ける上で、健康状態を良好に保つことは重要です。とはいえ、絶対に病気をしないという保証はありません。健康管理に気をつけながら、病気になった場合の備えをしておくことも必要でしょう。病気になった場合、「仕事を休むので収入が減る」「治療のための支出が増える」というダブルパンチを受ける可能性があります。

「収入が減る」ことについて、会社を通して健康保険に加入している人は傷病手当金を受けることができます。ただし、自営業等で国民健康保険に加入している人は傷病手当金がありません。そのため、民間の就業不能保険の利用も検討したほうが良いでしょう。

医療機関に支払う金額が高額になる時は、高額療養費制度を利用できるので、病気になった人にあまりにも多額の負担がかかることはありません。しかし、親類や友人などに身の回りの世話を依頼し、お礼を支払うケースなどがあるかもしれません。そのような場合に備えて、預貯金や医療保険などで備えておくことは大切です。

認知症や脳の病気、ケガなどの要因で、判断力が低下することもあり得ます。そのような場合に備えて、親類、友人、弁護士、司法書士など信頼できる人を任意後見受任者として「任意後見契約」を結び、財産管理や介護サービス、施設入居などの契約を依頼しておくという方法があります。

判断力には問題なくても、身体の自由が利かなくなった場合に備えることができる「任意代理契約」や、亡くなった後の葬儀や遺品整理を依頼できる「死後事務委任契約」の利用も検討しましょう。

住まい選び

住まい選び

お一人さまにとって、「老後どんな家で暮らすか」を決めておくことも大切です。「賃貸か、購入か」ということだけでなく、「どの街で暮らすか」「健康の衰えを感じたときにも暮らせるか」ということも検討し、住まいを選びましょう。

まず、賃貸か購入かについては、どちらもメリットとデメリットがあるので、よく検討して選ぶようにしましょう。

賃貸のメリットは、気持ちや環境の変化に合わせて転居しやすいということです。予定になかった友人との同居、急な結婚などがあっても、生活の変化に合わせて環境を変えやすいというメリットがあります。いっぽう賃貸の注意点は、そこに住み続ける限り、家賃を支払い続けなければならないことです。

逆に住宅ローンを組んで購入した場合は、働いていて収入が多い時に完済するという方法を選べます。また、購入した物件が「自分のもの」になるという安心感もあります。しかし、購入には多額の費用がかかること、築年数がたって修繕が必要となった場合には、自分で費用負担しなければならないケースが多いことなどに注意が必要です。

賃貸か購入かという点のほかに、次の点も考慮して住まいを選びましょう。

・掃除などの維持管理、家賃・固定資産税が負担にならない広さと間取りであること
・段差が少なく、ケガのリスクが低いこと
・必要に応じて手すりを設置するなど、介護リフォームができること
・駅や病院、スーパーなどが近くにあること

老後の住まいは、賃貸か購入かという選択肢だけでなく、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や介護付き有料老人ホームなども視野に入れると良いでしょう。

人生がどうなっても安心できるように備える

長い人生のなかで、どのようなことが起こるかを完全に予測するのは、誰にとっても難しいことです。パートナーがいても、将来お一人さまになることもあれば、反対に、いまお一人さまでもパートナーができることもあります。

どんな人生を歩むことになっても、臨機応変に受け入れ、対応できるように、様々な知識と情報を得て備えておきましょう。将来の心配をできるだけ減らすことは、人生を楽しむことにもつながります。

第二回では、「住まい選び」についてさらに掘り下げますので、いっしょに学んでいきましょう。

ライタープロフィール
河野 陽炎
河野 陽炎
プロ資格マニア、ライター、起業・集客コンサルタント。
ライターとして金融・経済関係の原稿を多く手がける。次々と改正される法律や、発売される数多くの金融商品が、1人の生活者としての私たちにどのような影響を与えるのか、という点を大切に執筆活動を行う。大阪・泉州の郊外で、農家をリノベーションした住宅を自宅兼オフィスとする。趣味はディンギーヨットに乗ること、資格を取ること、日本の伝統芸能とウルトラマンに関すること。著書は「プロ資格マニアになる方法」「あなたの隣のコンサルタント」「今日から病気も友達」など。
河野 陽炎 紹介ページ(外部サイト)

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