腸活と免疫力。健康リスクを軽減させ、より豊かな毎日へ!

腸活と免疫力。健康リスクを軽減させ、より豊かな毎日へ!

腸活と免疫力。健康リスクを軽減させ、より豊かな毎日へ!

新型コロナウイルスの流行以来、健康への意識はますます高まってきています。なかでも免疫力と関係が深い腸内環境改善、いわゆる「腸活」が注目を集めています。今回は、腸活実践の重要なポイントを、腸の専門家・松生恒夫先生に教えていただきました。

コロナ禍で見直される健康への投資

依然として世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。健康への意識が変化したという人も多いのではないでしょうか。

人生を楽しく過ごすためにも健康であることは基本中の基本。病気になることで、働けなくなってしまうだけでなく、想定外の支出というリスクも潜んでいます。コロナ禍の影響も相まって、健康に対しての“投資”は、今後さらに価値が高まってくるといえるでしょう。

専門医に聞く!食物繊維の正しい選び方と摂り方

――「腸活」を実践するにあたって重要なキーワードとなってくるのは「食物繊維」と聞きますが、1日にどれくらい摂取すれば良いのでしょうか?

松生先生:食物繊維量の理想摂取量は、成人で1日20~21グラムです。とはいえ現代人は、食生活やライフスタイルの変化に伴って摂取量が減少しており、約14グラムしか摂れていない傾向にあります。あと6~7グラム増やすように意識することが望ましいですね。


――食物繊維には「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類がありますが、その違いについて詳しく教えていただけますか?

松生先生:不溶性食物繊維は、水分を吸収して膨らむという性質です。腸を刺激してぜん動運動に働きかけ、排便を促します。水溶性食物繊維は、摂取した食べ物の消化吸収を穏やかにするため、食後の血糖値上昇を抑えるのが特徴です。いずれも善玉菌を増やして、腸内環境を整える働きがあります。

不溶性食物繊維は水に溶けない食物繊維で、豆類、ほうれん草やパセリなどの野菜に多く含まれています。一方で水溶性食物繊維は水に溶け、海藻類や果物などに多く含まれます。

この2種類をバランスよく摂取することが理想的です。例えば不溶性食物繊維の摂取に偏ってしまうことで、便が固くなってしまう場合もあります。不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を多く含む食材は以下のようなものがあります。

<不溶性食物繊維を多く含む食材>

さつまいも、ブロッコリー、ごぼう、葉物野菜、豆類、きのこ、ココア、ピーナッツ、エビやカニなどの甲殻類、おからなど。

<水溶性食物繊維を多く含む食材>

もずく・昆布・ワカメやヒジキなど海藻類、モロヘイヤ・なめこ・オクラなどネバネバ食品、果物、アボカド、大麦・オーツ麦など。

――「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」を摂取するにあたって、気をつけるべきバランスはありますか?

松生先生:不溶性食物繊維・水溶性食物繊維を「2:1」で摂取するのが理想です。当院でも便秘でお困りの患者さまにその割合を推奨していますが、排便状況に改善が見られた方も多くいらっしゃいます。野菜や豆類を多く使った「地中海式食生活」をお手本にしても良いですね。


――腸内環境の改善がもたらすメリットにはどのようなものがありますか?

松生先生:腸は「第2の脳」と言われており、体内における一番大きな免疫器官でもあります。腸内の働きが悪くなることで、お腹まわりだけでなく、冷えや頭痛、肩こりというような全身への不調が現れる可能性もあるのです。

さらに腸内環境が乱れて便秘が続くと、老廃物が体内に滞ってしまうため、大腸がんなどの重篤な病気のリスクも高まることになります。また腸は、病原細菌やウイルスを除去する性質を持っており、この機能が衰えることで、結果的に免疫力の低下や肌荒れを引き起こしかねません。つまり腸内環境を整えることで、便秘を改善するだけでなく、全身に好影響をもたらすことが期待できるのです。

腸内環境の改善がもたらすメリットにはどのようなものがありますか?

――気軽に実践しやすい腸活方法があれば教えてください。

松生先生:まずは「食生活」を見直すことですね。私たちの腸内には様々な細菌が住んでいて、その数は約100兆個ともいわれています。またフローラという腸内細菌叢(そう)を構成しており、これには善玉菌、悪玉菌、日和見菌(ひよりみきん)があります。腸にとって理想的な食材の摂取を継続することで、善玉菌も増えるため、便秘の改善にも効果的なのです。


――先ほど、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」を多く含む食材を教えていただきましたが、先生が推奨する腸活に最適な料理はありますか?

松生先生:手軽なところでいえば「納豆+オリーブオイル」ですね。納豆に含まれるナットウキナーゼは、血栓を溶かして脳梗塞などを防ぐ働きがあり、大豆には便を軟らかくする水溶性食物繊維がたっぷり含まれています。オリーブオイルに含まれる不飽和脂肪酸のオレイン酸は、悪玉コレステロールを抑える性質を持ちます。納豆にオリーブオイルをかけて食べることで、様々な相乗効果が作用して、便秘を改善し、腸内環境を整えることが期待できるのです。


――まだまだ暑い日が続きますが、この時期の腸活にふさわしい食材はありますか?

松生先生:夏は発汗などによって体力が消耗しやすくなります。乗り越えるためにも、水分、水溶性食物繊維、適度な塩分、タンパク質、オリーブオイルなどバランスよく食べることが望ましいといえます。主食には、水溶性食物繊維や便秘を防ぐ働きを持つベータグルカンを多く含む「スーパー大麦」「もち麦」をプラスするといいですね。腸だけでなく体にも嬉しい作用が沢山あります。いつもの白米にスーパー大麦を加えて炊くだけなので、気軽に腸内環境が整えられるのも魅力です。スーパー大麦ごはんの作り方は下記の通りです。大変簡単なので続けられやすいと思います。

材料(2人分)

米:1合
スーパー大麦:大さじ4

作り方

1.米を研いで炊飯器に入れる。
2.炊飯器に1合の目盛まで水を入れる。
3.スーパー大麦の分の水を入れる。(スーパー大麦は研ぐ必要はありません)。
4.炊飯する。

――暑さで食欲が衰えてしまう人も多い夏ですが、果物は比較的食べやすいと思います。腸活という面でも適した果物はありますか?

松生先生:この時期に最適な果物は「キウイフルーツ」です。キウイフルーツ1個分には約2.5グラムもの食物繊維を含んでおり、これはバナナ2本分以上に相当します。内訳をみると、不溶性食物繊維が1.8グラム、水溶性食物繊維が0.7グラムと比率が2:1とバランスが理想的なのも優れている点です。キウイフルーツを半分にカットして、スプーンで一口食べてくぼみを作り、そこにオリーブオイルをかけるといった食べ方も、夏の便秘対策としてより効果的と言えるでしょう。

以前、排便が毎日ない便秘気味の中学生・高校生とそのお母さん498組にキウイフルーツを1日1個、2週間食べたもらったことがあります。その結果、約7割の方で排便が1日1回(中には2回以上の人も)になり、便通改善効果を確認することができました。食物繊維のほかにも、ビタミンCやビタミンE、カリウム、葉酸などもたくさん含まれているので、ぜひ食べていただきたいです。

食物繊維のほかにも、ビタミンCやビタミンE、カリウム、葉酸などもたくさん含まれている

まとめ

腸内の働きが悪くなると、便秘を招くだけではなく、全身の不調に結びついてしまうとは驚きでした。松生先生、貴重なお話をありがとうございました!今回教えていただいた「納豆+オリーブオイル」や「キウイフルーツ」など、毎日の食事にプラスするものなら気軽に続けられそうですね。アフターコロナを楽しく過ごすためにも、今日から腸活を始めて健康な体づくりをめざしてみてはいかがでしょうか?

この人に聞きました

松生 恒夫先生

1955年東京生まれ。医学博士。松生クリニック院長。東京慈恵会医科大学卒業。同大学第三病院内科助手、松島クリニック大腸肛門病センター診療部長などを経て、2004年、東京都立川市に松生クリニックを開業。4万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた腸疾患治療の第一人者。便秘外来の専門医として地中海式食生活、漢方治療、音楽療法などを取り入れた診療で効果を上げている。

ライタープロフィール
松本 奈穂子
松本 奈穂子
メーカー、ITベンチャーを経てフリーライターとして活動。雑誌、書籍、ウェブ、フリーペーパーなどメディア全般を制作。ライフスタイル、旅、金融、教育など幅広い分野で取材・執筆を行う。共同著書に『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』『いちばん美しい季節に行きたい 世界の絶景365日』(パイインターナショナル)

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