PC・スマホ音源もこだわれば良音質に。奥深きオーディオマニアへの道

PC・スマホ音源もこだわれば良音質に。奥深きオーディオマニアへの道

PC・スマホ音源もこだわれば良音質に。奥深きオーディオマニアへの道

本格的な機器で音楽を聴くとどんな風に違うのか、体験したいと思ったことはありませんか?そこでオーディオのプロであるオーディオユニオン・御茶ノ水ハイエンド館の店長・川野謙一さんに、気軽に始められるオーディオ製品の楽しみ方を聞いてきました。

ライタープロフィール

音質を極限まで高めるために「マイ電柱」を立てる人がいる世界

かつて『ウォール・ストリート・ジャーナル』が「世界中どこでもオーディオマニアのこだわりは相当なものだが、日本のマニアの完璧主義は際立っている」と報道したこともあるほど、とくに音や機器に求める水準が高い傾向にある日本人。

川野さんに話を聞いてみても、やはりオーディオマニアの世界は想像以上に深みがあるといえます。

「聴きたい音楽がある前提ですが、一般的なオーディオマニアと呼ばれる人は演奏者のプレイの癖やライブでの臨場感など、音楽の再現性にこだわる方が多い印象にあります。こういった『生の音』の再現性にこだわる方は、ある程度システムが完成された時点で満足していただけることが多いようです。

ただ、高みをめざしてより高音質を求める方のなかには、機器の更なるグレードアップはもちろん、ラインケーブルや電源ケーブル、レコード針などの細かい部品を変更してみたり、あえて中古製品を選んだりする方も珍しくありません。ハマるほどに奥が深く、機器を揃えるだけで数百万、数千万円単位のお金を投じる方もいらっしゃいます。最終的には自前のオーディオルームを設計するために、リフォームや家を建て替える方もいるほどですから」

さらに究極の音を求めた結果、安定した電気の供給源を確保するために「マイ電柱」を立てた人のニュースも一時話題となりました。

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ケーブルひとつとっても豊富な種類がある。

今回の取材で訪れた店舗は、数万〜数十万円程度の機器を扱うフロアと、数百万円以上のハイエンドな商品、更にはケーブルなどのオーディオアクセサリー専門、中古をメインにしたヴィンテージを扱うフロアに分かれていました。川野さんに各フロアを案内してもらいましたが、例えばスピーカーひとつとっても、10万円以内で購入できる商品から100万円以上出さないと買えないものまで種類は様々。こだわるほどに費やすお金も高額になっていくことが分かります。

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ハイエンドフロアで見せてもらった品物は、どれも100万円以上するものばかりでした。

「ただ、個人的にはオーディオはあくまでも好きな音楽を聞くための手段だと考えています。そのため機器にこだわるというよりも、基本的にはジャズやロック、クラシックなど自分が好きな楽曲をもっと良い音質で聴きたいという、ある意味自然な欲求がこの世界の真ん中にあると考えています」

第一歩は「プレーヤー」「アンプ」「スピーカー」の3要素を揃えることから

レコード針やケーブル、音の跳ね返りまで設計されたサウンドルームなど、その気になれば際限なくこだわることができるというオーディオの世界。とはいえ、まず音楽を楽しむ為には「プレーヤー」「アンプ」「スピーカー」の3つを揃えることから始まります。

プレーヤーは、音楽を再生する機器。古くからあるレコードプレーヤーやCDプレーヤーはもちろん、最近ではインターネットに接続して使用するネットワークプレーヤーなども主流となってきています。そしてプレーヤーから送られる音の電気信号を、増幅・調整するのがアンプの役目。アンプからの電気信号を空気の振動に変え、私たちの耳に伝わる音に変換するのがスピーカーです。

このように3つの要素があるなかで、音の最終的な出口となるスピーカー、さらにスピーカーを演奏者として活かす役割を持つアンプの2点に、重点を置くのが良いといえます。

「すべてはお部屋の環境と予算ありきですから、例えばスピーカーならコンパクトスピーカーから入って、徐々に迫力のある音を奏でる大型に移行していくのも良いかもしれません。コンパクトスピーカーであれば予算10万円以内の商品も豊富にあります。またアンプも5万円以内で買える製品も多くあり、だんだんと各機器をグレードアップしていくと良いのではないでしょうか」

注意したいのは、スピーカーだけ、アンプだけという風に特定の機器だけにお金をかけすぎること。「それでは音の良さを最大限引き出すことは難しい」(川野さん)ため、各機器にバランスよく予算をかけることが重要だそうです。

「予算を考えるうえでは『5・3・2の法則』をヒントにするのも良いと思いますよ。オーディオファンの間での基本ルールみたいなもので、これは左から順にスピーカー、アンプ、そしてプレーヤーにお金をかけるべき予算の比率です。例えばスピーカーに10万円の予算を振り分けるならアンプは6万円程度の製品を購入するなど、あくまでも各要素に費やす予算のバランスを意識するのがコツです」

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スピーカーは大きさもかたちも様々。インテリアとしても映える。

音楽の形式が変わるなか、今の時代に合ったオーディオセットとは?

音楽はレコードやカセットからCDに代わり、その後は楽曲がデータ化され、PCや端末にダウンロードしていつでも気軽に聴けるようになりました。さらに最近では定額料金で聴き放題の音楽ストリーミングサービスも登場し、「最も身近な視聴ツールはPCとスマホ」という認識が定着しています。

では、今ではすっかり馴染みのあるPCやスマホとオーディオの組み合わせについて、音楽をより一層「手軽に」なおかつ「良い音」で楽しむ方法はあるのでしょうか。

「もちろんありますよ。手軽に楽しむなら、例えば外部DACを使って、PCとアンプをつなぐ方法がおすすめです」

DACとは、デジタル信号を電気などのアナログ信号に変換するシステムのこと。PCに保存されている音源はすべてデジタル。そのため、アナログ信号しか受け付けないアンプやスピーカーで出力する場合、DACを通じてデジタルの音源を変換する必要があるのです。こうして、PC+DAC+スピーカー+アンプで最小限のオーディオシステムは構築可能。接続するスピーカーやアンプをグレードアップさせていけば、さらに音の良さにこだわることもできそうです。

また、音の発生源をPCではなく専用プレーヤーに変更することで、さらに高音質になるそうです。

「PCは手軽なものの、ノイズの発生源にもなるため、より音質を追求するならプレーヤーにもこだわりましょう。例えば、音楽の再生元をPCからネットワークプレーヤーに変更するのもひとつの方法だと思います。ネットワークプレーヤーはDACを内蔵しており、アンプや、ハイレゾの音源を保存したNAS※とネットワーク接続できる機能を持っています。ネットワークプレーヤーと接続したPCやスマホで音楽の再生・停止といった操作ができますし、ストリーミングサービスの音楽なども視聴可能。これまでのように聴きたい音楽に合わせて、CDなどを出し入れする手間もかかりません」

※有線・無線LANに直接接続できるHDD。ファイルサーバーとして活用できる。

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近年よく耳にするようになったハイレゾとは、CDでは入りきらなかった音の情報を詳細にデジタル化したデータをより多く取り込むこと。CDより高音質といっても、それを再生する機器そのものの性能も高くなければ、ハイレゾの実力を十分に活かすことはできません。

「音にこだわってせっかくハイレゾの音楽を聴くのであれば、スピーカーやアンプだけでなく、それを再生するプレーヤーにも気を配ったほうが良いでしょうね」

今は豊富な選択肢から自分に合った楽しみ方を選べる時代

川野さん自身も最近では、前述したPCやスマホとネットワークプレーヤーを組み合わせて聞く機会が増えたそう。そのため、昔から好きだったレコードを聴く時間は減りました。しかし、レコードの音を楽しむことはより贅沢な時間へと変化したといいます。

「もちろんストリーミング配信やデータ化された音楽はアーティストやジャンル別で簡単に整理・検索できたり、BGMとしていつまでも流したりできます。ただ、手軽さに慣れてくると、だんだんレコードのちょっと面倒な部分が恋しくなる機会も増えました。その手間暇も含めて音楽の豊かさというか。過去に再ブームが何度かありましたが、最近でもとくに若い世代を中心に、レコードの音質のアナログ感が逆に新しいと買い求める人も多いですしね」

音楽ストリーミングサービスの普及で大量の音楽を視聴するスタイルが確立するなか、お気に入りの1曲をじっくりと時間をかけて味わうために、あえてレコードに針を落とす人もいる。この楽しみ方の多様性にも、オーディオの世界の幅広さを感じさせられます。

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レコードプレーヤーのなかには、約3万円以内で手に入る製品も。

川野さんの話を聞くと、オーディオの世界は奥が深いと思いつつもDACを通じてPCとアンプを接続するだけで始められるなど、初心者が手軽に楽しめる手段もあることが分かります。

一歩入ると奥が深い、でもその一歩目のハードルは意外と高くはないオーディオの世界。ぜひ、一度覗いてみるのも良いかもしれません。

参考:
ハイレゾとは?|SONY(外部サイト)

この人に聞きました
オーディオユニオン・御茶ノ水ハイエンド館店長 川野謙一さん
オーディオユニオン・御茶ノ水ハイエンド館店長 川野謙一さん
1962年生まれ。音楽関連の仕事に携わりたいとの思いから、1990年に(株)ディスクユニオン入社。その後、オーディオユニオン吉祥寺店や新宿店などを経て、現在はお茶の水ハイエンド館の店長を務める。
ライタープロフィール
吉田 祐基
吉田 祐基
AFP認定者(2級FP技能士)。タウン誌、編集デザインファーム、大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。これまでコンテンツマーケティングや、ミレニアム世代向けビジネスメディア、不動産広告の取材&ライティングなどを手がける。

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