みうらじゅんさんが語る、50代からの趣味・マイブーム

みうらじゅんさんが語る、50代からの趣味・マイブーム

みうらじゅんさんが語る、50代からの趣味・マイブーム

自分の好きなもの・ことを見つける達人がいます。マイブームの生みの親・みうらじゅんさんです。今回は、「50代からの趣味とマイブーム」をテーマに、みうらさんに「好きなものを見つける」極意をお聞きしました。

50代の大きな一歩は、銀行で振込ができるようになったこと

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「時間もたっぷりできたし、さあ自由にセカンドキャリアを謳歌しよう!」と思っても、本当に打ち込める趣味や生きがいがなければ、時間を持て余してしまうかもしれません。

ましてや人生100年時代。定年退職後のセカンドキャリアも打ち込めるものがあると充実した時間を過ごせるはずです。

マイブームは「自分のなかだけで流行っているものやこと」を指し、広辞苑にも載る言葉となりました。

一見、趣味とはちょっと違う不思議でコアな世界観。だけど、好きなものに熱中し、人生を楽しんでいるかっこいい大人。みうらさんからはそんな印象を受けます。

――つい先日62歳になられました。50代の10年間を振り返るといかがですか?

みうらじゅんさん(以下、みうら):う〜ん……そうですねぇ、銀行にちゃんといけるようになったって、ことですかね(笑)。僕、銀行にいってようやく振込ができるようになったのはここ10年くらいなんです。

これまでは事務所の者が振込とかやっていたので、窓口に立ったことが一度もなかったんです。まあ、そろそろ自分でやらなくてはいけないと思いましてね。銀行にいって、ちょっとうろついていると、係員の方が声をかけてくれるんですね。はじめはお手伝いしてもらいながらやっていたのですが、最近は一人でできます。

――50代での初体験が銀行なんですね(笑)。

みうら:でしたね(笑)。僕はこれでも事務所の社長なんで銀行にいく機会がなかったんですよね。会社を設立して40年以上経つけど、銀行で「事務所名と代表取締役者名も書いてください」といわれたとき、"締"の漢字が浮かんでこなくて"取諦(あきらめ)役"なんて書いてしまって(笑)。

――初めての体験は何歳になっても怖いものです。

みうら:うちの会社はモロ"みうらじゅん事務所"という名前でしてね、ぼやぼやしてると割と大きい声で「みうらじゅん事務所の〜」と呼び出しされるんです。なんだか恥ずかしいですよね、本名なんで仕方ないけど。

その時期は、振込に慣れてきてなんだか楽しくなってたんですが、でもね、フルネームで呼ばれる恥ずかしさから、ある婦人雑誌に「誰か振り込ませてくれ。でも、いつも名前で呼ばれるから、自分だとわからない事務所名にしておけば良かった」というエッセイを書いたんです。

すると、あるとき銀行にいったら、"MJJ様"と呼んでくれるようになったんですよ。驚きましたけどね、初めは(笑)。読まれてたんですね、その係の方。感謝しております。銀行がとても身近に感じた瞬間でしたね。

――大きな進歩、といえるのでしょうか。

みうら:ま、振込という行為自体が大人だな〜と思ってましたし、当初は分からないことだらけなので、あたふたしてしまいますよね。その様子が強盗だと間違われてるんじゃないかとね(笑)。

それに、「振り込め詐欺にご注意」って張り紙があるじゃないですか? その犯人のイラストがロン毛にサングラスなのもちょっと困ります。「これ、俺じゃねーか!」と(笑)。

楽しく暇つぶしをするには、好きになろうとする下地がいる

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――50代になられてから体調などに変化はありませんでしたか?

みうら:調子悪くて当たり前、ということにようやく納得ができるようになりました。小学生のときから近眼でメガネをかけていて、若い頃は悪くなるたびにメガネを作り替えていたんですが、もう大体でものは見るようにしてますね。

ま、老化は仕方ないですが、もっとライトにそれを捉えられないものかと、"老いるショック"という言葉を考えました。調子の悪い箇所が出てくると、指をあてながら「老いるショック!」と言う。バカみたいなヤリ口ですけど(笑)。それで気を紛らわす。

すべてのものにピントを合わせて生きるということ自体がしんどいですからね。老いるショックを受け入れるようになってからは随分、楽になりましたね。

――ありのままの状態を受け入れているんですね。50代の方の多くは退職後のセカンドキャリアをどう暮らそうか、面白い趣味は見つけられるか、というちょっとした不安があります。

みうら:僕は趣味が多いと思われてるようですがそもそも小学1年生のときに始めた最初のマイブーム「怪獣スクラップ」は、見せる前提"見せ前"だったので趣味とは言えないんじゃないですかね。

僕は一人っ子だったので、家に遊びに来てくれた友達が帰ってしまうのが本当に辛かったし、できれば土曜日くらいは家に泊まってほしいと思っていました。なので、怪獣写真を切り貼りして作った「怪獣スクラップ」も友達を接待するものだったんです。単に好きでやっているように見えますが、そこはサービスの一環としてね。

ほら、そこにも(事務所の床を指す)ワニのグッズがいっぱい転がってるでしょ。それもある種、接待モノですから(笑)。

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最近、みうらさんが集めているワニグッズ

――ワニのことは好きではないのですか?

みうら:好きかどうかはまだ、分かりません。グッズを買っていくうちにそれが"大好き"に変わるようにいま、自分に暗示をかけているところなんです。だから無理矢理「ワニといえばラコステだから、ラコステを買った方が良い」と。

一回もラコステに行ったことなかったけどトレーナーとキャップも買ってね(笑)。次に熱川バナナワニ園がすごい気になってきましてね。先日、行ってきましたし。で、土産物屋さんでね、大量のグッズを買ったわけです。

――ちょっとした興味を行動に変えていくんですね。グッズを買うことは重要?

みうら:僕の場合、"買う"という行為は大きいです。分かりやすくお金で自分をだまし、好きな気にさせる。だから高ければ高い方が効果はある。「こんなものにお金をかけている俺」にしたいわけです。

退職してからやることがない、って恐怖はよく耳にしますけど、誰もそんなにやることなんてありませんよ。というか、人生ってきっと暇つぶしでしょ(笑)。より楽しくつぶすには、好きになろうとする下地がいります。好きになろうとしない限り恋愛も成立しないようにね。

興味があるとかないとかで決めていたことに、なんか違うなと思って。興味がないと決めたのも自分。興味がないことに興味を持つようにするのが、たくさん興味があることを作ることじゃないですかね。

――好きになる下地づくり、非常に勉強になります。

みうら:なにを見てもすぐ、つまらないと言う人がいるでしょ。つまらないと言った瞬間から自分もつまらなくなってしまうのにね。

だから、「そこがいいんじゃない!」という呪文を考えたんです。つまらないと思った瞬間に、「そこがいいんじゃない」と言い張れば、つまらないところがまた良い、となるから2倍良くなった気がしてね。そういう癖をつけるのも大事なことですからね。

――「老いるショック」と一緒ですね(笑)。

みうら:ようやく好きになったものは、次に他人へのプレゼンを始めます。それが"見せ前"ですから。誰かに気に入ってもらおうと思うことも重要ですよね。

定年退職をしても、なくなるのは"肩書き"であって"本業"じゃない。本来、家事全般がそもそも人間の本業だったんじゃないのかねぇ。でも、男の場合は本業が外にあると思い込んでいたから、定年後はやることがないと困ってしまう。まず、家の人に良く思われようとされるのがいいのでは?

「嫌いかも」に手を出さないと興味のテーマは見つからない

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――みうらさんは膨大なコレクションで有名ですが、これまで集めていたものが、自分の生きた証になると考えたことはありますか?

みうら:年取ったからもう、増やすのはやめようというのは、僕の癖に反しますから。当たり前のように「もうおよしなさいよ」と周りからの声が聞こえてはいるのですが(笑)。

それが後世に残すべき価値のあるものなら周りも言わないんでしょうが。今後もまだ買いますよという宣言もあり、それらの品々を「マイ遺品」と呼ぶようにしました。

――どういう意味でしょうか?

みうら:いずれ自分が死んだらマイ遺品に変わるだけのことですが(笑)。

でも、遺品になった瞬間、本人は見ることはできないでしょ。だったら先取りしようと還暦になったときに大きな美術館で『マイブームの全貌展』を開催したんです。今年は盛岡で予定してますよ。他人から見て大きく間違っているように感じるのは、僕が故人でなく、偉人でもないということだけですから(笑)。

本人もいるし、なんならトークショーとかもやりますからね。でも、自分が死んだら、マイ遺品は捨ててもらっても構わない。死んだ後のことはわからないですからね。結局、生きている間のことが一番大切ですからね。

――人生暇つぶしとおっしゃっていましたが、現在は人生100年時代です。

みうら:楽しく暇をつぶすのがベストだろうけど、そんなに長いとね、大変ですよね。年を取ると若い人のやっていることがわからなくなるというか、関心がなくなってくるんですよね。

関心が持てないことで恥じたくないので、自分をつい、正当化してしまう。だったら自分で楽しいことを見つけていくしかないので、嫌いかも、というところにも手を出さないと暇がつぶれません。

――好きの反対は無関心ともいいますので、嫌いは関心のあらわれかもしれません。「そこがいいんじゃない」の精神ですね。

みうら:「そこがいいんじゃない」と、自分に言い聞かせながら、次にあまり意見をいわないように努力するのがいいと思うんですよね。意見があるから他人と対立してしまう。

喧嘩をするのは自分が正しいと思っているからですからね。年を取ると赤ちゃんに戻るなんていいますが、意見があってルックスも悪いんじゃ周りも面倒見きれませんからね。

なので、はじめから自分は間違っていますよ、という姿勢が大事です。僕は一時期『I don't believe me』とプリントされたTシャツをつくって、着ていたこともありますから(笑)。

携帯電話を見たら、「あ、携帯だ」とか、紅茶を出されたら「あ、紅茶ですね」と見たままのことを言う努力です。便利だとか、マズいだとか、決して意見を挟むことなく。年齢と共に意見を削ぎ落としていくのは大事ですね。

――では最後にこれから60代を迎える50代の人に向けてメッセージをお願いします。

みうら:不安だなと思ったら語尾に、"タスティック"をつけてください。"不安タスティック(ファンタスティック)"。そんなくだらないことが言えるということはまだ余裕があるということですから。

「くだらないこと言っている自分ってどうよ」というところと、それにだまされた自分にもう1回改めて、「そういうこと言っている自分ってどうよ」って思い返すのも忘れないように(笑)。


みうらさんなりの"好きなこと"の見つけ方、いかがだったでしょうか。なにか「そこがいいんじゃない」と言えるようなものをぜひ見つけてみましょう。

(記事提供:サムライト株式会社 撮影:土井 渉)

この人に聞きました
みうらじゅんさん
みうらじゅんさん
1958年京都府京都市生まれ。イラストレーター、漫画家、エッセイストなど。武蔵野美術大学在学中に月刊漫画「ガロ」で漫画家デビュー。1997年に「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。その他、日本映画批評家大賞功労賞受賞(2005年)、仏教伝道文化賞 沼田奨励賞(2018年)など受賞多数。著書には映画化された「アイデン&ティティ」「色即ぜねれいしょん」や「見仏記」シリーズ(いとうせいこう氏との共著)など多数。

公式サイト「みうらじゅんofficial web site! Miurajun.net(外部サイト)
<ライタープロフィール>
50代から考える これからの暮らしとおかねのはなし編集部
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