カーシェア時代を想定!スマート技術搭載の未来の車

カーシェア時代を想定!スマート技術搭載の未来の車

カーシェア時代を想定!スマート技術搭載の未来の車

自動車業界は100年に1度の大変革期を迎えています。この変化の時を理解するために注目すべきキーワードが、「自動運転」と「カーシェアリング」です。

自動運転技術とは?自動運転の5段階

自動運転技術とは?自動運転の5段階

人間が操作しなくても自動で走行する「自動運転車」ですが、車両の内部ではどのように自動化を実現しているのでしょうか。
「自動運転システム」では、膨大な演算処理が必要になるため、パソコンのCPU(Central Processing Unit)の数倍の性能を誇るGPU(Graphics Processing Unit)を使用して演算を行います。
車体の各パーツに取り付けられたセンサーが、刻一刻と変化する道路状況を膨大な数の電気信号に変換、高性能演算ユニットに伝えます。
高性能演算ユニットは受け取ったデータを解析して、自車が取るべき次の行動を瞬間的に決定して、実行します。
また、自動運転といってもその自動化には5段階のレベルがあります。

・レベル1(運転支援):アクセス・ブレーキ操作またはハンドル操作のいずれかを部分的に自動化。
・レベル2(部分運転自動化):アクセス・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に自動化。
・レベル3(条件付き運転自動化):一定条件下ですべての運転操作を自動化。運転手による監視を要する。
・レベル4(高度運転自動化):一定条件下ですべての運転操作を自動化。
・レベル5(完全運転自動化):条件なしですべての運転操作を自動化。

2020年3月現在、実用化されているのはレベル2の“運転支援”です。

本田技研工業株式会社(ホンダ)は2020年夏にも、一定の条件下なら自動運転システムに運転を任せられる技術を搭載した車両の発売を予定しています。実現すれば、レベル3にあたる技術を各国に先駆けて日本が実用化することになります。
そして、ホンダは2025年頃をめどに、レベル4の自動運転技術を確立したいとしています。

車は所有するものからシェアするものへ カーシェア時代の到来

未来想像WEBマガジン

現在、車を運転する人は、自家用車として車両を所有している場合が大半でしょう。近い将来、「自家用車」という言葉は消えてなくなるかもしれません。
車は所有するものから共有・シェアするものへと、価値観が大きく変わりつつあるからです。

以前から、レンタカーを始め、自動車を貸し借りするサービスが存在してきました。
これまでのサービスでは、レンタカー会社の営業所に出向いて、対面の確認作業をしたあと車を受け取り、返却するときも営業所に戻り、確認作業を経て返却する仕組みでした。
自動車や鉄道などあらゆる交通手段をITで統合し、移動を一つのサービスとしてとらえる概念「MaaS(マース:Mobility as a Service)」。
この新しい概念を採用したサービスが次々に実現しており、ITのちからで貸し出しや返却まですべてのプロセスを無人化した「カーシェアリング」も登場しています。
カーシェアリングでは、スマートフォンやパソコンで自宅近くの貸し出しステーションを探し、車の空き状況を確認してから予約します。
予約した時間になったらステーションに出向き、予約した車両を会員カードやスマートフォンで解錠して、そのまま運転していきます。

逆に返却するときも、車を借りたステーションに持ち込んで駐車するだけです。
カーシェアリングのサービスで重要なのが、どのように鍵を安全に受け渡すかという部分です。Bluetoothの機能で、車両のドアのロックや解除、エンジンスタートをスマートフォンから車両に指示できるバーチャルキーの活用で物理的な鍵の受け渡しを不要にしています。
バーチャルキーは、許可した相手だけに許可された時間だけ、車両の鍵の権限を譲渡するものです。

スマートフォンを鍵にするバーチャルキーは、技術的なハードルよりも法的なハードルが高いものでした。そこで、道路運送車両法に基づく保安基準が2019年10月に改正されました。

改正前は、車両と施錠装置が1対1の関係でなければならないとされていたため、自分のスマートフォンを鍵にして任意の相手に鍵の権利だけを譲渡することは、認められていませんでした。

保安基準の改正により、これからますますカーシェアリングのサービスが拡大していくことでしょう。

未来の車に搭載される技術 「マルチファンクショナリティ」

未来の車に搭載される技術 「マルチファンクショナリティ」

カーシェアの未来型、MaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette(e-パレット)」のコンセプトをトヨタ自動車が発表したのは2018年1月。
自動運転機能を備えるe-Paletteは、「マルチファンクショナリティ」がコンセプトで、例えば次のように人々の暮らしの中で活躍する車両です。

・朝:ライドシェア機能で人々を勤務先や学校まで輸送
・昼:無人で荷物配達・ランチ配達
・午後:移動店舗や移動オフィスとして活用
・夜:ライドシェア機能で家路につく人々を輸送する

このように24時間オンデマンドで車両自体が機能を変えていくという、カーシェアの先を行く未来の車です。
「MSPF(Mobility Service Platform)」というトヨタが開発したシステムを外部提供するための仕組みを通じて、各モビリティサービスの事業者に対しAPIをオープン化することでライドシェアや配達などの各機能を実現します。

車を超えて街全体の未来を作る

未来想像WEBマガジン

20年先、30年先、いや実現する時期の予想が立てられないくらい先の未来の車はどのような姿をしているのでしょうか。
2020年1月に、同じくトヨタが、未来の車だけではなく未来の街を作るという壮大な構想を発表しました。
未来の街を作る「コネクティッド・シティ・プロジェクト」で作る街は「Woven City(ウーブン・シティ)」と呼ばれています。
Woven Cityは、人々が生活を送るリアルな環境下で、自動運転・MaaS・ロボット・スマートホーム技術・人工知能(AI)技術などを導入・検証できる実証都市となるものです。

Woven City内の道は、完全自動運転かつゼロエミッションの車両のみが走行できる「高速車両専用の道」、「歩行者と低速車両の道」、「歩行者専用の道」の3種類に分類されています。
「歩行者専用の道」は縦長の公園のような道で、Woven City内のA地点からB地点までを公園の中だけを通って歩いて行けます。
水素燃料発電や雨水ろ過システムを始め、すべての街のインフラは地下にあり、車両や人々の通行を妨げるものはありません。
屋根には、太陽エネルギーを収集する太陽光発電用のパネルが敷き詰められています。

夢物語のような話ですが、既に計画が進行しており、2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本・東富士工場跡地を利用して、2021年初頭に着工する予定となっています。

まとめ

未来想像WEBマガジン

100年に1度の大変革期を迎える自動車業界を理解するキーワード、「自動運転」と「カーシェアリング」の現在と未来の姿を紹介してきました。また、すべてがITでつながる未来の車を想像するときには、インフラや環境問題を切り離して考えることはできません。
未来の車を作ることは、街全体や人々の生活全体を作ることと同義といえそうです。すぐそこまで来ているカーシェア時代、あなたが今所有している「自家用車」はどんな変貌を遂げるでしょうか?

【参考】
道路運送車両の保安基準等の一部を改正する省令及び道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部を改正する告示について(外部サイト)

ライタープロフィール
近藤 真理
近藤 真理
テクニカルライター。埼玉大学工学部機械工学科卒業。
大手IT企業のマーケティング部門にて、テクニカルライティング・技術翻訳・DTP業務に20年以上従事したのち独立。
現在は一般書籍からWeb記事まで媒体を問わず様々な記事を寄稿している。

近藤 真理の記事一覧はこちら

RECOMMEND
オススメ情報

RANKING
ランキング