知らない国で優雅な冒険 コーカサス地方・ジョージア旅行の魅力

知らない国で優雅な冒険 コーカサス地方・ジョージア旅行の魅力

知らない国で優雅な冒険 コーカサス地方・ジョージア旅行の魅力

極上のオンリーワン旅行にコーカサス地方・ジョージアが注目を集めています。これらの国はロシア、中東、アジアに挟まれ、独自文化を守っており、ミステリアスな雰囲気を持っています。異次元世界に迷い込んだような唯一無二の優雅な旅へいざなってくれるでしょう。

ジョージア旅行で、大自然、世界遺産、伝統食文化を肌で感じる

ジョージア旅行で、大自然、世界遺産、伝統食文化を肌で感じる

ジョージアというと、日本では缶コーヒーを思い出したり、アメリカの州というイメージがあるかもしれませんが、旧称「グルジア」であるジョージアは、旧ソ連から1991年に独立した国です。オリンピック開催地ロシアのソチに近いといえば、もっと身近になるでしょうか?人口は400万人と小国ながら、異文化の織り交ざった歴史的建造物、雄大な山々、個性豊かな食文化が、近年世界の人々を魅了しています。物価が安く、治安が良く、人も親切。そういう意味ではユーラシア最後のエデンといえるかもしれません。

ジョージアの魅力発信の最前線は、文明十字路の首都トビリシ

首都のトビリシは東方見聞録を残したかのマルコ・ポーロが絶賛した街ともいわれています。イスラム国家に長らく支配されていましたが、宗教はキリスト教が中心で数多くの教会があります。旧ユーゴの国、セルビアのベオグラード(白い要塞の意)のように、トビリシの起源は自然の丘陵地に囲まれた大国の間にある要塞都市でしたが、最近ではSNSの発達もあり、ジョージアのオリジナリティが世界に伝わりやすくなってきました。

トビリシはジョージア語で「トビリ(温かい)」が由来といわれています。その由来通り、トビリシには多くの温泉があります。現代のトビリシはシオニ教会、メテヒ教会、ナリカラ要塞跡、ジョージア母の像を始めとする固有歴史的建造物を中心とした街並みを守りつつも、街を彩るLED装飾などのテクノロジーや地下鉄、タクシーも発達しています。

このように首都トビリシは、オールドトビリシと呼ばれる旧市街地と現代的な街並みが共存する街。ルスタヴェリ通り沿いには国会議事堂やオペラハウス、おしゃれな飲食店が立ち並んでいます。また、若者のメッカのような地区もできており、街歩きも楽しめるような都市に変貌中です。

雄大な自然と、ジョージア正教聖地のゆかしい風情を満喫する

ジョージア旅行を満喫するために、ぜひルートに組み込んでいただきたいのが「グルジア軍用道路」です。この道路は、首都トビリシとロシアのウラジカフカスを結んでいる約210キロメートルの道。コーカサス山脈の雄大な自然を眺めながら、点在する観光スポットも楽しめます。この道中にあるジョージアがキリスト教化した象徴の聖地ムツヘタやアナヌリ教会は、SNSなどでも目にしたこともある人もいるかもしれません。天国に一番近いともいわれるロシアとの国境、カズベキ山にあるゲルゲティ・トリニティ教会(ツミンダ・サメバ教会)などは、その古めかしい趣にタイムスリップした気分になることでしょう。

ジョージアの自然派美食。ユーラシアを丸ごと味わえる多彩なソウルフード

食材が豊かなジョージアでは、ロシア、トルコ、中東、中華の「いいとこ取り」をした料理を味わえます。豊富な食材をいかした洗練された味と、家庭料理の良さを持ちあわせた料理といえるでしょう。デザートだけでなく煮込みやスープ、サラダにも乳製品と果物をふんだんに使ったレシピが、日本人には新鮮です。また、クルミの産地でもあるジョージアでは、料理のグレードをさらにあげる大切な素材として、クルミは良く使われています。

ジョージアの代表的な料理の一つに「シュクメルリ」があります。にんにくとチーズのソースで鶏もも肉を煮込んだ料理です。また、中華の影響を感じるジョージア風の水餃子「ヒンカリ」や、新年に食べる「サツィヴィ」(鶏肉のクルミソース)は、パスタにも合います。筆者一押しはジョージア風のピザともいえる「ハチャブリ」です。

文化人類学としても面白い料理、「ドルマ」

ジョージア旅行で、大自然、世界遺産、伝統食文化を肌で感じる

ジョージアのポピュラーな料理の一つに、ブドウの葉で肉を包んだ「ドルマ」があります。「ドルマ」とは巻物を意味し、ロールキャベツのルーツともいわれています。ロールキャベツというと、シベリアのものを思い起こす人も多いかもしれませんが、その起源は「ドルマ」であるといわれています。コーカサスやトルコから徐々に極東にも伝わってきたとされる「ドルマ」。広大なユーラシア大陸を渡ってきたと思うと、感慨深いものがあります。ジョージアではブドウの葉を塩漬けにしてから保存し、料理に使うため「ドルマ」は実用的な保存食でもあり、塩で清められた神聖な料理ともいえるでしょう。

ちなみにバルカン半島には、「サルマ」という料理があります。こちらはブドウの葉ではなく、キャベツを塩漬けにして、お米とひき肉を中に入れたもの。正月にも食します。日本のお稲荷さんや手巻き寿司を彷彿とさせる「ドルマ」や「サルマ」。何か思いを込める時に人間は「包む」「ラッピング」するという行為をしますが、「ドルマ」や「サルマ」も縁起を担ぎ神に供える料理といえるのかもしれません。文化人類学的観点からみても非常に興味深い料理です。

ワインの起源ジョージア。国民のアイデンティティとプライドの象徴

料理の美味しい国はワインも美味しいという方程式があります。ジョージアは寒暖の差が大きい大陸性気候です。この気候は美味しいブドウ、果実が育つ条件でもあるのです。

実は、ジョージアは世界最古のワイン発祥の地で、黒海付近での醸造が考古学者によって確認されており、その歴史は8000年にもなります。作り方もクヴェヴリ(壺)製法と呼ばれる壺を使う熟成方法で、2013年にユネスコの文化遺産にも認定されています。もちろん、ヨーロッパ式醸造も行っています。現在は国家政策として、国をあげてワイン産業の後押しを始めています。

古くて新しい「クレオパトラの涙」とよばれるジョージアワイン

エジプトのクレオパトラもジョージアワインを愛飲していたといわれています。絶対的権力で家来に命令を出していたイメージがあるクレオパトラですが、実際は統治に疲れ、日々不安を抱えていました。そのため、クレオパトラが涙を流しながらジョージアのワインを飲んでいたという伝承があることから、クレオパトラの涙、という由来が付けられています。

ボトルも非常に個性的な伝統の陶器で作られており、見た目にも強烈なインパクトで差別化を図っています。ジョージアならではの個性あるワインと食事を堪能してください。

ともに巡りたいアルメニアとアゼルバイジャン

ともに巡りたいアルメニアとアゼルバイジャン

ジョージアと並び、南コーカサスの魅力を語るうえで外せない2つの隣国、アルメニアとアゼルバイジャンにも触れてみます。ジョージアと同じ小国ですが、隣国ながら違う持ち味があり、観光客としては魅惑のシナジー(相乗効果)を感じ、コーカサス極上の優雅な旅を引き立ててくれるでしょう。

コーカサスの富士。ノアの箱舟伝説のアララト山を敬うアルメニア

アルメニアは世界最初にキリスト教を国教とした国といわれ、古い歴史のある国です。長い歴史と大国に囲まれ様々な文化から影響を受け、数々の謎や伝説に彩られてきました。

アルメニアの象徴ともいえるアララト山は、旧約聖書でノアの箱舟がたどり着いたといわれる場所です。ひと際目を引く山の姿は、日本の富士山にも似ており、日本人にも徐々に知られるようになってきています。また、世界的に有名なお酒、コニャック「アララト」は多くのファンを魅了しています。

ジョージアと同じく寒暖の差が激しいこの地も果物の宝庫です。特にザクロを使ったワインが国を代表する輸出品となっています。パンは「ラヴァシュ」と呼ばれる紙のようなパンが主食です。

また、アルメニアコーヒーも特筆すべきものがあります。バルカン半島にあるボスニア・ヘルツェゴビナでも飲まれている粉のコーヒーで、西ヨーロッパのエスプレッソ文化とは違うコーヒー文化を感じます。料理では、アルメニア最大の湖、セヴァン湖で獲れるシガと呼ばれるマス科の魚がよく食されています。

コーカサスのドバイ、火の国「アゼルバイジャン」

ともに巡りたいアルメニアとアゼルバイジャン

いかにもロマンティックかつエキゾチックな名称のこの国は油田で有名なオイルバブルの国です。ランドマークのフレームタワーズは「火」をイメージしています。

アゼルバイジャンには火を崇拝するゾロアスター教の聖地があります。岩から出る天然ガスにペルシャ人が火を灯し、それが3000年以上燃え続けているとされ、火を神様として崇めたのが、ゾロアスター教(拝火教)です。

首都は風の街という意味のバクーで、豊富な天然資源が国を支えています。宗教はイスラム教です。国旗にイスラム教のシンボルである三日月があるように、アゼルバイジャン語や食文化もイスラム色満載で、ジョージア、アルメニアと違う魅力を持っています。

面白い料理としてはチョウザメやザリガニ料理、エキゾチックな羊肉、栗、ドライフルーツにサフランライスを添えたシチュー「プロフ」があります。また、とっておきデザート「バクラヴァ」があり、一緒に飲みたいアゼル茶などもあります。これらの食事は旅をとても贅沢なものにしてくれるでしょう。

ともに巡りたいアルメニアとアゼルバイジャン
アゼルバイジャンの人気のバクラヴァ。イスラム教のデザートだが、生地にロシア色もあるサワークリームも使い生地の質が滑らか。トッピングには贅沢にヘーゼルナッツを使うタイプもあり、グレードが高い。アゼル茶との相性は抜群。

まとめ

現代社会において、小さなお店が商品の流通を維持することが難しいように、国単位でもそれは同じといえます。多くの事象や物が歴史、市場の中で消えていくなか、真のクオリティは、守る人のたゆまぬ意志によって宝石の如くずっと残ることができます。

未知の国、南コーカサス3ヵ国はグローバル化が進むなかで標準化されがちな世界に一石を投じています。小さな国が未来に向けて、独立後、自分の個性で国をアピールする意志の大切さを教えてくれます。南コーカサスへの冒険は、人類がより豊かになるうえで忘れてはならない「起源」や「真の優雅さ」を教えてくれるでしょう。


なお、渡航においては事前に最新の渡航情報を確認し、滞在にあたっては最新の情報を常に入手するようにしてください。

ライタープロフィール
山田 和彦
山田 和彦
青山学院大学国際政治経済学部出身。ソムリエ、海事代理士としての顔を持つフリーライター。
中学の時にテレビで見た旧ユーゴ内戦で、民族問題に興味を持つ。大学卒業後はその国の未来に向けて、価値がありながら埋もれているものを見つけ、世に広めることがその国の子供や国の将来につながると思い、クロアチア料理店でソムリエ、コックとして従事。
スラブ民族の料理全般に造詣が深く、2009年以降は現ジョージアやアゼルバイジャンの食文化のポテンシャルに感銘を受けて執筆活動を開始している。

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