食の多様性と伝統を未来へ〜スローフードを学ぶ旅へ出かけよう

食の多様性と伝統を未来へ〜スローフードを学ぶ旅へ出かけよう

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スローフード協会とAirbnb(エアービーアンドビー)が連携し、料理人や生産者が旅行者へ直接スローフード体験を提供するプログラムがスタート。今回は「世界で唯一!“潮かつお”と“鰹節”作りを学び味わう」を例に紹介します。楽しみながら、未来の「食」について考えてみましょう。

スローフード体験に参加することで、生産者や料理人を支援することができる

スローフード体験に参加することで、生産者や料理人を支援することができる
(C) Slow Food International

スローフード協会は、食の生物多様性と伝統的で持続可能な食の生産を守ることを目的としたグローバルネットワークで、1989年にイタリアで始まり、現在160ヵ国以上に広まっています。旅においても、より「ホンモノ」の体験をしたいというニーズが高まっている中、スローフード協会では、その地域の生産者や料理人、食文化と直接触れあう新しい旅の形を提供しています。

今回のAirbnbとの連携では、これまでスローフード協会が行ってきた食の体験を、Airbnbの体験プラットフォームを通じて提供するプログラムをスタート。このプログラムは、社会貢献カテゴリーとなっていて、Airbnbへのコミッションなどを引かれることなく、収益はすべてスローフードの活動支援にあてられるため、プログラムに参加することで生産者や料理人を支援することが可能です。

現在、Airbnbには全世界で45の「スローフード体験」が掲載されています。

例えばイタリアでは、食の人類学のエキスパートであるアントニオ・プッツィさんと、ナポリの伝統的な市場を訪れてストリートフードを味わった後、ナポリピッツァの職人のもとでピッツァのおいしさの秘密や作り方を学びます。

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ナポリピッツァの職人と一緒に、ピッツァ作りを体験できる(C) Slow Food International

アメリカでは、畜産の質の向上に力を入れ、特にニワトリの在来種の保全に取り組むドナ・シモンズさんによるファームツアーが行われています。

そのほか、カナダ、オランダ、フランス、キューバ、コロンビア、南アフリカなど、世界中の食の体験を、Airbnbから簡単に予約することができます。

世界で唯一残る、かつお出汁(旨味)の起源「潮かつお」を学びに西伊豆町田子へ

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ワラをあしらった「潮かつお」をお正月のお飾りにする風習が、今も田子地区には残る

Airbnbを通じて予約できる日本開催のプログラムは、現在8つ。そのうちの一つ、スローフード富士山の代表でカネサ鰹節商店5代目の芹沢安久さんによる「世界で唯一!“潮かつお”と“鰹節”作りを学び味わう」をご紹介します。

「潮かつお」とは、静岡県西伊豆町田子にて世界で唯一作られているかつおの素干し。現在の鰹節の起源であり、今から1500年以上前から全国各地で作られ、保存食として食べられたり、出汁に使われたり、また貨幣の代わりとしても使われていたといいます。しかし現在では田子地区のみでしか作られておらず、お正月用のお飾りを作り、その技術と文化を受け継ぐ職人は芹沢さんだけなのです。


「現在作られている鰹節が誕生したのは360年ほど前。かつおを使った究極の保存食で、最高級の鰹節『本枯節』が誕生したのはまだ200年ほど前のことです。ほかの地域では『潮かつお』から現在食べられているような鰹節に変わっていきましたが、この地区にだけ残ったのは、単なる保存食としてではなく、信仰と結びついたからです。今もお正月には潮かつおを吊るし、年神様に捧げる風習があります」(芹沢さん)

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一緒に参加したのはイタリア・アマルフィから来た料理研究家のマリーナさん

かつおの旨味を最大限閉じ込める、最も効率の悪い古来式伝統製法「手火山式焙乾法」

かつおの旨味を最大限閉じ込める、最も効率の悪い古来式伝統製法「手火山式焙乾法」
頭を切る用、背びれを切る用など、かつおを切り分けるのに用いられる特殊な包丁

芹沢さんの鰹節は、この地域だけで確立した「手火山式焙乾法」という伝統製法によって作られます。薪を使い、職人が自身の手で温度を確認しながら、ぎりぎりの高温でかつおの表面を燻し乾かす焙乾方法。この製法はかつおの旨味を最大限に閉じ込めることができますが、製造の効率が悪く、職人さんへの負担が最も高いといわれています。

プログラム中、道具や写真などを使いながらわかりやすく説明してくれる芹沢さん。実に手間のかかる製法で、仕上がりまで5~6ヵ月を要するというから驚きです。

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削り節と出汁のテイスティング。「本枯節」「荒節」「潮かつお」それぞれの味の違いがハッキリと分かる

続いて、カンナで削る「鰹節削り」体験と出汁の試飲へ。「本枯節」と麹菌をまぶす前の「荒節」、そして「潮かつお」の3種類の出汁を味比べしました。「本枯節」の出汁は発酵食品らしいふくよかな味。すっきりした「荒節」の出汁、力強い「潮かつお」の出汁も、また違ったおいしさでした。

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工場を案内してくれる芹沢さん。使い込んだ手火山式の焙乾機炉の前で

最後は、芹沢さんから工程の説明を受けながら工場を見てまわります。鰹節作りの一つ一つの工程に意味があり、それを丁寧に積み重ねた先に、この繊細な味があるのだと改めて実感。

鰹節の香りがただよう工場の中で、見て聞いて、味わって、触ってと五感で感じる体験プログラム。ぜひ多くの方に参加して欲しいと思いました。

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カビ付けしてから高温多湿の空間で保管。麹菌が残りの水分をそぎ取り、旨味を加えていく

まとめ

食の裏側にある物語や、昔から受け継がれてきた伝統に触れることができる、スローフード協会の体験プログラム。旅と食は切っても切り離せない関係ですが、さらに一歩踏み込んで「ホンモノの食文化」に触れる機会を作ってみてはいかがでしょう。いつもよりも、記憶に残る旅となるはずです。

参考:
Airbnb ウェブサイト(外部サイト)
一般社団法人 日本スローフード協会 ウェブサイト(外部サイト)

ライタープロフィール
瀬田 尚子
瀬田 尚子
大学卒業後、出版社に入社。 雑誌編集として約8年勤務の後フリーランスのライター・カメラマンに。 WEB、雑誌、広報誌など、さまざまな媒体で取材・執筆を行っている。得意とする分野は旅・食・健康。温泉とお酒には特に目がない。

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