ビジネスエリートの身だしなみは足元から。10年使える一流紳士靴の世界

ビジネスエリートの身だしなみは足元から。10年使える一流紳士靴の世界

ビジネスエリートの身だしなみは足元から。10年使える一流紳士靴の世界

社会人経験も長くなり、肩書きに役職名がついてくると気になるのが身だしなみ。特に足元はチェックされると聞きます。そこで、大人の男に相応しい一流紳士靴の選び方やコーディネートについて、伊勢丹新宿店メンズ館紳士靴フロアでアドバイスを聞いて来ました。

一流紳士靴の相場は10万円から20万円

社会人経験が10年以上経つ人ならば、これまでに値の張る革靴を何足か購入した経験があるでしょう。最近は、「オフィスカジュアル」が浸透し、スニーカーで出勤できるような企業も多くなりましたが、やはりここ一番の重要な場面で、頼りになるのが見栄えのする革靴です。

「身だしなみは足元から」は、社会人の先輩たちの常套句。しかし、どのブランドのどのスタイルの紳士靴を買えばいいのか、具体的に教えてもらえる機会は意外と多くありません。そこで、今回は、伊勢丹新宿店メンズ館で紳士靴のバイヤーを務める田畑智康さんに一流紳士靴の世界について聞きました。

お話を聞いた三越伊勢丹紳士靴バイヤーの田畑 智康さん
お話を聞いた三越伊勢丹紳士靴バイヤーの田畑 智康さん

「一流と呼ばれる紳士靴の相場は、10万円から20万円と考えていただくといいでしょう。王道は、ブリティッシュ・トラッドのジョンロブやエドワードグリーンといった老舗メーカー。若い世代の方には、クロケット&ジョーンズやチャーチも人気です。これらは、すべてイギリスのメーカーで、ほかにはフランスのジェイエムウェストンやイタリアのエンツォボナフェなども一流メーカーと言えるでしょう。スタイルとして紳士靴の王道といえるのは、ストレートチップ。あとは、カジュアルにも併用できるローファーやダービープレーンと呼ばれるデザインも人気ですね」

紳士靴の定番人気スタイルは3種類

様々なキーワードが出てきたので、まずはコメントを整理していきましょう。田畑さんによると伊勢丹新宿店で、最近人気の紳士靴のスタイルは以下の3種類になります。

ストレートチップ

つま先の革の切り替えが一文字飾りになったデザインが特徴で、ブリティッシュ・トラッドの代名詞的なスタイル。フォーマルなシーンや冠婚葬祭でも使えるビジネスシューズの定番です。

ダービープレーン

別名「外羽根プレーン」とも呼ばれる靴紐で締めるタイプのビジネスシューズ。足の甲の部分がややゆったりとしたデザインで、ビッグシルエットのパンツなどによく合います。カジュアルにも着こなせるスタイル。

ローファー

靴紐がないスリッポンタイプのビジネスシューズ。フォーマルにもカジュアルにも履きこなすことができる万能デザイン。ジーンズにもよく合う。コインローファー、タッセルローファーなどのスタイルがあります。

フォーマルといえば、ストレートチップ。フォーマルとカジュアルに併用できるのが、ダービープレーンやローファーと考えておくのがいいでしょう。職場の雰囲気によって、選択肢は変わってきそうです。

英国メーカーのほか、フランス、イタリアも

今回は、この3つのスタイルを頭に入れながら、定番と呼ばれる一流紳士靴メーカーを見ていきましょう。

ジョンロブ

イギリスを代表する一流紳士靴メーカー。1866年に靴職人ジョン・ロブ氏がロンドンに第1号店をオープン。現在もシューズの世界最高峰といわれています。定番のストレートチップ「シティ」は、大人の社会人なら一度は履いてみたい憧れのシューズです。

ストレートチップの定番といえば、ジョンロブの「シティⅡ」192,500円(税込)
ストレートチップの定番といえば、ジョンロブの「シティⅡ」192,500円(税込)

エドワードグリーン

1890年、創業者エドワードグリーン氏が、イギリス・ノーザンプトンの小さな工場でスタートした手づくり靴のメーカー。ジョンロブと並ぶ一流英国紳士靴メーカーの代名詞的存在です。履き心地が良く、頑丈で長持ちするのが特徴です。

つま先のステッチが特徴的なエドワードグリーンの「ドーバー」226,600円(税込)
つま先のステッチが特徴的なエドワードグリーンの「ドーバー」226,600円(税込)

チャーチ

1873年、イギリス・ノーザンプトンで創業した正統派英国靴のメーカー。同社の紳士靴は、一足あたり250もの行程を経て作られています。ストレートチップからローファー、ブーツまで幅広いデザインの展開。ダービープレーンの「シャノン」が人気です。

ダービープレーンの代表格、チャーチの「シャノン」103,400円(税込)
ダービープレーンの代表格、チャーチの「シャノン」103,400円(税込)

クロケット&ジョーンズ

1879年、イギリス・ノーザンプトンで、靴職人チャールズ・ジョーンズ氏とその義理の兄弟ジェームズ・クロケット氏によって創業。一流アパレルブランドとのコラボ商品が多いことでも知られています。名作「ボストン」は、ローファーの定番です。

クロケット&ジョーンズの定番ローファー「ボストン」90,200円(税込)
クロケット&ジョーンズの定番ローファー「ボストン」90,200円(税込)

ジェイエムウェストン

1891年創業のフランスの老舗紳士靴メーカー。美しく、機能的なデザインが、アッパー層のパリジャンを虜にし続けてきました。しなやかなシルエットのローファーのほか、ダービープレーンやストレートチップなど各種デザインが揃っています。

カジュアルにも履きこなせそうなジェイエムウェストンのローファー「180」110,000円(税込)
カジュアルにも履きこなせそうなジェイエムウェストンのローファー「180」110,000円(税込)

エンツォボナフェ

1963年、エンツォ・ボナフェ氏によって創業されたイタリアの紳士靴メーカー。ボローニャに工房を持ち、今も高いクオリティで手縫いの靴づくりを続けています。英国伝統スタイルとはちょっと違う遊び心のあるデザインが特徴です。

スエードの素材感を活かしたエンツォボナフェの「ビット・ローファー」143,000円(税込)
スエードの素材感を活かしたエンツォボナフェの「ビット・ローファー」143,000円(税込)

フォーマルな革靴をカジュアルに履きこなす

一通り、人気のスタイルを見てみると、やはり気になるのは履きこなしのコツ。おしゃれな大人の紳士たちは、どのようなファッションにどのスタイルの靴を合わせているのか、田畑さんに聞いてみました。

「ジョンロブの『シティⅡ』やエドワードグリーンの『ドーバー』には、やはりフォーマルなスーツが似合うでしょう。ブリティッシュ・トラッドの紳士靴には、細身のスーツが似合いますね。パンツはノータック。裾はダブルでもシングルでもいいと思います」

田畑さんによれば、ポイントはパンツの裾口。裾のサイズが合っておらず、革靴の上に乗っているようだと、せっかくのエレガントなシルエットが台なしになるとのこと。高価な靴を買ったらOKではなく、靴に合わせたコーディネートも楽しめるようになったら、上級者といえそうです。

「ヨーロッパの人々は、フォーマルな革靴をカジュアルに履きこなすのが上手で、ジャケットとデニムにエドワードグリーンの『ドーバー』を合わせて、休日の食事に行くなんて人も見かけます。かっこいいですよね」

エドワードグリーンの名作「ドーバー」をカジュアルに履きこなせたら上級者
エドワードグリーンの名作「ドーバー」をカジュアルに履きこなせたら上級者

ビシッと決まれば最高ですが、これはビギナーにはさすがに敷居が高そう・・・・・・。そこで、フォーマルにもカジュアルにも合わせられるダービープレーンのおすすめスタイルはどうでしょう?

「ダービープレーンは、靴自体にボリュームがあり、存在感があるので、フォーマルなスタイルの中でもワイドなパンツに合わせるのがおすすめです。もちろん、デニムにTシャツ、ジャケットというカジュアルスタイルとの相性も抜群です」

革靴はジャストサイズを選ぶのが鉄則

最後は気になるローファー。最近は、カジュアルなジャケットスタイルで通勤できる会社も多いので、特に注目が集まります。ワンランク上の履きこなしのコツはあるのでしょうか?

「高価格帯のローファーはここ5年で圧倒的に人気です。履きやすい、脱ぎやすいという機能性に加え、デザインのバリエーションも魅力です。履きこなしのポイントを挙げるとすれば、夏場に足首を出して履く際にソックスが見えているのは残念。ローファー専用のシューズインソックスを購入するのがおすすめです」

ローファーは、やはりフォーマルなスーツというより、ノータイのジャケットスタイルや休日のカジュアルファッションに合わせるのがベター。高価格帯のローファー1足目なら、無難に黒を選ぶのが良いでしょう。高校時代の通学ローファーの感覚でオーバーサイズを選ばず、ジャストサイズを選んで、馴染ませていくのもポイントだとか。

「革靴は最初履きこなすまで痛いのは、仕方ないと思ってください。サイズが合わない靴を履いていると不自然なしわが入って、素材のよさが一気に損なわれます。せっかく高価な靴を買うなら、しっかり試着をして、ジャストサイズを選ぶのが鉄則です。それが長く履くコツでもあります」

お手入れはブラッシング、保管はシューキーパーで

高価な革靴を買ったら当然お手入れも気になるところ。シューキーパーはマストバイ
高価な革靴を買ったら当然お手入れも気になるところ。シューキーパーはマストバイ

一度買えば、10年以上履き続けることもできるという一流紳士靴。当然ながら、日頃のメンテナンスも重要になります。革靴のコレクターは、休日に1時間以上かけて、大事な靴をお手入れするとかしないとか。プロはどのようなお手入れをおすすめしているのでしょう?

「お手入れは大きく分けて2つです。それは、シューキーパーの装着と使用後のブラッシング。あと、意外と知られていませんが、靴クリームを塗るのは、月1回くらいで大丈夫です。ベタベタに塗りすぎるのも実は革に良くないんですよ」

プロは3種類以上のブラシを使い分けるのだとか
プロは3種類以上のブラシを使い分けるのだとか

帰宅する度に靴クリームを塗っていた人も多いかもしれませんが、実はNGだったとは意外です。田畑さんのおすすめは、シューズボックスに入れる前に簡単にブラッシングをして汚れを落とし、シューキーパーを入れてしまうこと。市販の木製シューキーパーは、型崩れやしわを予防するだけでなく、湿気や臭いも除去してくれるといいます。

「靴磨きって、本当はものすごく細かい工程があるんです。靴クリームをただ塗るのでは、汚れた油を上塗りしているだけ。プロはまず、専用のクリーナーで汚れた油を拭き取って、革をすっきりさせてから、クリームを塗って磨き込みます。プロの靴磨きも1,000円程度で頼めるので、実はそのほうが安上がりだったりするんですよ」

1〜2年履き続けてわかる一流紳士靴の実力

一流ブランドの紳士靴は、思わず革の質感に見とれてしまう
一流ブランドの紳士靴は、思わず革の質感に見とれてしまう

20万円の靴を履いていれば、溝でつまづかないように気をつけるし、自然と背筋も伸びる気がします。実際、10万円、20万円という一流紳士靴を履くと見えてくる新しい世界とはどのようなものなのでしょう?

「いい靴は、1年、2年と履き続けたときに、やっとわかります。体験したことのない足が包み込まれるような履き心地を味わえます。それが、最高級の天然皮革のさらにいい部分だけ使った一流紳士靴の実力です。愛好者の方に言わせるとエドワードグリーンの『ドーバー』などは、2〜3年かけて履き慣らすとスニーカー以上のコンフォートシューズになるそうですからね」

なるほど、丁寧な手仕事がもたらす別次元の履き心地は、日々の仕事に“気づき”を与えてくれそうです。田畑さんによれば、天然皮革の靴は、できれば3足くらい用意して、ローテーションしながら履くのが理想的とのこと。適度に休ませながら、丁寧に手入れをして、長く付き合っていくのが一流紳士靴の作法でしょう。

靴のスタイルやカラーのバリエーションが増えれば、それに合わせたファッションもますます楽しくなりそうです。まずは定番のローファーあたりからバージョンアップしてみては?

※商品価格は2020年2月時点のものです。

<取材協力>

伊勢丹新宿店

伊勢丹新宿店
メンズ館地下1階紳士靴フロアのコンセプトは、世代や職種、立場を問わず靴選びを楽しめる「シューズテーマパーク」。今回紹介したハイエンドのビジネスシューズのほか、スニーカーやサンダルなどのカジュアルシューズも扱っています。
住所:東京都新宿区新宿3-14-1 電話:03-3352-1111(大代表)
伊勢丹 新宿店 ウェブサイト(外部サイト)

ライタープロフィール
丸茂 健一
丸茂 健一
編集者・ライター。1973年生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、旅行雑誌編集部勤務を経て、広告制作会社で教育系・企業系の媒体制作を手がける。2010年に独立し、株式会社ミニマルを設立。ビジネス全般、大学教育、海外旅行の取材が多い。

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