「売れ残り」の洋服に新たな価値を。衣類の大量廃棄問題に挑むRenameとは?

「売れ残り」の洋服に新たな価値を。衣類の大量廃棄問題に挑むRenameとは?

「売れ残り」の洋服に新たな価値を。衣類の大量廃棄問題に挑むRenameとは?

食品が廃棄される食品ロス問題がクローズアップされていますが、アパレル業界でも売れ残った衣類の大量廃棄が問題視されています。今回は、売れ残りの衣類に新たな価値を与えることで大量廃棄問題の解決に挑む取り組み「Rename(リネーム)」をご紹介します。

アパレル業界の闇~28億着の半数が売れ残りに

アパレル業界の闇~28億着の半数が売れ残りに

2018年9月、耳を疑うようなニュースが社会に大きな衝撃を与えました。年間に供給される約28億着の衣類のうち、実に約半数が余剰在庫として売れ残り、一部は新品のまま焼却処分されているというのです。処分される衣類がもったいないのはもちろん、廃棄にかかるコストや焼却処分の際に発生するCO2についての問題も指摘されました。

今は単に商品やサービスの内容だけでなく、環境への配慮やサステナブルな経営姿勢が企業に求められる時代。なぜ、アパレル業界では時代の流れに逆行するような「大量生産・大量廃棄」が、いまだに行われているのでしょうか?その理由としては、アパレル業界ならではの以下のような事情が指摘されています。

・在庫処分の大幅値下げでブランドイメージを損ないたくない
・ファストファッションでは大量生産しないと安く売ることができない
・季節によってファッションのトレンドが目まぐるしく変わる
・倉庫保管スペースの確保が難しい

こういった事情から、せっかく作った衣類を大量廃棄するのが、アパレル業界の慣例となってしまっていたのです。

そんな状況に風穴をあけるべく立ち上がったのが、2008年創業の株式会社FINE(愛知県名古屋市)です。同社では2016年にアパレルの余剰在庫を新たな商品として販売するプロジェクト「Rename」を立ち上げ、衣類の大量廃棄問題解決に向けた取り組みを始めました。

プロジェクト「Rename」

Renameならではの取り組み

実のところ、これまでにもアパレル余剰在庫を買い取って販売している企業はありました。

その場合、買い取られた衣類はブランドや洗濯表示タグが取り外され、「訳あり商品」として再販されています。こういった再販商品は着用するには問題ありませんが、洗濯表示タグがないために自宅での洗濯が難しく、クリーニング店で扱ってもらえないこともよくあります。

Renameが画期的だったのは、元のブランドのタグを取り外し、新たにRenameブランドとして売り出す仕組みを作ったことです。

服の価値を維持しつつ、タグを付け替え、新たなブランドとして命の息吹を与えるのです。

Renameの仕組みを支えているのは、ブランドとの信頼関係。きちんとブランドタグを付け替えたことを証明するために、Renameでは、取り外したタグを一つ残さずメーカーに返却しています。

返却するタグが1枚でも足りないとRenameとしての販売が禁止になるブランドもあるため、商品管理は徹底的に行われています。

工場でのタグの付け替え作業
工場でのタグの付け替え作業

ブランドネームでなく「質」を重視する消費者からの支持を獲得

しかし、実際のところ、ブランドネームのタグがない衣類は売れるのでしょうか?

答えは「YES」。Renameではもともとのブランドの3〜8割引き程度の価格で商品を販売し、1年で7〜8割程度、2〜3年でほとんどの商品を売り切っています。

その理由は2つ。まずは価格です。購入したお客さまが満足度を得られるよう、質を考慮しつつ、割安感が感じられる価格にしっかりと調整します。そう、Renameが売っているのはブランドネームではなく、価格以上の価値がある衣類なのです。

もう一つは、Renameには販売期限がないこと。一般的なブランドはシーズンを終えると、当該シーズンの商品を売ることができなくなりますが、Renameの場合は期限を気にせず、2年目、3年目でも売ることができます。

こうしてRenameは2019年末までに累計で30ブランド、30万枚以上の衣類を販売。着実にファンを増やし、衣類の大量廃棄問題に一石を投じる取り組みとして注目を集めています。

出番を待つ衣類たち。ベーシックなデザインが主流
出番を待つ衣類たち。ベーシックなデザインが主流

オンラインとポップアップ・ストアで販売

オンラインとポップアップ・ストアで販売
大丸梅田店でのポップアップ・ストア

「価格以上の上質な衣類を買える!」と聞けば、どこで買えるのかが非常に気になるところです。Renameは卸売商材としてスタートしましたが、現在ではリネーム公式オンラインストア「Rename.jp」と、ファッションEC大手のロコンドと提携した「LOCONDO Rename」にシフトし、ほとんどをオンラインで販売しています。

同時に、百貨店やショッピングセンターにポップアップ・ストアとして出店・販売しています。ポップアップ・ストアを出店することによってRename側には実際の商品を見てもらい、より多くの人に知ってもらうことができるメリットがあります。同時に百貨店やショッピングセンター側には、環境に配慮したサステナブルな企業(=Rename)を招くことで、今の時代のあり方に敏感に反応していることをアピールしたいという狙いもあるそうです。

同社としては「今のところRenameの実店舗を持つ計画はない」と話していますが、様々なアパレル店舗にRenameのコーナーを設置することを検討しているそうです。今どきの消費者はアパレル業界の仕組みにも精通しています。したがって、Renameの商品を販売することは、各ブランドにとって必ずしもマイナス要素ではなく、むしろ大量廃棄問題に取り組んでいる姿勢をアピールするための絶好のチャンスとなっているのです。

キーワードは「隠すのではなく、見せる」。Renameは、既存のアパレルブランドともうまく共存しながら、業界全体でロスを出さない仕組みを模索しています。

布やデザインの再活用にも取り組む

布やデザインの再活用にも取り組む

Renameの当初の目的は、売れ残った衣類のタグを付け替えて廃棄数を減らすことですが、アパレル業界の過剰在庫は衣類だけではありません。衣類を作るための「布」の在庫も大きな問題です。

そこで同社では、2019年10月、Renameに続く次の取り組みとしてクロスプラス株式会社(本社:愛知県名古屋市)と共同で、廃棄される生地を活用する取り組み「Rename X(クロス)」をスタート。メーカーとの提携を通じて、売れ残りの生地を活用した服づくりに取り組んでいます。デザインも、提携メーカーの過去のストックを利用し、“すでにあるもの”をうまく組み合わせて、新しい商品を作っています。

さらには、Rename X(リネーム クロス)の場合、従来のアパレルのようにシーズンごとに新商品を発表するスタンスではないので、工場の閑散期に衣類を製造し、年間を通じて安定的な雇用を生み出してもいるのです。

Renameがめざすもの

このように非常に画期的な取り組みを展開しているRenameですが、課題がないわけではありません。

中でも最大の課題は、まだ一般の消費者間での認知度が低い点です。同社ではこの課題を克服すべく、ポップアップ・ストアを今まで以上に色々な場所で展開したり、インスタグラムやツイッターのようなSNS を活用したりすることによって、「Renameの商品や考え方を広く知ってもらいたい」と話しています。

同時に、布の過剰在庫を活用して企業やサークルなどのチームウェアの制作も計画、「チームウェアを身に着けること自体が社会貢献につながること、そしてRenameについても知ってもらいたい」と願っています。

本来、おしゃれはとても楽しいものですよね。お気に入りのブランドの新作を身に着けるワクワク感も大事にしつつ、手頃な値段で、しかも環境にやさしい衣類を選べる選択肢があれば、言うことはありません。ムダなく無理なくサステナビリティに参加できる衣類選びを、ぜひ生活の中に取り入れたいですね。

Renameがめざすもの

<取材協力・画像提供>
株式会社FINE(外部サイト)
※「Rename」は株式会社FINEの登録商標です。

ライタープロフィール
羽根 則子
羽根 則子
大学卒業後、出版編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、渡英。2001年帰国後、フリーランスのダイレクター、編集者、ライターとして、出版、広告、ウェブメディアにおいて、企画、構成、編集、執筆などを行う。とりわけ食の分野においては、専門誌や書籍などに深く携わり、手がけた書籍多数。ライフワークはイギリスの食。近著に『増補改訂 イギリス菓子図鑑』。羽根則子紹介ページ(外部サイト)

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