スパークリングワインの種類

スパークリングワインとは端的にいうと、発泡性のワインのこと。有名なフランスのシャンパン(シャンパーニュ)も、近年、国際的に人気の高いイタリアのプロセッコもスパークリングワインの一種で、呼び方の違いは産地の違いに過ぎません。まずは名前をよく聞く、代表的なスパークリングワインの特徴をみていきましょう。
スパークリングワインの最高峰、シャンパン
もっともよく知られるスパークリングワインといえば、フランスのシャンパン(シャンパーニュ)ではないでしょうか。
このシャンパン、シャンパーニュと呼ばれることもあるように、フランスはシャンパーニュ地方で造られているスパークリングワインです。ここで造られているすべてのスパークリングワインをシャンパン(シャンパーニュ)と呼ぶわけではなく、ブドウの種類、製法などを満たしたものだけがシャンパン(シャンパーニュ)を名乗れるのです。
ちなみに、フランスのスパークリングワインは、ヴァン・ムスーと呼ばれ、シャンパン(シャンパーニュ)はヴァン・ムスーの一種です。
シャンパン(シャンパーニュ)には高価なワインというイメージがあるかと思いますが、これは手作業で丁寧に造られるため。丹念に造られたワインならではの、きめ細かい泡と心地良い上質な味わいのシャンパン(シャンパーニュ)は、ここぞ!の時に飲みたいスパークリングワインです。

気軽なスパークリングワインの筆頭、カバ

すっかり日本の飲食シーンに定着したバル。タパスやピンチョスと呼ばれる小皿料理とワインを楽しめる、スペイン風居酒屋です。バルでは、スペイン産の赤、白ワインのみならず、カバと呼ばれるスパークリングワインもよく飲まれます。
カバはシャンパン(シャンパーニュ)と同じく伝統的な製法で造られますが、値段はぐっとお値打ち。だいたいシャンパン(シャンパーニュ)の半値〜1/3ぐらいで楽しめることから、バルの定着とともに、カバの知名度、そして人気が上がりました。
カバは、シャンパン(シャンパーニュ)同様、製法やエリアなどの面から名乗るための条件があります。一般的なスペインのスパークリングワインはエスプモーソと呼ばれます。
世界的に大ヒット、イタリアのプロセッコ

2010年ごろから世界的に大ヒットとなっているスパークリングワインがあります。それはイタリアのプロセッコ。北イタリアの土着のブドウ品種、グレラ(かつては、その名も“プロセッコ”)をメインに使って造られるワインで、2013年には世界でもっとも売れているスパークリングワインとなりました。
イタリアのスパークリングワインはスプマンテと呼ばれ、プロセッコはスプマンテの一種となり、地域、ブドウ、製法などの条件を満たしたものだけが、プロセッコと呼ばれます。
プロセッコが世界的に大ヒットとなった理由は、気軽に楽しめる味と価格。親しみやすいフレッシュでフルーティーな味とお財布にやさしい値段が人気に火を点けました。
スパークリングワインというと、ちょっと澄ました印象を持たれがちですが、プロセッコはカジュアルに楽しめる、普段飲みOKのスパークリングワインです。
産地も製法も色もいろいろ

シャンパン(シャンパーニュ)、カバ、プロセッコとご紹介しましたが、「ワイン産地にはスパークリングワインあり」といっても過言ではないほど、各エリアで多種多様なスパークリングワインが造られています。
日本でも造られていますし、ドイツのスパークリングワインには、ゼクトと呼ばれるキリッとした味わいの高級スパークリングワインがあります。1990年代からは、シャンパン(シャンパーニュ)と同じ製法、似た土壌や気候条件のもとで造られるイギリスのスパークリングワインも世界で高い評価を得ています。
また、スパークリングワインは透明なものだけではありません。ロゼもあれば、深いルビー色で魅せる赤のスパークリングワインもあります。通常の赤ワインはちょっと重くて、という方も、軽い口あたりのスパークリングワインなら楽しめるのではないでしょうか。
泡がごく弱い、微発泡ワインもあります

喉越しすっきりのスパークリングワインを飲みたいけれど、炭酸が強いのは苦手、という方もいらっしゃるでしょう。そんな方におすすめなのは、弱発泡ワインです。スパークリングワインよりもガス圧が低く、ごく弱い泡なので軽やかな口あたりが持ち味です。
この弱発泡ワインは、フランスではペティヤン、イタリアではフリッザンテと呼ばれます。
スパークリングワインに合う食べ物

スパークリングワインは食前酒で飲まれることが多いように、ワインだけで楽しむこともありますが、食事と合わせて楽しむのもおすすめです。
さわやかな酸味、シュワシュワとした泡が口の中をさっぱりとさせてくれるため、洋食のみならず、和食や中華・エスニックでも合わせやすく、使い勝手の良いワインです。
食べ物を選ばない懐の深さは、料理だけではありません。フレッシュな果物、デザートやお菓子ともスパークリングワインは好相性です。アフタヌーンティーなどでスパークリングワインとのセットが見られるのはその表れです。
家で飲むときのポイント
家でスパークリングワインを飲む際には、気をつけたいことがあります。それは、発泡性なので一度開けたら炭酸が抜けてしまうこと。
スパークリングワインのコルクは抜栓するとキノコ型になってしまうので、再び栓をすることができません。そんなときのために「スパークリング(シャンパン)ストッパー」と呼ばれる便利なアイテムがあります。飲み残しのスパークリングワインの瓶口に押し付けて栓をすることで、炭酸が抜けるのを防いでくれるこのストッパー、ワインショップやオンラインなどで、1,000円程度で購入できます。
とはいえ、一度抜栓したものは炭酸が抜け、酸化が進むのは免れないので、ボトルを開けた翌日か翌々日には飲みきりましょう。それでも余ってしまった場合は、料理酒として使うのが手です。
購入したスパークリングワインは、15℃ぐらいの風通しの良い涼しい場所で保存し、飲む2日前に冷蔵庫に移動させるようにしましょう。

一口にスパークリングワインといっても、シャンパン(シャンパーニュ)に代表される高級品から、カジュアルに飲めるものまでバラエティ豊かです。家で飲むときのポイントも参考に、誕生日や記念日、クリスマス、お花見からいつもの食卓まで、様々なシーンで、よりおいしくスパークリングワインを楽しみたいですね。
ライタープロフィール

大学卒業後、出版編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、渡英。2001年帰国後、フリーランスのダイレクター、編集者、ライターとして、出版、広告、ウェブメディアにおいて、企画、構成、編集、執筆などを行う。とりわけ食の分野においては、専門誌や書籍などに深く携わり、手がけた書籍多数。ライフワークはイギリスの食。近著に『増補改訂 イギリス菓子図鑑』。
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