シェアリングエコノミーとは?
シェアリングエコノミーとは、個人や会社が所有するヒト・モノ・サービス・場所など活用可能な資産を、インターネットを介してほかの多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組みのこと。近年、「欲しいものは購入するのではなく、必要な時に借りてほかの人と共有すれば良い」という価値観が広がり、シェアリングエコノミーの需要が高まっています。

レンタルとの比較-違いとメリット・デメリット
買わずに借りるだけなら、レンタルと何が違うの?と思われた方もいるかもしれません。実際に、シェアリングエコノミーのシステムを導入しているのに「レンタル」と謳っているサービスも存在します。まずは、レンタルとの違い、メリット・デメリットを見ていきましょう。
シェアリングエコノミーとレンタルの大きな違いは、レンタルでは貸し手と借り手が存在しお金を払って必ず借りる行為が発生するのに対し、シェアリングエコノミーでは借りる以外に共有する、融通する場合もあります。
レンタカーとカーシェアリングを例にとってみましょう。レンタカーでは、「家族旅行で大きな車に乗りたいから」「引越しで小さなトラックが必要だから」など断続的なタイミングで数時間から数ヵ月といった期間に、車種を選んで車を有料で借ります。カーシェアリングは複数の会員がある特定の車を共有していて、それぞれが利用したい時、一時的にその車を借ります。会員たちが日常的に利用するイメージです。

ほかにも、インターネットを介したマッチングシステムで取引が成立する点、利用者と提供者のレビューによる相互評価制度がある点などが、レンタルとの違いとしてあげられます。では、シェアリングエコノミーのメリット・デメリットは具体的にどんなものがあるのでしょうか。
メリット①遊休資産の活用
使われていない車を個人や企業に貸すカーシェアリング、空き地を駐車スペースとして貸す駐車場シェア、保育士の資格や子育ての経験を持つ主婦によるベビーシッターサービスが広がっています。
シェアリングエコノミーの仕組みを使えば、これまで活用されずに眠っていた個人や企業の車・土地・知識・経験など価値ある資産を有効活用することができます。利用者にとっても提供者にとってもメリットの大きいシステムといえるでしょう。
メリット②利用者・提供者ともに経済的
提供者の立場では「初期費用なし、もしくは安く抑えてスタートできること」が大きなメリットです。多くの場合、専用アプリに登録するなどして開始できます。利用者としてのメリットは、レンタルと比較して手軽・安価にサービスを使用できることが多いです。
デメリット①保険・補償制度の整備
まだ成長途上のサービスであるため、事故やトラブルが発生した際の保険や補償制度が不明確な場合があります。心配な方は、事前にしっかり確認しておきましょう。近年ではシェアリングエコノミー向けの新しい保険商品なども登場し、保険・補償制度が整いつつあります。
デメリット②法律の整備
法律の整備がまだ進んでいない点も、保険・補償制度の整備と同様にシェアリングエコノミーの課題です。従来の法律では提供者が企業であることを前提としている場合が多く、個人が提供者の場合にどう適用されるのか不明確なうえ、違法なサービスを取り締まる体制が整っていません。
後にご紹介するAirbnb(エアビーアンドビー)に関連し、2018年6月に施工された住宅宿泊事業法では、ホストに都道府県知事へ住宅宿泊事業者の届け出を行うこと(インターネット上から申請可能)など一定の規制が課されました。一方、従来の法律ではできなかった住居専用地域でも合法的に営業ができたり、最低宿泊日数の制限を受けることなく一泊のみのゲストの受け入れもできるようになったりと、ホスト側に大きなメリットとなる規制も盛り込まれています。
今後、サービスの普及に伴って法律面での整備が進み、誰でもスムーズな取引ができるシステムになっていくことでしょう。

シェアリングエコノミーあれこれ
では、シェアリングエコノミーには、具体的にどんなサービスがあるのかを見てみましょう。思いがけないシェアリングエコノミーのサービスが見つかるなど、新たな発見があるかもしれません。
Uber
シェアリングエコノミーはUber(ウーバー)と、次にご紹介するAirbnbが代表格です。Uberは配車の予約から決済まで専用アプリで完結する配車サービス。高級車など乗ってみたい車種を選ぶこともでき、ドライバーの評価を確認してから配車予約できます。アプリ上で車が今どこにいるかの確認も可能。いつ来るか分からないタクシーを道端で待つ必要がなく、運転技術や接客がほかのユーザー評価で事前確認できます。Uberから誕生した、スマホで注文した食事をデリバリーしてくれるUber Eatsは、一般人が登録して「配達パートナー」となり、自分のバイクや自転車などで食事を運ぶ形態。スケジュールが流動的な仕事をしている人などのサイドビジネスとして、空いた時間に働くことができます。有名レストランからファストフードまで多くの飲食店が出店しており、利用者数も伸びています。
Airbnb
エアビーアンドビーは、空き部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を借りたい人(ゲスト)とをつなぐウェブサービスです。エアビの略称で親しまれています。外国人観光客の増加などにより日本国内のホテル不足が懸念されるなか、ユニークな部屋に泊まりたい、ホストとの交流も楽しみたい、ホテルよりも割安に旅行をしたい、などのニーズが高まっています。
キッズライン
ベビーシッターや家事代行のマッチングサービスを行うキッズラインは、サービス提供者であるサポーターの研修制度などが充実しており、1時間1,000円からベビーシッターを依頼できる割安感も人気です。保育士や幼稚園教諭、看護師などの有資格者もサポーターとして多数登録しています。
Laxus
ラクサスは、専用アプリからブランドバッグを期間無制限で使えるサービス。数十万円のブランドバックが月額7,480円(税込、2019年11月1日現在)で使えます。利用者としてだけではなく、使っていないブランドバッグがあればラクサスに預けることにより提供者(オーナー)となることもできます。バッグの無料メンテナンスや最適環境での保管もしてくれる、提供者としては嬉しい特典つきです。
シェア畑
誰でも気軽に野菜・果物作りができるシェア畑は、農家の人手不足や高齢化などにより維持・管理できなくなった畑を農業体験したい人が使うなど、遊休地の有効活用を目的として誕生したサービスです。道具や種や肥料などは用意されており、利用者は軍手と長靴のみ持参すればOK。菜園アドバイザーのサポートもあるので、初心者が畑仕事を始めるのにぴったりです。

大切な資産・資源の有効活用に。あなたの資産も、次の人に役立てられるかも
利用者としてはもちろん、提供者としてもメリットが大きいシェアリングエコノミー。車を手放して今はもう使っていない自宅前の駐車場、長期出張中の部屋、子育てスキル、使っていないブランドバッグなど、売るつもりはない、またはすぐ売ってしまうことが難しいモノが、「今、必要としている人」のもとで役に立ちます。シェアリングエコノミーは、あなたの遊休資産を有効活用する最も手軽な方法の一つといえるのではないでしょうか。
シェアリングエコノミーを利用する際のポイントは、マッチングシステムや相互評価制度などを安心して利用できる仕組みを整備しているサービスを選ぶこと。上手く活用できれば、提供者・利用者ともに貴重な資源をシェアしているという感覚が生まれ、消費者としての価値観に大きな変化をもたらすきっかけとなるかもしれません。
【参考文献】
宮﨑康二
『シェアリングエコノミー Uber、Airbnbが変えた世界』
日本経済新聞出版社、2015年
一般社団法人シェアリングエコノミー協会 ウェブサイト
Uber
Airbnb
株式会社キッズライン ウェブサイト
ラクサス・テクノロジーズ株式会社 ウェブサイト
株式会社アグリメディア ウェブサイト
ライタープロフィール
