ソーシャルフットボールクラブ SHIBUYA CITY FCがめざす新しいスポーツクラブの形

ソーシャルフットボールクラブ SHIBUYA CITY FCがめざす新しいスポーツクラブの形

ソーシャルフットボールクラブ SHIBUYA CITY FCがめざす新しいスポーツクラブの形

新型コロナウイルス拡大の影響で様々なスポーツチームがビジネスモデルの見直しに迫られています。そんな中、既存の考え方に囚われない活動で注目されているフットボールクラブSHIBUYA CITY FC代表取締、山内一樹さんにお話を伺います。

「サッカーを通じて社会を良くする」という理念を掲げるスポーツクラブ

――まずは、SHIBUYA CITY FCがどのようなチームなのか教えてください。
「SHIBUYA CITY FCは、その名の通り、渋谷で活動を行うサッカーチームです。2020年は東京都社会人サッカーリーグ2部で優勝し、2021年は都リーグ1部(J7に相当)で戦います。サッカーだけでなく様々な活動をしています。」

――SHIBUYA CITY FCは「Football for good」という理念を持ち、社会の中でどうチームが存在すべきかも重要視しているとお聞きしました。

「僕たちは、もちろんJ1優勝することもめざしてはいますが、競技面の成果(リーグ優勝や日本代表選手の輩出)のみを目標として掲げるだけではなく、サッカーで街や人を、未来にむけてワクワクさせたり、良くしていくことを目標にしています。スタジアムに人を集めて、そこへサッカーを見に来てもらうというよりは、渋谷の街中を一つのスタジアムと見立てて、僕らはその街にどんどん出ていこうと考えているんです。

センター街でストリートフットサルのイベントをやったり、原宿・表参道エリアでアパレル店とコラボをした商品を展開したり……渋谷を歩けば、右を向いても左を向いても、僕らのアクティビティにあふれている状態を作りたいと考えています」


――Football for goodの「good」とはどのようなものなのでしょうか? 具体的な例をいくつか教えていただけますか?

「1.共通体験をつくる。2.コミュニティ作る。3.健康に貢献する。などがあげられます。サッカーを通じて社会全体で共通体験を作ることでコミュニティを作り、さらにはそれに属するみんなで体を動かすことでより良い効果を作り出していければと考えています。」

1.共通体験をつくる

――1つ目の「共通体験をつくる」とはどのようなことでしょうか?具体的に教えてください。

「渋谷区は『ちがいを ちからに 変える街』という基本構想を掲げています。今はコロナの影響がありますが、スクランブル交差点には外国の方も多く、年齢、性別、国籍が色々な人が集まっています。そのため、いかにして異なる人たちを一つに結びつけるのかが課題となっていました。バックボーンの異なる人々の相互理解を深めるために、世界で最も人気があるスポーツである、サッカーが役立てるのではないかと考えました。」

――渋谷区といえば、同性同士のカップルに対して、「パートナーシップ証明書」を発行したことなども有名ですよね。

「はい。そういったことからも分かるように、渋谷は多様な人たちを受け入れてきた街です。そんな街をホームタウンにしているからこそ、僕たちも様々な違いを受け入れる街の一端を担いたいと考えました。」

――今年からチーム名をTOKYOからSHIBUYAへ変更したものもその現れなのでしょうか?

「はい。SHIBUYA CITY FCは東京から渋谷へとホームタウンをより“コンパクトに”したんです。Jリーグが生まれてから28年が過ぎて、J1からJ3まであわせて57クラブになり、すそ野はとても広がってきました。だからこそ、これからの時代にクラブに求められるのは、どれだけ独自性を出していけるのかだと思うのです。」

――なるほど。表面的な変化を求めたからではなく、自分たちの理念を的確に表現しようとするうえで必然の変更だったんですね。合わせて、クラブのエンブレムも変更になっていますよね。

「エンブレムの『S』を形作っている3本の線は、それぞれの長さが違います。長さが異なるのは、色々な人たちが集まって一つの街ができているということを表したからです。さらに、渋谷はファッションの街でもあるので、ファッションにも取り入れやすいよう、シンプルなロゴに変更しました。」

SHIBUYA CITY FCロゴ
SHIBUYA CITY FCロゴ

2.コミュニティを作る

――次に、「football for good」の2つ目のgood、「コミュニティを作る」について教えて下さい。

「渋谷は都会であるがゆえに、そこに住んでも、数年たてば転居をしてしまうようなケースが多く、コミュニティの作りづらい街です。でも、そういう人たちにも、『渋谷は自分の街だ』と意識してもらいたい。サッカーはそのための一つのきっかけになると考えています。」

――様々な人が集う渋谷を一つのコミュニティとしてつなげていく、ということですね。

「住んでいる人たちが、自分たちの街を『自分事』のように考えているほど、良い街だという研究結果もあるそうですが、地域のコミュニティに、色々な人が参画することの大切さをサッカーによって伝えていければと考えています。」

新型コロナウイルス流行以前のホームタウン活動
新型コロナウイルス流行以前のホームタウン活動

3.健康に貢献する

――最後に、「football for good」の3つ目のgood、「健康に貢献する」について教えて下さい。

「例えば、一昨年には(ダンスフロアのある)クラブでプロジェクションマッピングとサッカーを絡めたイベントを開催しました。そこでは小学生のとき以来ボールを蹴っていなかったという若い女性が、生き生きとボールを蹴って楽しんでくださっていて。単純に『身体を動かしましょう』というのではなく、皆さんが運動する機会を僕らが作るというような健康促進にも取り組んでいきたいと考えています。」

渋谷のクラブで開催されたイベント
渋谷のクラブで開催されたイベント

――他にはどのような活動をしているのでしょうか?

「昨年は渋谷を本拠地とする、プロバスケットボールBリーグ所属チーム・サンロッカーズ渋谷と、3人制プロバスケットボールチーム・TOKYO DIMEとともに、渋谷区内の公園等でラジオ体操を開催しました。他にも、新宿区と渋谷区にまたがる新宿御苑で早朝のヨガ教室も行なっています」

――サッカーに限らず、参加しやすい内容で活動をされているんですね。

「はい。様々な方法で色々な方と交流を行っています。おかげさまでホームタウン活動の回数は2019年は96回、2020年はコロナの影響を受けながら169回の実施をすることができました。」

――今年は、コロナ禍の影響でスタジアムへの入場者数の制限などもあり、多くのサッカークラブが減収減益に苦しむことになったと思います。

「今年は、コロナ禍の広がりを見て、従来のビジネスモデルでは太刀打ちができないような状況であると判断しました。そこで僕たちができることは何か話し合い、いままで渋谷で行っていたコミュニティ作りのノウハウやコミュニケーションのノウハウを活かせるのではないかと考えたのです。

SHIBUYA CITY FCの運営会社であるPLAYNEWは企業のSNSアカウントの運用サポートから、コンサルティングに近い仕事まで、多岐にわたって支援をしています。様々な方からご相談をいただき、今年の経営目標もきちんと達成をすることができました。」

新しい時代のスポーツクラブは「強さ」のあり方が変わる

新しい時代のスポーツクラブは「強さ」のあり方が変わる
2020年は東京都社会人サッカーリーグ2部で優勝

――これから、SHIBUYA CITY FCをどんなチームにしていきたいですか?

「強さの定義を変えるというチャレンジをしていきたいです。これまでの時代の強いサッカークラブというのは優勝するような競技力のあるクラブか、収益力のあるクラブだけでした。でも、これからの時代は社会的なインパクトを追及できるクラブこそが強いクラブになるのではないでしょうか。僕らはそんな新しい価値観を提唱していきたいなと思っています。SDGsやインパクト投資がすすんできています。旧態依然の価値観を変え、サッカーの力で渋谷の街を良くしていきたいなと思っています」

過去の常識にとらわれないアクションを起こし、結果を残し始めているSHIBUYA CITY FCのようなクラブこそが、未来のサッカークラブの新しい常識を打ち立てる存在となるのかもしれない。

この人に聞きました
山内 一樹
山内 一樹
渋谷からJリーグをめざす「SHIBUYA CITY FC」代表取締役。ミレニアル世代×スポーツの会社「大学スポーツチャンネル」取締役。
ライタープロフィール
ミムラユウスケ
ミムラユウスケ
2009年1月にドイツへ移住し、ドイツを中心にヨーロッパで取材をしてきた。Bリーグの開幕した2016年9月より、拠点を再び日本に移す。以降は2ヵ月に1回以上のペースでヨーロッパに出張しつつ、『Number』などに記事を執筆。サッカーW杯は2010年の南アフリカ大会から現地取材中。内田篤人との共著に「淡々黙々。」、著書に「千葉ジェッツふなばし 熱い熱いDNA」、「海賊をプロデュース」。岡崎慎司選手による著書「鈍足バンザイ」の構成も手がけた。

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