電力の小売全面自由化とは?暮らしにおよぼすメリット・デメリット

電力の小売全面自由化とは?暮らしにおよぼすメリット・デメリット

電力の小売全面自由化とは?暮らしにおよぼすメリット・デメリット

2016年にスタートした電力の小売全面自由化により、電力をどの事業者から買うのか、供給エリアやライフスタイルなどを考慮して自ら選べるようになりました。ここでは、自由化の背景とともに、メリット・デメリットについてご紹介します。

電力の小売全面自由化とは?

電力の小売全面自由化とは?

かつて電力は、地域ごとに決まった電力会社(以下、旧一般電気事業者/東京電力・関西電力・中部電力・東北電力・九州電力・中国電力・四国電力・北海道電力・北陸電力・沖縄電力)が発電・送配電・小売までを手掛けていました。消費者は、電力を買う事業者を選ぶことができなかったのです。

1995年から、「発電」においては事業者の新規参入が認められ、新規参入した事業者が発電した電力は旧一般電気事業者に売ることができるようになりました。

さらに、2000年3月からは「小売」においても事業者の新規参入が認められ、まずは特別高圧区分(大規模な工場やデパート、オフィスビルなど。契約区分が原則2,000キロワット以上)を対象に、2004年4月からは高圧区分(中小規模の工場やオフィスビルなど)のうち契約区分が原則500キロワット以上を対象に、2005年4月からは高圧区分すべて(契約区分が原則50キロワット以上)を対象にと、段階的に自由化されてきました。

2016年4月1日からは、低圧区分(家庭や個人商店など。契約区分が原則50キロワット未満)も自由化されました。これによって、すべての消費者が供給エリアなどの条件のもと、電力を売る事業者(以下、小売電気事業者)やそれぞれの小売電気事業者が提供する各種料金プランを選べるようになりました。

なお、「送配電」に関しては、小売全面自由化後も旧一般電気事業者が担当しています。ただし、すべての事業者に対する中立性を確保するため、送配電事業の法的分離が行われて、分社化されました。そのため、どの小売電気事業者であっても送配電のネットワークは同じで、送配電の安定性は従来と変わりません。

電力の小売全面自由化が実施された背景

電力の小売全面自由化が実施された背景

電力の供給システムは、大まかに発電・送配電・小売の3つに分類されます。小売全面自由化に伴って新しく参入した小売電気事業者は、一般的に「新電力」と呼ばれ、自社で発電するか日本卸電力取引所(JEPX)などの「卸電力取引市場」から電力を調達して販売しています。後者の市場調達は、多くの新電力が採用しています。では、なぜ電力の小売事業は全面自由化されたのでしょうか。主な狙いを見てみましょう。

電気料金を最大限抑制する

小売全面自由化以前の電気料金は、東京電力や関西電力などの旧一般電気事業者が算出した料金を国が審査して決める「規制料金」となっていました。なお、この規制料金は経過措置として現在も運用されています。

2016年の小売全面自由化により、国の規制がおよばない「自由料金」が誕生しました。そして、これをビジネスチャンスと捉えた様々な企業が小売事業に参入、多様な料金プランやポイントが付くサービスなどを展開するようになりました。このような事業者間の競争によって、電気料金の抑制につなげることを狙いとしています。

市場を活性化し、企業の事業機会を創出する

小売全面自由化はビジネスチャンスとなり、電力市場は活性化します。携帯電話会社が通信と電気のセットプランを、ガス会社がガスと電気のセットプランを提供するなど、既存の事業と電力の小売を組み合わせることで新しい顧客層の開拓をめざす企業も数多く登場しました。

また、自治体や地域の事業者が市場に参入することで、電力の地産地消だけでなく、地域経済の活性化や雇用の創出なども期待されています。

消費者にとってのメリット

消費者にとってのメリット

小売自全面由化によって、私たち消費者は、旧一般電気事業者から新電力に切り替えたり、規制料金から自由料金に変更したりすることができるようになりました。ここでは、主なメリットについて紹介します。

ライフスタイルに合わせ、お得な料金プランを選べる

ライフスタイルに合った小売電気事業者や料金プランを選べることで、電気料金を節約できる可能性が高まりました。また、携帯電話やインターネット回線、ガスなどとセットで契約することで割引されるプラン、毎月の電気代に応じて各種ポイントが貯まってショッピングに還元できるサービスなどもあります。そのため、電気料金だけなら以前と変わらないとしても、光熱費トータルなら料金が節約できるかもしれません。

環境に優しいエネルギーや地域に貢献するエネルギーを選択できる

電気事業を含むエネルギー転換部門(石油・石炭などの一次エネルギーを電力などの二次エネルギーに転換する)による二酸化炭素排出量は日本の排出量の約4割を占めています。

地球温暖化の進行を食い止めるため、世界的に二酸化炭素排出量の削減が叫ばれるなか、二酸化炭素をほとんど排出しない、太陽光・風力・水力・地熱などの再生可能エネルギーを利用した電力を販売する小売電気事業者を選ぶことで、環境問題への貢献や事業者の理念を支持することができます。また、地域の事業者から電力を購入すれば、地域活性化や電気の地産地消にも役立つでしょう。

消費者にとってのデメリット

消費者にとってのデメリット

次に、切替の際に失敗しないよう、主なデメリットについても紹介します。

契約に縛りがある場合

料金プランによっては、月々の電気料金を抑える代わりに、1年契約や2年契約といった契約期間を設け、解約する場合は解約手数料や違約金を設定していることがあります。「節約できそうだ」と思って切り替えても、実際に使ってみたらライフスタイルに合っていなかった場合などは、再度の切替がしにくくなります。

料金が値上がりする可能性

卸電力取引市場の価格に連動して電気料金が決まる「市場連動型プラン」の場合、市場の取引価格が安い場合は電気料金も安くなりますが、取引価格が上昇すると電気料金も上昇します。なお、料金単価に上限・下限を設けた市場連動型プランもあります。

支払方法が限定される

旧一般電気事業者の場合、支払方法は、クレジットカード払い・口座振替・振込用紙などに対応しています。一方、新電力の場合は、クレジットカードのみの場合や払込用紙での支払に対応していないことがあります。

ライフスタイルをふまえて「電気」を考えてみよう

ライフスタイルをふまえて「電気」を考えてみよう

小売全面自由化により、私たち消費者は、旧一般電気事業者以外からも電力を買うことができるようになりました。様々な料金プランも登場し、お得なプランを選んで節約する、ポイントを貯めてほかの買い物に活用するなど、家計への好効果が期待できます。また、環境問題や地域経済の活性化に貢献するなど、より良い社会の実現に一役買う選択をすることもできます。自分のライフスタイルをふまえ、あらめて「電気」について考えてみてはいかがでしょうか。

・本コンテンツは執筆時点(2023年3月)の情報に基づき作成しております。

ライタープロフィール
安楽 由紀子
安楽 由紀子
1973年、千葉県生まれ。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経てフリーランスのライター、編集者に。ウェブ媒体や雑誌、広報誌で芸能人、スポーツ選手、文化人、ビジネスパーソンへのインタビューを行うほか、単行本の編集やライティングも行う。

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