税制改正大綱の読み方を解説!家計に影響を与える項目とは?

税制改正大綱の読み方を解説!家計に影響を与える項目とは?

税制改正大綱の読み方を解説!家計に影響を与える項目とは?

翌年度以降の税制改正の方針をまとめたものを「税制改正大綱」といいます。毎年12月中に閣議決定され、翌年4月から新しい税制が施行されるのが一連の流れとなります。この記事では、税制改正大綱の概要や記載項目、家計に影響を与える点などを解説します。

税制改正大綱って何?

税制改正大綱って何?

まずは税制改正大綱について、基本的なポイントやどのような項目が記載されているかを把握しておきましょう。

税制改正大綱とは

税制改正大綱とは、各省庁から要望のあった税制改正について、政権与党の税制調査会が中心となり、翌年度以降の税制改正の基本方針をまとめたものです。12月下旬に閣議決定された税制改正大綱をもとに税制改正法案を作成、翌年1月以降の通常国会で審議されます。その後、法案が成立すると4月(翌年度)から新しい税制が施行されるという流れになっています。

閣議決定が行われた税制改正大綱は財務省のウェブサイトで誰でも閲覧でき、翌年度の税制がどのように変わっていくのかを知ることが可能です。ただし、税制改正大綱は100ページを超えるため、まずはポイントをまとめた「税制改正の大綱の概要」をチェックしてみるのが良いでしょう。概要版は数ページ程度で税制改正大綱のポイントが示されており、主要な改正点を把握できます。

税制改正大綱には、税目別に様々な変更点が記載されています。ただし、税制改正大綱がそのまま法案となるケースが多いものの、具体的な適用要件や税額の算出などについては、法案が成立した後に国税庁が公表するパンフレットやウェブサイトなどを確認する必要があります。

税制改正大綱の記載項目

税制改正大綱では税目ごとに情報が記載されています。主な記載項目をあげると、次の通りです。

・個人所得税
・資産課税
・法人課税
・消費課税
・国際課税
・納税環境整備
・関税 など

例えば、2022年度の税制改正大綱では住宅ローン控除の控除率が1.0パーセントから0.7パーセントに引き下げられました。これは住宅ローンの金利水準が低く抑えられているという背景から税制改正大綱に盛り込まれたと考えられます。

税制改正大綱には、家計に影響を与える部分もあります。どういった点に変更があるのかを知っておくと、税金の支払などの準備をあらかじめ整えやすくなるでしょう。

税制改正大綱が家計に与える影響とは?

税制改正大綱が家計に与える影響とは?

「税制改正大綱」の家計への影響

税制改正大綱で盛り込まれる項目は多岐にわたりますが、ここ数年の税制改正大綱を参考に、変更された項目の内容と家計への影響を解説します。

住宅ローン控除

税制改正大綱には、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)に関する項目が盛り込まれる場合があります。2022年度税制改正大綱においては、前述の通り控除率が1.0パーセントから0.7パーセントに引き下げられたり、住民税からの控除額の上限が「前年度課税所得×5.0パーセント(最大97,500円まで)」に引き下げられたりしました。

その他、以下の点も変更されました。

・ 新築住宅の場合、原則として10年から13年に控除期間を延長
・ 住宅性能が高い住宅を購入するほど多くの控除が受けられる仕組みに変更
・ 適用対象となる築年数に関する要件は廃止
・1982年以降に建てられた住宅であれば、耐震基準適合書などの証明書の提出不要

「住宅ローン減税」についての詳細は、こちらの記事で詳しく説明しています。
そろそろマイホーム。そんなときに知ってほしい「住宅ローン減税」

贈与税の非課税措置

贈与税は個人から贈与によって財産を取得したときにかかる税金です。2022年度の税制改正大綱では、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合についての、贈与税の非課税措置の見直しが行われました。

これは、住宅購入の際の直系尊属(両親や祖父母)からの資金援助に関しては、定められた金額の範囲であれば非課税になる制度です。非課税特例を受けるためには、一定の要件を満たすことや、申請が必要になります。

2022年度の変更点としては、贈与を受ける受贈者の年齢要件の18歳以上への引き下げや、適用期限の2年間の延長(2023年12月末まで)などが定められました。

前述の住宅ローン控除とあわせて、マイホームの取得を検討している人にとっては重要な変更といえるでしょう。

税制改正大綱が家計に与える影響とは?

また、2021年度の税制改正大綱では、教育資金の一括贈与非課税措置の見直しが行われ、受贈者の所得要件や使い方などに変更がありました。適用期限が2年延長され、2023年度の税制改正大綱ではさらに2年延長されました(2025年3月末まで)。

教育資金の一括贈与非課税措置とは、祖父母や両親などが30歳未満の子や孫に教育資金を贈与する場合、1,500万円まで非課税で一括贈与できる制度です。また結婚・子育てに関する資金についても、子や孫が18歳以上50歳未満であれば1,000万円までの贈与が非課税となります。

住民税の非課税措置

税制改正大綱では国税だけでなく、地方税に関するものも盛り込まれます。2019年度の税制改正大綱では子どもの貧困に対応するため、個人住民税の非課税措置が取られました。

事実婚状態でないことを確認したうえで支給される「児童扶養手当」を受け取っており、前年の合計所得金額が135万円以下であるひとり親世帯に対して、個人住民税を非課税とする変更が行われました。

配当所得等に係る課税方式

上場株式の配当金や上場投資信託の分配金などを受け取る際の、所得税と個人住民税における課税方式の選択に関する変更もありました。

配当所得などの受け取りには、証券会社などの金融機関に口座を開設する必要があり、納税方法に応じて一般口座(※1)と特定口座(※2)の2種類から選択します。

※1:特定口座やNISA口座で管理していない上場株式等を管理する口座。投資家が1年間の売買損益を計算して確定申告を行う。
※2:個人投資家の申告・納税手続きを簡素化するために導入された口座。証券会社が1年間の損益を計算して年間取引報告書を作成する。

特定口座では、金融機関から送られてくる年間取引報告書で、基本的に自身での確定申告が不要となる「源泉徴収あり」と、原則として自身での確定申告が必要となる「源泉徴収なし」を選択します。

2022年度以前は、「源泉徴収なし」の特定口座で上場株式の配当金や上場投資信託の分配金などを受け取った場合、所得税と住民税で別々の課税方式を選ぶと税負担を抑えることができました。

しかし、2022年度の税制改正大綱によって課税方式の変更が行われ、所得税と住民税の課税方式を一致させることが決められました。この改正によって、課税方式を別々に選択することができなくなりました。

NISA制度

2023年度の税制改正大綱では、資産所得倍増プランで掲げる「貯蓄から投資へ」の流れを実現するため、NISA制度の大幅な見直しが行われました。

NISAとは、投資の利益にかかる税金が非課税になる制度のことです。これまでNISA制度には期間的な制限がありましたが、2024年1月からは恒久的な制度になることが決められました。また、5年または20年と定められていた非課税期間は無期限となり、投資可能額の上限も大幅に引き上げられます。これらの見直しにより、投資への後押しが更に進み、個々のライフステージに応じて継続的な資産形成が行えるようになるでしょう。

税制改正大綱の活用方法

税制改正大綱の活用方法

税制改正は毎年行われ、変更される項目は広範囲にわたりますが、家計やライフイベントに関係するものもあるので、自分に関係のありそうな項目を中心にチェックしてみましょう。

自分に関係のある項目は要チェック!

税制改正大綱は、翌年度以降の税制がどのように変わっていくのかを把握する資料として私たちも活用することができます。税制改正には社会情勢や中長期的な展望に基づいた政策などが反映されています。生活に身近な部分だけでなく、仕事においても関係する点があるはずです。

例えば贈与に関する項目については、子や孫の教育資金・結婚資金・子育て資金を考えるときの判断材料にもなるでしょう。税制改正大綱で変更される点をライフイベントに合わせて上手に活用できる可能性があります。

ただし、税制改正大綱はあくまで基本的な方針が示されたものなので、詳細については国税庁のパンフレットやウェブサイトを確認したり、税理士などの専門家に相談したりして把握することも必要です。

税制改正大綱のポイントを把握してチェックしてみよう

税制改正大綱に盛り込まれる内容は、個人所得税や法人課税、資産課税、消費課税など、生活や仕事に関するものも多くあります。変更される点のすべてがあてはまるわけではありませんが、自分に関係する部分はチェックしておきたいものです。

様々なライフイベントで活用できる仕組みを知っておけば、税負担の軽減につながったり、マイホームの取得時期を決めやすくなったりするでしょう。税制改正大綱の内容をすべて読み解くのは大変ですが、まずは公開されている概要版でポイントを把握し、生活に役立てていきましょう。

この人に聞きました
板倉 京さん
板倉 京さん
シニアマネーコンサルタント・税理士・IFA
大手会計事務所、財産コンサルティング会社勤務などを経て、2005年に税理士事務所・株式会社ウーマン・タックスを開業、代表を務める。一児の母でもあり、実生活に根差した視点とわかりやすい解説から、テレビや雑誌などでも人気。著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)、『知らないと大損する!定年前後のお金の正解』『ひとりで楽しく生きるためのお金大全「もしかして結婚しないかも?」と思ったらやっておきたい50のこと』(ともにダイヤモンド社)などがある。
ライタープロフィール
方山 敏彦
方山 敏彦
不動産・マネー・人事労務・知財法務の分野で強みを持つウェブコンテンツ制作会社を12年間経営、代表者兼ライター。同社ではビジネス系の書籍の編集・出版プロデュースにもあたっている。日本大学法学部卒、社会人学生として慶應義塾大学に在学中。著書に『ザ・ウェブライティング』(ゴマブックス)、FP資格取得。データサイエンス・AI分野を修得中。

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