未来の働き方はどうなるの?働き方の新たなカタチ「ギグワーカー」

未来の働き方はどうなるの?働き方の新たなカタチ「ギグワーカー」

未来の働き方はどうなるの?働き方の新たなカタチ「ギグワーカー」

家事の負担軽減やコロナ禍での巣ごもり需要により、拡大を続ける宅配サービスビジネス。その仕事の一端を担うのが「ギグワーカー」の存在です。ギグワーカーの働き方やそのメリット、未来の働き方の変化について神戸大学大学院教授の大内伸哉さんにお話を伺いました。

「ギグワーカー」とは?

「ギグワーカー」とは?

ニュースなどで「ギグエコノミー」や「ギグワーカー」という言葉を聞くようになりました。「ギグ」とは、音楽用語でミュージシャンが単発でライブに出演することをさします。

そこから、インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方やそうした仕事でお金が回る経済のことを「ギグエコノミー」、仕事を受注した人のことを「ギグワーカー」と呼ぶようになりました。

ギグワーカーが担う主な仕事

仕事内容は依頼主の業務のサポートが中心です。案件を受注するためのスマートフォンなどの通信端末があれば、仕事を請け負うことができます。代表的な仕事内容としては宅配サービスの仕事で、店舗や配送センターから顧客が注文した商品を受け取り、顧客に届けます。

その他にもスーパーやコンビニ、飲食店のスタッフ、引越しや清掃の作業員、データ入力などの軽作業を行う事務スタッフなど仕事の種類は多岐にわたります。さらに、翻訳、デザイン、ライティング、撮影、映像編集、プログラミング、コンサルティング、オンライン講師などの専門的な知識を必要とする仕事などもあります。

ギグワーカーという働き方ができた背景とは?

大内さんによると、「ギグワーカー」という言葉が使われるようになる前から、依頼主の業務をサポートする仕事は存在していたといいます。分かりやすい例としては、フリーランスの通訳者やデザイナー、編集者、さらに在宅ですきま時間にできる内職の仕事などが該当します。

「ギグワーク」という言葉が使われ始めたのは、2000年代に情報技術が発達し、個人がパソコンやスマートフォンを持つようになった頃だといわれています。様々なインターネットサービスの誕生にともない、多岐にわたる新たな業務が増えたことから、企業はそれらの仕事を担う人材を広く求めるようになりました。さらに、アプリケーションなどでその人材の募集を行う環境が整ったことにより、ギグワーカーという働き方ができたのです。

ギグワーカーはなぜ増えたのか?

ギグワーカーが増えた要因の一つに、人材不足があげられます。2022年1月に帝国データバンクが実施した「2022年度の賃金動向に関する企業の意識調査」では、特に、飲食店の76.6パーセントがアルバイトやパートなどの人手が不足していると回答しています。短時間でも労働力を確保するために、ギグワーカーの需要が増加しているのです。

一方、コロナ禍で収入が減少したフリーランスや会社員の副業手段として、ギグワーカーの求人の需要が高まっているという一面もあるようです。

ギグワークに従事している人は、専門技能を持つ人と、必ずしもそうではない人の大きく2つに分けられるといいます。さらに、ギグワークで生計を立てる人もいれば、副業として働く人もいるようです。

このことを踏まえ、ギグワークを取り巻く環境を見てみましょう。

ギグワーカーを取り巻く環境

ギグワーカーを取り巻く環境

政府は、安倍政権時代にギグワーカーを含むフリーランスの増加を政策課題と捉え、成長戦略実行計画(2020年7月)においてガイドラインの策定を決定しました。その後、菅政権が政策を受け継ぎ、2021年3月に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」に対するパブリックコメントの結果および同ガイドラインの取りまとめを発表しています。

大内さんは、「ギグワーカーの働き方は多岐にわたり、その実態を把握することは難しい」といいます。大手クラウドソーシング会社が2021年11月に発表したデータによると、同年10月におけるフリーランス人口は1,577万人、経済規模は23.8兆円となっています。

調査を開始した2015年と比較すると、フリーランス人口は68.3パーセント(640万人)、経済規模は62.7パーセント(9.2兆円)増加しました。また参考までに2021年1月の調査を見ると、フリーランス人口は1,518万人、経済規模で25.6兆円と、この数値からもコロナ禍でギグワークを含むフリーランス市場が大きく拡大してきたことが分かります。

ギグワークの市場規模は拡大していく?

2019年5月に発表したマスターカード社の独自調査で、ギグエコノミーの経済効果が非常に高いことが示されました。ギグエコノミーは年率17.4パーセントで成長し、2023年末までの世界市場規模は4,552億ドル(1ドル=115円で換算した場合、日本円で52兆3,480億円)に達すると推計されています。

ギグワークのメリットや課題

ギグワークのメリットや課題

では、実際にギグワークをするにあたっては、どのようなメリットや課題があるのでしょうか?働く側と企業側のそれぞれの視点から見ていきましょう。

ギグワークの主なメリット

場所や時間にとらわれない

最大のメリットは、自分の希望する場所で、ライフスタイルに合ったペースの働き方ができることがあげられます。また、引き受ける仕事を自分で選べるため、すきま時間を活用したり、自分の自由時間を作りやすかったりすることもギグワークの魅力です。

自分の得意分野をいかせる

高度な専門知識や得意な分野をいかしたギグワークをすることができます。専門性の高い仕事の場合、報酬が高い傾向にあります。

副収入を得ることができる

副業を容認している会社に勤務する会社員が勤務時間外にギグワークをし、副収入を得るケースも増えています。リモートワークの普及により通勤時間が無くなったことで、自由な時間が増えたことも背景にあるようです。

企業側がギグワーカーに仕事を依頼する主なメリット

人件費の抑制

企業はギグワーカーと雇用契約を結ぶ必要がありません。成果報酬型のギグワーカーに仕事を依頼する場合は、業務委託契約を締結します。業務委託契約の場合は労災保険や雇用保険の対象外で、それ以外にも福利厚生、年次有給休暇等の付与がないため、人件費の抑制につながります。

人員不足への対応

労働人口の減少により売り手市場が続き、企業は恒常的な人材不足の問題を抱えています。この状況において、ギグワーカーは人手不足を担う有力な戦力となっています。また、突発的な人員補充に対応できる点も大きなメリットです。

優秀な人材に出会える可能性が広がる

専門的な知識を持つギグワーカーにより業務効率を向上させることで、新たな事業に取り組んだり、事業を発展させたりすることができます。また、能力があっても育児や介護などで恒常的に働くことが困難な人が、ギグワークで即戦力になるケースもあり、双方にとって大きなメリットになります。

ギグワークの課題

大内さんは、ギグワーカーは自由な働き方ができる一方で、会社員のような社会保障制度がないことが課題だといいます。こうしたギグワーカーを含めたフリーランスの働き方を支えるため、前述のように「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されるなど、環境は少しずつ変化してきています。

しかし、多様な働き方をするギグワーカーの一人ひとりの仕事に対するニーズが違うため、様々なことを法的に規定してしまうと、そのメリットが失われてしまう可能性もあると大内さんは指摘します。

また、ITの進化は目を見張るものがあり、それによってギグワークのメリットや課題も変化すると大内さんは見ています。今後、ギグワーカーが担う業務の一部をAI(人工知能)などの先進的な技術が担えるようになっていく可能性が高いためです。

これはギグワーカーに限ったことではないかもしれません。これからはAIやロボットでは代用ができないような高い専門知識を持つ人材や、テクノロジーを理解し新機軸を打ち出せる人材が求められる時代になりそうです。

まとめ

「ギグワーク」は、企業側としては単発・短時間で必要な分だけ労働力を確保できるため、余計なコストがかからないというメリットがあります。個人にとっても、制度や保障が不十分な部分はありますが、時間や場所にとらわれない働き方は副業にも適しており、うまく活用すれば収入を増やす手段になります。

また、今後テクノロジーの進化により、私たちが今やっている仕事内容や職種が大きく変わる可能性があります。変化の激しい時代ゆえ、自分が持っている知識や技術をよりいかせる仕事を都度探すことも検討してみてはいかがでしょうか。

この人に聞きました
大内伸哉さん
大内伸哉さん
神戸大学大学院法学研究科教授
1963年兵庫県神戸市生まれ。東京大学法学部卒、同大学院法学政治学研究科修士課程修了、同博士課程修了(博士(法学))。神戸大学法学部助教授を経て、現職。研究テーマは、技術革新と労働政策、労働法。近著に「誰のためのテレワーク?」(明石書店)、「デジタル変革後の『労働』と『法』」(日本法令)、「人事労働法」(弘文堂)、「会社員が消える」(文藝春秋)など。
ライタープロフィール
佐々木 倫子
佐々木 倫子
ライター、金融アナリスト
日系銀行、シティバンク、シティトラスト勤務や、ITベンチャー企業でのIR・広報を経て、金融に強みを持つライターとして活躍。これまでのキャリアで培った金融の知識と、企業経営の視点、ニュースを複合的に織り交ぜたマーケット分析を得意とする。過去の歴史や経緯を含めた執筆が特色で、食等幅広い分野の執筆も手掛ける一方で、マスコミにて政治、経済を中心としたコラムに関わる仕事やキー局のラジオ番組制作にも従事。日本ウズベキスタン協会理事として中央アジア・ウズベキスタンと日本の友好にも尽力。

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