未来の家計を支えるお金、退職金制度はどうなるの?

未来の家計を支えるお金、退職金制度はどうなるの?

未来の家計を支えるお金、退職金制度はどうなるの?

退職金制度は将来的にどうなるのでしょうか?老後資金の一部ともなる退職金がどの程度もらえるのか、気になっている方も多いでしょう。退職金制度の仕組みと将来に向けた資産形成について解説します。

退職金とは

退職金制度に基づき、会社(雇用主)から退職者に支払われるのが退職金。「退職手当」や「退職慰労金」とも呼ばれています。法令で定められた制度ではなく、会社の就業規則などにより定められているため、勤めている会社によって退職金制度の有無が生じます。日本では会社の規模によって差があり、厚生労働省の調査(平成30年)によると、退職金制度がない会社は、1,000人以上の規模で約8パーセント、100人未満で約22パーセントとなっています。

退職金の受け取り方

退職金の受け取り方は、大きく2つの制度に分かれます。

退職一時金:退職金を退職時に一括もしくはある程度まとめて受け取れる制度
退職年金:一定期間に分けて退職金を受け取る制度

退職金制度を導入している会社は一般的にどちらかの制度を採用していますが、両制度を導入し、「併用して利用する」「退職時にどちらかを選べる」としている会社もあります。この受け取り方も会社の就業規則で決まっているため、勤める会社がどのような退職金制度を採用しているか確認してみましょう。

手元に残る退職金(手取り額)

退職金は、全額が課税対象になるわけではありません。給与明細上「退職所得」として扱われる分に所得税や住民税がかかります。退職所得には企業年金や退職に起因して受け取れる民間の保険金なども含まれます。

退職所得の金額は、以下の計算式で算出されます。

退職所得の金額=(収入金額<源泉徴収される前の金額>-退職所得控除)×1/2

退職所得控除とは、収入金額(源泉徴収される前の金額)から控除される金額のことを指します。

勤続年数退職所得控除
20年以下の場合40万円 × 勤続年数
(80万円に満たないときは80万円)
20年を超える場合800万円+70万円 ×(勤続年数-20年)

退職所得を基に所得税や住民税といった税金が計算され、その金額を差し引いたものが最終的に手元に残る退職金(手取り額)になります。では、実際に手取り額を計算してみましょう。

勤続年数10年、退職金130万円が給付された場合

・退職所得控除額=40万×勤続年数10年=400万円

退職金より退職所得控除額が多いときの税金はゼロになるため、130万円が手元に残ります。

勤続年数22年、退職金1,000万円が支払われた場合

・退職所得控除額=800万+70万×(勤続年数22年-20年)=940万円
・退職所得=(1,000万-940万)×1/2=30万円

退職所得である30万が課税対象になり、そこから所得税と住民税を計算(※)します。

・所得税=(退職所得30万×税率5パーセント-0円)×1.021=1万5,315円
・住民税=退職所得30万×0.1=3万円

この額が退職金から引かれ、以下の金額が手取り額となります。

・手取り額=退職金1,000万-所得税1万5,315-住民税3万=995万4,685円

※所得税と住民税の計算式
所得税(復興特別所得税を含む)=(退職所得×税率-控除額)×1.021(102.1パーセント)
住民税=退職所得×0.1(10パーセント)

所得税の税率

所得金額税率控除額
1,000円以上~ 194万9,000円以下5パーセント0円
195万円以上~329万9,000円以下10パーセント9万7,500円
330万円以上 ~ 694万9,000円以下20パーセント42万7,500円
695万円以上~899万9,000円以下23パーセント63万6,000円
900万円以上~1,799万9,000円以下33パーセント153万6,000円
1,800万円以上~3,999万9,000円以下40パーセント279万6,000円
4,000万円以上~45パーセント479万6,000円

※国税庁「所得税の税率」所得税の速算表より
※「所得金額」は1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額

退職金のモデルケース

退職金のモデルケース

ここでは、日本における退職金のおよその相場に関しても把握しておきましょう。受け取れる退職金は、会社はもちろんのこと、業種、勤続年数などによって金額が異なります。また、自己都合退職か会社都合退職かによっても異なり、一般的には、会社都合退職のほうが多くなります。

退職金の平均

平成30年の厚生労働省の調査によると、定年退職を迎えた人の平均的な退職金額は、大卒が高卒よりも高い水準になっています。

最終学歴退職金の平均額(平成30年版)
大学卒1,983万円
高校卒1,618万円

※調査対象は、勤続年数20年以上かつ45歳以上の退職者。大卒・高卒ともに「管理・事務・技術職」の定年退職の平均値。

業種による違い

退職金は業種によっても異なるようです。

中小企業の退職金事情

業種退職金の平均額
大卒(令和2年版)
退職金の平均額
高卒(令和2年版)
建設業1,313万8,000円1,177万円
製造業1,148万7,000円1,080万4,000円
情報通信業1,154万5,000円864万9,000円
運輸業、郵便業893万2,000円821万9,000円
卸売業、小売業1,088万4,000円1,019万4,000円
金融業、保険業1,725万5,000円調査結果なし
不動産業、物品賃貸業1,353万7,000円調査結果なし
学術研究、専門・技術サービス業1,007万1,000円調査結果なし
生活関連サービス業、娯楽業1,104万2,000円1,129万6,000円
教育、学習支援業(学校教育を除く)656万9,000円調査結果なし
サービス業(他に分類されないもの)996万円1,019万2,000円

※東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」より、定年退職の場合。
※表中の金額は1,000円未満四捨五入

勤続年数による違い

退職金は、勤務年数によっても大きく金額が異なります。10年勤務して退職する場合と、定年まで勤務して退職する場合では、受け取れる退職金額に8倍前後の違いがあります。

学歴勤続年数退職金の平均額(令和2年版)
大学卒10129万5,000円
15234万円
20369万8,000円
25528万7,000円
30686万3,000円
定年987万4,000円
高校卒10102万2,000円
15190万6,000円
20302万7,000円
25431万円
30562万2,000円
定年932万9,000円

※退職一時金制度を対象に調査した金額(会社都合退職の場合)

退職金制度の現状

退職金制度の現状

転職市場の活発化、終身雇用制度の衰退、評価制度が年功重視から成果重視になるなど、労働環境・条件の変化を背景に、企業では退職金制度を見直す動きが活発化。制度を導入している会社が年々減少傾向にあります。さらに、退職金の金額自体も年々減少しているため、老後の資金として、退職金にはあまり期待ができない状況になりつつあるようです。

その一方、老後資金の備えとして、社員自身が資産を運用する企業型DC(企業型確定拠出年金)を導入する会社は増加傾向にあります。

企業型DCとは?

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、会社側が毎月掛金を拠出し、従業員が自ら資産運用を行う制度で、会社の退職給付制度または福利厚生制度の一つになります。また、税制優遇措置があります。

毎月の掛金額は、他の企業年金(厚生年金、確定給付企業年金など)がある場合は月額2万7,500円まで、他の企業年金がない場合は月額5万5,000円までとなります。また、一度加入すると、原則60歳までは資産を引き出すことはできません。転職した場合は、転職先に企業型DCがあれば転職先のDC制度もしくは通算企業年金等に資産を移換したり、後述のiDeCo(個人型確定拠出年金)の口座を開設して、資産を移換することも可能です。

企業型DCを導入している会社の推移

厚生労働省の調べによると、企業型DCを導入している会社は2010年時点で約15,000社でしたが、年々増加傾向にあり、2019年には約36,000社にまで増えています。

企業型DCが開始されたのは2001年10月からであり、途中、導入時や規約変更時に必要な書類や事項が簡素化されるなど、法改正が幾度か行われたことで、会社と従業員それぞれの利便性が向上しました。さらに、退職金と違い、積立不足が生じる心配がないことや退職給付債務が発生しないなどの企業側のメリットも、導入企業増加の一因と考えられます。

また、2022年10月からは法改正により、原則、企業型DCとiDeCoを併用できるようになります(※)。退職金に不安を感じている方は、企業型DCやiDeCoなどを上手に活用することで、老後資金の準備をより効率的に行えるでしょう。

※マッチング拠出の利用や掛金の年単位拠出をしている場合を除く

将来に向けての資金をどう備える?

将来に向けての資金をどう備える?

医療の発達や健康意識の向上などにより、日本では長寿化が進み、老後資金の必要性は高まる一方で、公的年金や退職金額などは減少傾向にあります。2019年、金融庁が発表して話題となった「老後2,000万円問題」は、私たちの老後生活に必要なお金が、退職金や公的年金だけでは不足するという内容でした。

もちろん、老後資金にどれくらい必要なのかはケースバイケースであり、皆が2,000万円不足するとは限りません。ただ、個人の状況を踏まえ、なるべく早いうちから老後資金に備えることが大切になってきているのは確かです。ここからは、その方法の一つである「iDeCo」についてご紹介します。

iDeCoとは?

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、公的年金や企業型DCとは異なり、個人で加入する年金制度です。企業型DCと同様に、一度加入すると、原則60歳までは資産を引き出すことができません。掛金の運用に関しては、個人で行います。

iDeCoと企業型DCの比較

iDeCo企業型DC
加入任意加入会社が制度導入している場合に加入
※会社によっては任意加入
掛金自己負担会社負担
※会社によっては自己負担も可能
納付方法個人口座からの引き落とし
または給与天引き
会社が納付
金融機関の選択個人で選択会社が選択
運用商品金融機関が定める商品ラインアップから選択会社が定める商品ラインアップから選択
口座管理料自己負担会社負担
※会社によっては自己負担の場合もある

iDeCoのメリット

iDeCoの最大のメリットは、税制優遇が受けられることでしょう。積み立てた掛金は全額所得控除となるため、税負担を軽減できます。また本来、資産運用などで得た利益には、20.315パーセントの税金が課せられますが、iDeCoで運用した場合は非課税で再投資されます(※)。

ただし、iDeCoの掛金には上限があります。会社員の場合は、企業年金の加入状況に応じて毎月1万2,000円~2万3,000円まで、公務員は毎月1万2,000円、自営業者や国民年金の任意加入者は6万8,000円、専業主婦(夫)は2万3,000円が上限となります。なお、2022年10月以降は、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金は合算管理されるため、企業型DCの加入状況によってはiDeCoに加入できなかったり、iDeCoの拠出限度額が減額されることがあります。

※運用中の年金資産には1.173%の特別法人税がかかりますが、現在は課税が凍結されています。

iDeCoはどんな人に向いている?

60歳までは引き出しができず、主に老後資金の準備を目的とした制度ですが、20歳から加入できるようになっており、月5,000円からと少額から始めることができます。加入が早ければ早いほど運用期間が長くなり、運用成果が安定しやすくなります。また、運用益が非課税のうえ、元本に加算して再投資されるため、複利の効果を最大限に受けることができます。福利の効果については、『元本を2倍にするには何年かかる?「72の法則」で算出してみよう』でも解説しています。

人生の3大資金といわれる教育資金や住宅資金とともに、老後資金もコツコツ準備していきたいという人は、無理のない範囲で早めに検討してみるのも良いでしょう。ただし、前述の通り、60歳までは資金の引き出しができないため、教育資金や住宅資金などとのバランスを考慮した運用が大切です。

iDeCoに関してもっと詳しく知りたい方はこちら
【未来投資シリーズ】将来に備えよう「iDeCo」

まとめ

退職金・企業年金制度を採用している会社や退職給付額は年々減少傾向にあります。従来の老後資金を年金と退職金でまかなうという考え方は、これからの時代には通用しなくなるかもしれません。様々な制度を活用して、自分自身で資産形成をする必要性が高まってきているのです。今回紹介したiDeCoのように、税制優遇を受けられる制度などの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

参考:
厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 結果の概況:調査の概要」(外部サイト)
国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」(外部サイト)
厚生労働省「各種統計調査」(外部サイト)
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」(外部サイト)
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」(外部サイト)
厚生労働省「企業年金・個人年金制度の現状等について」(外部サイト)
厚生労働省「iDeCoの概要」(外部サイト)

・本コンテンツは一般的な情報提供を目的とするものであり、証券投資取引の推奨・勧誘を目的とするものではありません。

ライタープロフィール
岡 拓馬
岡 拓馬(おか たくま)
ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士)/ Webライター / ブロガー / 元航空自衛官 / ドイツ留学(1年間経験) / 著書『トラベルライターの教科書』Kindle出版 / 現在は、場所や時間にとらわれない働き方を実践しており、世界各地でワーケーションをしながら執筆活動を行っている 【個人ブログ:九州男児のぶらり旅】

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