貯蓄と生産性向上を実現するために気を付けたい「パーキンソンの法則」とは?

貯蓄と生産性向上を実現するために気を付けたい「パーキンソンの法則」とは?

貯蓄と生産性向上を実現するために気を付けたい「パーキンソンの法則」とは?

人は時間やお金があればあるだけ費やしてしまうことを意味する「パーキンソンの法則」。仕事や貯蓄が効率良くできない人は、この法則が働いているかもしれません。今回はこのパーキンソンの法則について、お金のプロが有効な対策を解説します。

人間は無意識の内に時間やお金を浪費する!

人間は無意識の内に時間やお金を浪費する!

「給料が増えたのに貯蓄できない!」「締切ギリギリまで作業してしまう」、誰しも心あたりがありそうなこれらの行動は、1958年に英国で提唱された「パーキンソンの法則」が働いているとも考えられます。

パーキンソンの法則とは、人間は無意識の内に時間やお金を浪費してしまうという法則。貯蓄や仕事の妨げとなるこの法則を理解すれば、生産性を高めることができるかもしれません。

今回は、これまでに2万1,000件以上の家計を見てきたファイナンシャルプランナーの横山光昭さんに対策方法とその実践のコツをお聞きしました。

パーキンソンの法則とは?

パーキンソンの法則とは?

「パーキンソンの法則」とは、1958年にイギリスの歴史・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した法則です。当時のイギリスの行政組織を研究する中で導き出されたもので、以下の2つが広く知られています。

第一法則「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」

仕事の量とは無関係に、役人の数が毎年増え続けていることから考え出された法則です。パーキンソンは、人数が増えて一人あたりの仕事量が減っても、労働時間の減少が見られないことに着目。その観察から「人間は与えられた時間を、目一杯使ってしまう」としています。

第二法則「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」

税収が毎年増えているにもかかわらず、常に予算財源を使い切ってしまい、税金の負担が増えたという財政状況に基づいた法則です。「人間はあればあるだけお金を使ってしまう」ことを示しています。

第一法則と第二法則をまとめると「人は、与えられたお金や時間をすべて使ってしまう」傾向があるといえます。この2つの法則は1950年代のイギリスで導き出されたものですが、現代日本における多くの場面にも通じる法則といえます。

仕事におけるパーキンソンの法則の事例と対策

仕事におけるパーキンソンの法則の事例と対策

パーキンソンの法則を仕事と貯蓄にあてはめた場合の事例と、その対策をご紹介します。まずは、第一法則の「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」ケースについて見ていきましょう。

事例1「会議を予定時間いっぱいまで続けてしまう」

例えば、会議時間を1時間に設定していると、目的の達成に関係なく1時間ダラダラと続くことはありませんか?これは前もって使える時間が設定されていることで、与えられた時間をすべて使ってしまうという事例です。

事例2「締め切りギリギリまで作業する」

1時間あれば完成するはずの会議資料やレポート。とはいえ提出期限まで余裕があるとなかなか作業に集中できず、早めに取り組み始めても完成するのはいつも締切直前。これも上記同様に、与えられた時間をあるだけ使い切ろうとするケースです。

時間の無駄遣いを防ぐための対策

人は時間や期限を設定されると、無意識にその時間を使い切ろうとする心理が働くものです。しかし、無駄に時間をかけていては、生産性は良いといえません。

この対策として実践すべきは「自分で期限を決めること」。なかなか取り組み始められないのは、与えられた期限に余裕があるからかもしれません。自分で期限を定め、それまでにタスクを完了するように意識すれば、自ずと生産性も高まるという考え方です。

また、複数の人が出席する会議やミーティングでは、「●●に合意すること」「●●についての結論が出ること」といった、「ゴール」をあらかじめ明確にしておくことが重要です。ゴールに辿り着いたら予定された時刻の前でもそこで終了するよう徹底すれば、必ずしも時間を使い切る必要はないという意識付けにつながります。

最大限の時間を使って仕事をするのは、一見良いことのように捉えられがちですが、取り組む時間の長さだけで評価するのではなく、成果を評価する視点を持たないとパーキンソンの法則に陥ってしまいます。

また、リモートワークだと集中力が持続せず、一つひとつのタスクに時間をかけすぎてしまうと感じている方も多いのではないでしょうか。リモートワークにおいては周囲から仕事の進捗度合いが見え難いため、その日に取り組むべき仕事や期限を明確にして社内やチームで進捗を共有できる仕組みを作ることも重要だと横山さんはいいます。

自宅でも集中して仕事に取り組むためのヒントは、こちらの記事でもご紹介をしています。
「テレワークで集中できない!」を解決する方法とは?

貯蓄におけるパーキンソンの法則の事例と対策

貯蓄におけるパーキンソンの法則の事例と対策

次に、第二法則「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」に関する事例と対策について見ていきます。

事例1「収入が増えても貯蓄が増えない」

月収が手取り20万円から25万円にあがり、5万円の余裕ができるはずなのになぜか貯蓄できない。これは第二法則の「人はお金があればあるほど使ってしまう」にあてはまります。収入が増えたことで今までよりも良い物件に引っ越したり、贅沢品を購入したり、さらには旅行や外食の回数が増えたりと、収入が増えた分、支出も増えてしまっている可能性があります。

事例2「節約を試みるも以前と支出は変わらない」

貯蓄をしようと毎日節約を心がけているつもりなのに、月の支出額が今までと変わらないという人も多いかもしれません。実はこれも、パーキンソンの法則の身近なエピソードの一つ。一度慣れてしまった生活水準を下げるのは思いのほか難しいものです。収入が徐々にあがるにつれ、無意識の内に生活水準があがっていくのはそう珍しいことではありません。

お金を浪費しないための対策

「その月に使った残りのお金を貯める」という貯蓄のやり方は、これまで解説してきた「ある分だけ使ってしまう」というパーキンソンの法則から考えると、現実的には難しいといえるでしょう。

そこで横山さんがおすすめするのは、給料から貯める額を決めて、その残りで生活する「先取り貯蓄」です。支出分、貯蓄分と予算をそれぞれ定め、給料が入ったらすぐに仕分けをしてしまうことで、確実に貯蓄をしていくという方法です。貯蓄専用の口座を開設するのも理想的だといいます。

「お金をあるだけ使ってしまう人は、支出の管理ができていない傾向にあります。まずは生活費がどれくらいかかっているのかを数字として記録してみることから始めてみてください。表計算ソフトやスマートフォンのアプリを活用してみるのも良いでしょう。数字で把握していくと、自分の『こと足りるお金の量』が見えてきます」

また、支出を「価格」でなく「価値」で捉えることも大事だと横山さんはいいます。お金を費やす対象が本当に必要なものなのか、それとも単なる無駄使いなのか。これを知ることが貯蓄への第一歩になるそうです。

具体的な判定方法として横山さんがいつも提案しているというのが、支出を「消費」「浪費」「投資」に分けるというもの。「ショウ・ロウ・トウ」の考え方ともいい、以下のように分類します。

消費:生活に欠かせない支出。食費や家賃、光熱費など
浪費:生活に必要ないが、楽しさを得るために使う支出。娯楽費や嗜好品など
投資:将来的に役に立つ支出。貯蓄や自己投資など

「支出を『ショウ・ロウ・トウ』で分けていくと、100円でも無駄なもの、1万円でも価値があるものが見えてきます。

支出への価値観を持つことが無駄使いしないための近道。いい換えれば、お金を無用に使ってしまう人は、この価値観が定まっていないともいえます。理想的な割合は消費70パーセント、浪費5パーセント、投資が25パーセント。これを把握すれば貯蓄に対する意識も変わってくるでしょう」

「消費」「浪費」「投資」の考え方については、こちらの記事でもご紹介しています。
お金が貯まる体質になる? 普段から意識したい「これは消費?浪費?投資?」

さらに横山さんは、貯蓄を実現するためには「固定費」がカギとなると強調。これまで相談に携わったご家庭では、住宅ローンや保険、通信費、教育費が高いゆえに貯蓄できないケースが目立っているようです。

「特に住宅ローンが家計を圧迫している家庭は本当に多いです。家に対する価値観は人それぞれですが、住宅ローンを組む際は長期的な視点を持って、とにかく慎重に判断できると良いと思います」

また、最近では通信費が必要以上に高額になっているケースが増えているといいます。高額なキャリアから格安スマートフォンやオンライン専用プランへ切り替えるのも、固定費を抑える有効な対策になるそうです。

まとめ

「人は、与えられたお金や時間をすべて使ってしまう」というパーキンソンの法則を通して、お金や仕事における時間の使い方の共通点や、それらの対策が見えてきたのではないでしょうか。

こちらの記事では「仕事」の面で「できる」といわれる人の特徴から、「貯蓄ができる人」になるためのポイントを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
「できる人」の貯蓄術(外部リンク)

人間誰しもが持っている「怠け心」や「甘さ」に起因するともいえる「パーキンソンの法則」。まだまだ先の見えない状況が続く今こそ、先人の知恵である法則を意識して、まずは自分を変えてみてはいかがでしょうか。

この人に聞きました
横山光昭さん
横山光昭さん
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生・貯金プログラムを用いた個別指導で、これまで2万3,000件以上の家計相談を受けてきた。顧客が「現在も未来も豊かな生活を送ることができる」ことを一番の目標にしている。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書に『貯金感覚でできる3,000円投資生活デラックス』など。
ライタープロフィール
松本 奈穂子
松本 奈穂子
メーカー、ITベンチャーを経てフリーライターとして活動。雑誌、書籍、ウェブ、フリーペーパーなどメディア全般を制作。ライフスタイル、旅、金融、教育など幅広い分野で取材・執筆を行う。共同著書に『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』『いちばん美しい季節に行きたい 世界の絶景365日』(パイインターナショナル)

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