バブル経済の歴史に学ぶ、投機的な取引から資産を守るために気をつけるべきこと

バブル経済の歴史に学ぶ、投機的な取引から資産を守るために気をつけるべきこと

バブル経済の歴史に学ぶ、投機的な取引から資産を守るために気をつけるべきこと

コロナ禍での金融緩和によって株式相場が高騰し、短期的な売買で利益を生む投資家(投機筋)もいる中、コロナ緩和マネーはバブル景気を導くのでしょうか?バブル経済の歴史や投機から資産を守る術を、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに伺いました。

バブル経済とは?

バブル経済とは、「経済が加熱しすぎた状況」「資産の本質的価値と値付けされた価格が乖離しすぎた状況」という2つに定義することができます。経済が加熱しすぎているかどうかはその渦中では分からず、後になってあれはバブル経済だった、と認識されることがほとんどなのも特徴です。

日本のバブル経済は80年代の後半から90年にかけてだったといわれ始めたのは、90年代以降の景気が低迷し始めてからのこと。当時はほとんどの人が「株価は適正だ!」と主張し、バブル経済だと気付いていなかったと崔さんはいいます。

「投資とは金融商品の価値の成長や価格の上昇を期待してお金を投じること、投機とは短期的な価格の乱高下で利益を得ようとすることですが、バブル経済時は後者の投機をする人が非常に多かったといえるでしょう」

「バブル」と聞くと真っ先に、90年代前半の日本のバブル経済をイメージする人が多いかもしれません。しかし、バブル経済は世界の様々な国や地域で発生しています。

世界各国のバブル経済の歴史

世界各国のバブル経済の歴史

ここでは歴史上、最初に記録されたバブル経済など、3つの事例を見ていきます。過去には今では考えられないものに高値がついたことで発生したバブル経済もありました。

世界最古のチューリップ・バブル

世界最古のバブル経済といわれるのが、1630年代にオランダで起こった「チューリップ・バブル」。今でこそ誰でも気軽に楽しめるチューリップですが、当時のオランダでは非常にめずらしい植物でした。その希少さから庭にチューリップを咲かせることは富の象徴となり、多くの人々が熱狂し、価格がどんどん高騰していきました。

ブームが最高潮に達した頃には、球根一つに何千万円という価格が付けられることもあったといわれています。しかし、やがて多くの人が価値と価格の乖離があまりにも激しいと気付き始め、ある日、突然価格が下がってしまったのです。この「チューリップ・バブル」は、複数の人間で共有される幻想、「共同幻想」の怖さを学べる実例としても知られています。

ITバブル

1990年代を通じて、アメリカを中心に生じたのが「ITバブル」。これは「ドットコム・バブル」とも呼ばれ、日本では特に1999年から2000年にかけて景気の拡張が生じました。インターネットとは関係のない企業が「ドットコム」と社名に付けるだけで株価があがった、という嘘みたいな話がまことしやかにささやかれるほど、経済は過熱。しかし、成長を見越して株を買ったものの数年経っても業績があがらない企業に対する不信感が高まるなど、多くの人が企業価値と株価が異なることに気付き始め、バブル経済は崩壊しました。

21世紀のバブル

21世紀の代表的なバブル経済となるのが「サブプライム・ショック」です。米国の低金利政策による住宅バブルを契機に普及した低所得者向け住宅ローン「サブプライム・ローン」の債権が証券商品化され、世界中の投資家の間で人気に火がつきました。しかし、蓋を開けてみるとローンを返せない人が続出。多くの債権購入者が多大な損害を被り、経済は混乱。リーマン・ブラザーズ(かつての米国大手投資銀行グループ)が破綻したのも、このサブプライム・ローンを大量に抱えていたことが背景の一つとされています。

バブル経済はどのようなサイクルをたどるのか

では、バブル経済はなぜ起きるのでしょうか。

相場には、大きく4つのサイクルがあると考えることができます。景気が悪いとき、中央銀行は政策金利を下げるなどの金融緩和を行います。これにより通貨などの資産の供給量が需要量を上回る「金余り状態」となり、株式市場に余った通貨などが出回る「不景気の株高」が起こります。この状態を「金融相場」のサイクルと呼びます。

次のサイクルが、金融緩和によって企業の業績が回復し始める「業績相場」。「金融相場」で割高だった株価も企業業績の回復によって割高感が薄れていきます。

そして「業績相場」が拡大すると、金融引き締めのサイクルである「逆金融相場」になります。中央銀行による金利の上昇によって企業業績も悪化し、株価も下がります。この金融引き締めによって景気が悪くなり、株価が下がるサイクルは「逆業績相場」と呼ばれます。

つまり、相場は「金融相場」→「業績相場」→「逆金融相場」→「逆業績相場」というサイクルをたどり、バブル崩壊は「業績相場」から「逆金融相場」へのアップダウンが激しい状態のときに起こると考えられます。ちなみに、これまで世界中で起こったバブル経済には、バブルが起こる前の経済状態が非常に悪かったことが共通しています。

バブル相場の乱高下から資産を守るための術とは

バブル相場の乱高下から資産を守るための術とは

コロナ禍による金融緩和の金余りで投機筋も増え、既にバブル相場ととらえる向きもある昨今。資産を守るために留意すべきポイントを解説します。

短期的な利益を追いかけない

一つは、価格の乱高下を狙って、短期的な利益ばかりを追いかけるのは避けること。株価が適正であると思い込んでいたものの、しばらくして実際には株価と価値が見合っていないと気付くケースは意外と多いものです。目先の利益を追ってしまっているのかどうかは後になって分かることもめずらしくありません。

投資は簡単に大きなリターンを得られるものではありません。納得いくまで自分で考えたほうが良いでしょう。例えば、株に詳しい友人に勧められ、「良いといっているから」という理由だけで買うのは避けるべきだと崔さんはいいます。

「ある有名人が『金投資』を推奨していたら、なぜ推奨しているのか、一度自分で考えてみてください。短期的な利益を求める人は、人の話をそのまま鵜呑みにしがちですが、理由をきちんと突き止め理解しなければ、大切なお金が無駄になってしまう可能性があるので注意しましょう」

企業に投資する場合であれば、その企業にはどのような価値があるか、業績拡大は見込めるかなどを改めて整理して考え、理解することが大切です。

リスクを分散する

2つめのポイントは、運用方法です。例えば、株、債券、金など資産を分散するのもバブル崩壊への有効な備えです。その代表的なものといえるのが「資産三分割法」。これは現金、不動産、株式という3つの資産に振り分けて運用する投資法です。種類が異なる3つを同時に保有することで、リスク回避につながります。

どのような配分で資産を振り分けるかの判断は、投資する人自身がどのような働き方をしているかがポイント、と崔さんはいいます。例えば、収入が不安定なフリーランスや自営業の方の場合、総資産の半分くらいは現金(預貯金)で所有するなど、働き方とのバランスを考えて保有比率を考えるのが良いそうです。

日々の勉強の継続が資産を守る

株式の知識を深めることも資産を守る重要なポイントになります。

バブル経済のリスクから資産を守るためには、本やニュースで株式の知識を深めることも大切です。企業業績を徹底的に調べ、判断材料にしたい人は株の基礎を学んだうえで決算書やIR情報を、株価の動きを重視して判断したいという人はチャート分析本を読むなど、自分のスタイルに合わせた本を選ぶのが良いと崔さんはいいます。

「株価と業績を照らし合わせて考えるのも有効な方法です。ブルームバーグや日経電子版、ロイターニュースでは、株価チャートや簡単な業績グラフを見ることができます。株価がニュースと連動していることが分かれば、自ずと知識も身に付きます。

例えば、『〇〇の買収後、なぜあの企業の株価があがったの?』という疑問も、ニュースを見ることで理解しやすくなり、その連動が分かることでリスク回避にもつながります。こうした株式の知識を持ったうえで、短期的な利益を追いかけず、資産三分割法なども活用しながらバブル経済のリスクに備えましょう」

2021年は日経平均が歴史的な高値となった一方、2022年に入って大幅な下落もあり、今後も注目される株式市場。大事な資産を守り抜く術を、今一度考えてみてもいいかもしれませんね。

この人に聞きました
崔真淑さん
崔真淑さん
エコノミスト(MBA in Finance)、一橋大学大学院博士後期課程在籍、東証マザーズ カオナビ社外取締役、東京証券取引所 特任講師、日経CNBC 経済解説委員会コメンテーター、昭和女子大学 現代ビジネス研究所研究員
2008年神戸大学卒。2016年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。2018年より同大学の博士後期課程に在籍。研究分野はコーポレートファイナンス。2008年に大和証券SMBC金融証券研究所に入社し、アナリスト等を経験したのち独立。多数メディアで経済解説を行う。
ライタープロフィール
松本 奈穂子
松本 奈穂子
メーカー、ITベンチャーを経てフリーライターとして活動。雑誌、書籍、ウェブ、フリーペーパーなどメディア全般を制作。ライフスタイル、旅、金融、教育など幅広い分野で取材・執筆を行う。共同著書に『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』『いちばん美しい季節に行きたい 世界の絶景365日』(パイインターナショナル)

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