早期リタイアって本当に実現できるの?47歳でFIREを達成した人に聞いてみた

早期リタイアって本当に実現できるの?47歳でFIREを達成した人に聞いてみた

早期リタイアって本当に実現できるの?47歳でFIREを達成した人に聞いてみた

時間を自由に使い、自分らしい人生を送るために「早期リタイア」する。そんな選択に注目が集まっています。早期リタイアを実現するために必要なことやリタイア後の生活について、47歳で早期リタイアを果たした桶井道(おけいどん)さんに聞きました。

広まりつつある早期リタイアの形、「FIRE」とは?

広まりつつある早期リタイアの形、「FIRE」とは?

一般的に、定年を待たずに退職することを「早期リタイア」といいます。定年のない自営業については60歳までに事業を辞めることを指す場合が多いようです。いずれにせよ若くしてリタイアするためには、その後の生活費を蓄えておく必要があり、難しいと考える方も多いのではないでしょうか。

しかし近年では、リタイア後の生活費を蓄えのみに頼らず、投資の運用益などでまかなう「FIRE」という考え方が広まっています。「FIRE」について、約25年の会社員生活を経て、2020年秋に47歳で早期リタイアした桶井さんは次のように説明します。

「FIREとは、Financial Independence(経済的自立)とRetire Early(早期退職)の頭文字をとった言葉です。前提にあるのは、自由を得て快適に生きていく、という考え方。生活費をすべて貯めておく必要がないので早めのリタイアを果たしやすくなります」

「FIRE」では、給与に頼らず投資の運用益などで生活できる「経済的自立」をはかり、その目処がついたら「早期退職」する人が多いようです。そして、投資といってもデイトレーダーのようなスタイルではなく、株式投資や不動産投資など中長期投資で資産を築いていく方法が主流です。また、桶井さんのように、自分のペースで執筆活動をする人もいます。

「FIRE」については、こちらの記事でもご紹介しています。

早期リタイアを実現できる“FIRE”とは。その現実的な実践方法「サイドFIRE」を紹介
労働に縛られ続けない人生「FIRE」とは?セミリタイアに必要な資産

定年まで勤めあげたから幸せが保証されるとは限らない?!

定年まで勤め上げたから幸せが保証されるとは限らない?!

桶井さんは、両親が行なっていた株式投資の影響もあり、25歳から投資を始めたそうです。自分で貯めた500万円と両親から譲り受けていた株式(受贈当時で280万円相当)を元手に、22年かけて1億円の資産を築き上げ、早期リタイアに至ったといいます。

「初めから早期リタイアをめざしていたわけじゃないんです。むしろ、20代の頃はモーレツに働いていました。定年まで勤めあげれば幸せな老後が待っていると思っていたんです。従業員数千人の中で営業成績1位を取り社長表彰を受けたこともあります」

ところが、給料は自分が思うほどあがらなかったといいます。さらに、30歳前半で内臓に持病が見つかり、だんだん20代の頃のような体力も出世欲もなくなってきたことや、タイミングを同じくして、55歳以降は給与を20パーセントカットする役職定年制度が導入されたことにより、「55歳で退職したい」と考えるようになったそうです。

それからは、リタイア後の生活を想像しながら投資の勉強をして、退職への準備を進めていたといいます。そして、今後の生活費と運用益、この先の人生設計を鑑みて、今の資産状況でも十分に残りの人生を生き抜いていける。つまり、経済的自立を果たせたと判断して47歳の秋に早期リタイアしたのです。

「定年まで働き続けば幸せな老後になるとは限りませんよね。今の時代、それぞれの人に合った多種多様な幸せがあり、それをセルフプロデュースする時代ではないでしょうか」と桶井さんは話します。

早期リタイアの達成までの4ステップ

早期リタイアの達成までの4ステップ

では、早期リタイアへ向けてどんな準備が必要なのでしょうか。

リタイアに必要な資産を想定する

まずは、将来必要とする金額や想定されるライフプランをノートに書き出してみます。その際、自分が「資産額先行型」と「人生設計先行型」のどちらのタイプか把握しておくとプランが立てやすくなるようです。

資産額先行型では、先に「資産をいくら積みあげるのか」もしくは「積みあげられるのか」を考えます。例えば、40歳で5,000万円貯めたらリタイアするといった目標を立てます。リタイア後はその資産内で生活することになりますから、ミニマリストになる必要があるかもしれません。リタイア時の想定資産からリタイア後のライフスタイルを決めるのが、一般的な資産先行型です。

一方の人生設計先行型では、自分が望むリタイア後のライフスタイルを先に決めてから、実現のために必要な資産を考えます。

「自分の理想をめざしてお金を貯めていくということです。とにかく早くリタイアしたいというよりも、自分らしい生活を送りたいという意思を持って準備していくことになります。その分、投資したり、働き方を変えたり副業を始めたり、今より稼ぎを増やさなくてはいけなくなるかもしれません」

桶井さんには「会社を辞めてのびのびと暮らしたい」という理想があったため、人生設計先行型だったそうです。一概にどちらが良いとはいえず、自分にあった方法を模索する必要があるでしょう。

小さな節約を積み重ねて投資に回す

桶井さんによると、早期リタイアで重要なのは「稼ぐ・貯める・投資する」。そして、より効率的に貯蓄を増やすために節約も必要とのことです。

「例えば、一番簡単なのは、マイボトルを持ち歩き飲料自動販売機の利用を控えることです。たかだか数百円と思うかもしれませんが、1日の小さな出費が重なると、1ヵ月後、1年後にはいったい何円になるかということ。大切なのは、そのような視点を持つことです」

つまり、1日400円程度の出費を1ヵ月続けると1万2,000円になり、年間では14万4,000円。会社員人生を22歳から65歳の43年間だとすると「14万4,000円×43年間=約619万円」にもなる。仮に、その1ヵ月1万2,000円を投資に回して、年利5パーセントで運用できれば43年で2,173万円にもなります。これは、老後2,000万円問題の備えになることが期待されるでしょう。

ちなみに、年利5パーセントの運用は現実的でしょうか?例えば、米国を代表する500企業の株価の値動きを表す「S&P500」という指標があります。この推移を見ると直近20年間で年平均5〜6パーセントほど、直近30年では7〜8パーセントほど伸びています。あくまで過去の実績ですが、日本からもこのような指数をベンチマークとした商品に投資できるので、非現実的な値ではないといえます。

給与の半分を貯蓄と投資に充てる

給与の半分を貯蓄と投資に充てる

資産を増やすために、なるべく早い段階から給与の手取り半分を「貯蓄+投資」に充てるのが良いようです。参考までに、桶井さんが実践していた方法を紹介します。

・銀行口座を複数持ち、貯蓄用、生活用、趣味用と分けておく 
・給与が振り込まれたら真っ先に貯蓄に回す 
・自分で小遣い制を採用し、使える金額を制限する 
・給料日に前月の小遣いの余りがあれば、貯蓄に回す 
・種銭が貯まったら投資する

「だからといって娯楽をすべて削っていたわけではありません。ライブハウスでピアノの弾き語りを聴くのが楽しみで、毎週のように通っていました。チケット代と食事代などで一回につき4,000円程度。月2万円程度はこの趣味に使っていましたね」

さらに、桶井さんは、退職金の全額を投資に充てるといいます。ただ、リスクを軽減させるため、一度に投資するのではなく、数年に渡ってタイミングを分散させているそうです。

楽しみを見つけておく

リタイア後の生活でも節約が大切とはいえ、厳しすぎてもストレスになります。そのため、桶井さんは、お気に入りのお店や趣味などを見つけておいたそうです。

「私は高級ホテルでの優雅な時間が好きなので、月に3度ほどホテル内のラウンジで生演奏を聴きながらのんびり過ごします。今はコロナ禍で外出できませんが、北新地の寿司屋もお気に入りです」

また、早期リタイアでは社会とのつながりが希薄になることで、アイデンティティを見失ってしまう懸念もあります。しかし、仕事だけが社会との接点になるわけではないため、社会とのつながりや日々の楽しみを見つけておくと、充実した生活を送ることができるようです。

例えば、街づくりやボランティアなどの地域活動に積極的に参加するのも良いでしょう。また、今はブログやSNSで交流ができる時代です。リタイア後は人との関わりが少なくなると思われがちですが、桶井さんもボランティアやオンラインを通じたコミュニティに参加し、さらに、執筆活動を通じて編集者や読者とのつながりもあるといいます。

また働く選択肢だってある?早期リタイア後の生活ってどうなの?

また働く選択肢だってある?早期リタイア後の生活ってどうなの?
桶井さんは料理も楽しんでいる

早期リタイアで実現できる自分らしい生活。しかし、本当に思い描いていた通りの暮らしを送ることはできるのでしょうか?

桶井さんも、リタイア前は描いているような暮らしを送れるのか不安があったようです。日々何もやることがなくなったらどうしよう、社会とのつながりがなくなったらどうしよう、資産が減って生活に困らないか…。

しかし、現実にはどれも起こらず、家族と過ごす時間、執筆活動、SNSやブログでの交流など充実した日々を送れているといいます。今は、新型コロナウイルス感染症の影響があるため、ステイホームの時間を楽しんでいると桶井さんは話します。

「FIREしてから料理を始めました。両親からの『おいしい』の一言が嬉しくて、着々とレパートリーを増やしています。最新の調理家電も購入し、ますます料理を楽しんでいます。また最近、子供食堂のボランティアを始めました。毎月決まった食材を購入してお届けし、この活動を広めることにも注力して、短期間で3名に合流していただいています。クリスマス企画では1万円を超えるお菓子をご支援させていただきました。Giveの精神で始めましたが、今は生きがいになっています」

また、桶井さんは、数年前に母親の介護を経験(今は回復)し、現在は難病が見つかった父の介助をしているといいます。

「親のことを見るためにも、FIREしたことは正解だったと感じています。資産額とキャッシュフローが整って、家族の同意を得られ、自分の会社員としてのキャリアに納得できたなら、それ以外のことは早期リタイアしてからでも何とかなると思います。数年経過して、また働きたくなったら働いたって良いと思います。それは選択肢の一つであって、早期リタイアの失敗ではありませんよ」

自分の好きなことや家族との時間を大切したライフスタイルを実現するために、早期リタイアは一つの選択肢になるかもしれませんね。


・本コンテンツは一般的な情報提供を目的とするものであり、お客さまに証券投資取引に関して何らの推奨・勧誘も目的とするものではありません。

参考:
・『今日からFIRE! おけいどん式 40代でも遅くない退職準備&資産形成術』(宝島社)桶井 道著

この人に聞きました
桶井道(おけいどん)
桶井道(おけいどん)

2020年、新卒入社以来約25年間勤めた会社を退職、FIREを達成。現在は、投資家でありブロガー。各種メディアで執筆活動もしている。投資先は、日米を主として、世界17カ国・地域の高配当株と増配株を中心に、一部成長株にも投資する「地球儀投資」。投資歴は23年。Twitterやブログ「おけいどんの適温生活と投資日記」では、投資、節約およびFIREなどの情報を発信。2021年3月に単行本「今日からFIRE!おけいどん式 40代でも遅くない退職準備&資産形成術」を出版。イラスト/いぢちひろゆき
ライタープロフィール
吉村 しおん
吉村 しおん
主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。文系大学院修了後、企業ブランディング書籍の営業・編集を経て入社。各種メディア記事の編集・ライティングを担当。

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