【おやこの経済学】子供名義の口座やお小遣い帳で子供の金銭感覚を育てる考え方とは?

【おやこの経済学】子供名義の口座やお小遣い帳で子供の金銭感覚を育てる考え方とは?

【おやこの経済学】子供名義の口座やお小遣い帳で子供の金銭感覚を育てる考え方とは?

子供の教育において、お金の使い方をどのように教えていけば良いのか悩む親は多いでしょう。そこで子供名義の口座やお小遣い帳を活用し、金融教育に役立てる方法をマネーコンサルタントの頼藤太希さんに聞きました。

金銭感覚を育てる第一歩は、子供がお金に関心を持つこと

金銭感覚を育てる第一歩は、子供がお金に関心を持つこと

子供の成長に伴い、お年玉やお祝いなどを子供あてに受け取る機会が出てきます。それらを子供が自分で管理できるようになるまで貯めておいたり、将来の学費用に貯めておいたりする口座として、子供名義の口座開設を考える方は多いのではないでしょうか。

マネーコンサルタントの頼藤太希さんは「子供名義の口座は、子供の将来のための貯蓄としてだけでなく、家庭で子供の金銭感覚の育成に役立てる使い方もできる」と話します。

「子供は大人の真似をしたがりますので、大人と同じATMの機械や通帳でお金を扱うことで、楽しみながらお金に関心を持ってくれるようになります。子供名義の口座を通じて、まずはお金について興味を持つことが、金融教育の第一歩だと思います」

日本は海外に比べて金融教育が遅れているといわれ、ようやく国が学習指導要領の見直しを進めるなど力を入れ始めている段階(詳しくは「2022年度から始まる「資産形成」の授業。子供の金融教育はどう変わる?」の記事へ)。家庭でもお金について色々なことを子供に教えることが重要です。子供名義の口座は、家庭での金融教育にも活用できるのです。

では、子供名義の口座はどのように金融教育に役立てることができるのでしょうか。ご自身も家庭内で金融教育に取り組んでいるという頼藤さんの解説とともに紹介していきましょう。

子供名義の口座を用いたお金の教育

まず、子供名義の口座を持つ目的を整理しておきましょう。
頼藤さんによると、

1.子供の教育費に使うため
2.子供が大きくなってから預金をあげるため
3.子供が自分のお金を管理するため

という3つの目的が一般的だそうです。

「教育費の準備が目的なら、必ずしも子供名義の口座でなくても良いかもしれません。これらのうち特に大切なのは、3つめの『子供が自分のお金を管理する』という活用方法ではないかと考えています」

では、子供名義の口座の活用方法に加えて、子供に対してどのようにお金との付き合い方を伝えていけば良いのか、解説していきます。

自分でお金を管理することで使い方を意識できる

子供名義の口座を活用する以前に、頼藤さんの家庭では小学校4年生になるタイミングでお駄賃制からお小遣い制に変えたことが、お子さんがお金の使い方を意識する大きなきっかけとなったようです。

「お駄賃制だった時は、『お菓子を300円分買って良いよ』と言うと、300円すべてを使い切る使い方をしていました。そのせいで、いつまで経っても開封されないクッキーとかが家にあるんです。賞味期限が切れて捨てるということもありました。ですが、お小遣い制になって自分のお金でお菓子を買うようになると、子供自ら『これは今日買わなくても良いや』といって本当に欲しい物だけ、必要な物だけを選べるようになりました」

こうした変化は、お金を何に使うかを考え、買いたい物のために貯金するという意識を持つようになる、第一歩になるそうです。頼藤さんのお子さんは日々の生活の支出をお小遣い帳に記載して管理し、まとまったお金は子供名義の口座に入れ、親子で残高状況を共有しているそうです。

「子供は親と同じように自分専用の口座を持つことで、『これは自分が管理する大切なお金だ』という意識が芽生えると思います。また大切なのは、通帳記帳もお小遣い帳の記入も、まずは親が作業を見てあげて、少しずつでも貯まっていく成果を一緒に喜ぶこと。『もうこんなに貯まったんだね』『これでゲームソフトが買えるね』と、報告してくれた時にきちんと褒めることが、小さな成功体験の積み重ねとなり、子供の金銭感覚を育てていくのだと思います」

金銭感覚を育むためには、まめなコミュニケーションも大事だといえそうです。

「貯蓄があるからお金の使い方の選択肢が増える」ことを学べる

子供名義の口座の預金残高は、親子で共有していると言う頼藤さん。ただ、そのお金は貯めるだけでなく、「何に使うのかという目的を持ってもらうことを大切にしている」と話します。

「子供には、貯蓄はいつか使うためにするものだと伝えています。というのも、金額によっておやつなのかゲームソフトなのか、選択の幅が広がりますよね。つまり『買いたいものがあってもお金がなければ我慢しなくてはいけなくなる。だからお金はあったほうが良い』という感覚をまず身につけ、そこから子供自身が自分のお金として通帳やお小遣い帳を管理し、お金の使い方の選択肢を増やす経験を積んでいって欲しいと考えています」

ただ、子供にとって1年や2年という長い時間をかけてお金を貯めるのは容易ではないでしょう。そこで頼藤さんの家庭では、誕生日やクリスマスなど、数ヵ月や半年程度先のイベントに合わせて貯めたお金を使う習慣があるそうです。

「もちろん自分へのプレゼントとして本人がお金を使うこともあります。ただいつからか、母の日や父の日の他、誕生日やクリスマスにもお小遣いを貯めてプレゼントをくれるようになりました。貯蓄は自分のためではなく、『誰かに感謝の気持ちを伝えたり、喜んでもらったりするために使うこともできる』という選択肢があることを本人が学んでくれたからかもしれません」

口座の通帳やお小遣い帳を管理し、がんばって貯めたお金で買ったプレゼントで喜ばれるという経験は、子供にとってポジティブな出来事になりそうです。

管理を習慣化させるコツはお金の使い方に口出しをしないこと

お金の使い方を覚えていくためには、お金を管理する習慣作りを親がサポートしてあげることが必要です。

「通帳の記帳もお小遣い帳の記入も最初は目新しいものを面白がって自発的にやってくれますが、三日坊主になってしまうこともあります。そんな時は、例えば『今日は買い物をしたけどお小遣い帳は書かなくて良いの?』と声をかけて、習慣化させることが大事です」

一方で、お金の使い方には口を出さないことを意識しているそうです。

「大人から見て、無駄遣いになりそうだと予想ができても、子供自身に失敗を経験させることが、体験として学びになります。自分で『これは買う必要がなかったな』という失敗を経験し、復習できるからこそ、子供自身の口座や自分で管理するお小遣い帳が金銭感覚を身につけるために役立つわけです」

勉強や人付き合いだけではなく、お金の使い方についても、体験を通して子供が自分の力で学んでいくことが、一番成長できる方法だといえそうです。

金融教育に適した口座開設の時期とは

金融教育に適した口座開設の時期とは

ここまでは子供名義の口座の、金融教育への活かし方について説明してきました。では、子供名義の口座は、どのようなタイミングで開設すれば良いのでしょうか。

「小学生になったばかりの頃だと、お小遣いとは違う大きな金額は、自分のお金だという感覚が薄くなってしまいます。そのこともあり、我が家では小学4年生から口座を開設しました」

基本的に、子供名義の口座は普段使うためではなく、金額が大きいお年玉などを貯金するために活用しているそうです。

「子供と一緒に『今いくら貯まっているか』という情報を共有して、自分自身のお金を管理する意識を早い段階から覚えてもらうことは良いと思います。ただ、管理するお金が増えてくる中学生の頃から口座を開設しても、遅くはないと思います」

親子の本人確認書類があれば、未成年でもインターネットで口座開設が可能な銀行もあります。子供名義の口座を開設するときには、必要事項を確認してみましょう。

子供名義の口座で貯めたお金は贈与税に注意しておく

子供名義の口座で貯めたお金は贈与税に注意しておく

口座の通帳や管理権限を渡してあげる時に気をつけたいのが、子供名義の預金が「名義預金※」扱いとなるかどうかです。子供名義の口座でも子供自身が通帳や印鑑を管理していない場合などは、名義預金扱いをされ、贈与税の課税対象になる可能性があります。
※口座名義と実際に管理を行う人物が異なる口座

例えば子供名義の口座に、お年玉や節目のお祝い金などとは別で貯めていた200万円を就職のお祝いとして入金する場合、贈与税がかかってしまうことがあります。

一方で、扶養義務者間で、生活費や教育費として贈与した財産には贈与税がかからず一般的に非課税となります。その他、贈与税が非課税となる手段としては、学費など教育で必要な資金であれば一定金額が非課税となる「教育資金贈与」や、それ以外の場合でもいくつかの条件を満たすと年間110万円以下であれば非課税となる「暦年贈与」という制度があります。これらを活用することによって子供名義の口座でも非課税で預金を子供に渡すことが可能です。

これらの制度について、親が子供名義の口座に入金する際に意識しておくといいでしょう。

日常のコミュニケーションが親子でお金を学ぶコツ

日常のコミュニケーションが親子でお金を学ぶコツ

子供のうちに養っておきたい金銭感覚として、「限られたお金をいつ、どのように使うかといった将来の目的」を頼藤さんはあげます。これまで説明してきたように、子供名義の口座やお小遣い帳を活用することで、このような子供の金銭感覚を育てていくことができるわけです。

また子供に金融教育を行うためには、親がもっとお金について知る必要があります。現代では、無料動画やネット記事など、金融知識を得られる機会が増えています。こういった大人が得た情報を、アウトプットの作業として、子供に分かりやすく説明する。この対話が親子でともにお金について学んでいく近道になるそうです。

「子供だけでお金の使い方を習得するのは難しいと思います。ですので、親子で一緒に考える時間を取ることを習慣化していくのが、家庭での金融教育では一番効果的です。小額のお菓子やまとまった金額が必要なゲームといった自分の買い物だけではなく、父の日や母の日、誕生日など、人のために使うことも覚えていけると良いですね」

この人に聞きました
頼藤 太希
頼藤 太希さん
(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年にMoney&Youを創業し現職へ。Webメディア『FP Cafe』や『Mocha』を運営。資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)、『はじめてのFIRE』(宝島社)など著書多数。
ライタープロフィール
八坂 都子
八坂 都子
育児系雑誌の編集アシスタント、美術系出版社にて編集記者を経て2020年にペロンパワークス・プロダクション入社。マネー系を中心にカルチャーなど幅広いテーマで記事執筆・コンテンツ制作を行う。

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