お金を増やすには投資?
老後2,000万円問題というものをよく聞く。老後を問題なく過ごすためには2,000万円が必要だといわれているわけなのだが、それ以外にも結婚や子育て、もしもの病気などで、何かとお金が必要になる。そんな時代だから、お金を増やす方法の一つとして投資という方法があるわけだ。お金はある方が良い。湧水のようにお金が湧いてくれればと常に思っている。
自分の資産を増やす投資方法の一つに株式取引があると思う。ニュースなどではよく見るけれど、株の世界はなんとなく難しそうなイメージがある。PC画面と睨めっこをして、値動きを監視するとか。そのためにきちんとした知識が必要なのだろうなと思っている。

でも、そもそも買い方も知らないし、儲かるのかも謎だ。そんな、よく分かっていないものに自分のお金を使うことを不安に思う。ただお金は欲しい。株主にもなりたい。怖いけど買いたい、知らないけど株主にはなりたい、と相反するものが共存する状況だ。好きだけど別れるとか、よくある安い恋愛小説みたいな感じ。つまりドキドキするのだ、いろんな意味で。

そんな私の問題を解決するサービスが最近流行っているらしい。それが「スマホ証券」だ。いつでもスマホから口座開設の申込ができて、さらに株の売買も複雑な操作はなく、スマホだけで完結するらしい。ただ何も知らずに始めるのはやはり不安。ということで、専門家にお話を聞こうと思う。

株を知る第一歩としてのスマホ証券
確定拠出年金アナリストという肩書を持つ大江加代さんにお話を聞く。大江さんは大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わるプロだ。

地主:株を買うってどうですかね?
大江:良いと思いますよ。資産を形成する方法の一つだと思います。
地主:でも、不安なんですよ、とても。株のことを何も知らないので。
大江:分からないものにお金を投じるのは良くないです。きちんと知っていて、理解しているものに投資するのが正解ですから、怖いという感覚は大切です。ただ、体験を通じて分かるということも多いので、少額で体験しながら投資も勉強したら良いと思います。
地主:スマホ証券というのが、そういうのに向いているという未確認の情報をゲットしたんですが、どうですかね?
大江:確かに少額で取引できますね。
地主:で、スマホ証券ってなんですか?
大江:知っているけど、知らないんですね!
地主:はい!!!
大江:良い返事!スマホ証券って最近聞くようになりましたね。従来の証券会社もスマホで株式とか、投資信託を買えるのですが、違いとしては、スマホ証券は、取り扱う商品や情報を絞ってよりスマホで見やすく、取引がしやすくなっているのが特徴です。
地主:簡易版みたいなイメージですかね?
大江:そうですね!またスマホ証券は気軽に使ってもらおうというコンセプトで、取引する金額も比較的少額の単位でできるようになっていますし、売買の手数料もその前提で設定されています。ネット系の会社が証券界に進出して立ちあげているケースが多いので数タップで取引できるなど操作性は高いですね。
地主:若い人がターゲットなんですかね?
大江:私はそう思いますよ。私などはスマホだと文字が細かくて見にくいので、やっぱりパソコンで、となってしまいますけど、若い方はなんでもスマホですからね!

さらにスマホ証券最大の特徴は少額で始めることができるという点だ。
日本株には「単元株制度」というものがあり、100株といった単位で売買をする。しかし、スマホ証券では1株から買うこともでき、100円から投資できることもある。100円で株主気分を味わえるのだ。
大江:1株でもその会社の株価の値あがりは享受できます。米国株の場合はそもそも1株単位で売買が可能です。株式を持つということは自分が企業のオーナーになって、その会社の社長さんや社員の方たちが私のために働いてくれている、ともいえますよね。そして、その会社の商品を買ったとすればその売り上げも私の利益につながっている、株主になるとそういう経済の動きを感じられるのです。
1株でも株主は株主なのだ。

ここまではスマホ証券の素晴らしい点を書いたけれど、もちろんデメリットもある。
大江:投資信託を扱わないスマホ証券さんもありますし、株式を発行している企業名を銘柄っていうんですけど、取り扱っている会社が絞られています。実際に自分が買おうと思っていた銘柄がないということもあるので、確認が必要ですね。
地主:確かに欲しい銘柄がなかったら話にならないですね!
大江:またスマホ証券は少額しか取引できないという決まりはないですが、100円、200円という少額だと資産を増やすという意味では難しい。将来を見据えた資産形成のためには、単位的に万という金額は必要だと思います。
地主:確かに原資が少ないと利益も少ないですよね。
大江:そうです。ただ私はよく「退職金で(投資)デビューしないでください」ということをいろんなところでお話ししています。退職金のような大きな金額で、わけも分からずに初めて投資するってチャレンジャーすぎますよね?まずは小さい金額でやってみる。小さい額で練習しながら勉強する、体験して学んだことは身につき、次にいかせると思うんですよね。
地主:スマホ証券は練習には向いていますね!
大江:10万円で経験したものをその次に100万円の運用にいかせば良いので!
自動車の免許を取っていきなりスポーツカーに乗るのはいろいろと怖い。もっとコンパクトな車で練習してスポーツカーが良い気がする。それと一緒だ。まずは練習という意味でもスマホ証券は良いのだ。

地主:少額でも世界の動きで値段は変わるんですよね?
大江:もちろんです!株式への投資って、いま自分の手元にあるお金をその会社の事業資金に投じるということになります。その会社の業績が良さそうであれば株価ってあがっていくんですよね。株価は人気投票なので、短期的にはその評価があいまいで価格はぶれますけど、長期で見れば、やっぱり業績が良いところの株価があがっていくことになります。
地主:なるほど。
大江:そういう中で、例えば、大手企業に投資をしていて、政府の方針が急に変わって規制がかかり、ビジネスにも影響が出そうだとなると、そこの会社の収益、つまり株価もそれに反応するわけじゃないですか。つまり、株式を持っていると世の中のニュースを自分にも影響するかも、と思ってしっかり深く考えるきっかけにもなると思います!
地主:確かに私は投資をしていないので、政府の方針が、と聞いても「ふーん」くらいです。「ふーん」とすら思わないこともあります。他人ごとで!
大江:また、生きていくためには働いてお金を稼ぐ必要がありますよね。投資する会社を考えるときって、これから世の中がどうなっていくかを考えるわけじゃないですか。その投資的な経済センスというのは、私たちが働くうえで世の中を考えることに通じるものがあると思うんですよね。今いる自分の業界は今後どうなるのか、とかね。隣に将来有望な分野があるのならスキルアップして、そっちの分野で生きていくか、とか。
株を買うことで視野が広がり自分のスキルアップにもつながるのだ。そういうキッカケになるのだ。私はそういうことをしてこなかったので、15年ほどスキルアップをしてないのだ。

長い目で見ることの大切さ
株と聞くと、私が詳しくないという大前提もあるが、デイトレーダーのようなイメージがある。果たして株は短期で売るのか、長期で持つのか、それを聞きたい。
大江:考え方によると思うんですけど、本当は将来有望な会社が大きくなるのを5年とか、10年かけて見守り続けるつもりで持つのが良いと思います。いま良さそうというブーム的なものって、往々にして外れると思うんですよね。みんなが話題にしているときがピークだったりします。長い目で見て、世の中に必要とされて成長しそう、そう思える会社を投資対象に選ぶと良いと思いますよ。
地主:なるほど。
大江:ちなみにアメリカのショッピングサイトを運営する企業は、2001年に1株だいたい15ドルくらいだったのですが、そこから10年経つと12倍になって180ドル!そして、2021年7月には3,700ドル。つまり約20年で247倍になっています。
地主:247倍って!長く持つ方が良いですね!

大江:ただ少額で投資体験するなら、経験ということで、短いタームで売る経験をしても良いと思います。短いタームで利益が2割出たら、売る。売った後にあがって、あれまだ持っていたらもっと利益出ていたな、悔しい、というのも経験だと思うんですよね。
地主:短期だとそういうことが起きますよね。
大江:私自身も例えば、ある医薬品会社の株式を売った翌日に、その会社に新薬の承認が下りて株価が一気に2倍近くになったのを苦々しく眺めた経験があります。
地主:それは悔しい!夜眠れない!
大江:しかし、それも経験で、しっかり情報収集して売りどきを見極めなければいけないことを学びました。ですから、利益が出たら売っても良いと思います。すべての経験が財産になります!経験があるからこそ、長期保有の良さ、大切さも感じられると思います。
地主:何事も経験ですね。スマホ証券は少額で始められるので、経験を重ねるにはもってこいですね!
大江:経験ということで考えるなら、1,000円くらいからまずはやってみたらいいと思います。
地主:憧れの株主にもなれますしね!

どこのお金を削って投資に回す?
スマホ証券や運用方法(長く持つとか)については分かった。問題は原資だ。株を買うためのお金。少額で始められるということは、少しの節約的なことで、そのお金を確保できるのではないだろうか。
大江:自分が使っているお金で、これがなくてもハッピー度に関係ないものを見つけるというのが良いんじゃないですかね?
地主:なんでも買ったときはハッピーなんですよね…。
大江:スマホアプリや有料の動画視聴などで今はあまり使ってないサブスク的なものありませんか?利用するつもりで契約したけれど、長らくお見かけしていないみたいな。そういう契約を解除してお金を作るという方法が良いと思います。
地主:確かにサブスクはいつかまた使うから、と惰性で契約しているものがあります!確かにそうですよね、無駄だ!

地主:無駄だったお金を投資ではなく、貯金する手もありますよね?
大江:貯金は元本割れしませんけど、今の金利だと増える気もしないですね。
確かにいま金利は低い。また先に書いたように投資をすると自分の視野が広がり、スマホ証券から投資を始めれば今後の投資のステップアップの第一歩にも良い。
自分の生活を見直した結果、月に5,000円くらいは確保できる気がした。サブスクとか、外出したときに買っちゃうお茶とか、サブスクとか、ランチとか、サブスクとか、5,000円はいけちゃうと気が付いたのだ。
大江:例えば、月に5,000円を10年、投資し続けたとします。値あがりが年利にすると3%だったという前提で計算して、さらに税金などを差し引くと利益はだいたい70,000円くらいになりますね。
地主:10年で70,000円…貯金よりはいいか!

経験を安く買えるスマホ証券
正直にいえば、10年で70,000円は悩む金額ではある。それはやはり原資が少ないからだ。しかし、70,000円はプラスなわけだし、何より株主にもなれるわけだ。憧れの株主に。そして、投資家目線が鍛えられ、視野が広がる。経験としてはアリだ。それに先にも書いたように大江さんもいっている。
大江:10万円で経験したものを100万円の運用にいかせば良いので!
月5,000円で経験したものを次の大きな金額の投資にいかせば良いのだ。大江さんのお話を聞いて、株への投資にさらに興味が湧いたし、今後の人生にもいかせる気がした。何事も経験ということだ。
こちらの記事では、スマホ証券のメリット・デメリット、選ぶポイントを詳しく解説しています。
スマホ証券とは?ネット証券との違いを比較してみよう(外部サイト)
・本コンテンツは一般的な情報提供を目的とするものであり、お客さまに証券投資取引に関して何らの推奨・勧誘を目的とするものではありません。
・証券商品には、金融商品市場における相場の変動等により元本割れ、投資元本を上回る損失となるリスクや手数料が必要となるものもあります。取引にあたっては商品内容を事前によくご確認ください。
この人に聞きました

確定拠出年金アナリスト
大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わり、企業や官公庁での講演多数。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、iDeCoの普及活動も行っている。株式会社オフィス・リベルタス取締役 NPO法人確定拠出年金教育協会理事 厚生労働省社会保障審議会 企業年金・個人年金部会委員。【主な著書】「図解 知識ゼロからはじめるiDeCoの入門書」(ソシム社)「サラリーマン女子、定年後に備える」(日経BP社)
ライタープロフィール

ライターなど。1985年、福岡県生まれ。基本的には運だけで生きているが、取材日はだいたい雨になる。2014年より東京農業大学非常勤講師。いつもオレンジ色の服を着ているが、同じ服を何枚も持っているので、毎日洗濯した綺麗なものを着ている。洗濯せずに同じ服を着続けているわけではない。著書に『妄想彼女』(鉄人社)、『ひとりぼっちを全力で楽しむ』(すばる舎)がある。
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