最低限チェックしておきたい「給与明細」の基本

最低限チェックしておきたい「給与明細」の基本

最低限チェックしておきたい「給与明細」の基本

会社から給料が支払われる際に配布される「給与明細」。「見方が分からない」「支給額しか確認していない」という方も多いのでは?今回はそんな方に向け、給与明細に書かれている内容や、最低限確認すべき項目を解説していきます。

給与明細って何が書いてあるの?

給与明細って何が書いてあるの?
給与支給明細書イメージ

給与明細は、当月にどのくらい働いて、対価としてどのくらいのお金をもらったかが書いてある書類です。

「銀行口座に振り込まれた金額は知っているけれど、給与明細までは確認していない」という方や「採用通知書に記載されていた給料がそのまま振り込まれるのでは…」と思う方もいるでしょう。

でも実は、給料が全額そのまま振り込まれるわけではありません。口座に振り込まれるお金は、給料から税金や保険料が引かれた金額。その内訳がきちんと記載されている書類が給与明細なのです。

給与明細は大きく「勤怠」「支給」「控除」に分かれる

では、給与明細の見方をチェックしていきましょう。たくさんの項目があって複雑に感じるかもしれませんが、3つの分類を理解できれば大丈夫。それが「勤怠」「支給」「控除」です。

勤怠:その月の勤務日数や勤務時間など、あなたが働いた時間
支給:基本給や残業代、交通費や住宅手当など、会社があなたに支払うお金
控除:社会保険料や税金など、給料から差し引かれるお金

給与支給明細書イメージ
給与支給明細書イメージ

「額面」と「手取り」の違い

さらに確認しておきたいのが、よく聞く「額面」と「手取り」との違いです。

額面:会社から支払われた金額の合計(総支給額)。給与明細の支給に分類された項目の総額
手取り:額面から、控除に分類されている項目の総額を引いた、実際に口座に振り込まれるお金

「額面」と「手取り」の違い

額面の約8割が手取りとして支給される

なお、求人情報や雇用契約書に書かれている月給額は、税金などが差し引かれていない額面の金額です。手取りは額面のだいたい8割程度。つまり、月給25万円の場合、手元に入るお金はおよそ20万円と考えられます。

ここだけ見れば大丈夫! 勤怠・支給・控除のチェック項目

ここだけ見れば大丈夫! 勤怠・支給・控除のチェック項目

給与明細が、勤怠・支給・控除に分類されると分かったところで、各分類をもう少し詳しく見ていきましょう。

勤怠は、「出勤日数」と「残業時間」を見る!

勤怠は、「出勤日数」と「残業時間」を見る!

出勤日数が間違っている場合、「欠勤扱いとなっていた、有給としてカウントされていた」といった事態も起こりえます。実際の出勤日数と異なっていた場合、すぐに担当者に問い合わせましょう。

また残業時間が間違っていると、残業代として支給される金額が変わってきます。多くの場合、出勤簿として記録していると思いますので、給与明細の時間と記録が合っているか、比較してみてください。

支給は、「時間外労働手当」と「総支給額」を確認!

支給は、「時間外労働手当」と「総支給額」を確認!

時間外労働手当とは、残業代のことです。基本的に1日8時間、週40時間を超えた労働が対象となります。

なお「固定時間外労働手当」、いわゆる「みなし残業代」が導入されているケースもあります。みなし残業代とは、残業が無かったとしても、一定時間分の残業(=みなし残業時間)があったとみなして支払われる賃金のこと。この場合、みなし残業時間を上回った労働に対し、時間外労働手当が支給されます。

そのほか、通勤手当や住宅手当、出張手当の記載がある方もいると思います。それぞれを簡単に説明すると、次の通り。

通勤手当:定期代やガソリン代など通勤費用の補助を目的に、会社から支給されるお金
住宅手当:住宅ローンや家賃の一部補助を目的に、会社から支給されるお金
出張手当:出張で発生するイレギュラーな出費の補助を目的に、会社から支給されるお金

ただ、これらの手当は、会社によって支給されるケースとそうでないケースがあります。また、限度額が決まっているケースも。

基本給だけでなく、こうした手当も含めた合計金額が「総支給額」と一致しているか、念のため確認しておきましょう。

控除は、税金・保険の種類と「総控除額」を見る!

控除は、税金・保険の種類と「総控除額」を見る!

「控除」は保険や税金として、いくつか差し引かれているはずです。これらは支払う義務があるもので、仮に、保険料を支払わないと医療や介護を始めとした社会保障を受けづらくなります。

では、給与から引かれている保険や税金にはどんな種類があるのでしょうか。

<社会保険>
健康保険:加入することで、医療費の自己負担額が原則3割となる。保険料は、標準報酬月額(給与の平均月額を基に決められる額)と標準賞与額(賞与総額から1,000円未満を切り捨てた額)に保険料率を掛けて求められる。保険料率は都道府県ごとに異なっており、40歳未満の東京都民の場合、9.84パーセント(令和3年度)。保険料は会社と本人で半分ずつ負担している
介護保険:介護が必要になったとき、1~3割の負担で介護サービスを受けるための保険。支払うのは40歳から65歳までの従業員で、保険料は原則1.80パーセント(令和3年)となっている
厚生年金:20歳から60歳の国民が加入する国民年金と併せて、会社員や公務員が加入する年金制度。会社から差し引かれる厚生年金の保険料には、国民年金の保険料も含まれる。保険料は標準報酬月額に18.3パーセントの保険料率を掛けた額となる
雇用保険:保険加入期間やそれまでの収入に応じ、失業や離職時などに一定の給付を受けられる。保険料率は業種によって異なるが、一般事業の場合、保険料率は月額給与の0.9パーセント、農林水産および清酒製造の事業は1.1パーセント、建設の事業は1.2パーセントとなっている(令和3年度)。その内訳をみると、一般事業はこのうち0.6パーセントは会社が負担しており、本人負担は0.3パーセント。農林水産及び清酒製造の事業は会社負担が0.7パーセントで本人負担は0.4パーセント、建設の事業は会社負担が0.8パーセントで本人負担は0.4パーセントとなっている。

<税金>
所得税:国に納める税金。1月から12月の所得(収入から所得控除や社会保険料控除などを差し引いた金額)に対してかかる。所得が多いほど税率も高くなり、納める税金の額も大きくなる。毎月給与から天引きされているが、1年の所得からみて納付額に過不足が生じた場合は、年末調整によって還付・徴収される
住民税:都道府県や市区町村に納める税金。前年の1月から12月の所得に対してかかるため、所得に応じて納税額が変わる。前年の所得を基に計算されるため、社会人1年目のうちは課税されないことが多い

この、保険料と税金の合計が「総控除額」として、給料から差し引かれるのです。

「差引支給額」を最終チェック!

「差引支給額」を最終チェック!

最後に、差引支給額に間違いがないかチェック。差引支給額とは手取りのこと。「総支給額−総控除額=差引支給額」となっているでしょうか。

また、銀行口座に振り込まれた給料が、差引支給額と一致しているかも確認しておきましょう。

社会保険料や税金の負担はどうしてこんなに大きいの?

社会保険料や税金の負担はどうしてこんなに大きいの?

「保険料と税金って思ったより引かれているなあ…」

給与明細を見て、そう感じる方もいるかもしれません。ただ、これだけの金額を支払っていることにはきちんと理由があります。

厚生年金で老後の生活を少しでも豊かに

現在、定年退職の年齢は徐々に引き上げられていますが、30代40代の頃と同じように60代以降も働き、収入を得続けられるとは限りません。年金とは、そんな将来に備え、老後に毎月一定額のお金が支給される制度のことです。

特に厚生年金に加入している場合、国民年金だけに加入しているよりも、年金の支給額は多くなります。

厚生労働省によると、国民年金のみに加入していた方の平均受給額は月におよそ5万6,000円。一方で厚生年金の加入者は、国民年金の受給額と合わせておよそ14万6,000円と、手厚くなっています。

健康保険に加入しているから医療費の負担が軽減

健康保険に加入していると、ケガや病気にかかる医療費の自己負担は一部で済みます。6歳から70歳までの場合、自己負担額は3割です。つまり、治療に1万円かかったとしても、患者自身が負担する金額は3,000円になります。

雇用保険で離職時のリスクを減らす

雇用保険への加入は、離職時のリスクを減らすことにつながります。

会社を辞め、次の職を探している間にも、家賃や食費などの生活費は毎月かかってきますよね。そこで、雇用保険に加入していれば、失業手当を受け取ることができます。退職理由や年齢、保険加入期間によって異なりますが、受給期間は平均して3〜4ヵ月、金額は離職前の給与の50〜80パーセント程度になります。

例えば、被保険者期間が10年未満で自己都合退職をした場合、給付日数は90日です。離職前の平均給与が30万円の場合、月額16万円程度の支給が受けられます。生活の不安が軽減されることで、転職活動に注力しやすくなるかもしれません。

所得税や住民税は公的サービスを支える原資

前述の通り、所得税は国、住民税は居住する自治体に納めるため、その用途は細かく異なります。ただ、道路の整備・維持、警察や消防、ゴミ収集車、福祉施設、学校や図書館といった、私たちの生活に欠かせないインフラや身近な公共サービスを支えているという点は共通しています。

また、所得税は、所得の多い人ほど税率が高くなり、納税額が大きくなる「累進課税」を採用しています。これは、所得の再分配効果をねらった税制度になります。住民税は、対象となる期間内の1月1日に住民票がある地域に納めるもので、所得による税率差はありませんが「所得が多い人ほど納税額も大きくなる」ことは所得税と共通しています。

所得再分配の効果には議論の余地があるようですが、私たちが税金を負担するからこそ、安心して暮らせるわけですね。

社会保険料や税金が将来の自分を支える

社会保険料や税金が将来の自分を支える

自分の働いた時間と、その対価が記載されている給与明細。収入だけでなく、どんな保険や税金を支払っているのかまで確認することができます。

それは、自分に係る保障や支えを知ることにつながります。雇用保険は転職活動中の生活、厚生年金は老後の生活の支え、健康保険は病気や怪我の際など——。思い描く未来の実現のため、より計画的なライフプランニングのため、給与明細を通じて保険や税金、自分の収入をきちんと知っておきましょう。

参考:
厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(外部サイト)
退職前に知っておきたい失業保険の基礎知識(外部サイト)
【給与明細の正しい見方】損しないための注意点を弁護士が詳しく解説(外部サイト)

ライタープロフィール
吉村しおん
吉村しおん
主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。文系大学院修了後、企業ブランディング書籍の営業・編集を経て入社。各種メディア記事の編集・ライティングを担当。

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