一口に税金といっても種類は様々

世界の変わった税金を紹介する前に、まずは国内における税金の種類を一覧でみてみましょう。

※財務省ウェブサイト(外部サイト)より一部抜粋
消費税や所得税といったよく耳にする言葉から、ゴルフ場利用税や入湯税などあまり聞き慣れない税金まで、様々な種類があるようですね。
なお、各税金は表を見ても分かる通り「国税か地方税」「普通税か目的税」、さらには「直接税か間接税」に区別されます。
「国税」と「地方税」
まず税金には国に納める「国税」と、都道府県や市区町村に納める「地方税」という違いがあります。代表的な国税は消費税や所得税、相続税など。地方税はさらに「都道府県税」と「市町村税」に分かれ、県民税や住民税、固定資産税などが該当します。
「直接税」と「間接税」
「直接税」とは、納税者が国や地方自治体に直接納める税金のこと。税金を負担する人と納める人が一致します。例えば所得税や住民税、法人税や相続税などがありますね。
直接税の主な特徴としては、所得税のように収入が多い人ほど負担する税金の額も増えること。高額所得者から多くの税金を集め、低所得者から集める税金は少なめにする、という柔軟な対応ができます。
一方で間接税とは、税金を負担する人が直接納めるわけではなく、事業者などの納税義務者がまとめて納める税金のこと。消費税を負担しているのは、最終的にモノを買ったりサービスを受けたりする消費者です。しかし実際に納めるのはそのモノを販売したり、サービスを提供したりする業者というわけですね。
間接税は直接税とは異なり、収入の多い少ないにかかわらず納める税金の額は基本的に一定となります。
「普通税」と「目的税」
税金はその使い道によっても種類が分かれ、「普通税」は徴収した税金の使い道が特定されていません。逆に「目的税」は、使い道が特定されています。
普通税として集められた税金は、一度一つの財布にまとめてから、様々な用途に振り分けられるイメージ。所得税や相続税、贈与税など多くの税金はこの普通税に該当します。
一方で目的税は、税収が特定のサービスのための支出に関連づけられています。例えば、復興特別所得税は東日本大震災の復興に必要な財源を確保するのが目的です。また狩猟者の登録を受けるときに課税される狩猟税は、鳥獣の保護や管理のために使用されます。
日本にもちょっと変わった税金がある
意外と知られていない日本特有の税金に、地方税の一つである「入湯税」があります。これは、温泉を利用するときに課せられる税金。基本税額は150円で、温泉の利用料金などに既に上乗せされているので知らない方も多いかもしれません。
入湯税として徴収されたお金は、温泉地といった観光施設の振興などに使うことが法律で義務付けられています。地方税でありつつ、前述した目的税でもあるということですね。
ちなみに、日本温泉協会が行った調査によると、入湯税の収入額が多い市町村トップ5は以下の通り。

箱根や熱海など、温泉街として有名な地域の収入額がやはり多いそうです。
さらに、日本にはかつて「トランプ類税」と言い、麻雀牌・トランプ・花札など、ギャンブル性の強いカードゲーム類に課された税金もあったそうです。ただ、消費税の導入にともなって、廃止されました。
世界ではこんなものにも税金が!?

既に廃止されているものも含めて、日本だけでなく世界のちょっと変わった税金もいくつかピックアップしてみました。
結婚しない人に課された「独身税」

1968~1989年にブルガリアで導入されていた、文字通り独身の国民に税を課すというもの。独身者に早期の結婚を促し、少子化対策につなげる目的がありました。
しかし実際に導入したブルガリアでは、導入前よりも出生率が下がり、さらには結婚数自体も減少。増税によって独身者が結婚や子育てに必要なお金を貯めにくくなり、逆に婚期が遠のく結果になったようです。
日本でも少し前ですが、石川県かほく市で行われた子育て中の女性と財務省主計官の意見交換会で「独身税」が提案された、という記事が話題となりました。
職場で支給されるお菓子も課税対象!? 「月餅税」

月餅(げっぺい)とは円形の平たい、中国のお菓子のこと。中国では中秋の名月(毎年9月または10月)に、この月餅を食べながらお月見をする習慣があります。
そのため中国の企業では、福利厚生の一環として従業員に箱入りの月餅を配るのです。しかし2011年に中国政府は、職場で受け取った月餅は給与の一部だとして課税対象とする「月餅税」を導入。伝統行事を利用して、税金を徴収する仕組みを取り入れました。
導入した当初は中国全土で月餅拒否運動が起こり、「月餅を食べたくない」と言う人が続出したようですが、どうやら現在も廃止はされていないようです。
高収入な卒業生限定の「学位税」

学位税は、大学卒業後に支払う学費に対して課せられる税金のことです。
導入しているオーストラリアでは多くの場合、学費の元本を卒業後に支払うのが通例としてあるといいます。要するに、日本でいうところの奨学金返済のようなかたちです。そして、就職先の収入が高い卒業生は、学費に3~5%ほどの学位税を加えて後から支払います。一方で、収入が一定に満たない卒業生は学費元本以上に追加徴収されることはありません。
高所得の人ほど高い税金を負担する、日本の所得税における「累進課税」とよく似た仕組みだといえそうですね。
犬を飼っている家庭は「犬税」がかかる

その名の通り、犬を飼っている家庭に課せられる税金です。導入している国の一つであるドイツでは、犬税の納付を州ごとに義務付け。飼い主は年に1度、飼育している犬の頭数に応じて税金を納める必要があります。犬税を納めると「犬札」を受け取ることができ、札は犬の首輪に装着することも定められているようです。
ある程度の税金を飼い主に課すことで、安易に犬を飼育しようとしたり繁殖させたりする人を減少させることが狙いだといいます。適正に管理されることで、犬の殺処分を減らすなどの目的もあるようです。
実は日本においても、1982年までは犬税が導入されている地域がありましたが、現在は廃止されています。
肥満を防止する「ソーダ税」「ポテトチップス税」「脂肪税」

肥満がとくに社会問題になっているアメリカでは、一部の州でソーダ税が課せられています。つまり肥満の原因の一つとされる砂糖を含む炭酸飲料に課税を行い、購入を制限しようというわけです。
またソーダ税と似た税金として、塩分や糖分の高いスナック菓子やジュースに対して課せられるハンガリーの「ポテトチップス税」や、脂肪分を含むバターやチーズなどが対象となるデンマークの「脂肪税」などもあります。
ひどい渋滞を緩和する「渋滞税」

イギリスのロンドンで、渋滞をなんとか緩和するために導入された税金です。平日の午前7時から午後6時半の間に、ロンドン中心部の特定のエリアに自動車で進入すると課金される仕組み。導入後は、自動車の移動速度が30%も上がったといいます。渋滞が緩和された分、自動車で走る速度も向上したわけですね。
花火に税金!? 「光るおもちゃ税」

アメリカのウェストバージニア州の「光るおもちゃ税」は、激しく発光したり火花が出たりするような「銃のおもちゃ」や「花火」などに課されます。銃犯罪や凶悪犯罪を抑制する狙いがあるそうですが、夏の風物詩でもある花火に課税されるのは少し寂しいですね。
まとめ
会社から支給されるお菓子にかかる月餅税や肥満を防止するソーダ税など、日本だけでなく世界を見渡してみると暮らしの様々な場面に導入されている税金。税金一つとっても、各国の個性が出ています。
今後、さらなる意外な税金の登場が、お金に興味を持つきっかけになるかもしれませんね。
参考:
財務省「税の種類に関する資料」(外部サイト)
直接税と間接税の違いとは?日本の税金の種類と他国との比較を紹介!(外部サイト)
消費税の歴史と創設の背景(外部サイト)
世界のおもしろい税金たち
税金にはどんな種類があるの?(外部サイト)
財務省「身近な税」(外部サイト)
入湯税収入額が多い市町村 ベスト30(サイト)
ユニークな税「学位税」(外部サイト)
NY市で「渋滞税」導入へ 全米初、21年メド(外部サイト)
ライタープロフィール

AFP認定者(2級FP技能士)。タウン誌、編集デザインファーム、大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。これまでコンテンツマーケティングや、ミレニアム世代向けビジネスメディア、不動産広告の取材&ライティングなどを手がける。
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