維持費の中身は税金、保険料、ランニングコストと様々
車を持つと、ガソリンを入れたり、車検に出したりと、色々な場面でお金がかかります。もちろん走行やメンテナンスの費用のほかに、保険料や税金も支払わなくてはなりません。ローンを組んでいればその返済もあります。どのような費用がかかるのかみていきましょう。
車検費用
車を運転する人は、定期的に車検を受けることが義務付けられています。安全基準を満たしているか確認するための検査で、自家用車の場合は新車購入から3年後、その後は2年ごとに受けなければなりません。ディーラーや車検専門店だけでなく、ガソリンスタンドでも受けることができます。費用は、車検を受ける場所や車種などによって違いますが、安くても数万円かかることが多いようです。車の状態が悪ければ、整備や部品などの費用でその分高くなり10万円以上かかることもあります。
自賠責保険
自賠責保険は、人身事故に備え、全ての車に加入が義務付けられている保険です。強制加入なのでどこの保険会社で加入しても保険料は一律です。一般的には、車検時に2年分をまとめて支払います。
任意保険
自賠責保険は、対人事故による被害者への必要最低限の補償のみのため、多くの人が任意保険にも加入します。任意保険に加入することで、自分のけがやけがをさせた相手への補償、車の破損に対する補償などを付け加えることができます。保険料は、保険金額をいくらに設定するのか、自分の車の破損や同乗者への補償も付け加えるのかなどの条件で変わります。
各種税金
車を保有していると、税金も支払わなくてはなりません。保有中にかかるのが「自動車重量税」と「自動車税(軽自動車なら軽自動車税)」です。いずれも軽自動車は定額ですが、それ以外の乗用車は車両重量や排気量によって税額が変わります。自動車重量税は車検時に、自動車税と軽自動車税は毎年5月に届く納付書を使って、金融機関やコンビニ等で支払います。
駐車場代
賃貸住まいやマンション住まいなら、毎月の駐車場代も必要です。地域差がありますが、都心部なら月3万円以上かかることもあります。車の購入前に住んでいる地域の相場を調べておくと安心です。住んでいるマンション併設の駐車場ではなく、近くの月極駐車場を借りれば費用を抑えられる可能性もあります。
メンテナンス費用
車検とは別に、12ヵ月ごとに法定点検を受けることが義務付けられています。車に故障がないか確認するためのもので、ディーラーやカー用品店、ガソリンスタンドなどで受けることができます。また、法定点検以外にも、車の調子が悪くなった場合には、タイヤやエンジンオイルなどの消耗品費や整備費用が突発的にかかることもあるでしょう。
燃料費
当然、走った分だけガソリン代や電気代がかかります。定期的に車に乗るのであれば、月に数千円〜数万円は見積もっておきましょう。
ローン返済
ローンを組んで車を購入した場合にはその返済をしなくてはなりません。車の値段やローン金利、頭金をいくら用意できるかなど、条件によって毎月の返済額は変わりますが、月に数万円以上の支払いになるケースが多いでしょう。
このように車の維持費と一括りにいっても、その中身は様々で支払いの時期も異なります。マイカーを検討している人は、どんな時にどのくらいの費用が必要になるのか、把握してから購入を決めたいですね。
ローンや駐車場代で月7万円超になることも
結局、維持費はトータルでいくらくらいかかるのでしょうか。2パターンで試算してみます。
パターン1を「郊外に住んでいる人が軽自動車を購入して、通勤のために週5日利用」、パターン2を「都心部に住んでいる人がSUVタイプのファミリーカーを購入して、レジャーのために週末2日間利用」として、試算します。

試算の結果、パターン1の維持費の平均が月額約1万6,000円〜、パターン2では月額約7万5,000円〜と、かなりの差が出ました。特に影響の大きかったのが、ローン返済です。もちろん、ほかのあらゆる条件によって維持費には差が出ます。車検や法定点検時に、車の状態が悪ければ部品代や技術料が上乗せされることもありますから、普段から無理な運転をせず、車が消耗しにくい安全運転を心がけたいものです。
車にかかる税金は3種類
マイカー購入で気がかりなことの一つに、税金の種類がたくさんあってよく分からないということではないでしょうか。先述の通り、維持費としては自動車重量税や自動車税がかかりますが、購入時には「環境性能割」という税金もかかります。つまり、車にかかる税金は、消費税を除けば、自動車重量税、自動車税(軽自動車税)、環境性能割の3つということになります。この3つの税は、支払うタイミングも異なります。
環境性能割
2019年10月の消費増税に合わせ、従来の自動車取得税に代わり導入されたのが環境性能割です。購入時にのみ支払います。燃費がいい自動車ほど税が軽減される仕組みで、軽自動車なら最大で取得価額の2%、その他の乗用車なら最大で3%が課税されます。さらに、時限措置として2021年3月31日まではさらに1%分が軽減されます。
自動車重量税
車両重量に応じて課税される自動車重量税は、新規登録時と車検時に支払います。新規登録時には3年分、車検時には2年分をまとめて支払います。軽自動車は定額ですが、それ以外の乗用車は車両重量0.5トンごとに税額が増えていきます。また、新車登録から13年と18年を経過するタイミングで税額が増える仕組みになっています。エコカー減税の対象であれば、2021年4月30日までは25〜50%の減税、あるいは環境性能の良い車であれば免税されるケースもあります。
自動車税・軽自動車税
自動車税・軽自動車税は、4月1日時点の車検証上の所有者に対し毎年課税される税金です。軽自動車は定額の1万800円ですが、それ以外の乗用車は排気量に応じて年間2万5,000円〜11万円が課税されます。
こちらも2019年10月の消費増税とともに減税が行われ、最大で4,500円安くなりました。毎年5月頃、都道府県税務事務所から送付される「自動車税納税通知書」(軽自動車の場合は市町村税務事務所から送付される「軽自動車税納税通知書」)を使って、金融機関やコンビニで納税します。住んでいる自治体によってはクレジットカード払いやスマホ決済も可能です。
ただし、4月から翌年3月までの1年分の税金を支払う仕組みのため、車の購入時にも翌年3月分まで月割り計算した額を支払います。例えば、8月に車を購入した場合には9月から翌年3月分の税金が課されます。

(注1)自家用乗用車の場合(消費税を除く)
(注2)初度登録/検査年月からの期間等によって税額が変わる場合があります。
(注3)2020年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」における税制措置により、2020年9月30日までとなっていた環境性能割の臨時的軽減措置が2021年3月31日まで延長になりました。
出典:「経済産業省/令和元年10月 変わりました!クルマの税」を元に著者作成
自動車にかかる税金は、ややこしくて不安に感じている方も多いことでしょう。特に今は、消費増税対策や環境問題対策の特例措置が複数あり、分かりにくくなっています。購入時にかかる税金は、自動車メーカーの公式サイトでシミュレーションできるものがたくさんあります。保有中にかかる税金も販売店に聞けば教えてくれるでしょう。マイカーを購入する前にどんな税がいくらかかるのかを把握しておけば、請求書や納付書をみて「こんなに支払うの?」と驚くこともなくなりますので、あらかじめ確認しておくと安心です。
変わる自動車利用の未来
近年、モノを所有せず他者と共有する「シェアリングエコノミー」の考え方が一般的になりました。車に関しても、カーシェアリングやサブスクサービスの台頭で、マイカーを保有せずとも、好きな時に好きな時間だけ車に乗ることができるようになっています。車の利用頻度が月に数回だけだからカーシェアを、転勤で数年間だけ車が必要だからサブスクサービスを、というように車にかける費用と手間を最適化できる選択肢が広がっています。
購入するにせよサービスを利用するにせよ、どのような費用がいくらくらいかかるのか、下調べしておくことが大切です。頑張ってお金を貯めて車を購入しても、その後になって「思ったよりお金がかかるな…」と後悔しては、憧れの車を手にした喜びも半減してしまいます。ライフスタイルに合ったベストの選択をして、より豊かで楽しい愛車との生活を送ってくださいね。
ライタープロフィール

大学卒業後、企業の経理などを担当。その後、金融系編集プロダクション回遊舎へ入社し、有名マネー誌の編集、執筆などを担当。現在はフリーライターとして執筆を行う。青山学院大学国際政治経済学部卒。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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