「あつ森」から学ぶ投資。カブと株を比較してみよう

「あつ森」から学ぶ投資。カブと株を比較してみよう

「あつ森」から学ぶ投資。カブと株を比較してみよう

いま人気を集めているゲーム「あつまれ どうぶつの森」、通称「あつ森」のカブの取引方法は、現実の株式投資とどのような違いがあるのでしょうか?この記事では、あつ森のカブと現実の投資を比較し、初心者が理解しやすい投資方法について解説します。

「あつ森」にはカブというシステムがある

「あつ森」にはカブというシステムがある

人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」には、「カブ」と呼ばれるシステムがあります。これは現実世界の「株(株式)」と同様、価格が変動したり、高い時に売却して利益を得られたりするものです。ここでは、ゲーム内の「カブ」と現実世界の「株」について解説します。

いま大人気の「あつ森」。どんなゲームなの?

「あつまれ どうぶつの森」(通称「あつ森」)とは、任天堂から2020年3月に発売されたNintendo Switch用ゲームソフトです。プレイヤーが無人島に移住するところからスタートし、ほかの移住者や、移住プログラムの企画者の手伝いをしていきます。

あつ森の特徴は、ゲームの最終目標がない点です。プレイヤーは無人島で建物や橋、道路などを作ったり、虫や魚を集めて博物館に寄贈したり、と様々なことができます。また、オンラインプレイを利用すれば、友人の島に行くことなども可能です。このように決まったゴールがないため、楽しみ方は人それぞれです。

特に話題を集める「カブ」。そのシステムをご紹介

あつ森の人気要素の一つが「カブ」というシステムです。カブとは、毎週日曜の午前中に島へやってくる「ウリ」というキャラクターが販売するアイテムのことで、株ではなく、野菜の食べられるカブの方です。

カブは日々価格が変動するアイテムで、安く買って高く売ればお金を儲けることができます。このカブ取引は、ゲーム内で流通する通貨「ベル」を増やすための方法の一つです。購入したカブの価値はゲーム内の「タヌキ商店」という店で確認できます。カブ価を確認したら、その場で売ることも可能です。

注意点は、日曜日はカブを売れないことと、購入してから1週間経過したり、ゲーム内の時間を戻したりするとカブが腐ってしまうことです。腐ったカブには価値が付きません。カブを購入した後はゲーム内の時間設定を戻さず、かつ1週間以内に売る必要があります。

「カブ」は現実の株式がモデル

あつ森で取り扱われているカブのモデルは、現実世界の株(株式)です。

現実の株は、企業資金を出資してもらった人に対して発行する証券のことです。株式の発行は、資金を調達するための手段の一つとして活用されます。株式を購入した人(株主といいます。)は、お金が返ってこない代わりに、保有株式の割合に応じた経営参加ができ、利益がでたときには保有株式数に応じて配当がもらえます。事業の拡大や好景気などで企業が成長した場合、保有する株式の価値があがり、売却して利益を得る可能性もあります。また、株式は、出資している企業を購入したい人が増えると価格が上がり、売却したい人が増えると企業の成長に関わらず変動します。

したがって、企業の業績や世界の情勢等、市場の需給によって株価は変動します。投資家は公開されている会社情報や株価のチャートを分析したり、将来の成長に期待しながら株の値動きを見て、株を保有し続けたり売却したりするのです。

あつ森のカブと現実世界の株を比較

あつ森のカブと現実世界の株を比較

あつ森の「カブ取引」と現実世界の「株取引」は似ていますが、相違点もあります。特に異なる点は取引方法です。この2つの違いについて詳しく解説します。

あつ森のカブと現実世界の株、類似点と相違点とは

カブと株の類似点はおもに以下の通りです。

・価格が日々変動し、購入者は価格を確認して売却できる
・1株から購入することはできない
・購入・売却時間が限られている
・値動きにパターンがある
・価格が高騰して利益を得られることがある一方で、価格が下落して損をすることもある

そして相違点としては、次のようなものがあります。

・価格の形成

株価は、発行する企業の利益と市場の期待値によって価格が形成されていますが、カブの価格は何できまるのかわかりません。

・信用取引の有無

保証金を証券会社に預けて取引をする「信用取引」がカブにはありませんが、株には存在します。

・購入者への特典

カブを買うとウリから「手紙」と「たけのこ」をもらうことができます。株の場合は株主優待や配当金などが受けられます。

・利益に対する税金

あつ森内でカブに税金がかかることはありませんが、株で利益をあげると税金がかかります。

・売却期限

カブは1週間以内に売らなければなりませんが、株は無期限です。

・使用できる通貨

カブはゲーム内通貨であるベルのみ取引可能ですが、株は日本円やアメリカドルなどを使用できます。

・発行主体

あつ森内で、カブの発行主体は明らかにされていません。一方、株式は株式会社が発行しています。

あつ森のカブの方が、現実世界の株よりもできることが限られています。しかしカブには、株にない特徴があることも分かるでしょう。

カブは現実の株式でいえば、価格の値動きのみを見て取引を行う「デイトレード」のよう

あつ森のカブは、購入から1週間経過すると腐ってしまい、価値がなくなります。そのため購入者は1週間以内にカブを売却しなくてはなりません。また、購入者はカブの値段以外の情報がないため、日々の値動きのみで売却を判断しなければいけません。
株式ですと、長期で投資を行う場合は、企業の事業内容の成長性を考えて投資行いますが、短期的に利益を上げようとする取引手法もあります。いわゆる「デイトレード」と言われる取引方法で、1日もしくは数日のうちに株式の値動きを見て売り買いを判断して利益を狙う取引です。

デイトレードは初心者が挑戦するにはハードルが高い

あつ森のカブ取引で行われるデイトレードは、投資初心者にとってハードルが高めだといえます。なぜなら、デイトレードには株価の値動きを分析(チャート分析)をする場合が多いためです。

チャート分析は、過去の株価の値動きから短期的な株価の値動きを予想するために使用され、その分析方法は20種類以上ありますが、短期的に利益をあげるのはプロの投資家でも難しいといわれています。投資初心者がすぐに実践できる手法ではないでしょう。初心者の方は、短期的な株価の値動きのみで取引するデイトレードではなく、長期的な視点にたって、企業や国の成長性に着目して投資を始めることを推奨します。

「つみたてNISA」などの長期投資について知る

「つみたてNISA」などの長期投資について知る

投資初心者におすすめの投資方法は、長期投資です。長期投資とは、購入した株を数ヵ月~数年単位で保有し続ける手法を指します。長期投資が初心者におすすめである理由は、リスクを分散できるためです。詳しく見ていきましょう。

あつ森のカブ取引にも、現実世界の株のように暴落リスクがある

投資におけるリスクは、「売却価格が購入価格を下回ること」です。このリスクは、あつ森のカブ取引にも現実世界の株取引にも同じことがいえます。

例えば、1カブ=100ベルの時に1万ベルを使って100カブを買ったとします。しかし購入から6日後、1カブ=70ベルまで下落してしまいました。この時に発生する損失は、1万ベル-(100カブ×70ベル)=3,000ベルです。

このように投資には、購入後に価格が下落し、損失を出してしまうリスクがあります。

“長期”で“継続”的に分散して投資をすることが重要

数ヵ月~数年単位で株を継続的に購入・保有し続ける長期投資なら、価格の暴落リスクに備えることが可能です。それは、長期投資は投資する時間を分散できるためです。

例えば、8月1日にA社の株が1株=5万円の時、500万円の資金を使って100株購入したとします。しかし翌月、1株=4万5,000円に下落。この時株価は1割値下がりしているため、投資資金の500万円も1割減り、50万円の損失となります。

ですが、もしA社の株を一度に100株買わずに、10ヵ月に分け10株ずつ買ったとしたら、損失額は少なく済んだはずです。例えば、8月1日に購入したのが10株であれば、翌月に1割株価が下がっても損失額は5万円で済むでしょう。

このように購入時期を分散させれば、いつ発生するか分からない株価の暴落に備えられるのです。
また、投資する株式も1つの企業ではなく、複数の企業に投資することによって、1社の株価が下落したとしても、他の企業の株価が上昇していれば損失を軽減することができます。
成長する資産に長期・継続・分散で投資を行うことで、長期的に高いリターンを得る可能性が高まります。

一方で、あつ森ではカブが1週間で腐ってしまうため、長期投資はできません。また、株式でいえば1社のみですので、価格の下落を抑える手段がありません。

長期投資には「つみたてNISA」

「長期投資が初心者向きなのは分かったけど、何から始めれば良いの?」や「いきなり株式を始めるのはちょっと」と感じる方もいるでしょう。投資するうえでは、様々な方法がありますが、ここでは、長期投資方法の一つとして「つみたてNISA」をご紹介します。

つみたてNISAとは、投資で得た利益などに対して一定額まで税金がかからない制度で、つみたてNISAで購入できるのは「投資信託」と呼ばれる金融商品です。

投資信託とは、お客さまから集めた資金をまとめ、運用の専門家が国内外の株式や債券等に分散投資をして運用をし、これによって得た収益をお客さまに還元することをめざす金融商品です。投資信託に投資することで、複数の銘柄に投資することができ分散して投資をおこなえます。
また、投資信託では株式を中心に購入する商品のほか、株・債券などの金融商品を組み合わせた商品(バランス型)もあります。さらに投資信託は、少額から開始することができ、金融機関によっては、1,000円から購入できるところもあります。

さらにつみたてNISAであれば、国が選定した商品の中から選び、毎年40万円上限で、最長20年間税金がかからないので、長期投資にうってつけの制度です。


銀行や証券会社に口座を開設し入金すれば、つみたてNISAを始められます。

まとめ

あつ森におけるカブ取引と、現実世界の株取引を比較しつつ、初心者向きの投資方法について解説しました。

あつ森のカブ取引のような手法は、あまり初心者向きではありません。初心者に向いているのは、長期投資と呼ばれる手法です。長期投資なら、株価の暴落リスクを抑えることが期待できます。

長期投資の選択肢の一つとして考えやすいのが、つみたてNISA。少額から始めることも可能ですので、ぜひ覚えておきましょう。

ライタープロフィール
池田 昇太
池田 昇太
大学卒業後、介護施設に就職。本業と並行しながら、FP技能士2級を取得。過去に投資詐欺に遭った経験があることから、「人々のお金の不安を解消したい」という想いを抱きつつ、FPとして相談・執筆業を行う。不定期でウェビナーを開催しており、資産運用や保険などについての講演をしている。
池田昇太 紹介ページ(外部サイト)

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