4人に1人が貯蓄ゼロ

近年の目まぐるしい環境変化の中において、突然の収入減少に備えるためにも貯蓄の重要性が増しているといえます。しかし、必要性は感じているのになかなかお金を貯められない方も多いのではないでしょうか。
金融広報中央委員会によると、貯蓄ゼロの世帯の割合は23.6パーセント。日本国民の4人に1人が一切蓄えを持っていない計算になります。
一方で見方を変えれば、4分の3の方はしっかり貯蓄できているのも事実。では、お金を貯められる人と貯められない人、両者にはどのような違いがあるのでしょう。
そこで今回は多くの家計相談を受けてきた株式会社マイエフピーの横山さんに、「お金が貯まらない人」の習慣を中心に行動パターンや考え方を教えてもらいました。
こんな人は要注意!やってはいけない7つの習慣
習慣1:部屋が片付いていない
習慣2:約束の時間に遅れがち
習慣3:口座が一つしかない/多すぎる
習慣4:貯蓄について書かれた本を読むだけで満足する
習慣5:貯蓄用のお金を使ってしまう
習慣6:携帯会社や生命保険はとりあえずで選んでいる
習慣7:電子マネーだとつい使いすぎる
「これらは貯蓄が苦手な方の多くに見られる習慣ですが、いくつか心あたりのある方も多いのではないでしょうか? では、これらの習慣から分かるお金が貯められない人の問題点について詳しく解説していきます」
習慣1:部屋が片付いていない

「リモコンや鍵をその辺に置く、服は脱ぎっぱなしなど部屋の整理整頓ができていない方はお金の管理も苦手な傾向があるといえます。
お金の管理で大切なのは毎月いくらの収入があるのか、何にどれくらいのお金を使っているのかの把握です。お金の流れが見えてくると、自然と無駄な場所も分かるので無理のない節約にもつながります」
確かに、お金の管理を疎かにしていると全体の収支のバランスも見えてこないため、どこを削って良いのか、どれくらい削れるのかがイマイチ分かりません。結果、無謀な節約に挑戦してしまったという方もいるのではないでしょうか。
習慣2:約束の時間に遅れがち

遅刻が多い方も貯蓄が得意とはいえないそうです。
「約束の時間を守るのも、部屋の整理整頓と同じく管理能力の一つです。また時間通りに到着するためにはあらかじめ計画を立てて行動していく必要がありますが、これは貯蓄にもいえます。明確な目安や目標を定め、計画に沿って着実にお金を貯めていくことは貯蓄ができるようになる秘訣です」
習慣3:口座が一つしかない/多すぎる

また、口座の管理ができているかどうかも重要なポイントの一つだそうです。
「口座が一つしかないと『使う』と『貯める』が一緒になってしまっているため、給料内で支出が収まっているのか全体の収支が分かりにくくなります。そのためお金が貯まっていないという実感が沸かず、お金を貯めようという気持ちも薄れてしまうでしょう」
一方で、口座が多すぎるのも問題があるそうです。
「口座毎の使用目的や残高の管理が複雑になり、面倒くささから貯蓄を挫折してしまう可能性もあります。適切な数を柔軟に利用するのが大切です。
整理整頓や時間を守ることなどは貯蓄と関係がないように思えるかもしれません。しかし、そういった管理をしっかりこなせていないと貯蓄もうまくいかないものです。ただし、きっちりやりすぎるのも失敗のもと。最初のうちはざっくりと把握するだけでも十分です」
習慣4:貯蓄について書かれた本を読むだけで満足する

貯蓄関連の本を読んだだけで、なんだか貯蓄ができたような気になっている方も多いのでは?
「相談に来る方のなかには貯蓄に関する本をたくさん読んでいますという方も多いですが、その本の内容を実践しなければ意味はありません。10つのテクニックを知っているよりも、そのうちの一つでも実行に移す方の方が貯蓄はうまくいきます」
ほかにも、明日やろう、時間ができたときにやろうと後回しにしてしまう癖がある方も注意が必要だそうです。
「行動を先延ばしにしがちな方は貯金についても『もう少しお金が貯まってからやろう』『お金が必要となってからやろう』と行動を先延ばしにしているのではありませんか?
なかなか行動できない理由はいくつか考えられます。例えば、先ほど説明したように貯蓄の目標が決まっていない場合。実現したい夢やそれに必要な貯蓄額が定まっていないと、なかなかお金を貯めようという気にはならないものです。
また、『1年で1億円貯める』『毎日の生活費を100円に抑える』などの無理な計画は、ハードルが高すぎて挫折してしまう場合があります」
目標がないのも問題ですが、目標が高すぎるのもよくないようです。
習慣5:貯蓄用のお金を使ってしまう
「使ってはいけないお金だと分かっているのに、つい手を出してしまう方も要注意です」
ある程度の金額が貯まってくると、ちょっとくらいなら……と使ってしまいそうになりますが、貯蓄を成功させるためには自分に厳しくする必要がありそうです。
ちなみに貯蓄を続けるテクニックの一つとして、給料を使ってしまわないように先に貯蓄分を確保する「先取り貯蓄」があります。しかし、ここにもお金が貯まらない人ならではの落とし穴があるそうです。
「先取り貯蓄になっていない先取り貯蓄のことを、『一旦貯蓄』と呼んでいます。前もって貯蓄する金額が多すぎて結局生活費などが足りなくなり、先取り貯蓄に手を出してしまうのが一旦貯蓄。自分の収支のバランスが見えていない方ほどハードルを上げすぎてしまいます。
貯蓄を続けるコツは、明確に、かつ簡単にこなせる範囲で目標を設定することです。海外旅行の資金として毎月1万円を貯めるといった無理のない金額からこなしていけば、達成感も味わえて楽しく貯蓄が行えるでしょう」
習慣6:携帯会社や生命保険はとりあえずで選んでいる
携帯の契約を見直したことがない、生命保険の保障内容をよく分かっていないという特徴も、お金が貯まらない人に多く見られるようです。
「お金が貯められない人は通信費や保険料の見直しをしていない場合が多いです。通信費であれば契約プランやオプションの見直しも効果的ですし、今は格安キャリアも様々な選択肢があります。生命保険も言われるがままに加入して不要な保障があったらもったいない。毎月支払う固定費ですから、自分の生活スタイルに本当に合っているか、一度契約状態を見直してみると良いでしょう。
また、「今はある程度の収入があるから」「健康でいくらでも働けるから」と貯蓄について真剣に考えていない若者こそ、今からの貯蓄が大切だといいます。
「若い方のなかにはお金が足りなくなったらその分働けばいいと、資産形成や投資について興味を持たない方も多いでしょう。しかし、若いということはそれだけこれから先の時間があるということ。今からコツコツ貯蓄を始めれば十分に資産を築けます」
習慣7:電子マネーだとつい使いすぎる

キャッシュレス決済は財布を開いたり現金を支払ったりしないため、お金を使っているという意識が薄れがち。普段はお札を崩さないように買い物を控える方でも、電子マネーだとつい使ってしまうという場合もあるのでは?
「キャッシュレス決済は便利な反面、実感がないためお金を使うハードルがつい下がりがちになってしまいます」
「電子マネーにチャージしたお金も、クレジット決済で翌月に支払うお金も、財布に入っている現金と同じお金ということを忘れないようにしましょう。お手軽だからといって使いすぎないよう、普段から口座の残高を確認するなど意識しておくことが無駄な出費の削減につながります」
ただし、絶対に使ってはならないというわけではないそうです。これまでも説明してきたように、ちゃんと管理できる範囲で利用するのが大切だといいます。
お金が貯まる人になるための3つのキーワード

ここまでお金が貯まらない人の習慣や問題点を紹介してきました。では、お金が貯まる人に共通する行動パターンはあるのでしょうか? この点も横山さんに教えてもらいました。
ショウ・ロウ・トウで分ける
「お金を貯めるためには家計を把握していることが大切ですが、それだけでなく、支出の性格を分けて考えているかどうかも重要です。そこで私がいつも提案しているのは『消費』、『浪費』、『投資』からなるショウ・ロウ・トウの考え方。お金は支出の性格によって次のように分類できます」
消費……日々の生活に欠かせない支出。衣食住など生活に必要な物を買うだけではなく、家賃や光熱費などの使用料に使うお金
浪費……日々の生活になくても困らないものへの支出。娯楽費や嗜好品など、生活に必要がないけれど、その時々を楽しむために使うお金
投資……日々の生活に欠かせないものではないけれど、将来的に意味のある支出。貯蓄や自己投資など役に立つことに使うお金
「まずは支出面について、それぞれショウ・ロウ・トウのどれに分類されるか振り返ってみること。そして、全体の支出割合をみて消費、浪費、投資が70:5:25になるようお金の使い方を意識してみましょう。ざっくりと自分の毎日の支出がどれなのかを意識するだけでも、家計管理や貯蓄に対する姿勢は変わってくると思います」
浪費と投資は明確には分けない
横山さんによると、ショウ・ロウ・トウの実践について、少し注意点もあるようです。
「いきなり生活費を半分にしたり、好きな事へのお金を貯金に回したりなど、ストイックすぎる貯蓄はなかなか続かないものです。例えば、山登りでも周囲のきれいな景色を見ながらであれば、疲れを余り感じずに楽しく頂上をめざせるでしょう。同様に、貯蓄も楽しみながら行えば無理なく続けられます」
つまり、楽しく続けるためには厳密なルールを決めるのではなく、ある程度のゆとりを残しておくことが大切。そのゆとりになるのがショウ・ロウ・トウのうちの浪費だそうです。浪費の割合をゼロにする必要はなく、頑張っている自分へのご褒美など、度が過ぎない浪費は家計管理を継続するための程よい羽休めになるそうです。
「また、浪費として使ったお金が投資になる場合も少なくありません。ちょっと高級なレストランでの食事や高級ブランド品は、浪費と捉えられるケースが多いかもしれません。しかし、一流のサービスや商品に接する体験は自分の知見を広げてくれる場合も多くあるでしょうし、そのことが後々になって収入面にプラスとなる可能性も十分に起こり得ます。高いからダメ、安いから良しという捉え方ではなく、自分がどのようなモノや体験に対価としてお金を使っているかを意識することが大切です」
→「お金が貯まる人になるための3つのキーワード」はこちらの記事もチェック
お金が貯まる体質になる? 普段から意識したい「これは消費?浪費?投資?」
財布の新調からはじめてみよう

最後に、横山さんが教える初心者が簡単に始められる方法を一つ紹介します。
その方法は「財布を変える」こと。
「まずは気に入った財布やちょっと高い財布を買ってみて下さい。いい財布を持っていると、自然ときれいに使おうという気持ちになるでしょう。カードを入れる場所を工夫したり、レシートやポイントカードを溜め込まないようにしたりする人もいるでしょう。結果、お金やカードをすっきり管理できるようになるかもしれません。また、財布を開くという何気ない動作にも意識が向くようになります。支払いをしている実感が沸いて、お金について考えるきっかけにもつながります」
つまり財布を変えるだけで勝手にお金が貯まるのではなく、あくまで自身の行動パターンや考え方を変えるきっかけになるということ。「お金が貯められる人」になるためには、このようにまずは普段の習慣やお金に対する考え方から振り返ってみるのが良いかもしれません。
出典:金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和元年調査結果(外部サイト)
貯まる家計に必要なお金の捉え方と、具体的な改善術についてはこちらの記事でも紹介しています。
【年間1,000件以上の家計相談からみえた!】貯まる家計はこう作る。必ず変わる秘伝の家計管理術(外部サイト)
この人に聞きました

横山光昭氏
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生・貯金プログラムを用いた個別指導で、これまで2万3,000件以上の家計相談を受けてきた。顧客が「現在も未来も豊かな生活を送ることができる」ことを一番の目標にしている。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書に『貯金感覚でできる3,000円投資生活デラックス』など。
ライタープロフィール

主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。立教大学卒業後、SE系会社を経て2019年に入社。主にクレジットカードやテック関連のWEBコンテンツ制作や企画立案、紙媒体の編集業務に携わる。
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