ボードゲームには投資が盛り込まれている種類も
大人から子どもまで、幅広い層に親しまれているボードゲーム。近年は手ぶらで訪れてボードゲームを楽しめる形態の店舗「ボードゲームカフェ」も増えており、ますます注目の集まる分野の1つといえます。
ボードゲームは年間1,000以上もの新作が登場するといわれており、陣取り合戦や推理系、勝敗が運に左右されたり、プレイヤー同士のコミュニケーションが重要となったりするゲームまで、そのジャンルは多岐にわたります。そんなボードゲームのなかには、投資によく似た面白さを持つタイトルもあるそうです。
「展開の先読みや損切りのタイミング、プレイヤー同士の駆け引きなど、一部のボードゲームには投資に共通する奥深さも多くあると思います」
そう教えてくれたのは渋谷をはじめとした全国16ヵ所(姉妹店含む)で展開するボードゲームカフェ「JELLY JELLY CAFE」のオーナー白坂さん。各店平均800種類のゲームを揃えるJELLY JELLY CAFEでは、初心者の方にゲームをおすすめする機会も多いそうです。そこでこの記事では白坂さんが教える、楽しみながら投資の感覚も身につけられるおすすめボードゲームを紹介します。
白坂さんおすすめの投資が学べるボードゲーム4選
投資の基本が分かる「フォー・セール」

最初に紹介するのは「フォー・セール」(アークライト社)。こちらは手持ちの資金を使って不動産物件を買い集め、さらに購入した物件を売却してより多くの利益を稼ぐゲームです。
基本的な流れとしては、以下の通り
1.配られた資金を元手に、不動産物件を競り落とす(第1フェーズ)
2.競り落とした不動産物件を使って、さらに小切手を落札する(第2フェーズ)
3.最終的に残ったお金と小切手の総額が一番多いプレイヤーの勝利
「安く買って高く売るという、投資の基本ともいえる考え方が含まれたゲームです。2回行われる競りの場でどうやって相手を出し抜くかというのが白熱するポイントの1つといえます」
第1フェーズでは購入したい不動産をオークション形式で落札するのですが、第2フェーズではお互いが手持ちの不動産物件を同時に表示し、より高い価値の物件を出したプレイヤーが小切手を手に入れられます。そのため、どの不動産物件をどのタイミングで出すかというのが駆け引きとなります。
「例えば、手持ちで一番価値の高い物件を売却しても競り負けてしまって小切手がもらえない場合もあります。逆に、他のプレイヤーの裏をかけば価値の低い物件で高額な小切手を手に入れることも可能です。他のプレイヤーがどれくらいの資産をつぎ込んでくるのか、その読み合いが面白いゲームです」
資産配分が勝負を左右する「ビッグショット」

「ビッグショット」(Engames社)は投資家になったつもりで遊ぶゲームです。
1.4色×18個の計72個あるキューブをオークションマスにランダムに配置。
2.ダイスを振って止まったマスにある4つのキューブをオークションする
3.落札したプレイヤーは4つのキューブを盤面上の好きな土地へ自由に配置
以上の3アクションを18回、キューブがなくなるまで繰り返していきます。
「このゲームには借金というシステムがあります。借金をしてでも土地を手に入れるべきですが、負債が多すぎても得点計算で負けてしまうというジレンマがゲーム性を奥深くしています」
ビッグショットではキューブ(資金)を土地に配置(投資)していき、キューブが7つ配置された段階で一番多く配置された色のプレイヤーがその土地をもらえます。また、プレイヤーはオークションの際に借金して、競売用の資金を増やすことも可能です。最後に「所持金」+「土地の価値」-「借金」の合計が最も大きいプレイヤーが勝利となります。
「キューブを置ける数は7個までなので4つ置けば確実に土地を獲得できますが、キューブには限りがあるため毎回大量に置けるわけではありません。限りある資産をどのように配分するのか、どのタイミングで借金して勝負を仕掛けるのかがゲームのキモです。
攻めるべきポイントや引き際など、いっしょに遊んでいるプレイヤーの性格がよく分かるゲームの1つといえます」
市場の動きを予測する「モダンアート」

「モダンアート」(ニューゲームズオーダー社)は絵画を転売して所持金を増やしていくゲームです。
1ラウンドは絵画を集める前半部分と、絵画を換金する後半部分に分けられます。
前半ではプレイヤーは配られた絵画のカードを順番に競りに出していきます。絵画は全部で5色あり、同じ色の5枚目が競売に出された時点で後半に移ります。
後半では、まず各色に場に出た枚数で順位をつけます。例えば青色が5枚、黄色が4枚、緑色が3枚……と場に出ていた場合、最も数の多い青色が1位、次に多い黄色が2位です。1位の色から順に高い換金額が設定されるので、落札したカードを換金して1ラウンドは終了。4ラウンドが終わった時点で一番所持金の多いプレイヤーが勝利となります。
「このゲームの面白い点は、絵画の換金額が最後まで分からないところです。勝つためにはたくさん場に出そうな色を予想して、より多く落札しておく必要があります。
さらに、前のラウンドでついた換金額は次のラウンドへ引き継がれるため、回数を重ねるうちに1枚あたりの換金額が高額になっていきます。序盤で所持金を増やせなかったとしても、残りのラウンドで価値の高い絵画を集められれば一発逆転も可能です」
駆け引きの生まれるポイントはほかにもあるといいます。
「4位以下の色はそのラウンドでの換金額が0円となるので、大金を支払って落札した絵画が一転して無価値な紙くずになる場合もあります。また、4位以下になりそうな色を予測して他プレイヤーに高く買い取らせるのも一つの手です。
値上がりすると見込んで購入した銘柄が暴落して大損したり、逆に安く仕入れた作品が高く売れたりする点は現実世界の投資にも通じるところがあります。どのカードが高値で取引されるのか、市場の読み合いが盛りあがるゲームです」
株式投資のように企業成長を楽しめる「アクワイア」

最後に紹介するのは、50年以上の歴史を持つ名作ゲーム「アクワイア」(AVALON HILL社)です。
こちらはホテルを建設し、合併・吸収を繰り返しながらお金を稼いでいくゲームとなっています。
プレイヤーは1ターンに1度、トークン(アルファベットと数字が書かれた駒)を盤面の対応する場所へ配置します。トークンが隣り合うとホテルを設立でき、ホテルに対応した株券を発行できるようになります。ゲーム終了後は全ての株券を売却し、一番所持金の多いプレイヤーが勝利となります。
「アクワイアは株取引のようなやりとりが楽しめるゲームです。ホテルは隣り合うトークンの数が増えるほど大きくなり、その分株券の価値も高くなっていきます。株券は売買できるので価値の高い株券を売って資金にしたり、大きくなりそうなホテルの株券をあらかじめ買っておいたりして利益を狙うのがポイントです」
価格が上がりそうな銘柄の株を買うという戦略は、実際の投資にも共通する考え方といえそうです。
「ホテル同士が隣り合うと小さいホテルは合併吸収されてしまうのですが、その際配当金をもらうことができます。自分のホテルを大きくしていくのか、合併されて資金を手に入れるのかの判断も重要となります」
誰とでもすぐに、さらに仲良くなれるツール

最後に、白坂さんの考えるボードゲームの魅力について聞きました。
「誰とでもすぐに仲良くコミュニケーションが取れるようになるのがボードゲームの魅力です。初対面の方同士でも一緒に楽しく遊べますし、普段から付き合いのある友人でもゲームを通してまた違った一面が分かってより一層仲良しになれるツールだと思います」
また、心理戦が生まれるゲームはより面白くなると感じているそうです。
「同じゲームであってもプレイする人によって得点の取り方やその対抗策は変わってきます。そのため、ゲームの要素に駆け引きなどの心理戦が絡むと相手をよく観察する必要が生まれます。プレイする人によって最適解が変わる奥深さも魅力の1つです」
まとめ
ボードゲームのルールは一見複雑ですが、慣れてしまえば周りを見る余裕も生まれてきます。そして、それは投資にもいえることです。心理戦を楽しんだり、大きな利益をめざしたりしたいなら、まずは回数をこなしてルールを覚えることからはじめてみてはいかがでしょうか?
この人に聞きました

白坂翔
1984年生まれ、元自衛隊で元ホスト。ボードゲームカフェJELLY JELLY CAFEオーナー、将棋カフェCOBINオーナー、マーダーミステリー専門店Rabbitholeプロデューサー、株式会社人狼の代表取締役。
ライタープロフィール

主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。立教大学卒業後、SE系会社を経て2019年に入社。主にクレジットカードやテック関連のWEBコンテンツ制作や企画立案、紙媒体の編集業務に携わる。
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