労働に縛られ続けない人生「FIRE」とは?セミリタイアに必要な資産

労働に縛られ続けない人生「FIRE」とは?セミリタイアに必要な資産

労働に縛られ続けない人生「FIRE」とは?セミリタイアに必要な資産

近年、欧米の20〜30代の間で「FIRE(ファイア)」と呼ばれる早期リタイアがムーブメントになっています。若い年齢でのリタイアと聞くと多額の貯蓄が必要なイメージがありますが、FIREは誰でもめざすことが可能な概念として注目されています。

従来の早期リタイアとFIREとの違い

従来の早期リタイアとFIREとの違い

最近はリモートワークの普及によって働く場所だけでなく、時短勤務や週3〜4日だけ正社員として働くなど勤務形態の多様化が進んでいます。今までと違った働き方の選択肢が増えたことで、60歳の定年まで勤務するという常識についても、人生設計とともに改めて考えてみたい人も多いのではないでしょうか。

そこで働き方の一つのヒントになるのが、欧米で流行している「FIRE」です。

FIREとは「Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」の頭文字で、端的にいえば「早期退職して、お金のためにヘトヘトになるまで働く縛りから自分を解放する」というライフプランや概念を指します。

言葉通りに解釈すると、「お金の縛りがない=富裕層だけが実現できる悠々自適の生活」というイメージを抱く人も多いのではないでしょうか。この早期リタイアにまつわるイメージの輪郭自体は、日本でもとくに目新しさはありません。しかしFIREが従来のそれと違うのは、ビジネスで成功したり遺産相続したりといった特定の人だけがなし得る生活ではないこと。既にFIREを実践できている人は、毎年の生活費を賄えるような貯蓄と節約を意識しながら、リタイア後も身近に始められる投資の収益を得ることで、経済的自立をめざしています。

元々米国で巻き起こったFIREムーブメントは、今では欧州も含めてグローバルな広がりを見せています。実践する著名なブロガーも多く登場し、ニューヨーク・タイムズやBBCなど多数メディアで取り上げられ、関連情報を有志で共有するコミュニティサイト(「FIREhub.eu」「MILLENNIAL REVOLUTION」)は多くの支持を集めています。

そんなFIREの主な支持者は、マイホームやマイカーに強い憧れを持たず、従来の価値観に縛られないミレニアル世代(2000年代に成人や社会人となる世代)の人たち。過剰消費への疑義が根幹にあり、そのために貴重な時間を労働に充てることへの反発や、あくまで目的は豊かな人生設計を模索して自分で作りあげていくという共通認識が背景にあるようです。

早期リタイアにはいくら必要?

早期リタイアにはいくら必要?

では、具体的に早期リタイアするためにはいくらの資産が必要なのでしょうか。FIREコミュニティで定番となっているいくつかのルールを基に、簡単に試算してみましょう。

目安は年間支出の25倍の金額

早期リタイアのために必要な貯蓄額として、FIRE実践者の間で一つの定番となっているのが「年間支出の25倍」です。これは年齢に関わらず共通の指標となっています。

ここでふと25年分の生活費しかカバーできていないのでは、と思う方もいるかもしれません。しかし重要なのは、このFIREの貯蓄額は「投資元本」であるということ。リタイア後はここからの収益だけで暮らすことが基本原則となるので、一方的に家計が目減りしていくわけではありません。むしろ収益を生み出す大黒柱となります。

必要な貯蓄額に話を戻して、参考として総務省による家計調査の消費支出(総世帯・2019年平均)をみてみましょう。1世帯あたりの平均支出は月額24万9,704円で、年間では299万6,448円となっています。FIREの目安である25倍を掛けると、約7,500万円という金額となります。

7,500万円……この数値をみただけで「実現は無理」と考える人もいるでしょう。ただ、これはあくまで米国のインフレ率や株式市場の成長率を前提とした試算であって、必ずしも日本に住むすべての方にあてはまるわけではありません。

そこで実現可能かどうかを紐解くヒントとなるのが、4パーセントルールという支出面の考え方です。

4パーセントルールは柔軟に定義してみる

4パーセントルールは柔軟に定義してみる

4パーセントルールとは、生活費を投資元本の4パーセントにおさめることができれば、資産を目減りすることなく暮らしていくことが可能だというシンプルな仮定です。米国のトリニティ大学の博士が研究した金融理論で、退職後の資産運用について、4パーセント未満に支出をおさえることができれば、高確率で30年以上資産を維持できるという調査結果としてFIREコミュニティ内では知られています。

この理論には米国の株式市場がこれまで年間平均7パーセントの成長率を続けてきたこと、そこからインフレ率が3パーセントであることが考慮されて、差し引き4パーセントという理論上の値が基準となっているようです。先述の年間支出の25倍というFIREの目標金額も、生活費を投資元本のうち4パーセントにするためには、いくらの投資元本があればいいか、という「投資元本(100パーセント)÷支出(4パーセント)」の計算が根拠となっています。

ただ、本当に4パーセントが適切な基準なのでしょうか?

米国と比べて日本のインフレ率は低水準である一方で、日本から米国市場にも投資が可能です。インフレ率は低く、一方で運用利回りは米国のFIREと同じ年利7パーセントだとすれば、早期リタイアのための目標金額はグッと小さくなります。投資元本に対する生活費の割合は4パーセントルール(インフレ率3パーセントと仮定)ではなく、5パーセントや6パーセント(インフレ率1〜2パーセントと仮定)までゆとりを持って計画することもできるでしょう。(※)

つまり、早期リタイアの目安は年間支出の17〜20倍と考えることもでき、目標額は先述の家計調査をベースにすれば5,094万円〜5,993万円ほどになります。

いかがでしょうか。先ほどよりかなり小さくなりましたが、これでもまだ目標金額として高い印象を持つ人も多いでしょう。しかしFIREが多くの人に受け入れられた要因のひとつは、ここから先の話がヒントになります。

(※)インフレ率はあくまでも仮定であり、為替変動リスクがあります。

一生働かないことに固執しない

一生働かないことに固執しない

FIREが特徴的なのは、経済的自立のためにお金持ちになることがゴールなのではなく、あくまで豊かな人生を楽しむことが目標とされています。豊かさの定義はそれぞれですが、必ずしも1億円を40歳までに貯めて引退する、という凝り固まった目標が設定されているわけではありません。

そのため広義の経済的自立という意味で、自分の好きな副業をしながら収入を得る「サイドFIRE」や、気の合う仲間がいる職場に週1〜2日だけ短時間働きに行ったりする「バリスタFIRE」など、色々なタイプのFIRE実践者がいるようです。

また都市部ではなく郊外や地方に居住地を変えて、投資収益を得つつ、居住コストを大胆に下げる人もいるようです。著名なFIRE実践者のクリスティー・シェン氏は、長期間にわたる早期リタイア生活において、柔軟に収入や支出の調整を行うことを「終わりなき再リタイア」として推奨しています。

先ほどの試算に戻ります。例えば投資収益だけでなく、自分の趣味を生かした副業で月に10万円稼ぐことができたとします。計算上、1ヵ月の消費支出は約25万から15万円に減ったと考え、そのうえで日本の投資環境をベースに年間支出の17倍を目標とすれば、投資元本の目標額は3,060万円となります。副業の収入が15万円で支出を仮に10万円とすれば、2,040万円まで下がります。

総務省の家計調査がベースのため、この支出はマイホーム購入や子供の進学費など、ライフイベントに関わる大きな出費によって大きく上下します。あくまで目安ではありますが、早期リタイアも少し現実味を帯びて考えられるのではないでしょうか。

早期リタイアの鍵となる投資と節約

早期リタイアの鍵となる投資と節約

では、仮に2,000万円という目標金額を設定したとして、どのように貯めればいいのでしょうか。短期間で貯蓄しようとするには決して低い金額ではありません。

FIREムーブメントの第一人者であるグラント・サバティエ氏は、目標額達成に向けて、住居費や交通費、食費などの大きな支出の節約を推奨しています。ただ「支出を切り詰めるより収入を増やす方が影響力は大きい」として過度な倹約より、早い時期からできるだけ多くのお金を投資に回すことを勧めています。

彼が説いているのは、複利効果を期待して、なるべく若いうちから長期間投資を続けるという方法。また米国市場の成長に乗るかたちでインデックスファンドに投資し、できる限り投資収益には手をつけないことを自著で推奨しています。このようにFIRE実践者に共通するのは、早期リタイアのためには収入を最大化するだけでなく、その近道として資産運用の重要性を指摘している点です。

例えば毎月3万円でも、15年間・年利7パーセントでこつこつ積立投資を続けていけば、単純計算で15年後には約950万円(元本540万円)、20年後には約1,560万円(元本720万円)ほどに資産は膨らみます。もちろん相場変動で時期によっては資産が上下することはあるかもしれませんが、目標額までは焦らず続けることが重要なポイントであると、多くのFIRE実践者は指摘しています。(※)

(※)数値はあくまでも一例であり、実際は異なる場合もございます。

まとめ

FIREが定義する早期リタイアは、一部の才能や運に恵まれた人だけの特権、というイメージとは少し様相が異なります。完璧をめざさず、場合によっては副業やパートで自分の好きなことをしながら働いたり、ライフスタイルを見直して生活コストを下げたりする。こうした柔軟なリタイアの在り方が、多様な価値観を受け入れるミレニアル世代に受け入れられた一因となっているのかもしれません。また誰もが手の届く身近な金融商品であるインデックスファンドやETFを資産運用のツールとして選んでいることも、世界中で実践者を増やしているポイントともいえそうです。

最後に、FIREの思想を知る一つの参考資料として、30歳で早期リタイアを実現した先述のサバティエ氏の言葉を紹介しておきます。

「人生の最期を前にして人々が感じる最も大きな後悔のふたつは、『他人が期待する人生ではなく、自分自身に正直な人生を送る勇気を持つべきだった』、そして『あれほど一生懸命に働かなければよかった』だ」



参考:
家計調査 2019年(令和元年)平均 (2020年2月7日公表)|総務省(外部サイト)
・『FIRE 最速で経済的自立を実現する方法』(朝日新聞出版)グラント・サバティエ著
・『FIRE 最強の早期リタイア術』(ダイヤモンド社)クリスティー・シェン&プライス・リャン著

・本コンテンツは一般的な情報提供を目的とするものであり、お客さまに証券投資取引に関して何らの推奨・勧誘も目的とするものではありません。

ライタープロフィール
田中 雄大
田中 雄大
主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション代表。関西学院大学卒業後、編プロ、マネー系雑誌等の編集記者を経て2014年設立。AFP認定者。

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