「強い家計」をつくるには支出の3つのバランスを整える
新型コロナウイルスの感染拡大により、かつてない苦境に直面している日本の経済。景気後退のニュースが相次ぎ、復活の兆しがいまだ見えないなか、私たちはこれまでに経験したことのない不透明な時代を迎えようとしています。
「コロナ禍でボーナスがカットされた」
「仕事がなくなり収入が減った」
「在宅時間が多くなり、出費が増えて家計が苦しくなった」
――予期せぬ事態に家計が圧迫され、お金に対する危機感を募らせている人も多いのではないでしょうか。
先の見えないそんな時代に、お金とどう付き合っていけば良いか。どうすれば、「逆境に負けない強い家計」を作ることができるのか。それには、「支出の整理」が有効です。
強い家計とは、想定外の状況に直面しても、赤字に転落したりせず、自分のペースでお金を増やしていくことができる家計のこと。そんな理想の家計にするには、貯める、増やすといった「攻めの家計管理」も重要ですが、最初に取り組んでおきたいのが、「支出の整理」です。
収入、支出、貯蓄の3つのバランスが整ってこそ、強い家計が生まれます。家計のなかで無駄な支出を洗いだしてすっきりと整えておくことが大切です。
なぜ「支出の整理」が重要なのか?
そもそも「支出の整理」がなぜ大切なのでしょうか。その理由は、楽にストレスなく貯まる家計を作ることができるためです。
家計のあちこちにムダが散らかり、放置された状態では、どんなにやりくりや節約を頑張ったところで労力に見合う効果が見込めません。これではせっかくの努力が水の泡となり、もったいないですよね。
さらに、支出に目を向けることで、お金を賢く有効に使う意識が根付き、習慣化します。「お金を使うスキル」は、暮らしの質をも上げる一生もののスキルです。最小限の労力で効率よくお金を貯めることができ、厳しい時代を生き抜く武器になります。
思考停止しがちな「固定支出」にメスを入れる

では、具体的にどこから手をつければ良いのでしょうか。まずは「固定支出」の見直しから始めることです。
固定支出とは、毎月必ず出ていく一定額のお金を指します。家賃、住宅ローン、各種保険料、光熱費、通信費、習い事、音楽・動画配信サービスのサブスクリプション定額利用料などです。
この「固定支出の削減」は、家計改善の肝ともいえる重要な部分。家計のなかで大きなウエイトを占めるのはもちろん、一度取り組めば、節約効果がずっと続くため、効率が良いのです。
さらに、固定支出には、自分が気づいていない意外なムダが放置されているケースが多いのです。
いったいなぜでしょう。ほとんどの場合、固定支出は、銀行口座からの引き落とし。つまり、毎月当たり前のように出ていくお金のため、特に気に留めたり、疑問を感じたりすることが少ないのです。これが食費や交際費といった流動費の場合は、購入の際に、ほかと比較するなど、いったん考えるというアクションがあります。
しかし、固定支出は、お金を使っているという意識が薄くなるため惰性で支払うケースが多く、「思考停止」しがちです。
「固定支出」のムダをあぶりだす方法
続いて具体的な方法をみてきましょう。ムダをあぶりだすには、支出を正確に把握することが重要です。クレジットカードの利用明細や通帳、電子マネーの履歴などをチェックしながら支出をもれなく書き出し、見える化しましょう。使っていないクレジットカードに年会費がかかっていたり、利用頻度の低いサービスなどにお金を払い続けているケースも少なくありません。たかが数百円と見過ごしていると年単位で大きな額に。「3年払い続けたらいくらになる?」「そのお金があれば何ができた?」と自問自答してみることで、手が止まりがちなコストカット作業が捗るかもしれません。
習い事の費用対効果を見直す
また、スキルアップや子供の習い事などは聖域となりがちですが、本当に役立っているのか、費用対効果はあるのか、代用できるものはないかと、振り返って考えてみる良い機会にもなります。
光熱費のプランを見直す
光熱費は、電力会社を比較するなど、最適なプランの見直しを。電気とガス、通信会社をまとめると割引が適用され、節約効果が見込めます。生活環境が変われば、最適なプランも変わるため見直す契機に。
通信費の見直し
在宅勤務が増え、おうち時間が増えるなど、コロナ禍で環境が変わった人も多いのではないでしょうか。電力比較サイトなどを使えば、自分にとって最適な会社やプランが分かります。また、自宅にインターネット回線をひいているならスマホ料金は安いプランに下げたり、格安スマホを検討するなど、変更の余地あり。
保険料の見直し
保険に入りっぱなしになっていたり、内容を把握していないものがないか確認を。ライフスタイルやニーズにあっているか、ムダに入りすぎてはいないか、検討してみることです。
コロナ禍で生活環境やライフスタイルが変わったことで、支出の内容も変化。光熱費や通信費、食費など、在宅時間が多くなったことで支出が増加した項目もあれば、一方で、外食代や交際費、被服費、化粧品代、ガソリン代は減少したというケースも多いのではないでしょうか。
減った支出を振り返ると、「これまで使いすぎていたかもしれないな」「これってなくても平気かも」「工夫すれば減らせるな」など、あたり前のように使っていたお金がムダであることに気づく場合もあるはずです。
浮いたお金は貯蓄?それとも投資?両者を比較

「支出の整理」によって浮いたお金を活用するには、どんな方法があるのでしょうか。
必要なものを買ったり、いざという時の予備費用として貯蓄するのも一つの手ですが、ここは、「増やす」ことに目を向けてみるのも有効。投資に回すことで、ご自身の資産形成に役立ちます。「投資はリスクがあるから……」と二の足を踏んでいた人もいらっしゃると思いますが、浮いたお金を利用する方法であればチャレンジしやすいと思います。
仮に、浮いた金額を利回り0.001パーセントと利回り3パーセントで運用した場合で、どのくらい差があるのかみてみましょう。
例えば、毎月1万円を年率0.001パーセント(定期預金の金利と同水準)で積み立てをしながら運用した場合、元本120万円を運用して得た利益は、1,201円となり、ランチ1回分程度です。
対して、毎月1万円を積み立てし、利回り3パーセントで運用した場合、元本は同じく120万円ですが、投資で得た収益は、19.7万円になり、合計金額は、139.7万円(手数料や税金は含まない)になります。

さらに長期で積み立てるほど大きな効果を得られます。例えば、利回り3パーセントが期待される商品に毎月2万円を積み立てし運用すると、10年間だと280万円弱ですが、投資期間を30年に伸ばすと、なんと1,165万円にも!
現在30代の人なら60代で得られる老後資金として心強いお金になるはずです。もちろん投資は価格変動リスクなどがあり、シミュレーション通りにいくとは限りませんが、選択肢として考えてみるには十分な価値があるのではないでしょうか。
新しい生活様式が始まった今、家計の断捨離をして、お金の使い方にも新しい様式を取り入れることが大切。浮いたお金を有効に活用することで、不透明な時代でも、先行きに明るさが増すはずです。
ライタープロフィール

大学卒業後、男性総合誌で8年間編集に携わった後、フリーライターとして独立。主に女性誌やビジネス誌、書籍を中心に、女性の生き方や働き方などを執筆。これまで数多くの著名人やビジネスパーソンなどを取材。
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