お金について質問されたらどうする? 意外と説明が難しい

結婚や子供が誕生した後の思わぬ出費を目のあたりにして、「もっと以前から計画的に貯蓄しておけば良かった」と、お金の使い方を悔やんだ経験をお持ちの方もいるでしょう。
社会人になって初めてお金の苦労に直面し、「せめて自分の子供には学ばせたい」と考えている方も多いかもしれません。しかし、いざ子供に教える立場になってみると、「お金ってなに?」等と聞かれた際に、伝え方が分からずに悩んでしまう人もいるのではないでしょうか。
第1回目でお話ししたように親が子供にお金の知識を伝えることは重要だとはいえ、やはり、分かりやすく教えるのはなかなか大変なことです。特に、小さな子供が抱く疑問は壮大だったり、抽象的だったりして、大人でも答えを導き出すのに苦労することも。
そこで、ここからは実際に編集部が集めた「子供が抱くお金に関する素朴な疑問」への回答例を紹介します。
答えてくれたのは、第1回目のコラムを執筆し、ご自身も父親である(株)Money&You代表の頼藤太希さん。ぜひお子さんに伝えるときの参考にしてみてください。
子供が抱く素朴な疑問にプロが回答してみました!

子供の疑問 その1:お金ってなに?(5歳)
頼藤:お金を一言でいうと、欲しいものや必要なものを手に入れる手段。例えばスーパーで売っている100円のお菓子を欲しいなら、レジで100円のお金を支払えば、お菓子は君のものになるよね。お金とモノを交換しているんだよ。いっぱい欲しいものや必要なものがあるほど、お金もたくさん必要になるんだ。
今はお金があたり前に使われているけど、大昔の人は、お金を使っていなかったんだ。もし欲しいものがあったら、お金ではなく、自分の持っているモノと交換していたんだ。
例えば「米をあげるから、肉をちょうだい」といった感じで、モノ同士を交換していたんだよ。「物々交換」とも呼ばれているね。でも物々交換だと、いつでも米を持っていないといけないし、腐ってしまったら、交換はできなくなるよね。だからどこにでも持ち運びできて、腐ることもないお金が登場したんだ。
子供の疑問 その2:1,000円札はただの紙なのに、なんで100円玉よりもたくさんものを買えるの?(小1)
頼藤:確かに1,000円札そのものは、ただの紙だよね。でも簡単に言うと「この紙は、1,000円としての価値がある」とみんなが信じているから、100円よりもたくさんのものを買うことができるんだよ。
逆に日本の1,000円札に1,000円分の価値があると信じていない地域では、使えない。例えば海外では、日本の1,000円札は使えないよ。代わりにその国にいる人が価値を認めているお金に、両替する必要があるんだ。1,000円札に、1,000円分の価値がいつまでも続くと信じているのは、日本にいる人だけだからね。
このお金の価値を守るために、誰でもお札を発行できるわけではなく、日本だと日本銀行だけがお札を発行しているんだよ。
子供の疑問 その3:コンビニとスーパーでは、同じ品物でもなぜ値段が違うの?(小4)
頼藤:コンビニに置いてある品物は、スーパーよりも高い場合が多いよね。確かに品物自体は同じかもしれないけど、でもコンビニのほうが町のいたるところにあって、それに24時間営業を行っている店舗もあるからいつでも買い物できて便利だよね。コンビニで買い物をするときは、こうした便利さも一緒に買っているんだ。便利さの裏には、コンビニで働く人や品物を運んでくる人、お店の電気等、いつでも利用できるために必要な人やものがあって、その分お金も必要になる。だから便利な分、コンビニのほうが値段が高いこともあるんだよね。
お店が提供しているのは、商品だけじゃなくて、便利さといった目に見えないサービスを一緒に提供していることもある。だから、何を求めて買うのかが大切だよ。できるだけ安いものを買いたいのであれば、多少移動してでもスーパーに行ったほうが良いよね。
子供の疑問 その4:物の値段はどうやって決まるの?(小4)
頼藤:その品物を「欲しい人」と「売りたい人」のバランスで決まるよ。欲しい人はあまりいないにもかかわらず、売りたい人だけが多いと、品物は余ってしまうよね。すると、品物一つあたりの価格は下がってしまうんだ。
逆に欲しい人がたくさんいるのに商品の数が少ない場合は、値段が高くなるんだよ。新型コロナウイルスやインフルエンザの予防のためにマスクやアルコールスプレーなどの商品は品薄状態になったことがあるよね。欲しい人がたくさんいる場合、いつもの値段よりも多少高くしても買いたい人はいるんだ。だから、欲しい人が多いと値段が上がることもあるんだ。
じゃあ、欲しい人が増えるほどにどんどん価格が上がっていくかというと、そういうわけでもない。あまりにも高くなり過ぎると「欲しいけど、高いから買うのはやめた」という人も増えてくる。つまり、欲しい人が減ってくるから、自然と価格も下がっていくんだ。
物の価格、あくまでも欲しい人と売りたい人のバランスによって自然と決まっていくんだよ。面白いね。
子供の疑問 その5:銀行ってなにしてるところなの?(小6)
頼藤:銀行には主に三つの役割があるよ。
一つ目は預かったお金を守る役割。お父さんやお母さんが銀行のATMでお金を引き出すのを見たことあるかもしれないね。このお金は銀行からもらっているわけじゃなくて、自分が銀行に預けたお金の一部を引き出しているんだ。
二つ目は、必要な人にお金を貸してあげる役割。借りた人は、お礼の気持ちも込めてお金を返すときに「利子」といって、借りた金額以上のお金を銀行に返すことになるんだ。貸す側に立って考えると、自分のお金を貸すのだから、何かお返しが欲しいと思うよね。これも物々交換の一つだよ。
最後、三つ目はお金をほかの銀行に移動させて、支払いを代わりにしてくれる役割もあるよ。ほかの銀行口座にお金を振り込んだり、口座から毎月水道光熱費や家賃のお金を払う作業を銀行が代わりにやってくれているんだ。
お金を大切にする子に育てるポイント

老後に必要な資金が話題になったように今後はこれまで以上に自分自身でお金を守り、増やし、備えていかなければいけない時代です。そのため幼い頃から金銭感覚を身につけておくことは、子供たちの未来にとって欠かせない力となるでしょう。
では、子供の頃から健全な金銭感覚を身につけさせるためにはどうすれば良いのでしょうか。
例えばお小遣いを毎月ではなく1年分を先渡しして、そのなかでやりくりさせるようにすれば、自然と支出を管理してお金を貯める力が身に付くでしょう。予算の管理、支出の管理ができるようになっていきます。
またお金を貯めるだけはなく、「借りる」や「増やす」を学ぶことも大切です。
例えば子供たちが近い将来、持つこともあるクレジットカードですが、使い方を一歩間違えれば借金が膨れあがってしまう可能性も。とくにリボ払いなどの仕組みは、毎月返済する金額が一定になる反面、元本がなかなか減らないために支払う利息総額はあっという間に膨れあがってしまいます。ファイナンシャルプランナーのもとを訪れる相談者のなかには、クレジットカードのキャッシングやリボ払いに頼ることが癖となり、気づいたら数百万円単位の借金を抱えている人も多いとのこと。
このように、お金で苦労しないためにも、子供のうちから金銭感覚を身に付けておくことは大切。また仕事をして収入を得る以外にも、投資によってお金を増やす方法があることも伝えるために、まずは教える側の親が「借りる」や「増やす」について学ぶことが重要だといえるでしょう。
【おやこの経済学】第3回では、お金を「借りる」「増やす」ことを学べるボードゲームをご紹介します。親子で学ぶだけではなく、おうち時間を充実させるヒントにしてみてください。
この人に聞きました

Money&You代表取締役/マネーコンサルタント。慶應義塾大学卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力。『SNS時代に自分の価値を最大化する方法』(河出書房新社)、『人気FPが教える! 稼げるスマホ株投資』(スタンダーズ)など著書多数。
ライタープロフィール

AFP認定者(2級FP技能士)。タウン誌、編集デザインファーム、大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。これまでコンテンツマーケティングや、ミレニアム世代向けビジネスメディア、不動産広告の取材&ライティングなどを手がける。
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