アノマリー現象とは

マーケット(相場)の動きを予想することは、プロでも難しいことです。ただ、相場との相関関係を合理的な説明はできませんが、投資家が参考にしている経験則がマーケットにはあります。それが「アノマリー現象」です。
例えば、「ジブリの法則」といわれるアノマリー現象は、金曜ロードショーでジブリ作品が放映された翌週の月曜日は、株や為替が大荒れになるというものです。
ジブリ作品の上映が、相場に直接的に影響はしていませんが、おそらくこれは金曜ロードショーが金曜日だという点と、ジブリ作品が放映されるのが夏に多い点がポイントだと考えられます。
なぜ金曜日がポイントかというと、アメリカでは毎月第1金曜日に、雇用統計の発表があります。雇用統計は、今後の景気を予想する際に重要になる指標です。この発表により相場が上昇したり、下落したりすることは良くあることです。
また、「夏枯れ相場」もアノマリー現象の一つといえます。夏は季節柄、相場のパフォーマンスがあまり良くない年が多いようで、例えば日本では「ニッパチ」、つまり2月と8月は昔から飲食店や小売店で売上が落ちる時期であり、株式相場も閑散としています。アメリカではほとんどの人が夏休みを取るので、夏は市場参加者が少なくなり、取引量も減ります。
その結果、ちょっとしたネガティブなニュースがあると普段以上に反応して下落しやすいことが、「夏枯れ相場」といわれる要因と考えられています。
このように、直接的にマーケットに影響を及ぼすわけではないですが、過去の経験則や季節性によりあたるといわれているのが、アノマリー現象です。
1年を通した具体例
季節性で見れば、実は1年を通してアノマリー現象は起こっています。ここでは具体的にご紹介します。
1月効果
「ご祝儀相場」とも呼ばれる1月のマーケットは、上昇傾向にあるといわれています。クリスマス以降年末にかけてと、年始の立ち合いである大発会(その年の取引初日)は、ご祝儀を含めた買いが入りやすくなるためです。
2月、3月「節分天井彼岸底」
節分で株価が天井(高値)をつけ、その後は調整が続き、3月のお彼岸で底をつけるというものです。1月効果による期待先行の相場が節分で一服し、企業の決算が集中する3月は、大きな金額を運用する機関投資家の利益確定の売りが多くなる傾向と考えられています。
考え方は納得できそうですが、実際のマーケットとはあまりリンクしていないようです。
4月効果
日本が新年度を迎え、株価が上がりやすいといわれています。機関投資家の新年度でもあるので、買いが入りやすく、3月に売られた資金が戻ってきやすいとも。
5月「セルインメイ」
「Sell in May」つまり「5月に売って相場から離れなさい」という、昔からアメリカにある相場の格言です。5月に高値をつけて、夏にかけて相場は下がりやすいといわれています。
7、8月「夏枯れ相場」
前述の通り、海外では夏休みを取り避暑地で過ごす慣習があることや、日本ではお盆があるため、市場参加者が少なくなり、1年のなかで一番取引量が少なくなるのが夏です。6月で株主総会なども一巡し、政治的なイベントも少ないことで、積極的に売買する理由が見つからないというのが夏枯れになる理由と考えられています。
10月効果(ハロウィン効果)
10月は株価が下がりやすいといわれています。10月31日がハロウィンの日であることから、「ハロウィン効果」とも呼ばれます。
過去、1929年の世界恐慌で株価が下落したブラックチューズデーは10月29日でした。1987年のブラックマンデーは10月19日。2008年のリーマンショックでは、10月28日に日経平均は一時6,000円台(26年ぶり安値)をつけるほど下落しています。
相場は大きく動くことが多いですが、この時期に買うことでパフォーマンスが上がるかもしれません。
12月「クリスマスラリー」
クリスマスシーズンは株価が上がりやすいというアノマリーです。アメリカでは年末5営業日から新年の第2営業日までは株価が上昇しやすいといわれています。
最後に、「二日新甫(しんぽ)は荒れる」というアノマリーがあります。二日新甫とは、その月の取引初日が1日ではなく、2日から始まる月のことです。このアノマリーは、根拠や背景がなく、過去の経験則からいわれているアノマリーです。
こう見るとアノマリーにも、説明を聞けばなんとなく納得できるものと、まったく根拠がないものと様々ですよね。
アノマリー投資は投資家も活用

アノマリーを基にした投資は、合理的な説明ができなくても、過去の傾向や市場のサイクル、季節性に基づいているからこそ、参考にしている投資家も多いようです。
特に5月は、「今年はセルインメイかどうか」と、毎年話題になります。結果はあたる時もあれば、もちろんはずれることもありますが、参考にしている投資家が多いのは事実です。
またマーケットの参加者には、大きなお金を動かすプロの投資家(機関投資家やファンドマネージャー)がいます。このプロの投資家は、相場が良い時も悪い時も運用を続けなければいけません。顧客に結果を報告しなければいけないため、どうしてもカレンダーに左右されるということも考えられます。
一方、個人の投資家は、自分の好きなタイミングで投資ができます。アノマリー現象を信じて投資をするのも、一つの方法かもしれません。
実際、アノマリー投資を実践する投資家たちは、市場のサイクルは繰り返されると考え、歴史を参考に売買します。10月や11月に買って、4月や5月に売ることで、ほとんどの年で利益を出して、リスクを減らすことができるという投資法は、良く聞く話です。
ただし、投資すべき金額の大きさは前年の動きによります。直近で大幅上昇していれば、少し様子見する必要もあるでしょう。
アノマリーを意識すれば、マーケットの動きを読みやすくなり、あらゆる投資判断に役立つ可能性があります。
理論だけではない投資は、とても興味深い世界

投資をしようと考えた時は、アノマリー現象とは異なる、ある程度の投資理論を勉強することは大切だと思っております。
株式であれば、企業の株価収益率や純資産倍率などのファンダメンタルズ分析や、株価の動きを見るテクニカル分析は知っておいた方が良いでしょう。
しかしどんなに投資理論を知っていても、利益を出せるわけではありません。様々な要因が絡み合って、思いがけないことが起こるのが相場です。
例えば、株や債券の取引を行うのは人間なので、お昼ご飯を食べる正午から午後2時くらいまでは株価が横ばいになることが多いともいわれています。
また、週末の金曜日には、休みの間に何か悪いニュースがあっても売れないので、手じまいの売りの動きが入るということもあります。
このように人間の行動や心理に照らし合わせて考えた場合、過去の経験則であるアノマリー現象はあながち間違っているともいえません。投資判断の一つになると思われます。
アノマリー通りに売買すればうまくいきそうですが、その通りに動かないのも相場です。
どちらにしてもどのように動くか分からないからこそ、投資の世界は面白いのかもしれません。
まとめ
「投資」と聞くと難しく考えがちですが、アノマリー現象の話を聞くと、なんとなく身近に感じることができるのではないでしょうか。どんなことでも過去を知ることは大切ですよね。アノマリー現象は、過去の経験則からのアドバイスだと思い、これから投資を始める人も、ぜひ参考にしてみてください。
ライタープロフィール

国内大手証券会社で約10年間、資産運用コンサルティングビジネスに従事。有価証券・不動産運用、保険、相続・事業承継対策等を資産にまつわる相談に対応。主人の転勤を機に退職し、専業主婦へ。2019年より家計管理と運用、FPとしての実務経験を基に、金融系ライターとして執筆活動中。
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