そろそろマイホーム。そんなときに知ってほしい「住宅ローン減税」

そろそろマイホーム。そんなときに知ってほしい「住宅ローン減税」

 そろそろマイホーム。そんなときに知ってほしい「住宅ローン減税」

「子どもが産まれるのでマイホームを」「夫婦2人の終の住処を」。そんな未来を思い描きながら家の購入を考える人もいると思います。一方で心配なのは、お金のこと。不安を少しでもやわらげるために、知っておきたい「住宅ローン減税」について解説します。

住宅ローン減税とは?

住宅ローン減税とは?

「住宅ローン減税」とは、住宅ローンを利用して住宅を新築、取得、増改築する人を対象に、国が設けている減税制度のことです。一定の割合の金額が所得税、場合によっては住民税からも控除されるため「住宅ローン控除」ともいわれますが、いずれも通称で、正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。

制度の目的は、住宅を新築、取得、増改築する国民に対する支援。この記事では、2022年度税制改正大綱に基づく制度について解説します。

住宅ローン減税制度のポイント

住宅ローン減税制度のポイント

最新の住宅ローン減税のポイントをまとめると、次の4点になります。なお対象は、2022年1月1日以降に住宅を新築、取得、増改築または居住を開始した人で、制度の適用期間は2025年末までです。

毎年末の住宅ローン残高の0.7パーセントを所得税から控除

制度を利用することで、毎年末の住宅ローン残高の0.7パーセントが所得税、場合によっては住民税からも控除されます。これまで1パーセントだった控除率が、今回の改正で0.7パーセントに引き下げられました。これは、金利低下で年利1%を下回る住宅ローンが増え、お金を借りることで逆に利益が生じるという事態が問題視されていたためと考えられます。

所得税で控除しきれない分は住民税から一部控除

所得税から控除しきれない、つまり控除額が所得税額を上回る場合は、翌年の住民税からも控除されます。例えば、その年の末時点で住宅ローン残高が3,000万円だった場合、減税額は21万円となりますが、所得税が17万円だとすると控除しきれないため、差額の4万円は住民税から控除されることになります。ただし、住民税からの減税額には上限があり、所得税の課税対象となる所得総額の5パーセント、かつ9万7,500円が上限となります。

控除期間は最大13年間

住宅ローン減税の対象となるのは、新築住宅だけではありません。中古住宅も含まれます。ただし、控除を受けられる期間が異なり、新築住宅の場合は13年間、中古住宅の場合が10年間となります。

住宅の性能によって住宅ローン減税の対象となる金額の上限が設定される

2022年の改正では、購入する住居の環境性能によって、控除の対象となる「住宅ローン減税の対象となるローンの年末残高の上限」が細かく設定されました。例えば、新築住宅の場合、省エネやバリアフリー、耐震性など長期にわたって住むための要件を満たした「長期優良住宅」や、二酸化炭素の排出を一定量以下に抑えた「低炭素住宅」であれば5,000万円、省エネかつ再生可能エネルギーを導入した「ZEH水準省エネ住宅(※)」は4,500万円、ZEHには及ばずとも省エネに優れた「省エネ基準適合住宅」は4,000万円。一方、こうした基準を満たしていない住宅は3,000万円に設定されています。

※ZEH=Net Zero Energy House(エネルギー消費量の収支をゼロとすることをめざした住宅)

つまり、より環境に配慮した住宅ほど多くの控除が受けられる設計となっているということ。これまでは、環境性能に関わらず、新築住宅なら4,000万円まで控除の対象となっていたことを考えると、環境要素は将来の生活を考えるうえで、より考慮すべき要件となってきたということでしょう。ちなみに、住宅に入居する年によっても限度額が変わります。詳しくは以下の一覧でご確認ください。

<借入限度額(新築住宅、買取再販住宅の場合)>

住宅の環境性能等2022・2023年入居2024・2025年入居控除期間
長期優良住宅・低炭素住宅5,000万円4,500万円13年間
ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円13年間
省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円13年間
その他の住宅3,000万円0円13年間

<借入限度額(中古住宅の場合)>

住宅の環境性能等2022年〜2025年入居控除期間
長期優良住宅・低炭素住宅3,000万円10年間
ZEH水準省エネ住宅3,000万円10年間
省エネ基準適合住宅3,000万円10年間
その他の住宅2,000万円10年間

控除を受けられるのは?

控除を受けられるのは?

このように、住宅ローン減税は、住宅を取得しようと考えている人にとって心強い制度ですが、利用するには条件があります。以下に主なものを挙げておきましょう。

住宅ローンの返済期間は10年以上

控除の対象となるのは、新たに借り入れた住宅ローンの返済期間が10年以上の場合に限られます。ひとたび制度が適用されても、その後、繰上返済などにより、最初の返済月から最終の返済月までの期間が10年未満に短縮された場合は、その時点で制度適用外となりますので、ご注意ください。

合計所得金額が2,000万円以下

申請は個人で行います。そのため、控除を受けられるのは、「申請者」の給与所得、不動産所得、譲渡所得、雑所得などを合計した所得金額が2,000万円以下の場合に限られ、2,000万円を超えると控除を受けることはできません。なお、控除は1年ごとに行われるものなので、その年の所得金額が2,000万円を超えたとしても、翌年2,000万円以下になった場合は再び控除を受けることができます。

申請者自らが居住

制度の目的を考えれば自明ですが、控除されるのは「居住用」のみです。原則として、控除を申請する人自らが住む物件であることが条件で、別荘などセカンドハウスや賃貸用の住宅は控除の対象とはなりません。投資用の物件や、土地だけの購入も対象外です。さらに、住宅の引き渡し、もしくは工事の完了から6カ月以内に居住する必要がありますので注意しましょう。

居住用割合が50パーセント以上

自営業などで、自宅を仕事で利用している場合、居住割合が50パーセント以上であることが条件となります。

床面積50平米以上

対象となる住宅の床面積は50平米以上と定められています。ただし、合計所得金額が1,000万円以下の場合、2023年末までに建築確認を受けた新築住宅で40平米以上50平米以下の住宅であれば適用されます。また、マンションの場合は、登記簿面積(壁の内側~内法)です。

中古住宅も対象

新築住宅だけでなく、中古住宅も制度の対象となります。改正前は、木造住宅などの耐火建築物以外では築20年超、マンションなどの耐火建築物では築25年超の場合、耐震基準適合証明書などが必要でしたが、登記簿上の建築日付が1982年1月1月以降であれば不要となりました。1981年12月31日以前の場合は、引き続き、耐震基準適合証明書などが必要となります。

申請手続きはどうすれば良い?

申請手続きはどうすれば良い?

制度の概要について、ご理解いただけたでしょうか。では、いざ手続きするとなったら、どのようにすれば良いのでしょう。ポイントは以下の2点です。

入居翌年の確定申告時に申請

住宅ローン減税を受けるための申請は、入居翌年の確定申告時に行います。例えば、2022年に入居した場合であれば、2023年の確定申告がそのタイミングです。税務署に確定申告の書類を提出する際に、控除の申請に必要な書類を併せて提出してください。該当年の確定申告で申告するのを忘れた場合は、その後5年以内であれば申告が可能です。

申告時には、確定申告に必要な書類のほか、各要件を満たしていることを証明するための書類が必要になります。主な書類を以下に記しました。堅苦しい表現が並んでいますので、不明な点は、お住まいを管轄する税務署に問い合わせてみましょう。

各要件に応じた必要書類(主なもの)

1:新築住宅、中古住宅問わず必要になる書類
・確定申告書
・本人確認書類
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・住宅取得資金に係る貸入金の年末残高等証明書(住宅ローンの年末残高を示す書類)
・家屋の登記事項証明書
・住宅の工事請負契約書、不動産売買契約書(不動産会社との契約時に作成)の写しなど

2:住居の性能を証明する書類
<認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合>
・長期優良住宅認定通知書、または低炭素住宅認定通知書の写し
・住宅用家屋証明書の写し(新築の場合)、承継通知書の写し(中古住宅の場合)、または認定長期優良住宅建築証明書もしくは認定低炭素住宅建築証明書

<ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅の場合>
・建設住宅性能評価書の写し、または住宅省エネルギー性能証明書

3:登記簿上の建築日付が1981年12月31日より前の中古住宅に必要な書類
・耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書の写し、または中古住宅売買瑕疵保険契約付保証明書

給与所得者の場合、2年目からは年末調整の際に控除の適用可能

2年目以後は、必要事項を記載した確定申告書に加え、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を添付するだけで控除の適用が受けられます。給与所得者(給与所得以外に収入のない会社員)であればさらに簡単で、勤務先に「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を提出すれば、年末調整で控除の適用を受けることができます。

大変なのは1年目だけ。未来を思い描いてきっちり準備しよう

大変なのは1年目だけ。未来を思い描いてきっちり準備しよう

無事申告ができれば、約1ヵ月後には指定した金融機関の口座に還付金が振り込まれます。書類の準備など少々手間がかかるのは1年目だけ。マイホーム取得プランを立てる際には、この住宅ローン減税を考慮に入れ、思い描く未来の生活を叶える一助としてください。

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この人に聞きました
和泉昭子さん
和泉昭子さん
生活経済ジャーナリスト/ファイナンシャルプランナー。出版社・放送局を経て、フリーのキャスターに転身。1995年CFP(R)取得後、現職へ。2007年マネー&キャリアの支援会社を起業し、マネーコンテンツの作成やライフプランシミュレータの開発支援、研修事業を展開。現在は、テレビ・ラジオへの出演や講演、執筆活動を通じて、マネー情報を発信するほか、上場企業や財団の社外役員や公的機関の委員も務める。
ライタープロフィール
佐藤ことり
佐藤 ことり
旅、言葉、暮らし等をテーマに幅広く執筆中。日本国内の島々への旅をこよなく愛する。

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