供養方法も多様化する時代!お墓選びは「終活」の第一歩

供養方法も多様化する時代!お墓選びは「終活」の第一歩

供養方法も多様化する時代!お墓選びは「終活」の第一歩

少子化などの影響により、お墓に対する価値観が多様化しています。終活コンサルタントの吉川美津子さんによると、先祖代々のお墓ではなく個人墓や納骨堂などを選ぶ人も増えているようです。「終活」の第一歩ともいわれるお墓選びについて聞きました。

一般的なお墓「一般墓(墓石型)」とは

一般的なお墓「一般墓(墓石型)」とは

亡くなった人を火葬し、「〇〇家」と刻まれた墓石のあるお墓に納骨する。多くの方がイメージするこのお墓を「一般墓(墓石型)」といいます。先祖代々が納骨される「家墓」が主流ですが、近年は、一人用の個人墓や夫婦のみの夫婦墓などもあります。

<一般墓(墓石型)の種類>
・家墓:家族や親族の遺骨を共同で納骨し、代々承継していくお墓
・個人墓:一人だけが納骨されるお墓。承継はできない
・夫婦墓:夫婦一代限りのお墓。原則、承継はできない
・友人墓:親しい友人同士が共同で納骨されるお墓。承継はできない
・両家墓:両家(姓の異なる2世帯)が共同で納骨され、代表者が承継していくお墓

寺院が管理する墓地の場合、一般的に墓地の持ち主は、檀家として寺院を支えていく責務を負います。そのため、納骨される方々が異なる宗教や宗派を信仰していた場合、管理規約によって断られたり、改宗が必要になったりすることも珍しくありません。のちのトラブルを避けるためにも、宗教・宗派などが不問か否か、事前にきちんと確認しておきましょう。

一般墓(墓石型)を建立・承継しない人が増えている?

全国にある墓地の総数は、1996年には約90万でしたが、2020年には約87万になりました。約3万もの墓地が減少する中、近年は、一般墓以外を選ぶ人が増加傾向にあると、葬儀やお墓に詳しい終活コンサルタントの吉川美津子さんはいいます。

その背景には、少子化や核家族化などといった「家族のあり方」や宗教観の変化があるようです。吉川さんによると、「お墓の承継者がいないケースもしばしば。跡継ぎがいないと無縁仏(承継者のいない墓)になってしまうため、一般墓を墓じまいして他の納骨方法に変える判断をする人が増えている」といいます。

また、都市部への人口流動も影響しています。仕事などの都合によって跡継ぎが実家を離れてしまったために、遠方のお墓までお参りや掃除に行けず、結果として墓じまいを検討せざるを得ないのです。

先祖代々のお墓を承継するメリット

先祖代々のお墓を承継するメリット

江戸時代に庶民が一般墓を建てるようになって以来、「〇〇家の墓」として子々孫々継いでいくことを前提に建てられる「家墓」。では、家墓の承継にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

「家」をつなぎ、先祖を供養できる

家墓の最大のメリットは先祖代々の供養ができること。お墓を承継していくことで、両親や祖父母はもちろん、これまで納骨された祖先の供養も自ら行えます。また、先祖代々、同じお墓に納骨されることで、「家」の永続性の象徴的役割を担ってきたといえるでしょう。

新たに建てる場合、一般的な角柱デザイン(和型墓石)の他、近年は、横長のデザイン(洋型墓石)や故人をイメージしたデザインのお墓なども人気を集めています。中には、故人が好きだった言葉や模様を刻んだお墓も。つまり、故人の遺志や遺族の想いを尊重した、自由度の高いお墓を建てることができるのです。とはいえ、家墓として次世代へ引き継ぐ場合は、個人より家を象徴するデザインの方が良いかもしれません。

先祖代々のお墓を建立・承継する前に知っておくべきこと

先祖代々のお墓を建立・承継する前に知っておくべきこと

前述した通り、家墓は先祖代々続くことが一般的なため、建立・承継する際には、今後のことまで見通しておかなければなりません。お墓は建てて終わりではなく、定期的なメンテナンスが必要になるのです。

子や孫が遠方に住んでいる場合は、掃除や草むしりができず荒れてしまったり、最悪の場合は無縁化してしまったりすることもあります。また、子や孫が遠方に住んでいる場合は、将来負担となってしまう可能性も。吉川さんは、「承継が難しい場合は、『墓じまい』をして永代供養(管理)墓(寺院や霊園が長期間供養してくれる墓)に移すのも一案。また墓参りや墓清掃代行をうまく利用して次世代へ縁をつないでいく方法もある」といいます。

また、一般墓を新たに建てる場合、初期費用の目安は約150万円~200万円。立地や大きさなどの条件によって、それ以上かかる場合もあります。他の納骨方法より初期費用が高くなる可能性のある一般墓は、費用も十分に検討する必要があるでしょう。

一般墓以外の選択肢は?多様化するお墓のタイプ

一般墓以外の選択肢は?多様化するお墓のタイプ

その一方で、「納骨堂」や「樹木墓地」といった一般墓以外のお墓が注目を集めています。室内の収納庫に遺骨を納める納骨堂の数は、1996年〜2020年のあいだに約1,000施設も増加し、都市部を中心に高い人気があります。それぞれのお墓には、どのような特徴があるのでしょうか。

納骨堂

故人の遺骨を建物内の収納庫に納骨する施設です。一般的には、収納庫一区画当たりの納骨人数が定められており、夫婦向けや家族向けなどが用意されています。ロッカー式(前面に扉が設けられたロッカー)や仏壇式(下段に遺骨の安置スペースを備えた仏壇)の他、位牌式(位牌と遺骨を別々の場所に安置するタイプ)、自動搬送式(機械によって遺骨が参拝スペースに自動搬送されるタイプ)など、種類は様々です。

利用期限が設けられていることが多く、満期を迎えると骨壺から遺骨が取り出され、他人の遺骨とともに合葬されます。また、最初から合葬するタイプの納骨堂もあります。

多くの場合、納骨堂の運営主体は寺院です。そのため、宗派不問として受け入れている場合でも、日常の勤行や合葬後の遺骨の供養・管理方法などは、寺院の宗派に沿った形で行われますので、事前に確認しておきましょう。

<メリット>
・一般墓を建てる場合よりも初期費用を抑えられる(ボリュームゾーンは100万円前後)
・天候に左右されないため、お墓参りしやすい
・駅から近い場所に建てられる場合が多く、交通の便が良い
・セキュリティ対策が万全
・草むしりや掃除が不要
・定められた長期間、管理している寺院などが供養・管理を行う「永代供養(管理)」付きが多く、承継者がいなくても安心

<注意点>
・管理料が高額になる可能性がある
・合葬より個別葬、間接参拝より直接参拝(骨壺と対面できる)の方が高額な傾向にある
・納骨堂の鍵を持っている人しか入れない場合がある

樹木墓地

墓石のかわりに樹木や草花を墓標とする樹木墓地。シンボルツリーとなる樹木の周辺に複数の遺骨を合葬する合同墓形式や、個別のお墓に納骨されたのち合葬されるなど、形式は様々。納骨堂や近年需要が増えているペット墓地を併設している施設もあります。

<メリット>
・一般墓を建てる場合よりも初期費用を抑えられる(ボリュームゾーンは合同墓で20万円~40万円、個別墓で50万円~80万円前後)
・永代供養(管理)付きが多く、承継者がいなくても安心
・宗派を問わず納骨できる場合が多い

<注意点>
・複数人分となると、費用が高くなってしまう可能性がある

お墓に納骨するだけじゃない!注目を集める故人の弔い方

お墓に埋葬するだけじゃない!注目を集める故人の弔い方

「故人をそばに感じたい」「生前の遺志を尊重したい」といった理由から、お墓に納骨する以外の供養方法を選ぶ人も一定数いると吉川さんはいいます。宗教や宗派に縛りはなく、厳格な決まりもないことが多いため、自由度の高い供養方法といえるでしょう。

手元供養(自宅供養)

遺骨を手元に置き、自宅で供養する方法を「手元供養」といいます。遺骨すべてを手元に保管する方法だけでなく、一部をお墓に納骨して、小さな骨壺などに入れて自宅で供養する方法など、保管のかたちは様々です。

また、手元供養を選ぶ際には、「分骨証明」や「火葬証明書」をとっておくと安心です。のちに改めて墓地に納骨することになった場合、これらの書類がないと手続きが難しくなってしまう可能性があります。

散骨

墓地などに納骨せず、骨を自然に還すことを「自然葬」といいます。その一つである「散骨」は、粉末化した遺骨を海や山に撒く葬送方法です。ドラマや映画のワンシーンで見ることもある光景ですが、吉川さんによると遺骨の扱いについては特別な注意が必要だといいます。

「厚生労働省のガイドラインによると、散骨は『海岸から一定の距離以上離れた海域で行う』『形状を視認できないよう粉骨にする』『周囲や環境に配慮する』などと定められています。法律や条例を遵守したうえで散骨をするためには、信頼できる業者に委託するのが良いでしょう」

また、手元供養や散骨の場合、周囲の理解を得ることも大きな課題の一つ。どのように故人を弔うべきか、遺族一人ひとりの意思を尊重しなければなりません。

まとめ

「家墓を代々引き継ぐ」という、一般的な納骨方法が少しずつ変わり、お墓や供養方法の選択肢が多様になりつつある昨今。生前にお墓について考えておくことは、最期まで自分らしく生きるため、そして遺された人に負担をかけないために重要な意味をもつはずです。様々な納骨方法の選択肢を知ったうえで、「自分がどう弔われたいのか」を考えてみてはいかがでしょうか。

この人に聞きました
吉川美津子さん
吉川美津子さん
葬送儀礼マナー普及協会理事、社会福祉士。駿台トラベル&ホテル専門学校、上智社会福祉専門学校非常勤講師。大手葬祭業者、仏壇・墓石販売業者勤務を経て独立。コンサルティング業務の他、葬送・終活関連の人材育成に携わっている。著書に、『葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』『お墓の大問題』『死後離婚』『終活のはじめかた』他。
ライタープロフィール
山本 杏奈
山本 杏奈
金融機関勤務を経て、フリーライター/編集者に転身。現在は企業パンフレットや商業誌の執筆・編集、採用ページのブランディング、ウェブ媒体のディレクションなど、幅広く担当している。

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