パラレルキャリアとは?これからの社会に求められる新しい働き方

パラレルキャリアとは?これからの社会に求められる新しい働き方

パラレルキャリアとは?これからの社会に求められる新しい働き方

「パラレルキャリア」とは、本業を持ちながら別の活動にも携わること。その活動は、報酬を目的としたものに限らず、多岐にわたります。パラレルキャリアのメリットや注意点、パラレルキャリアの浸透による企業や社会の変化についてご紹介します。

パラレルキャリアとは

パラレルキャリアとは

「パラレルキャリア」とは、経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した生き方の一つです。ドラッカーは、人の寿命が伸びている一方で、企業単体の寿命は縮む傾向にあることから、一つの組織に属して本業だけに依存するのではなく、活動の幅を広げて複数の軸足を持つ生き方が大切だと説いています。なお、その活動には、報酬を目的とした活動だけでなく、社会貢献活動や文化・芸術活動なども含まれます。

日本では、中小企業庁が2017年3月に「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言」を公表したり、経済産業省が「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会」を実施したりするなど、働き方や雇用の方面から、パラレルキャリアの浸透をめざす姿勢を明らかにしています。

パラレルキャリアが注目される社会的な背景

パラレルキャリアが注目される社会的な背景

日本の企業では従来、就業規則によって兼業や副業を禁止している企業が多く、また、終身雇用を前提とした雇用慣行が長く続いてきました。そのため、本業以外にも仕事を持ち、複数の収入源を確保するという考え方自体が稀有であり、「就業中の拠点は会社の社屋」という働き方が一般的でした。

しかし、フレックスタイム制の導入・法改正による運用範囲の拡大、さらに、2007年の「テレワーク人口倍増アクションプラン」や2010年の「新たな情報通信技術戦略」における在宅型テレワーカーの増加目標といった政府主導の施策などもあり、柔軟な働き方への関心が高まりました。また、転職や起業、フリーランスといったキャリア形成や働き方も、昔に比べ一般的になっています。

そのような社会的背景に加え、少子高齢化が進み生産年齢人口(15~64歳)が減少する中で、経済基盤を維持・発展させるため、「一人が働く場は一つだけ」という従来の考え方ではなく、「一人が活躍できる場が複数ある社会」への変革が求められているのです。

ワークスタイルの多様化を法整備で後押し

厚生労働省は2018年、副業・兼業の普及促進をめざし、次のような改革を実施しました。

・副業・兼業の促進に関するガイドラインの策定(2020年9月改正)
・モデル就業規則の改定:労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」の規定を削除するとともに、第14章68条において「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と明記した副業・兼業についての規定を新設

また2018年は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(2019年4月施行)が成立した年でもあります。この法律のもとで厚生労働省は、「長時間労働の是正」や副業・兼業を含めた「柔軟な働き方がしやすい環境整備」、「ダイバーシティの推進」などに取り組んでいます。このことから、2018年は「副業元年」とも呼ばれています。

新型コロナウイルス感染症の影響

前述した副業・兼業を促進する法整備に加え、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの企業においてワークスタイルの変革が加速し、在宅ワークなどの柔軟な働き方が広がりました。一方で、新型コロナウイルスの影響は、社会全体に「いつ仕事を失うか分からない」という不安をもたらしました。

その結果、「通勤時間がなくなって時間の余裕ができた」「一つの収入源に依存することへの不安感が高まった」などの理由で、パラレルキャリアへの注目が急速に高まったと考えられています。

パラレルキャリアのメリットとは

パラレルキャリアのメリットとは

収入源が複数になることで所得増やリスクの低減ができる

パラレルキャリアでは、本業以外の活動でも収入を得ることが可能です。本業として勤めていた会社が倒産してしまったとしても、他に収入を得る手段を確保しておくことで、収入減少に対するリスクを低減することができます。なお、その活動で得た所得や本業での所得などに応じて、確定申告が必要となる場合がある点は注意が必要です。

能力やキャリアの可能性を広げることができる

本業だけでは得られない知識や経験、人脈などを、他の活動を通して得ることができます。その結果、キャリアや趣味などの幅が広がる可能性もあります。また、起業や独立を考えている場合は、本業で安定した収入を得ながら準備活動をすることもできるでしょう。

人材の流出を防ぐ

企業においては、従業員が社外で得た知識や経験を社内で活用する可能性や、必要に応じて社外の人材を活用できる可能性が高まります。また、従業員が企業にとどまりながら、社外でも自己実現の場を得ることができるようになるため、結果として、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待されます。

やりたいことに取り組み、幸福感を得ることができる

本業で収入を確保しながら、地域活動や社会貢献活動、文化・芸術活動など、自分のやりたい活動に取り組むこともできます。やりたいことに熱中する、やり甲斐のある活動を持つことは、人生の幸福度をより高めてくれるはずです。

パラレルキャリアを実践するうえで注意しておきたいこと

パラレルキャリアを実践するうえで注意しておきたいこと

本業とそれ以外の活動の切り替えが難しくなり、働く時間も長くなる

本業とそれ以外の活動があるため、スケジュールやタスク管理の手間は増えます。ときには連絡が交錯したり、同時並行で案件を動かしたりする必要もあるでしょう。このようなとき、切り替えが難しいと感じるかもしれません。さらに、一般的には勤務時間(活動時間)も長くなることが考えられるため、健康管理やストレスケアなどを心がけましょう。

情報の扱いには注意が必要

取引先との間で機密保持契約を締結している場合、愚痴や世間話のようなレベルでも情報を漏洩することは許されません。契約違反に問われる可能性があります。そのため、本業の話を副業先でしない、パソコンを使い分けるなどの注意が必要です。もちろん、その逆も然りです。

就業規則をきちんと確認する

以前に比べて柔軟な働き方が広がってきたとはいえ、企業によっては、副業や兼業などを禁止していたり、届出・許可が必要だったりします。就業規則を事前によく確かめましょう。また、公務員の場合、収入が生じる活動は法令によって禁止と解釈されることが多いため、特に注意が必要です。

パラレルキャリアによって期待される社会的な効果

パラレルキャリアによって期待される社会的な効果

働き方やキャリアの多様化にともない、パラレルキャリアも広く認識されつつあります。前述した中小企業庁の「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言」によると、パラレルキャリアの促進によって、兼業・副業を通じた創業・新事業創出社会の実現に向け、次のような効果が期待されています。

・オープンイノベーションの促進
・自己実現、人材育成の促進を通じた一億総活躍社会の創出への貢献
・成長産業である地方の中小企業や公益的な事業分野への人材供給の活性化

まとめ

パラレルキャリアによって、社会はどう変わっていき、どのような未来が実現していくのか。働き方の多様化が加速しつつある今、私たちの働き方の一つとして、パラレルキャリアについて考えてみてはいかがでしょうか。

ライタープロフィール
河野 陽炎
河野 陽炎
プロ資格マニア、ライター、起業・集客コンサルタント。
ライターとして金融・経済関係の原稿を多く手がける。次々と改正される法律や、発売される数多くの金融商品が、1人の生活者としての私たちにどのような影響を与えるのか、という点を大切に執筆活動を行う。大阪・泉州の郊外で、農家をリノベーションした住宅を自宅兼オフィスとする。趣味はディンギーヨットに乗ること、資格を取ること、日本の伝統芸能とウルトラマンに関すること。著書は「プロ資格マニアになる方法」「あなたの隣のコンサルタント」「今日から病気も友達」など。
河野 陽炎 紹介ページ(外部サイト)

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