小学校から大学 すべて国公立、私立で約1,300万円の差が

子どもの将来の選択肢の幅を広げるためにも、学費はきちんと確保しておきたいもの。そのためにも、実際にいくらくらい必要となるのか、事前に把握しておくことはとても大切です。
ではさっそく、国公立と私立の学費をみていきましょう。なお、3歳から5歳までの子どもを対象に幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料が、2019年から無償化されたため、ここでは小学校入学以降の1年間の学費を比較していきます。
国公立の学費(年間) | 私立の学費(年間) | |
---|---|---|
小学校 | 31万1,281円 ※公立の場合 | 159万8,691円 |
中学校 | 48万8,397円 ※公立の場合 | 140万6,433円 |
高校 | 45万7,480円 ※公立の場合 | 96万9,911円 |
大学 | 115万円 | 文系152万1,000円 理系192万2,000円 |
※小学校から高校は文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」より、公立学校と私立学校の比較。保護者が支出した1年間・子ども一人あたりの経費(学校教育費,学校給食費,学校外活動費)を含む。
※大学は日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2020年10月30日発表)より、国公立大学と私立大学文系の比較。国公立大学の学費は4年制の場合、文系、理系共通。
官公庁や公的機関のデータによると、上の図のように国公立と私立の学費は、小学校では100万円以上の差があります。最も差が小さい国公立大学文系と私立大学文系でも37万円以上の開きがあります。
ただ、「私立の方が学費は高い」ということは読者の方もご存じのはず。気になるのは、「高校と大学だけ私立」「小学校からすべて公立」など、進学パターン別の学費ではないでしょうか。
次に小学校以降すべて国公立、すべて私立に通った場合の学費の違いについても含め、パターン別に学費を整理したグラフをみてみましょう。

※大学は日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2020年10月30日発表)より入学費用を加算。他は各学年の平均額の単純合計。私立大学は文系の場合
いかがでしょうか。この通り、すべて国公立とすべて私立では、約1,000万円以上の差が生じています。
また、この金額はあくまで学費なので、子どもが大学の期間一人暮らしとなり、仕送りをする必要がある場合は親の経済的負担が増加します。
さらに、海外の学校に進学や留学するとなると、費用はさらに大きくなります。
例えばアメリカの大学は年間授業料が日本の大学よりも一般的に高額になります。また授業料とは別に、寮などに入るため部屋代や食費が追加でかかります。
海外への進学は国内で進学するよりも、学費や生活費の全体的な費用は大きくなるとみて良いでしょう。
学費はどうやって準備する?

学費のうち、最も大きな負担となるのは大学の入学金や授業料。私立文系の場合は年間約152万円として、4年間で約608万円。
日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」によると、入学金や受験費用はこの金額とは別に95万1,000円がかかります。
4年間の授業料などと合わせると、実に700万円以上もの金額が必要となります。ちなみに国公立の場合、同資料によると入学金や授業料を足した総額は537万円となっています。
では、これらの大きな金額をどのように準備しておけば良いのでしょうか。いくつか手順を踏んで紹介していきます。
ゴールは18歳の夏〜秋頃に設定
大前提となりますが、4年間の授業料も含めた大学の学費を入学前に全額準備しておかなければいけない、とも限りません。
大学在籍中の4年間も授業料を準備する期間とする資金計画を選択している家庭も多くあります。
ただ、なるべくなら早い段階、具体的には18歳になる高校3年生の夏頃までに、入学金は準備しておきたいところ。
推薦入試やAO入試は高校3年生の夏〜秋頃から始まるため、そのタイミングで入学金の納付が必要になるケースもあるからです。
以上を踏まえて、子どもの出産前から、18年間まるごとかけて毎月コツコツと積み立てるのが理想です。時間をかければ毎月の積立額が小さくても18年後にはそれなりの金額になっているでしょう。
毎月の積立額 | 10年後の金額 | 18年後の金額 |
---|---|---|
1万円 | 120万円 | 216万円 |
2万円 | 240万円 | 432万円 |
3万円 | 360万円 | 648万円 |
4万円 | 480万円 | 864万円 |
児童手当を貯蓄することも検討する
子どもが中学校卒業(15歳の誕生日後の最初の3月31日)までは、地方自治体から児童手当が支給されます。支給額は、3歳未満で一律1万5,000円、3歳以上小学校修了前で1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生は一律1万円となっています。生まれ月によって変動しますが、支給総額は198万円〜209万円となっています。
※受給する方の所得が所得制限限度額以上の場合、一人につき月額5,000円など所得により支給額が異なります
長期間積み立てできるか不安という方は、この児童手当にはなるべく手をつけず、別の口座で管理するなどして貯蓄に回すという選択肢もあります。
具体的な積み立ての選択肢
ここからは、具体的にどのような積み立ての選択肢があるか紹介していきます。
1.つみたてNISA
毎年40万円を上限として、毎月一定額を非課税で積立投資することができます。
NISA口座で投資した期間に得た分配金と売却益(譲渡益)は非課税になり、通常の口座でかかる20.315パーセントの税金がかかりません。
毎月積立投資したお金は、増えることもあれば減ることもあります。つみたてNISAは非課税期間が20年と長期なので、子どもが小さい頃から始めて、時間をかけて運用することで、リスクを軽減し運用成果を安定させることが期待できます。
2.学資保険
子ども保険とも呼ばれます。保険料を払い込み、子どもの入学や進学に合わせて学資祝金や満期保険金などが受け取れる保険商品です。
契約者(親など)が死亡した場合には、以後の保険料払込が免除される機能や、払い込んだ保険料相当額を死亡給付金として受け取れる機能があります。また、保険料の払込が免除になったとしても、満期時の保険金は契約時の満額が保証されます。
保険料の払込方法は毎月、あるいは半年に1度や年に1度などから選べます。保障と貯蓄機能を備えた選択肢です。
3.低解約返戻金型終身保険
こちらも保険商品です。学資保険と違い、保険期間中に万が一被保険者が死亡したり高度障害状態になったりした場合は、保険金が受け取れます。
保険料の払込期間が満了を迎えてから解約すると、通常の(低解約返戻金型ではない)終身保険の解約返戻金額よりも多くの解約返戻金額を受け取ることができます。この機能を利用して、保障を備えながら教育資金を準備できる点が特徴です。被保険者に万が一のことがあった場合も、確実に教育資金を確保したいというニーズに合った選択肢といえるでしょう。
加入時に保険料の払込期間を設定しますが、払込期間中に途中解約して、解約返戻金として受け取ることもできます。
ただし、払込期間終了直前までは解約返戻金額は通常の(低解約返戻金型ではない)終身保険の解約返戻金額の7割程度に抑えられています。また外貨建ての商品の場合、払込期間満了後でも、解約時の為替レートによっては支払った保険料総額よりも円換算後の解約返戻金額が少なくなる場合もあります。
4.自動積立定期預金
毎月自動的に普通預金口座から定期預金に振り替える方法です。目標金額に応じて毎月積み立てる金額を自由に設定することが可能。貯蓄している口座に送金の手続きをうっかり忘れがちな人にとっても、安心して利用できます。
どうしても準備できそうにない場合は?
もし、子どもの大学入学前や在学中に学費を準備できない場合でも、次のようにいくつかのセーフティーネットがあります。子どもの将来の可能性に関わる事柄なので、ぜひ検討しておきましょう。
1.返済義務のない「給付型奨学金」
世帯収入や学業成績などの条件がありますが、給付型奨学金は返済しなくても良い点が最大の特徴です。授業料などの免除や減額の他、給付金を受け取ることができます。
主に、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度が広く知られています。また、大学や自治体が窓口となり独自に設定している制度もあります。
2.条件ハードルが給付型より低い「貸与型奨学金」
給付型と比べて条件のハードルは低い一方で、貸与型奨学金は返済義務があり、さらに無利子と有利子の2タイプに分かれます。
基本的に子ども名義で借り、将来子どもが返済します。進学前、在学中のどちらでも、奨学金を申し込む選択肢が用意されています。
こちらも日本学生支援機構の制度が広く知られている他にも、大学や自治体が独自に設けている制度もあります。
3.保護者が返済する「教育ローン」
教育ローンは国の政策金融機関である日本政策金融公庫による「教育一般貸付(国の教育ローン)」の他、民間銀行が取り扱っている場合もあります。
奨学金制度と違い、親名義で借り、返済も親となります。また、一般的に奨学金制度は毎月一定額を受け取りますが、教育ローンの借入額は一括で受け取ります。
4.祖父母からの援助があるなら「教育資金贈与信託」
祖父母などから教育資金の援助を受けるという選択肢がある方は、この方法も検討可能です。
通常、祖父母から孫に教育資金を支援する場合、1年間の合計が110万円を超えると贈与税がかかってしまいます。
一方、教育資金贈与信託を活用すれば、孫一人あたり1,500万円までの教育資金は非課税で贈与できます。
学費の準備はなるべく早く検討しておく
特に大学進学に関する学費は大きな支出であるからこそ、時間をかけて備えておきたいもの。一般的には妊娠中から準備しておくのが理想といわれています。子どもの将来の選択肢を確保するためにも、具体的な金額を設定し、それを何年かけて準備するのか早めに検討しておきたいところです。
・本コンテンツは一般的な情報提供を目的とするものであり、お客さまに証券投資取引に関して何らの推奨・勧誘も目的とするものではありません。
参考:
・文部科学省「子供の学習費調査(平成30年度)」(外部サイト)
・日本政策金融公庫「教育費に関する調査結果」(外部サイト)
・日本学生支援機構「貸与奨学金(返済必要)」(外部サイト)
・日本学生支援機構「給付奨学金(返済不要)」(外部サイト)
ライタープロフィール

主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション代表。関西学院大学卒業後、編プロ、マネー系雑誌等の編集記者を経て2014年設立。AFP認定者。
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