今、マイカー以外の選択肢が増えている!

モノや場所、スキル等の資産を共有し利用の都度料金を支払う、シェアリングエコノミー。新たにモノを買うよりも経済的で、さらに、サステナビリティの浸透と相まって様々な分野で広まっています。車もその一つ。2010年頃からカーシェアリングサービス(以下、カーシェア)が広まり始めると、利用者は順調に増加し、2021年3月時点での会員数は220万人を超えています。
また、近年は、契約期間に応じて定額料金を支払うことでモノやサービスを利用できるサブスクリプション方式(以下、サブスク)も登場しています。例えば、ある自動車メーカーのサブスクでは、2019年12月に約1,000件だった契約数が、2021年1月時点では約1万2,300件にまで増加しています。日本能率協会総合研究所によると、車のサブスク市場は2025年には500億円の市場規模になると予測されています。
カーシェアやサブスクだけでなく、以前からレンタカーやカーリースといった利用方法は存在していました。それらと合わせて考えると、マイカー以外の選択肢は、「利用したい時間だけ車を借りる」というビジネスモデルに基づいたカーシェアやレンタカー、そして「契約期間中は自分の車として利用できる」ビジネスモデルであるサブスクやカーリース、の2つに大別できそうです。
しかしなぜ、近年、マイカー以外の選択肢が注目されるようになったのでしょうか。
マイカー以外の選択肢が増えた要因
大きな要因として考えられるのがコストです。若年層の車離れは顕著だといわれますが、新成人を対象とした2019年の調査では、車を持たない理由の上位2つが「購入費・維持費の負担」に関するものでした。つまり、その点をフォローできる選択肢が支持されていると考えられます。
車は、購入費以外にも所有しているだけで様々な費用が発生します。新車の場合は購入から3年後、その後は2年ごとに車検を受けなければなりません。車検にかかるコストは排気量等にもよりますが、3〜5万円程度。その際に部品交換が必要になれば10万円を超えることもあります。その他にも自賠責保険や任意保険、税金などがあり、例えば、都心部に住んでいる人がレジャーのために週2日間のみマイカーを利用する場合のランニングコストは、月4万円程度になります。
<車の維持費(SUVタイプのファミリーカーを想定)>
・車検…2年おきに3万5,000円+部品代等
・法定点検…毎年1万5,000円+部品代等
・自賠責保険…2年おきに2万1,550円
・任意保険…毎年約8万円(6等級新規、ゴールド免許、30歳男性、車両保険あり、年間走行距離5,000キロメートル以下、運転者は記名被保険者本人および配偶者と仮定)
・自動車重量税…2年おきに3万2,800円
・自動車税…毎年3万6,000円
・駐車場…毎月2万2,000円
・燃料費…毎年3万7,500円(ガソリン価格120円/リットル、年間走行距離5,000キロメートル、燃費16キロメートル/リットルと仮定)
排気量が大きい車種であれば自動車税がさらにあがります。車をローンで購入していれば、その分が毎月の費用に上乗せされます。また、利用する頻度が少なければ燃料費は抑えられるかもしれませんが、「使っていないのにメンテナンス費や駐車場代は負担しなければいけない」ことになり、削減したいと感じる人も多いでしょう。
マイカーの維持費については下記の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。
車を持つと一年にいくらかかる?維持費の内訳を知っておこう
カーシェアやサブスク。どんな選択肢があって、どう違う?

前述した通り、マイカー以外に車を利用する方法としては、利用したい時間だけ車を借りるカーシェアやレンタカー、そして契約期間中は自分の車として利用できるサブスクやカーリースに分けられます。それぞれの特徴や違いについて見ていきましょう。
近くの駐車場からすぐに借りられるカーシェア
カーシェアリングサービスの会員間で車を共同利用します。インターネット上で借りたい車種、利用時間を選び予約。車は駐車場(=ステーション)から貸出・返却します。会員カード等が車の鍵になるため、スタッフは駐在しません。
月額基本料は500〜1,000円程度で、利用回数にかかわらず一定。加えて、15分ごとに200〜500円程度の追加料金がかかることが多いようです。また、自賠責保険はもちろん、一定金額内での対人・対物・車両補償なども料金に含まれています。
メリット
・24時間インターネットで予約可能。予約後すぐに利用できる
・15分単位で利用可能なことが多く、利用時間を細かく設定できるため費用を抑えることができる
・全国展開しているサービスであれば、出先での移動にも使える
・ランニングコストの負担が少ない
デメリット
・近隣にステーションがない場合は不便
・ステーションによっては選べる車種が少ない。また、台数に限りがある
・直前の利用者次第で車内清掃が十分でない場合がある
旅行やレジャー等、長時間利用で活躍するレンタカー
レンタカーもカーシェアと同様、借りたい車種と利用時間を予約するシステムです。レンタル当日はレンタカー事業所へ行き、スタッフ立ち会いのもと貸出・返却します。
車種によって異なりますが、4〜5人乗りのコンパクトタイプで12時間4,000〜8,000円程度。ファミリー向けのミニバンタイプで8,000〜1万円程度が相場となっています。利用時間は6時間、12時間、24時間のプランが多く、長時間の利用が想定されています。
また、自賠責保険はもちろん、一定金額内での対人・対物・車両補償なども料金に含まれていることが多いようです。ただし、免責金額(自己負担額)が生じる場合は、免責金額が免除になるオプションも検討すべきでしょう。
メリット
・旅行先や出先で利用可能
・長時間の利用であればカーシェアよりも安価になる場合が多いため、長時間利用に向いている
・利用前に必ず、スタッフによる清掃がある
・乗り捨て(返却場所を選べる)プランがある
デメリット
・事業所の営業時間外には貸出、返却ができない
・利用時間を細かく設定できない
マイカー並に自由に使えるサブスク

特定の一台を定額制で借ります。カーシェアやレンタカーのように時間あたりの利用ではなく、3年、5年、7年のいずれかの年数で契約することが多いようです。長期契約になるほど1ヵ月あたりの料金は安くなります。
例えば、7年契約のコンパクトカーで月額3万円程度から。SUVであれば5〜6万円程度。高価格帯の車種であれば、月額10万円を超えるものもあります。自賠責保険や任意保険、自動車税、車検、法定点検費用は月額料金に含まれていますが、燃料代や駐車場代は別途負担する仕組みです。
メリット
・日々の利用にあたって、予約等の手続きが必要ない
・利用時間を気にしなくて済む
・保険や税金、車検等の費用負担がない
・サービスにもよるが、基本的には好きな車種を選ぶことができるため、マイカーにはハードルの高い車種でも利用しやすい
・契約期間を満了していなくても一定期間経過後に別の車種に乗り換えられるサービスもある
・海外転勤や免許返納といった事情がある場合、中途解約金がかからないケースが多い
デメリット
・駐車場代を負担する必要がある
・カーシェアやレンタカーに比べて高額なため、利用頻度が少ない場合は1回あたりの費用が割高になってしまう
・高価格帯の車種の場合、安価な車種を購入するより高くなる場合がある
マイカーよりお得に新車が利用できるカーリース
カーリースは契約者の選んだ車をカーリース会社が購入し、契約者は月々決められた利用料金をカーリース会社に支払って車を利用するサービスです。
自賠責保険や各種税金は月額料金に含まれていますが、車検や法定点検費用、任意保険は原則自己負担もしくはオプション料金となる点がサブスクと異なります。契約期間は1年から11年ほどで、車種により金額は大きく異なりますが、月々1万円弱から利用できるものもあります。
メリット
・利用料の総額は、契約満了時に中古車として売却した場合の想定価格を引いた金額となるため、マイカーを購入するより安くなる
・他のサービスに比べ、選べる車種が多い傾向にある
デメリット
・原則として中途解約ができず、中途解約する場合は違約金が発生する
・任意保険や車検が自己負担となる
多様なライフスタイルに合わせた選択が可能に

最近では、第一種原動機付自転車に分類される小型モビリティをカーシェアに導入する動きもあるようです。例えば自宅から目的地付近の駅までは公共交通機関を使い、駅から目的地までは小型モビリティを使うといった比較的短距離の移動に適しています。このような柔軟な移動手段が実現すれば、私たちの生活だけでなく、サステナビリティの側面からも社会に影響を与えるものとなるでしょう。
今回紹介したように、車は「購入して保有する」以外にも、個人のライフスタイルに合わせた多様な選択ができるようになってきています。リモートワークの普及や働き方の多様化、生活様式が急速に変化しつつある今、これまでと違った車の利用方法を検討してみるのも良いかもしれません。
参考:
公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団「わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移」(外部サイト)
ライタープロフィール

主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。文系大学院修了後、企業ブランディング書籍の営業・編集を経て入社。各種メディア記事の編集・ライティングを担当。
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