知っておきたい「遺品整理」のこと。プロに聞いた、ポイントや心構え

知っておきたい「遺品整理」のこと。プロに聞いた、ポイントや心構え

知っておきたい「遺品整理」のこと。プロに聞いた、ポイントや心構え

家族や身内が亡くなった際に、故人の残した物を整理する「遺品整理」。整理する側になって、初めて整理や処分について悩む方も多いようです。そこで、遺品整理士認定協会代表の木村栄治さんに、遺品整理のタイミングや仕分け方などについて伺いました。

遺品整理とは

遺品整理とは

遺品整理とは、故人の残した物が故人や残された方にとってどんな価値を持つのか、また、相続手続きが必要な資産か否かなどを判断する作業です。

「遺品整理は思い出の整理でもあります。残された方にとっては、故人との思い出を振り返りながら残しておく物を決めるわけですから、気持ちの整理をつけるためにも大切なことだと思います」と長年遺品整理業を営み、ご自身も多くの遺品整理を手がけてきたという木村さんはいいます。

ここからは遺品整理のポイントについて伺ってみましょう。

遺品は4種類に分ける

遺品は主に「貴重品」「残しておく理由のある物(形見など)」「リサイクルされる物」「処分する物」の4つに分類できます。それぞれの具体例は以下の通りです。

【貴重品】

・通帳や銀行のカード、クレジットカード
・土地の権利書など不動産関係の書類
・パスポート、運転免許証、年金手帳、健康保険証など
・有価証券
・貴金属や宝石、骨とう品、美術品など価値の高いもの

「貴金属類は売却することもできます。該当しそうな物があったら、買取専門業者に相談してみても良いでしょう。また遺品整理業者の中にも、中古品の買い取りに対応しているところがあります」

土地の権利書や有価証券のほか、貴金属類も時価が高ければ相続財産となることがあるようです。財産の相続に関わる事柄なので、そのような懸念がある場合は、税理士や司法書士などに相談してみましょう。

【残しておく理由のある物(形見など)】

・写真や手紙
・時計やアクセサリー、趣味のコレクションなど

手紙や写真、旅行先での思い出の品、集めていた人形など、大切に残しておきたいと思う物は人それぞれ。持ち物やコレクションが多い場合は、残すのか処分するのか、もしくは寄付をしたいのかなど生前からご家族内で話し合っておくと良いでしょう。また、前述の通り、資産価値の高いことが予想される物は相続財産として扱う必要がでてくる場合もあります。

【リサイクルされる物】

・まだ使うことができる家電(冷蔵庫やテレビ、洗濯機など)
・家具(ベッドやタンスなど)
・銅やアルミといった金属類(鍋やフライパンなど)
・衣類や古紙

リサイクル業者によっては、通常は処分費用がかかる家電製品を無料、もしくは買い取りで引き取ってもらえる場合があります。状態が良ければ、地域のNPO法人や福祉施設に寄付をするのも一つの案です。また、海外などに向けたリユースを手配してくれる遺品整理業者もあるようです。

【処分する物】

・燃えるゴミ(市区町村の分別方法に準じる)
・燃えないゴミ(同上)
・粗大ゴミ(同上)

残しておく理由もなくリサイクルもできない物は、一般廃棄物として処分することになります。必ず、居住する市区町村の分別方法を確認して処分してください。

遺品整理はいつごろ、どうやって行う?

遺品整理はいつごろ、どうやって行う?

大切な方が亡くなった後は、通夜や葬儀、告別式などがあり、遺品整理のタイミングが取れないということも少なくありません。そこで、整理の時期や仕方についても伺いました。

どのタイミングで遺品整理を始めれば良いのか

遺品整理に期限はありませんが、告別式などが続く時期はせわしなく過ぎるもの。一段落して親戚が集まる四十九日に「誰が整理をするのか」といった話題になることが多いといいます。

「賃貸の場合、退去まで家賃を払い続けることにもなりますから、早めに整理しましょう。高齢者の場合、亡くなった後の原状回復について大家さんと取り決めを交わしている場合もあります。大家さんや管理会社と連絡を取り、遺品整理を進めてください」

また、相続税の申告や故人の確定申告など、それぞれの手続きには期限が設けられています。相続財産に関わるような物がある場合や、故人の住居が賃貸であった場合は早めに動き出す必要があるでしょう。

遺品整理は、遺品整理業者に依頼するのも選択肢の一つ

遺品整理は、遺品整理業者に依頼するのも選択肢の一つ

昔は、親戚一同が集まったり、近所に住む人が集まったりして遺品整理をすることもあったようです。今は、核家族化や高齢化、親戚や近隣との関係性も変わってきていることから、そのような機会は減っているようです。家族だけで作業することが難しそうであれば、遺品整理業者に依頼することも選択肢の一つです。

業者に依頼した場合、多くは以下の手順で遺品整理が行われます。

1.部屋の広さや間取り、遺品の数を確認して見積もりをとる
2.見積もりに納得できた業者と契約する
3.遺品整理(実際の作業)の実施
4.リサイクル品や廃棄物の搬出および処分
5.清掃(本格的な清掃は別料金となる業者が多い)


「遺品整理の経験がある方は少なく、相場感が分かる人はあまりいません。そのため、見積もりは複数業者に依頼し、可能であれば作業の内訳も確認したほうが良いと思います。作業内容や金額を検討し、納得したうえで決めましょう」

費用の相場は1LDKで8万円、一軒家で25万円程度。ただし、整理する物や量によって費用は変動すると木村さんはいいます。

可能な範囲で、事前に確認しておきたいこと

参考として、事前に確認しておくと良いことについてもお聞きしました。

・遺品供養の有無
不用品処分としての単なる作業ではなく、故人を偲ぶ遺族の気持ちに向き合ってくれる業者かどうかの目安になるそうです。

・部屋の臭いを除去する清掃サービスに対応しているか
人が長く住んでいると生活臭が室内に定着することも珍しくありません。そのことが、賃貸住宅においてはトラブルの元、また、遺族の心理的な負担となることもあります。専用機材で臭いも対象としたハウスクリーニングに対応してくれるかも確認しておきたいところです。

・遺品の買い取りが適正に行われるか
買取対象となる物があった場合、適切な価格で買い取られているのかも気になります。例えば、鑑定士が在籍している(立ち会う)、もしくは買取専門業者への紹介を行っていることなどが参考になります。

・遺品整理士が在籍しているか
遺品整理士とは、一般社団法人遺品整理士認定協会が認定する資格です。仕分けや手続きの相談はもちろん、状況に応じて専門家との連携など遺品整理全般の相談事に対応します。

また、遺品整理は、故人の遺品を取り扱うとても繊細な作業。見積もりや下見の際に、挨拶や服装がしっかりしているか、誠意を持った対応をしてくれるかなども気にしてみると良いでしょう。

業者に依頼する前にある程度は仕分けておく

「遺品整理の現場では、かなり高い確率で現金がでてきます。また交友関係が分かる写真など、故人のプライバシーや名誉に関わる物もあります。そういった物は、業者の整理作業の前に、ご遺族が整理しておいたほうが無難だと思います」

また、仕分けがある程度済んでいると費用を抑えられる場合もあるとのこと。無理のない範囲で事前に準備しておくことも検討しておきましょう。

家族で話し合っておくことが大切

家族で話し合っておくことが大切

手紙や写真、趣味のコレクションなどはどの程度残しておくか迷う方も少なくありません。そのため、木村さんは「生前から家族で話し合っておくこと」が大切だといいます。

「大量の遺品を残して家族に迷惑をかけるよりも、自分自身で可能な限り整理しておきたい、と考える方が増えています。生前に、遺品整理のことを話し合うのは決して後ろ向きなことではありません。『縁起でもない』と避けることをせず、むしろポジティブな姿勢で検討されるのが良いと思います」

話し合いが1回で終わることは少ないため、「穏やかに会話をする」ことが大事。大切な物、残しておきたい物を家族と話し合いながら思い出を振り返れば、いっそう家族との絆も深まるかもしれません。

エンディングノートを活用する

エンディングノートを活用する

遺品整理に関して、必要事項をエンディングノートに残しておくことも有効だといいます。

「例えば、資産のこと。保有している有価証券や美術品、また借金も相続にも関わってくる問題のため整理して記載しておきたいです。他には、スマートフォンやパソコンのパスワード。有料の動画配信サービスなどを契約している場合も、サービス名とともにID、パスワードを残しておきましょう。今は、写真や動画もデジタルで保存している方が多いでしょうから、そういったデジタル遺品を削除するかどうかも決めておけると良いですね。どこから始めたら良いのかなど、遺品整理士認定協会などの専門家に相談してみるのも良いでしょう」

生前整理やエンディングノートは、自分の情報を整理できるだけでなく、残りの人生のあり方を考えるきっかけにもなります。思い出を振り返るだけでなく、家族との絆を深め、また今後の人生をより豊かにするものとして前向きな気持ちで取り組んでみてください。まずは、今回の記事を参考に、遺品整理について家族と話し合ってみてはいかがでしょうか。

エンディングノートの活用法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
人生の最後を自分らしく自由に綴る、「エンディングノート」活用法

参考:
・『遺品整理士という仕事』(平凡社新書)木村 栄治著

この人に聞きました
木村栄治さん
木村栄治さん
一般社団法人「遺品整理士認定協会」理事長。父親を突然の事故で亡くした際、故人が暮らした部屋の清掃や整理が思うようにできなかったという経験から、遺族に代わって遺品整理を請け負うことのできる専門家「遺品整理士」の養成をスタート。4万人以上の資格者を輩出している。また、全国各地から毎日100件以上の遺品整理、生前整理の相談を受け、業界のトップランナーとして遺品整理業界の活性化・健全化に向け邁進している。
ライタープロフィール
吉村 しおん
吉村 しおん
主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。文系大学院修了後、企業ブランディング書籍の営業・編集を経て入社。各種メディア記事の編集・ライティングを担当。

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