きちんと知れば怖くない「家を買う」という選択肢

きちんと知れば怖くない「家を買う」という選択肢

きちんと知れば怖くない「家を買う」という選択肢

住宅は多くの人にとって、人生で最も高額な買い物。住宅の購入に関心はあるけど、なかなか一歩を踏み出せない人も多いのでは?ここでは賃貸派と購入派のそれぞれのメリットやデメリットの他、住宅購入に関するお金の基本を専門家の解説とともに紹介します。

賃貸と購入のメリットとデメリットは?

賃貸と購入のメリットとデメリットは?

賃貸と購入にはメリット・デメリットがありますが、まず大前提として知っておきたいのがすべての人に共通する正解がないということ。

お金の使い方や働き方、家族構成は人それぞれ違うように、賃貸と購入のどちらが正解かも選ぶ人の価値観やライフスタイルによって変化します。

では、どういった人が賃貸と相性が良く、どういった人が購入向きなのか。簡単にまとめたのが、下記の表組みです。

簡単にまとめたのが、下記の表組みです。

ここからは、住宅FP(ファイナンシャルプランナー)の関根克直さんの解説とともにそれぞれ整理していきましょう。

賃貸のメリットとデメリット

賃貸のメリットは主に以下の3つがあげられます。

1.自由に住み替えがしやすい
2.修繕などのメンテナンス費がかからない
3.立地エリアの良い場所を選びやすい

賃貸の最大のメリットは好きなタイミングで住み替えしやすいこと。収入や勤務先の変化に応じて柔軟に住み替えできることは、持ち家にはない魅力です。

「例えば収入が増えてもう少しグレードの高いマンションに住み替えたいと思ったとき、住宅ローンの手続きや売却の試算などを気にせず、シンプルに家賃や通勤距離などを重視して住み替え先を探すことができます。また、集合住宅では騒音トラブルが起こる可能性がありますが、持ち家と比べると引越しで解決する選択肢を取りやすい点もメリットです」(住宅FP・関根さん)

2つ目のメリットは、ガスコンロ、給湯器、エアコンなどの設備の故障や外壁の修繕など、メンテナンス費がかからない場合が多いこと。マンションの場合は賃貸でも管理費がかかるケースが多いものの、維持費として大きな出費が発生することは基本的にありません。

また3つ目のメリットとして、人気エリアの物件を探しやすい点があげられます。例えば通勤時間を考えてなるべく都心部に住みたいとき、購入するには高額すぎて条件に合わない場合も、賃貸を選択肢に入れることで家賃の支払いが可能な物件が見つかるかもしれません。

一方で、賃貸のデメリットは以下の3つがあげられます。

1.家賃の支払いがずっと続く
2.老後に住み替えや更新がしにくい可能性がある
3.内装や設備を自分好みにカスタマイズしにくい

デメリットとしてまずあげられるのが、家賃の支払いが住んでいる限り続くこと。持ち家の場合、住宅ローン返済後は住居費を大きく減らすことができるのに対し、賃貸の家賃は支払いをずっと継続しなければいけません。2つ目のデメリットとも関連しますが、老後の家計収支で大きな負担となる可能性もあります。

「老後のリスクとして、収入が不安定だと住み替えたいときに賃貸の審査に通りにくくなることも現実として考えられます。また、長年住んでいるアパートでオーナーと多少の付き合いがあったとしても、オーナーが子供に代替わりしたあと、建て替えを理由に退去を迫られるというケースもあります」(住宅FP・関根さん)

その他、壁紙などの内装、キッチンやバスルームの設備について、オーナーの許可を得ないと自分好みにカスタマイズできないというデメリットもあります。

賃貸に向いている人は?

以下の3つにあてはまる人は賃貸に向いているといえます。

1. 色々な街に住んでみたい人
2. 勤務先の変更などライフスタイルに応じてスムーズに住み替えたい人
3. 結婚や出産などライフプランがまだ定まっていない人

「最大のメリットは、やはり住み替えのしやすさですので、『色々な街に住んでみたい』『勤務先に応じてなるべく近いエリアに住居も変更したい』など、ライフスタイルの変化にあわせて柔軟に住み替えたい人には賃貸を選ぶメリットは大きいでしょう」(住宅FP・関根さん)

購入のメリットとデメリット

購入のメリットは主に以下の4つがあげられます。

1.住宅ローン返済後に家計への負担が軽くなる
2.ローン返済後の住宅は資産となる
3.内装や設備、間取りをカスタマイズしやすい
4.設備面のグレードが賃貸より高い

購入の最大のメリットは、住宅ローン返済後に家計への負担が軽減されることです。

もちろん住宅ローン返済後に、維持費が完全にゼロになるわけではありません。マンションの場合は共用部分について管理費や修繕積立金の支払いが続きます。戸建ての場合も長く住めば屋根や外壁などの修繕費用が必要になることもあります。

ただ、毎月の住居費の負担がなくなることは、老後など将来の家計負担を大きく軽減してくれるはずです。

さらに2つ目として、ローン返済後は自身の資産として残る点も大きなメリットです。

「もちろん経年による劣化やエリアによって価値は上下しますが、資産として手元に残るのは賃貸にはない利点。夫婦の場合、老後の自分たちの家計収支だけでなく、子供に資産を相続できる点も含めると経済的な優位性は持ち家のほうが高いといえます」(住宅FP・関根さん)

3つ目は、内装や設備をカスタマイズしやすい点。持ち家なら賃貸のようにオーナーに気を遣うストレスは一切ありません。また物件によっては戸建てだけでなく、マンションでも間取りの変更が可能です。

そして4つ目は、設備面のグレードが賃貸と比べて高い点です。

「そもそも賃貸物件はオーナーが収益を目的に貸し出すもの。コストがあがれば当然収益にダイレクトに影響します。もちろん高所得者向けのマンションなど物件によって事情が異なる場合はありますが、床やドアなどの建具やキッチンなどの設備について、賃貸用のマンションと分譲マンションを比較すれば、後者の方がグレードは高い傾向があります」(住宅FP・関根さん)


一方で、購入のデメリットは以下の3つがあげられます。

1.住み替えがしにくい
2.修繕積立金等の維持費がかかる
3.固定資産税がかかる

転勤や家族構成の変化に応じて住み替えがしにくいのは、購入のデメリットといえるでしょう。また、マンションなら修繕積立金、戸建てなら外壁や給排水管の修繕費用など、賃貸では負担の必要がない維持費がかかるのも事前に知っておきたいポイントです。とくに修繕積立金は長く住んでいるうちにあがっていく傾向があるので、注意しておきたいところ。また、購入時は不動産取得税、以降は毎年固定資産税や都市計画税(市街化調整区域以外)が課税されます。

購入に向いている人は?

以下の3つにあてはまる人は購入に向いているといえます。

・将来の家計を安定させたい人
・資産として持ち家を保有したい人
・好みの内装や設備を選びたい人

「住宅ローン返済後の家計負担が軽減されること。そして資産として手元に残る点は賃貸にはない大きなメリットです。『老後の安定した家計づくりを今から準備したい』という人や、『子供に資産を残したい』という人は購入が向いていると思います。またリモートワークが急速に定着しつつある今、住環境に求める価値が高まりつつある点も検討のポイント。その点を踏まえ、設備や間取りについて、自分好みの住環境にしたいという人にとって持ち家は魅力だと思います」(住宅FP・関根さん)

購入する時に必ずおさえておきたいお金のこと

購入する時に必ずおさえておきたいお金のこと

賃貸にかかる費用は、1〜2年に1度の更新料の他は毎月支払っている家賃なので非常にシンプルです。では、購入にかかる資金面については、どういった計画を立てればいいのでしょうか?

手順に沿って紹介していきましょう。

ステップ1:将来の収入を見える化する

一般的に住宅を購入するとき、金融機関から住宅ローンを組んでお金を借り入れます。ただ、いきなり「いくら借り入れることができるか」を検討するのではなく、「自分の収入にあわせてどういった返済ができるのか」を把握することが大切です。

「住宅ローンの返済期間は大多数の人が35年で計画します。とても長い期間返済し続けることになるので、将来の自分の家計がどうなっているのか、『何歳のときにいくらの収入があるのか』だけでも良いので、一度書き出して整理してみましょう」(住宅FP・関根さん)

ステップ1:将来の収入を見える化する
収入ライフプランの例

例えば共働きの家庭なら、奥さんが出産や育児とともに働き方が変わり、それに応じて収入も変動があるかもしれません。また、40代後半までは年収が今より200万円ほどあがるかもしれませんが、50代になると役職定年があるので収入が減るという場合も想定すべきかもしれません。

「収入面の観点からライフプランを俯瞰(ふかん)するだけでも、将来の住居費が家計の中でどれくらいの負担なのか、現実的な住宅ローンの返済額が見えてくる部分はとても大きいです」(住宅FP・関根さん)

ステップ2:現在の支払家賃から返済額をイメージする

住宅ローンの返済額について、いくらなら無理のない金額なのか。そこで一つの目安となるのが、現在支払っている毎月の家賃です。

「毎月の家賃を支払うことができているという実績は、家計管理にあたって大きな参考となります。ただ、それが家計にとってギリギリの出費なのか、ゆとりのある負担なのか、同じ金額でも家庭によって性質が異なることも珍しくありません。ステップ1で想定した、収入面のライフプランとあわせて現実的な住宅ローン返済額を検討するのが適切です」(住宅FP・関根さん)

ここで触れておきたいのが、額面の年収に対して住宅ローンの返済額の割合を表す「返済比率」。一般的には30〜35パーセントが上限といわれており、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供するフラット35では、この数値が借入額の基準となっています。例えば年収が500万円なら、毎年の返済額は175万円。月換算では、14万5,833円が基準となります。

ただし、これは上限の数値。さらに住居費にはローン返済額だけでなく、マンションも戸建ても将来の修繕費用の積立が必要で、固定資産税もかかる。その点を踏まえると、住宅ローンの返済額だけを対象とする返済比率は、20〜25パーセント以下がゆとりを持った目安となります。

「ただし、共働きで子供がいる家庭の場合、夫婦どちらも働き続けるか、子供は私立か公立か、高校や大学は自宅通いか一人暮らしか、ライフプランによって、家計内のローン返済額の重さもあっさりと、かつ大きく変動します。返済比率はあくまで目安として、やはり将来のライフプランも見据えたうえで、余裕を持って試算することが適切です」(住宅FP・関根さん)

ステップ3:いくらの物件を買うか検討する

ここまでは「住宅ローンを毎月いくら返済するか」をベースに紹介してきました。では、いくらの物件を選ぶのが現実的なのか、気になる方も多いと思います。

そこで、参考データとして、他の方が「年収の何倍の物件を購入しているのか」を見てみましょう。

年収の何倍の物件を購入しているのか

上の表を見ると、購入する物件の価格は住宅の種類によっておよそ年収の5〜7倍と差があります。また、年収によって、購入する物件価格も一千万単位で大きく差があることが分かります。

もちろん、住宅FPの関根さんの先ほどの指摘通り、ライフプランによっていくらの物件を買うのが自分たちにとって適切なのか、家庭によって正解は異なります。あくまで実績の参考データとして検討しておきましょう。

また、物件を買うにあたって利用する住宅ローンの借入額はいくらまで可能なのか、気になる方も多いでしょう。

そもそも住宅ローンの審査は、契約者の収入以外にも以下のような基準があります。

・年齢
・勤続年数
・返済比率
・住宅ローン以外に融資を受けている場合はその借入額
・物件の担保価値

また、選ぶ金利タイプによっても借入可能額は変動します。

実際の借入可能額を事前に細かく予測することは難しいのが現実です。そのため、ここでは分かりやすく「毎月いくら返済ができるか」を基準に、参考として借入可能額の金額の一例を紹介します。

毎月いくら返済額ができるか

この借入可能額は先ほど紹介した返済比率をベースとした試算なので、あくまでも目安。また長い人生の家計管理において、「借入可能額」=「返せる金額」と必ずしも一致しないことは念のため押さえておきましょう。

ただしそのうえで、住宅FPの関根さんは「借入可能額を基準に住宅を選ぶことは決して間違いではない」と説明します。

「ゆとりを持った返済計画を立てることは大切です。ただ、どうしても住みたいと思える物件と出会ったとき、その返済を可能にするにはどういった家計やライフプランの見直しをすれば実現できるか、考えることも重要だと思います。例えば返済額を実現するために毎月3万円不足するとき、夫だけが働いている家庭なら妻も働いて家計を助ける、夫は収入を高めるためにキャリアアップを考える。あるいは支出面を見直して家計を整理する。

『借入可能額ギリギリだから絶対にダメ』ではなく、『こうありたい』という未来のライフプランに向けて、自分たちの努力で実現していくことも一つの選択肢だと思います」(住宅FP・関根さん)

ステップ4:老後の返済計画もイメージしておく

多くの人にとって、住宅ローンは35年間という長い期間での契約となります。そうなると、完済は65歳の定年後となることも多く、不安になる方も多いかもしれません。

ただ、その点についても悲観する必要はないと住宅FPの関根さんは指摘します。

「ひと昔前は60歳で定年退職を迎えて仕事を辞める、というのがあたり前でした。ただ人生100年時代といわれる中、政府が70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とするなど、定年退職の定義も65歳から68歳、70歳と今後変わってくることも十分に考えられます。35年後には60代を迎えているから住宅ローンの返済が不可能、という時代ではなくなっているかもしれません」(住宅FP・関根さん)

老後の家計のやり繰りを見据えて、ローン完済を前倒しする「繰上返済」をしなければならないと考える人も多いはず。しかしそれも、「そもそも60代で残りのローン返済額が少なくなった時点で繰上返済をしても、利息分のメリットはそれほど多くない」と関根さんは解説します。

「60代になって、繰上返済は必ずしも正解ではありません。老後の生活は長いものです。老後の家計を見据えて繰上返済を選ばず、あえて手元に現金を残しておくという考え方も検討しておきましょう」(住宅FP・関根さん)

住宅ローンの不安をサポートする制度

住宅ローンの不安をサポートする制度

住宅ローンの借入額は数千万円になることも珍しくなく、不安を感じる人もいるでしょう。そこで住宅ローンの返済を支援してくれる、代表的な2つの制度を紹介しておきます。

・団信(団体信用生命保険)
住宅ローンの返済中に死亡や高度障害など万が一のことがあった場合、残りの住宅ローンが全額弁済される保障制度です。購入した住宅にそのまま住み続けることができるので、家族のセーフティーネットとしての役割を果たします。がんや生活習慣病などの特定疾病にかかったときに、ローン残高の全額や一定期間の負担が保障されるタイプの団信もあります。

・住宅ローン控除(住宅ローン減税)
住宅の取得や一定のリフォームや増改築について、10年以上の住宅ローンを組んだ方は納めた所得税が戻ってくる制度です。上限4,000万円(中古物件の場合上限2,000万円)の年末時点の借入残高の1パーセントを基準に、10年間所得税が減税されます。また2021年1月1日〜2022年12月31日までに居住した場合は所得税が戻ってくる期間(控除期間)が13年に延長。11〜13年目は借入金年末残高(上限4,000万円)の1パーセントか、建物購入価格(上限4,000万円)×2パーセント÷3のどちらか小さい額が年間控除額として、所得税が安くなります。新築・中古どちらも対象となるので、住宅を買う多くの人が対象となる支援制度です。

このような、住宅ローンの不安をサポートする制度を活用できます。

まとめ

賃貸も購入も、それぞれにメリットとデメリットがあります。ただ、「なんとなく住宅ローンを組んで家を買うのは怖い」という理由だけで避けてしまうのは、多くのメリットを鑑みると、少しもったいないと考えることができるかもしれません。今回紹介したポイントを踏まえて、ライフプランとともに家を買うという選択肢を検討してみるのも良いかもしれません。

この人に聞きました
関根 克直さん
関根 克直さん
2004年に茨城県にて住宅購入相談中心にFPとして開業(現在のオフィスは東京都千代田区)。住宅購入サポート、住宅ローン相談、投資用物件の利回り計算などを得意としています。またTBSの人気番組「ひるおび」の「お財布救助隊」にも出演。チャンネル登録数7万人超えの住宅系YouTuberとしても活動中。
ライタープロフィール
田中 雅大
田中 雅大
主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション代表。関西学院大学卒業後、編プロ、マネー系雑誌等の編集記者を経て2014年設立。AFP認定者。

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