家賃は「毎月の貯蓄額」を考慮して判断する

部屋探しにおいて、家計で大きな割合を占める家賃の判断は難しいところ。一般的には、毎月の貯蓄額を考慮して判断するのが良いとされています。
では、その「毎月の貯蓄額」はどう定めれば良いのでしょうか。
まずは、将来を見据えた「貯蓄の目標額」を設定します。例えば、いざというときのために貯めておきたい「生活防衛資金」の目安とされる半年分の生活費を目標としてみましょう。そこから「1年間で目標額を貯める」といったプランを立て、毎月の貯蓄額を定めます。
無理のない貯蓄を続けるために有効な手段の一つとして、「先取り貯蓄」があります。先取り貯蓄とは、収入から貯蓄額を先に引いて、残ったお金で生活するという考え方。部屋探しの際に家賃を検討するときも、収入から貯蓄と家賃以外の固定費を引いて、残った金額の中で検討するのが良いでしょう。
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また、住環境にこだわりたいのか、通勤のために住む場所を優先したいのか、もしくは部屋ではなく洋服や旅行などといった趣味にお金をかけたいのかなど、世帯構成や収入やこだわりなどに合わせてお金の使い方に優先順位をつけることで、家賃の目安も見えやすくなってきます。
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世帯構成に合わせた部屋の広さってあるの?

家賃の目安が分かったところで、次に考えたいのが部屋そのもの。とくに部屋の広さは、快適な暮らしを送るうえで重要なポイントの一つといえます。
それぞれの世帯構成に適した広さの目安は、国土交通省による「住生活基本計画における『水準』について」において、「最低居住面積水準」「誘導居住面積水準」として公表されています。これらの水準を基に部屋の広さについて考えてみましょう。
最低居住面積水準で算出する広さの目安
最低居住面積水準とは、健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠とされる広さの目安です。つまり、快適に暮らすために最低限必要な広さのことで、「個人のプライバシーが守られる」「家族との団らんやテレビの視聴など、余暇活動を行えるスペースがある」といった条件を基に定められています。
それによると、単身世帯の場合に必要とされる広さの目安は25平米(約15畳)となり、トイレや浴室などを除いた居室(居住や娯楽のために継続的に使用する部屋)はだいたい13平米(約8畳)ほどになるでしょう。2人以上の場合は「10平米×世帯人数+10平米」で算出します。
なお、3歳未満の子供は0.25人分、3〜6歳の子供は0.5人分、6〜10歳までの子供は0.75人分に換算されます。
誘導居住面積水準で算出する広さの目安
誘導居住面積水準とは、多様なライフスタイルを実現してより豊かに暮らすために必要とされる広さの目安です。都市の中心及びその周辺におけるマンションなどの共同住宅居住を想定した「都市居住型誘導居住面積水準」と、都市の郊外および都市部以外の一般地域における戸建住宅居住を想定した「一般型誘導居住面積水準」に分かれます。
都市居住型誘導居住面積水準によると、単身世帯の場合に必要とされる広さの目安は40平米。2人以上の場合の計算式は「20平米×世帯人数+15平米」、子供の換算方法は前述の最低居住面積水準と同じです。
一般型誘導居住面積水準の場合、単身世帯の場合に必要とされる広さの目安は55平米。2人以上の場合の計算式は「25平米×世帯人数+25平米」、子供の換算方法は前述の最低居住面積水準と同じです。
その他のチェックポイントを紹介!

家賃や部屋の広さの他にもチェックしておきたいポイントはいくつかあります。それぞれ確認してみましょう。
階層と部屋数
部屋の階層と部屋数も、きちんと考慮しておきたいところ。例えば、小さな子供がいる世帯は子供の足音が騒音トラブルの原因となってしまうことがあります。その点を踏まえると、1階の部屋を選ぶのも一つの案。また、上層階よりも下層階の方が家賃は低い傾向にあります。一方で、眺望や日当たりを優先したい場合は上層階の方が適しているでしょう。
部屋数については、仮に2人暮らしの場合、プライベート空間を確保したいならお互いの部屋はあった方が良いでしょう。逆に、2人でのびのびと過ごせる広い空間を確保したいなら部屋数を減らして広いリビングのある部屋も選択肢としてあります。また、費用を鑑みて引っ越しの回数は減らしたいと考える人は、近い将来の世帯構成や収入の変化を見越した部屋数にするのも一つの策です。
立地条件

部屋の立地条件も忘れずに見ておきたいポイントです。特に「駅やお店など日常生活を送るうえで必要な施設との距離」「緑が多い環境」「治安」といったことは、実際に周囲を歩いてみないと分かりづらいもの。訪れる時間帯が変わると違った印象を受ける場合もあります。気に入った部屋を見つけたら、曜日や時間帯を分けて何回か行ってみると良いでしょう。また、子供の年齢によっては通学区域や通学手段などを考慮する必要もでてきます。
お風呂とトイレ
お風呂とトイレが一緒になっている部屋は、家賃が低い傾向にある他、掃除が楽といった一人暮らし向きのメリットがあります。ただ、2人以上で住むのなら別々の方が利便性は高いでしょう。また、ゆっくりと湯船に浸かりたいなどお風呂の時間を楽しみたい人は、トイレとは別で追い焚きもできるお風呂の方が合っているかもしれません。部屋探しの際は、このような利便性の要素も参考にしてみてください。
収納スペースの有無

部屋をすっきり片付けたいなら、収納スペースは多めにあった方が使い勝手は良いでしょう。ただ最近は、倉庫のサブスクリプションやコインランドリーといったサービスを利用して、モノを所有しない生活を選ぶ人も増えてきたようです。自分の現状と今後のライフスタイルを考慮して判断しましょう。
キッチンの広さ
家で料理をする機会が多いなら、なるべく調理スペースが広いキッチンを選んだほうが無難です。コンロが2口以上あると調理の効率がぐっとあがります。
ベランダがあるかどうか

ベランダがあるかどうか、洗濯物が干せるかどうかもチェックポイントの一つ。もしベランダでたくさん洗濯物を干せなさそうな場合、浴室乾燥が可能かどうかも合わせて確認しておくと安心です。また、リモートワークが増加傾向にある中、気分転換にベランダで仕事をする、もしくはベランダで一休み、といった使い方をする人が増えているようです。
ちなみに、一般的には屋根がある室外の専用スペースをベランダ、屋根がないスペースをバルコニーと呼びます。
入居にはまとまった費用が必要
部屋が決まり入居となると、まとまった初期費用が必要となります。一例として都心で家賃12万円、2LDKの部屋を借りた場合の初期費用について見てみましょう。
項目 | 目安 | 金額 |
---|---|---|
敷金:賃料の担保や退去時の修繕費用として貸主が預かる費用 | 家賃1ヵ月分 | 120,000円 |
礼金:貸主に対して払う費用 | 家賃1ヵ月分 | 120,000円 |
仲介手数料:部屋を仲介した不動産会社に支払う費用 | 家賃1ヵ月分+消費税 | 132,000円 |
入居月の家賃 | 家賃1ヵ月分 | 120,000円 |
鍵交換費用 | 約20,000円 | |
火災保険料 | 約20,000円 | |
合計 | 約532,000円 |
この他にも引っ越し業者を頼むならその費用が、家具を新しく揃えるなら購入費用が発生します。予想していた以上に費用がかさみ、その後の生活に支障がでないよう、入居の初期費用や引っ越し費用などの見積もりをあらかじめ取っておきたいところです。
引っ越しは自分の将来を見つめ直す良い機会

今回は部屋探しのポイントを色々と紹介してきました。働き方やライフスタイルの変化に伴って、また、収入や世帯構成などの条件を考慮して慎重に部屋を選びたいですね。
そのためには、何にお金をかけるのか、どのような生活環境に身を置きたいのかを考えることが大切になりそうです。引っ越しは、今を見つめ直し、将来を考える良い機会になるかもしれません。
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・本コンテンツは一般的な情報提供を目的とするものであり、お客さまに不動産取引に関して何らの推奨・勧誘も目的とするものではありません。
参考:
国土交通省 「住生活基本計画における「水準」について」(外部サイト)
ライタープロフィール

主にマネー系コンテンツ、広告ツールを制作する株式会社ペロンパワークス・プロダクション所属。立教大学卒業後、SE系会社を経て2019年に入社。主にクレジットカードやテック関連のWEBコンテンツ制作や企画立案、紙媒体の編集業務に携わる。
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