「公的職業訓練」(ハロートレーニング)とは?
「こんな仕事につきたい!」「スキルアップをしたい!」と希望する人は、公的職業訓練が利用できるかどうか、ぜひ確認してみてください。求職中の人なら無料で必要なスキルや知識、資格を取得することができ、訓練期間が修了すれば、ハローワークの就職支援を受けることもできます。失業中・求職中の人だけでなく、在職中にキャリアアップをめざす人のための有料の訓練もあります。
公的職業訓練の種類
大きく分けて次のような種類があります。
離職者訓練
対象:ハローワークで求職している人、主に雇用保険を受給している人
無料で職業訓練を受けることができます(テキスト代などの実費負担あり)。雇用保険の給付金(基本手当、受講手当、通所手当)を受けることができます。自己都合退職で給付制限期間中の人も、職業訓練を受け始めた時点で給付制限が解除されることになっています。
求職者支援訓練
対象:雇用保険を受給できない求職者
無料で職業訓練を受けることができ、条件を満たせば職業訓練受講給付金を受けることもできます。
在職者訓練
対象:主に中小企業に勤める人
現在の仕事を続けながら、さらなるキャリアアップをめざす人が有料で訓練を受けることができます。
学卒者訓練
対象:中学、高校などを卒業した人
都道府県立職業能力開発校や、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校(ポリテクカレッジ)などで訓練を受けることができます。費用は有料です。
障害者訓練
対象:障害のある方
障害の状況に応じて、きめ細かい訓練を受けることができます。
公的職業訓練のコース
公的職業訓練には様々なコースが用意されており、世の中のニーズにあったコースや資格取得がめざせるコースも。その一部をご紹介します。
介護サービス科
・介護職員初任者研修
・介護事務管理士
・介護福祉士実務者研修
スマート情報システム科
・基本情報技術者
・ウェブデザイン技能検定
・CCNA
・OSS-DB Silver
工場管理技術科(電気保全)
・第二種電気工事士
・消防設備士
・品質管理検定(QC検定)
・中小企業診断士(経営管理)
ご紹介したのは一般的なコースの一例ですが、地域によっては農業や伝統工芸を取り入れたコースも。詳しく知りたい方はハローワークインターネットサービス(外部サイト)で検索してみましょう。
就職支援や給付金はどのようなものがある?

離職者訓練・求職者支援訓練を受講する人は、ハローワークや訓練実施機関によるキャリアコンサルティングや職業紹介など就職支援を受けることができます。
職業訓練を受けている間に受け取ることができる給付金は次のようなものです。
雇用保険を受給できる場合
基本手当:離職前の賃金に応じた支給
受講手当:日額500円(上限あり)
通所手当:通所方法に応じた支給(上限あり)
雇用保険を受給できない場合
雇用保険を受給できない場合は、すべての支給要件に該当すれば職業訓練受講給付金の支給を受けることができます。
職業訓練受講給付金:月額10万円
通所手当:通所方法に応じた支給(上限あり)
職業訓練受講給付金の支給要件
1.本人の収入が月8万円以下
2.世帯全体の収入が月25万円以下
3.世帯全体の金融資産が300万円以下
4.現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
5.全ての訓練実施日に出席している
(やむを得ない理由がある場合でも支給単位期間ごとに8割以上の出席率がある)
6.世帯のなかに給付金を受給して訓練を受けている人がいない
7.過去3年以内に、不正行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない
公的職業訓練でどんな資格がとれるの?

公的職業訓練を受けると様々な資格を取得したり、受験資格を得たりすることができます。
東京都立職業能力開発センターで得られる資格のうち、一部を紹介します。
技術士補
技術士制度は文部科学省が管轄する資格認定制度で「科学技術に関する技術的専門知識と高等の専門的応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた、優れた技術者の育成」を図ることを目的としています。
一次試験合格者や合格に相当する者で登録を受けた者が「技術士補」。二次試験に合格し、登録を受けた者が「技術士」と呼ばれます。
第二種電気工事士
ビルや工場、お店、私たちが暮らす家などの電気設備の工事のなかには、電気工事士の資格がなければできない工事もあります。
電気工事士の資格には第一種と第二種があります。
第一種:第二種の範囲と最大電力500キロワット未満の工場、ビルなどの工事に従事できます
第二種:一般住宅や店舗などの600ボルト以下で受電する設備の工事に従事できます。
介護職員初任者研修修了証明書・実務者研修修了証明書
介護の仕事は、次のように分けることができます。
生活援助……掃除、洗濯、料理など
身体介護……食事、入浴、排せつなど利用者の身体に触れて行う介護
身体介護をするためには、介護職員初任者研修をはじめ介護に関する資格を保有している必要があります。
実務者研修は、介護の専門家をめざす人のための資格です。質の高い介護サービスを提供するための知識や技術を習得することができます。なお「介護福祉士」をめざす場合、「実務経験3年以上」に加えて、「実務者研修の修了」によって受験資格を得ることができます。
続いて、東京都が民間の教育訓練機関に委託して実施する職業訓練で得られる資格を紹介します。
医療事務

医療事務の世界には民間資格が多くあります。職業訓練を通して、次のような資格に挑戦できる知識とスキルが身に付きます。
例
・診療報酬請求事務能力認定試験
・医科医療事務検定 3・2 級・調剤事務検定試験
・医師事務作業補助者実務能力認定試験
・Microsoft Office Specialist Word・Excel
・簿記検定3級
・秘書検定2 級
続いて、大阪府の職業訓練でとれる資格を紹介します。
建築CAD検定2級
CAD(Computer-Aided Design)とは、コンピュータを使った設計図面の作成を支援するシステムです。建築CAD検定は、CADを利用して建築図面を作成するための知識や技術力を認定する試験のことです。建築業界への就職・転職をめざす人の足掛かりとなる資格です。
認定フェイシャルエステティシャン・認定ボディエステティシャン
エステティシャンとして働きたい人のために、日本エステティック協会が認定する資格です。エステティックの基礎知識に加えて、衛生面や安全面についても学び、実務に役立てることができます。
ネイリスト
ネイリストになるために、資格は絶対に必要というわけではありませんが、ほとんどのネイリストが資格を持っています。資格を取るための訓練を通じて、サロンワークに必要な技術や知識が身に付くのです。職業訓練を通して、次のような資格に挑戦することができるようになります。
・JNECネイリスト技能検定 3 級、2級、1級
・JNAジェルネイル技能検定 初級、中級、上級
・色彩検定 3級
・アロマテラピー検定2級
・JNAフットケア理論検定試験
・JNAネイルサロン衛生管理士
公的職業訓練を受けるには?
離職者訓練および求職者支援訓練を受けたい場合のステップは以下のようになります。
1.まずはハローワークにて求職申込みと職業相談をしましょう。
2.受けたい訓練が見つかったら受講申込をします。受講申込と同時に給付金の審査も申請します。
3.面接や筆記試験等を受験し、職業訓練を受けられるかどうかが決まります。
4.試験に合格したら受講あっせんの手続きを経て、訓練が開始されます。
5.訓練を受けている間は、月に1度、ハローワークの職業相談を受け、給付金を申請します。
※在職者訓練の申込方法は、都道府県のハローワークウェブサイトを確認してください。
まとめ
公的職業訓練は、様々な立場の人が利用できる制度です。特に離職者訓練や求職者支援訓練は、訓練を無料で受けることができ、ハローワークの求職支援も活用できますので、安心して訓練に臨むことができるでしょう。
厚生労働省は「急がば学べ」というキャッチフレーズで、職業訓練を勧めています。例えば子育てや介護のあとで社会復帰をめざす時にも、やみくもに就職活動を始めるのではなく、職業訓練と求職支援を受けながら、納得のいく就職をめざすのも良い方法です。
ライタープロフィール

プロ資格マニア、ライター、起業・集客コンサルタント。
ライターとして金融・経済関係の原稿を多く手がける。次々と改正される法律や、発売される数多くの金融商品が、1人の生活者としての私たちにどのような影響を与えるのか、という点を大切に執筆活動を行う。大阪・泉州の郊外で、農家をリノベーションした住宅を自宅兼オフィスとする。趣味はディンギーヨットに乗ること、資格を取ること、日本の伝統芸能とウルトラマンに関すること。著書は「プロ資格マニアになる方法」「あなたの隣のコンサルタント」「今日から病気も友達」など。
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