睡眠負債とは? 日本人の4割は睡眠不足?

睡眠負債と睡眠不足の違いはなんでしょうか。睡眠不足は言うまでもなく人間に必要な睡眠時間がとれていない状態です。その結果、疲労の蓄積や集中力の低下、そして健康にも様々な弊害が生じます。
睡眠負債とは、睡眠不足が慢性化し、不足分が借金の利息のように徐々に積み重なっていくことで、肉体に不調をきたす状態のことをいいます。2017(平成29)年の厚生労働省「国民健康・栄養調査(外部サイト)」によると、20歳以上の日本人の4割は睡眠不足の状態であるとされています。

人間にとって必要な睡眠時間は7時間程度が良いとされていますが、個人差や睡眠サイクルも年齢によって異なるため、「これだけ寝れば大丈夫!」といった明確な指標はありません。
また、同調査によると「睡眠で休養が十分にとれていない」と感じている方の割合も、2009年からの調査でもっとも高い数値になっており、多くの人が睡眠不足を感じており、睡眠負債の状態、もしくはその予備軍になっていることが分かります。
睡眠負債はこんなに危険!? 生じる健康リスクとは?

睡眠不足が続き、睡眠負債の状態になると、様々な健康リスクが生じることが分かっています。睡眠負債が原因となりうる健康障害を紹介します。
高血圧
一般的に血圧は、起床とともに上昇して、夕方あたりから低下し始め、夜にはさらに下がるとされています。しかし、それは夜にしっかりと睡眠をとった場合です。このサイクルが乱れ、睡眠障害や寝不足が慢性化すると夜でも覚醒状態が続き、血圧が下がらなくなってしまい、高血圧の原因となることがあります。
糖尿病
睡眠負債で肥満になるリスクについては前述の通りですが、それと連動して糖尿病のリスクが高まることもよく知られています。血糖値を下げる役割を担うのは、膵臓から分泌されるインスリンです。このインスリンは、睡眠不足によって効能が低下してしまいます。
「睡眠習慣」と「睡眠障害」の問題
このように睡眠時間や質は、生活習慣病と密接にかかわっています。たかが睡眠不足と侮っていると重篤な病気にかかってしまう危険があることを知っておきましょう。しかし、質が良く適切な睡眠時間を確保しようと心がけていても、睡眠負債になってしまうことがあります。それが加齢とともにかかりやすくなる睡眠障害です。
【参考】
東洋経済オンライン 「「寝不足の人」が太りやすくなる3つのワケ(外部サイト)」
加齢とともに気をつけたい睡眠障害と経済への影響

肉体が加齢によって衰えるように、睡眠にも変化が出てきます。体内時計が変化することによって、壮健だったときと比較すると早起きになるなど、覚醒時間が長くなり、眠れる時間が短くなるのです。加齢とともにかかりやすくなる代表的な睡眠障害を紹介します。
睡眠時無呼吸症候群
その名の通り、睡眠時に無呼吸状態(10秒以上)を繰り返す病気です。睡眠は脳や肉体に休息をとらせるものですが、睡眠時無呼吸症候群では酸素が十分にいきわたらないため、体の様々な部位に負担をかけてしまいます。睡眠時無呼吸症候群になると、脳卒中や狭心症、心筋梗塞などのリスクが高くなります。
レストレスレッグス症候群
別名、「むずむず脚症候群」とも呼ばれます。夜になると下半身(特に脚)がムズムズし、じっとしていると不快になるなどの感覚が現れ、不眠の原因となります。中年以降の発症率が高く、男性より女性がかかりやすい病気です。
周期性四肢運動障害
睡眠中に手足がピクピクと動きます。自覚がない場合がほとんどで、足が動くことで脳が覚醒状態になり、睡眠を妨げてしまいます。レストレスレッグス症候群患者の8割が合併しており、中高年に多い睡眠障害です。
レム睡眠行動障害
夢での行動を現実でも起こしてしまう病気です。寝言を言ったり、叫んだり、なにかを探すように腕を動かしたり、様々です。
【参考】
国立循環器病研究センター循環器病情報サービス 「睡眠時無呼吸症候群と循環器病(外部サイト)」
厚生労働省e-ヘルスネット 「高齢者の睡眠(外部サイト)」
睡眠負債は経済にも悪影響。年15兆円に及ぶ損失も
2016年、アメリカのシンクタンク「ランド研究所(外部サイト)」が睡眠不足による経済損失を発表したことが話題となりました。日本が睡眠不足による生産性の低下など様々な観点から損失している額は、なんと年間15兆円! GDPの約2.9パーセントにもあたります。睡眠不足で、毎日の仕事がうまく回らず、残業。その結果、さらなる睡眠不足となり、睡眠負債の状態に陥っているのが、現在の日本なのかもしれません。
睡眠負債を返済するために質の良い睡眠を

睡眠負債を返済していくためには、規則正しい生活サイクルを構築し、睡眠習慣を正しくする必要があります。寝不足気味だからといって、必要以上に寝てしまったり、「寝だめ」をしたりすると、睡眠習慣が狂ってしまいます。下記は、年齢別の睡眠を比較したものです。


年齢を重ねるにつれ、自然と睡眠時間が減っていきます。また睡眠時間は個人差、季節などによって必要な時間は変化するので、質の高い睡眠をとれるように心がけるのが良いでしょう。
質の高い睡眠は生活習慣を整えることが基本です。生活習慣を整えても、眠気が抜けない場合は、自覚のない睡眠障害となっているケースも考えられるので、病院で診察を受けてみると良いでしょう。
(記事提供元:サムライト株式会社、画像提供元:ピクスタ株式会社)
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