海外移住と起業の夢を実現〜フランス・ボルドー在住 日本料理店経営 石川雄午さん〜

海外移住と起業の夢を実現〜フランス・ボルドー在住 日本料理店経営 石川雄午さん〜

海外移住と起業の夢を実現〜フランス・ボルドー在住 日本料理店経営 石川雄午さん〜

グローバル化が進む昨今、海外での生活や起業を夢見ている人も多いことでしょう。今回はフランス南西部の街・ボルドーに移住、日本料理店オープンの夢を実現した石川 雄午(いしかわ ゆうご)さんにインタビュー。海外で暮らすこと、働くことの楽しさや難しさについてうかがいました。

言葉や街の雰囲気になかなか馴染めなかった移住当初

ボルドー市内のガロンヌ川沿いに広がる歴史地区は、その形から「月の港」と呼ばれている
ボルドー市内のガロンヌ川沿いに広がる歴史地区は、その形から「月の港」と呼ばれている

ボルドーは、首都パリからTGVで約2時間の場所にあるフランス第5の都市です。日本では「赤ワインの街」というイメージが強いですが、美しい歴史地区がユネスコの世界文化遺産にも登録され、観光地としても人気の高い街です。また、温暖な気候や豊かな自然に囲まれた環境が魅力で、2015年には「フランス人が住みたい街NO.1」に選ばれています。

今回、インタビューに答えてくれた石川雄午さんは、2007年に渡仏し、日本料理店の料理人、シェフとして働いた後に独立。2019年4月にオーナーとして日本料理店「Restaurant ISHIKAWA」を開業しました。ボルドーの旧市街から少し離れた静かな地区にある同店では、本格的な和食を提供。新聞やレストランガイドブックなどにも取り上げられ、日本の味を愛するフランス人たちで連日にぎわっています。

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石川 雄午さん(右)と妻の貴子さん(左)

――フランスへ移住する前に、アメリカに住んでいたとうかがいました。
石川:大学院生の時に専攻していた文化人類学のフィールドワークで、アメリカのアリゾナにあるネイティブアメリカンのナバホ族居留区に3年間住んでいました。帰国後、料理の道に足を踏み入れ、東京・銀座の関西割烹料理店「金兵衛」(現在は閉店)で修行をしている時に、ボルドーで日本料理店を経営する妻の友人の旦那さんからオファーをいただき、ボルドー行きを即決しました。

――「即決」ですか。迷ったりはしませんでしたか?移住前にフランス語の勉強をしていたのですか?
石川:海外暮らしの経験があったので、他の人より迷いが少なかったのかもしれません。言葉については、フランスの場合、移住者は200時間の移民専用の語学学習プログラム(無料)に通うことが義務づけられていますので、移住後に本格的な勉強をしました。

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この日は大晦日。開店前、特別ディナーの準備に追われる石川さん

――これまでのフランス生活で一番つらかったことは何ですか?
石川:フランスに来た当初は、妻と子どもはまだ日本に住んでいたので、一人で暮らしていたのですが、言葉や街の雰囲気になかなか馴染めず、「誰にも受け入れてもらえない」と心が閉じてしまっていました。自分の居場所をうまく作ることができず、つらい時期でした。

――では、印象深かったことを教えてください。
石川:フランス人は日本人に比べて「いい加減」で「我が強い」と聞いていました。実際そういう傾向は否めないのですが、決して他者に対して無関心なわけではありません。むしろ困っている人や弱い立場の人がいると、助けようと真剣に接してくれるんです。これはうれしい発見でしたね。

日本の伝統技法の焼杉をイメージした黒い板が、和の雰囲気を醸し出す。
日本の伝統技法の焼杉をイメージした黒い板が、和の雰囲気を醸し出す

日本文化や自然食への意識の高まりが、和食人気を後押し

大晦日の特別ディナーの一品 前菜の「刺身と小鉢の盛り合わせ」。松前漬け、サーモンといくらのなます、筑前煮といった正月らしい料理が並ぶ。
大晦日の特別ディナーの一品 前菜の「刺身と小鉢の盛り合わせ」。松前漬け、サーモンといくらのなます、筑前煮といった正月らしい料理が並ぶ

――続いてフランスの日本食事情を教えてください。ボルドーではどんな日本食が好まれていますか?
石川:フランスの他の都市と同じくラーメンの人気が高いですが、最近はカレーライスやうどん、とんかつも注目を集めています。もちろん、これまで通り、寿司、刺身、天ぷら、焼き鳥といったメニューも喜ばれます。当店では魚の粕漬けや若狭焼きなど、より深く日本らしいものを提供し、お客さまの反応を見ています。

――フランス人で日本食を好むのはどんな人たちですか?
石川:日本を訪れたことがある人や日本文化に興味のある人が多いです。あとは自然食や有機食材にこだわるお客さまも多く、肉やグルテン、乳製品などを抜いてほしいというリクエストも時々受けます。

色鮮やかなミニちらし寿司。ふたを開けた瞬間、お客さまから「美しい」と声が上がった。
色鮮やかなミニちらし寿司。ふたを開けた瞬間、お客さまから「美しい」と声が上がった

――ボルドーの街でたくさん日本料理店を見かけましたが、日本人が経営、またはシェフをしているお店はどのくらいありますか。
石川:日本料理店自体はだいたい80軒くらいあるかと思いますが、日本人が経営、シェフをしているのはおそらく5軒くらいかと。外国人経営のお店は寿司、刺身、焼き鳥のほかに中華料理やアジア料理も提供しているので、日本人ならすぐ分かるのではないでしょうか。

日本料理と同じく、フランスで人気の高い日本酒。日本酒もワインも種類が豊富で、料理に合わせてソムリエがすすめてくれる。
日本料理と同じく、フランスで人気の高い日本酒。日本酒もワインも種類が豊富で、料理に合わせてソムリエがすすめてくれる

フランスと日本。その違いさえも楽しみながらやっていく

――日本料理を食べ慣れていないお客さまに向けて料理を提供するうえで、工夫なさっていることを教えてください。
石川:日本料理はフランス料理に比べるとあっさりとした味付けですので、量を多めにして満足感を感じていただけるよう工夫をしています。またコースの中に「照り焼き」や「ポン酢」などよく知られている味を入れたり、現地の人にとって馴染みの深い食材を取り入れたりしています。日本文化に興味のあるお客さまが多いので、サーブする際にまず日本語で料理名を伝えた後、フランス語で説明するというスタイルをとっています。

妻の貴子さんも調理場に立つ。
妻の貴子さんも調理場に立つ

――石川さんは、海外移住をするうえで必要な能力とは何だと思いますか?
石川:慣れないうちは大変かもしれませんが、楽しめることが一つでもあれば、続けていけるのではと思っています。あとはフランスの人もよく言いますが、「健康であること」でしょうか。

――最後になりますが、海外で飲食店経営をしたいと考えている人にアドバイスをお願いします。
石川:例えば、開業準備一つとっても、フランスでは契約の仕方、建物の状態、工事業者の仕事のやり方など、日本とは勝手の違うことばかりです。ストレスを感じることもありますが、そうした違いさえも楽しみながらやっていくのが大切かと思います。

まとめ

なにもかもがきっちりと予定通り進んでいくことの多い日本と違い、海外では思うように事が運ばすストレスを溜めてしまう人も多いようです。肩の力を抜いて過ごすことが海外移住で求められる要素なのだと、石川さんのお話をうかがって感じました。またワインに合わせて、松前漬やなますをおいしそうに食べるフランス人の姿にびっくり。「日本料理といえば、寿司、天ぷら」の時代は過去のものとなってきたのかもしれません。

この人に聞きました
石川雄午さん(日本料理店「Restaurant ISHIKAWA」オーナー・料理長)
石川雄午さん(日本料理店「Restaurant ISHIKAWA」オーナー・料理長)
1974年東京都生まれ。東京・銀座の関西割烹料理店「金兵衛」(現在は閉店)で3年間修行の後、2007年に渡仏。ボルドーにおける本格的日本料理店の先駆け的存在「Restaurant MoshiMoshi」にて料理人、シェフとして腕をふるった。2019年4月、オーナーとして日本料理店「Restaurant ISHIKAWA」を開業。

Restaurant ISHIKAWA(外部サイト)
22 rue du Hâ 33000 Bordeaux
昼:定食18€(約2,100円)(税込)、御膳コース28€(約3,300円)(税込)、夜:御膳コース38€(約4,500円)(税込)、アラカルトもあり
※価格・日本円と外貨の換算値は2020年2月時点の金額です。

ライタープロフィール
瀬田 尚子
瀬田 尚子
大学卒業後、出版社に入社。 雑誌編集として約8年勤務の後フリーランスのライター・カメラマンに。 WEB、雑誌、広報誌など、さまざまな媒体で取材・執筆を行っている。得意とする分野は旅・食・健康。温泉とお酒には特に目がない。

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