ウェディングドレスで「自分らしさ」を表現

女性なら一度は夢見るウェディングドレス。Aラインやマーメイドライン、プリンセスラインなど、人気のデザインがありますが、今、そんなウェディングドレスのトレンドに、ちょっとした変化が起きているようです。
じわじわ人気を集めているのが、パンツスタイルやミニスカートなどのカジュアルなドレス。誰もが「お姫様」に憧れたのは昔の話なのでしょうか?
まずは、結婚式場やドレスサロンを運営するノバレーゼ(東京・中央)のブランドディレクター・城昌子さんに、今人気のドレスについて尋ねてみました。
「イギリス王室のメーガン妃が着用したウェディングドレスの影響で、多くの海外デザイナーがソリッド(無地・単色)な素材を取り上げています。また、日本のマーケットでは、チュール(薄手メッシュ素材)を用いたドレスは長く人気があります」(城さん)
2019年、ノバレーゼが入荷した新作ドレスの中には、パンツスタイルのドレスも。
![]() ノバレーゼのパンツスタイルドレス「Ray of Light」。ファッション感度の高い女性に人気 |
アメリカの人気デザイナーReem Acra(リーム・アクラ)がデザインしたドレスで、シルクのパンツにビーズで埋め尽くされたトップスが特徴。チュールのトレーンは取り外しが可能です。
このドレスを選んだ理由として「ワイドパンツは布の流れを感じる部分からも、ハレの舞台の特別な衣装として選んでいただけるのではないかと考えました。裾が大きく広がるドレスが映えるホテルのような大きな会場ではなく、屋外やレストランウェディングなどでの着用を想定しています」と城さん。
海外ウェディングやガーデンウェディングなど、カジュアルな雰囲気の結婚式を希望するカップルや、ファッション感度の高い女性から人気だそうです。
実際に選んだ花嫁は「他に見たことのないデザインなので新鮮」と、ゲストからの反応を楽しみにしていたといいます。
このようなパンツスタイルのドレスが人気を集める背景について、
「近年ではニットやジャケットなどのウェディングスタイルの選択肢も登場しています。これらの背景にあるのは、“カジュアル化”というよりは、“多様化”だと感じています。ブライダルのシーンだけにとどまらず、“自分らしさ”を表現したいと考える方が増えている延長線上に、結婚式の場でのパンツスタイルなどのドレスもあるのではないかと思います。パンツルックと一言でいうなかでも、ジャンプスーツやセパレートタイプ、タキシードジャケットにパンツなど幅広いスタイルがあります」と城さんは話してくださいました。
伝統やしきたりにとらわれないドレスが人気に
全国でハウスウェディングを展開するテイクアンドギヴ・ニーズが運営するミラーミラー表参道(東京・港区)でも、2017年からパンツスタイルのウェディングドレスの取り扱いを始めています。
「パンツスタイルが人気になった背景には、2014年に俳優のジョージ・クルーニーと結婚したアマル・クルーニーが着用した、ステラマッカートニーのパンツドレスがあります。
ファッションリーダーとして人気のアマル・クルーニーがクールにパンツドレスを着こなす姿が、世界中の花嫁のパンツブームに火をつけました。毎年、欧米で開催されるブライダルファッションウィークでも、2017年以降、1つのショーで必ず3着以上のパンツスタイルがランウェイに登場しています」と話してくださったのは、MIRROR MIRROR PRの佐伯有理さんです。
「日本でも価値観の多様化により、結婚式も伝統やしきたりにとらわれない自由なスタイルに変化しています。王道のウェディングドレスだけでなく、自分らしく着こなせる自由でおしゃれなドレスが求められるようになりました。
また、SNSが普及し、海外のウェディングドレスを日本の花嫁が簡単に手に入れられるようになったことも影響していると思います」(佐伯さん)
ミラーミラー表参道では、「日本の花嫁様にも、大切な一日だからこそ、自分らしく輝ける一着をお召しいただきたい」と考え、多様な選択肢のひとつとして、パンツスタイルのドレスの取り扱いを始めたそうです。
![]() ミラーミラー表参道で取り扱っているダニエル・フランケルのパンツドレス。総レースのオールインワンスタイルが特徴 |
写真は、ミラーミラー表参道が日本上陸第一号となったという、ニューヨークの人気デザイナー・ダニエル・フランケルのパンツドレスです。
「ピッタリとしたトップスに、ほどよいワイド感があり、幅広めのロールアップパンツのオールインワンのデザインは、スタイルをよく見せ、モードな印象になります。
ピンヒールのハイヒールでクールにするのも良し、ペタンコシューズでラフに仕上げるも良し。足元と小物によって様々な印象を演出できる一着です」(佐伯さん)
パンツスタイルのドレスには、クールなものからゴージャス、エレガントなものまで様々あるといいますが、このドレスを選ぶ花嫁はウェディングドレスに自由や洗練を求め、モダンなスタイルを好む方が多いそうです。
カジュアルなパーティに映える「ミニスカート」ドレス
パンツスタイルのドレスを二着紹介しましたが、今度はミニスカートのドレスも紹介しましょう。
![]() エスクリ「プリマカーラ」ミニスカートドレス「rita」。二次会や披露宴のお色直しなど、カジュアルなシーンで選ぶ花嫁が多い |
写真は、ホテル・レストラン・ゲストハウス・専門式場と、マルチスタイルで結婚式場を全国展開するエスクリ(東京・港区)が手掛けるオリジナルドレスブランド「プリマカーラ」で取り扱うドレス「rita」です。
プリマカーラのプレス担当、森泉さんにお話を伺うと、「60年代よりファッションではボクシーなミニスカートがトレンドとなり、その頃からウェディングでもミニスカートが少しずつ取り入れられてきました。
現在は、より自由で開放されたデザインや、ネオビンテージなデザインなど様々なテイストのミニドレスがコレクションで見られるようになりました」とのこと。
プリマカーラの「rita」は、トップスはしっかりとウエストの曲線が際立つように設計されており、総レースを施しフェミニンな印象に。スカートにはオーガンジーを幾重にも重ねてボリュームを持たせ、ミニだからこそ出せるロマンティックで軽やかなイメージを演出できる一着です。
「挙式での使用というよりは、披露宴前の衣装チェンジやお色直し、二次会、前撮りでご利用いただくパターンが多く、パンプスやシューズでご自身のこだわりや個性を見せたい方、アクティブな雰囲気のパーティをしたい方に多く選ばれています。
ウェディングミニドレスは花嫁の個性や、選択を尊重する現代社会のシンボルともなっています」(森泉さん)とのことでした。
今回、3社にお話を聞いて、ドレスのトレンドにも時代背景が色濃く反映されることを感じました。SNSでウェディングドレスを検索すると、世界中の様々なスタイルのドレスを見ることができる時代です。価値観の多様化によって、選択肢はどんどん広がっているのですね。
格式高いホテル挙式からカジュアルなスタイルへと結婚式そのものが変化しているのと同時に、ウェディングドレスもよりカジュアルで個性的に、そして自由なスタイルへと変化していきそうです。
ライタープロフィール

1980年 福岡県北九州市生まれ。同志社大学文学部を卒業後、9年間株式会社リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。ブライダル情報誌『ゼクシィ』の制作に携わり、主にプロジェクトマネジメントを担当。2011年3月末に退職、フリーに。『日経ビジネス電子版』『妊活たまごクラブ』などで記事執筆中。
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